「小異を捨てて大同につく」などという第3極は信用できない。もう「風」はいらない!
野田政権が解散するなら「今」しかないと書いたら、ほんとうにその日の午後に解散を表明されてしまって、自分の予知能力のズコサにたまげております(笑)。
あれ以来、上を下への解散騒動です。国民の大半が待ち望んでいたことですからそれはいいのですが、マスコミが「第3極」とやらをなぜ持ち上げるのか理解に苦しみます。
今回の選挙の焦点は第3極などではなく、第1に何よりも民主党政政権の不毛の3年間への評価、次にTPP参加問題、原発・エネルギー問題、脱デフレ・消費税問題などの重要な問題解決なはずです。
マスコミの一部には、これらの諸問題で争点が見えない、などと言っている向きもありますが、自民、民主はいうまでもなく、第3極各党の間にも大きな隔たりがあります。、
ところで先日、石原新党が維新の会と合流すると聞いた時にはのけぞりました。その言い分がふるっています。石原氏いわく、「小異を捨てて大同につく」ですと?
げっ、てなもんです。 どれひとつとっても、断じて「小」異ではない。TPPや、原発問題が「小」だって!その言葉を福島や茨城で吐いてみろ、と言いたい。
冗談ではない!私たちの子供たちの世代までを決定づける重要な選択です。それを「小異」と言ってのける石原氏のほうが、ただの感性の鈍い傲慢な老人にすぎないというだけです。
一晩で橋下氏にすり寄るために河村市長を切って捨てたやり方といい、石原氏は晩節を汚しました。
石原さんは橋下さんのことを天才とか、義経とか言って惚れ込んでいるようですが、そういうのを老いらくの恋というのですよ。
熱冷ましをお飲みなさい。橋下「維新の会」とはなんぼのもんですか。橋下氏はハッタリが得意な天才的ポピュリストにすぎません。本来なんの思想も理念もない人です。
維新の会の政策の中身といえば、竹中平蔵氏仕込みのTPP大賛成、脱原発は飯田哲也氏の急進的即時全面廃炉、「反中央官僚」は経産省脱藩浪人の古賀茂明氏仕込みのゴッタ煮です。
これらを、「橋下徹」という強烈なカリスマ性をもったキャラクターがくっつけているだけです。ですから、ひとつひとつ検討するとわからないことだらけです。
目玉政策であり、石原氏との唯一の共通政策である「中央集権制打倒・消費税の地方税化」も、地方分権の議論も煮詰まっていないのに財源だけ国から移管してなにをするつもりなのでしょう。
財源と受け皿作りが同時進行して、初めて地方自治の飛躍があると私は思っています。
いきなり器の道州制とかその財源論とか外形的な枠組み論ばかりが進行して、かんじんな「いかにして地方を豊かにするのか」という中身の論議がすっぽりと欠落しています。
そのように言うと、橋下氏はかならず「地方自治体の首長をやったことのない人間がなにを言う。」、そして「消費税の地方財源化が一点突破になる」、と言います。
しかし、橋下氏の知っている「地方自治体」とは大阪という巨大な政令指定都市にすぎない。橋下氏の「地方」は大阪であり、私が住む茨城の僻村でも、ましてや礼文島でも小浜島でもありません。
私が「地方」の限界が骨身に沁みたのは、一昨年の口蹄疫やトリインフルエンザ、そして今回の原発事故と大震災という非常事態の時でした。
残念ながら、地方には優れた首長や職員は沢山いましたが、「力」がなかったのです。
地方には機材や専門知識を持った人員を緊急投入する力も金も、それを平時に維持するだけの能力にも欠けているのです。
残念ながら、市町村レベルはいうまでもなく、県レベルですらそれはない。口蹄疫や原発事故、震災といった1時間を争うという時に、それは露呈しました。
残念ながら、今そのマンパワーとハードを持っているのは国だけです。国だけが責任をもった緊急対応ができるのです。
「そんな百年に一度の事態は来ない」などとは言わないでください。それはこの2年間、わが国を連続して襲っているのですから。
道州制にしてしまったら、これを引き受けるだけの受け皿に道州制=県広域連合がなれますか。無理だと思います。
残念ながら、唯一現時点でその力を持つのは東京、大阪などの政令指定都市だけに限られてるからです。
つまり、石原さんや橋下さんの東京、大阪という地元だけがそれを可能で、あなた方はそこからだけしか「地方」を見ていないのです。
「地方の首長」といいますが、東京、大阪はヨーロッパ一国ほどの経済規模がある「首長」なのですから、例外から全体の「地方」を論じないでいただきたい。
次に、私が石原氏が「小異」と言ってのけた原発問題です。原発問題とは、即エネルギー問題です。
「脱原発」とは、原発に強依存したエネルギー構造をどのように変えていくのかという代替エネルギーだけがテーマではありません。
それと同時に、どのようにしたら国民経済が損失を受けないようにできるのか、国民が苦しまないように変えていくためにはどうしたらいいのか、豊かさと原子力から離脱はどのようにしたら共存できるのか、それを問うことだと思っています。
そのためにはエネルギー構造だけではなく、経済構造と社会構造、そして日常生活のあり方までも変えていかなければなりません。
私は原発は徹底した安全確認ができるまで一定期間のモラトリアム(凍結)するべきだと考えています。
まだ福島事故の徹底した総括すらできていないこの時期に、原発即時全面廃炉というのはあまりにも拙速に過ぎます。
まるでこの福島事故のどさくさに紛れて、一挙に急進的な脱原発政策を進めようとしているようにすら見えます。それがどのような結果になるのかは、ドイツをよく検証すればわかるはずです。
その逆に、ろくな安全確認もされていない現在,全面稼働を言うのはもはや犯罪的です。
今は、2~3年間のモラトリアム期間を設けて、原子力安全・監視機関はいかにあったらいいのか、プルトニウムや最終処分はどうするのか、代替エネルギーはどう位置づけるのか、などの具体的課題について専門家と国民を交えた徹底的な議論をし尽くす時です。
その議論の結果次第で、原発ゼロがいかなる方法で、いかなる期間で達せられるのかが段々と見えてくるでしょう。
その間に国民や経済界の考えと覚悟も定まってくるでしょう。その議論の熟成の時間が必要なのです。段階を踏まないで結論にいってはなりません。急ぐのは、原発の安全性の確認作業のみで、それ以外は焦ってはなりません。
そしてTPP問題やデフレ対策などの経済問題に至っては、維新の会の経済政策を主導するのは竹中平蔵氏の新自由主義(※)です。
このデフレ大不況期に、彼らの言う規制緩和、財政規律の強化、大増税、公共事業削減、TPP推進、自主関税の撤廃、そして農業の解体などといった経済政策をとれば、わが国は間違いなく滅びます。
それは新自由主義者が主流だった民主党政権の3年間が実証しているではありませんか。彼ら新自由主義者は、小泉改革だけでは足りずTPPでその仕上げをしたいらしい。
私は今回の選挙でTPP推進と新自由主義を掲げる政党だけは許せない。
これらひとつひとつは「小異」どころか、今のわが国にとって死活的な重要問題で、むしろ「中央集権打倒」などのほうが、優先順位が低い問題です。
「小異を捨てて大同につく」、「中央集制打倒」、これでは、3年前に民主党が掲げた「政治主導」、「政権交代」というムード的スローガン政治とどう違うのです。
維新の会は、全国に正体不明の候補を立てて、関西を除きその9割が落選するでしょう。
気の毒ですが、それに呑み込まれた旧石原新党は石原氏を残して消滅するでしょうが、石原氏はひとり生き残ることを潔しとしないでしょう。
他の有象無象の第3極党派は地方ミニ政党として名古屋や北海道に生きて下さい。本来そのような性格のものなのです。
私は維新の会にしても、石原新党にしても地方政党である限り、一定の意味があると評価していたのですが、「風」に乗って野合政権を作りたいなどと夢想するから道を誤ったのです。
3年前に民主党がやったままの「風」頼みのイメージ政治は二度とごめんです。
その弊害に、私たち国民はうんざりするほどつき合わされました。冗談ではありません。「第3極」などという内実のないフンイキで、また3年間を浪費させられるなどまっぴらです。
私たち日本は今、間違いなく岐路に立っています。原発、消費税、TPP、デフレ不況、安全保障、外交政策、どれひとつとっても選択を誤れば国は滅びるでしょう。だからこそ、ひとつひとつの政策を見極めて、しっかりと自分の頭で考え抜いて一票を投じます。
もう「風」はいらない。 いるのは冷静な有権者の「眼」だけなのですから。
■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-fa0c-1.html
■※[新自由主義についての素人の説明]
別名、市場原理主義、あるいは新古典主義のことをいう。改良資本主義であったケインズ主義を否定し、企業の規制緩和、外国資本の参入自由化、公営企業の民営化、社会福祉切捨て、財政規律の建て直し、増税などの政府が取る政策のこと。
典型は英国のサッチャー首相やレーガン大統領、小泉純一郎首相、金大中大統領のとった政策である。
冷戦に勝利した思想として全盛を迎えたが、その後のリーマンショックを生み出した元凶とされ、その政策をとった諸国は共通して内部に「自己責任」の名の下に大きな社会格差や貧困問題、失業、自殺問題などをはらむことになる。
本来、新自由主義的構造改革はインフレ対策であり、バブル崩壊後のそれはデフレの克服に無力なばかりか、デフレを増大させる原因ですらあった。
主唱者はシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授。わが国では竹中平蔵氏(小泉政権時の金融財政大臣)、池田信夫氏など。
゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。
■太陽の党:解党、維新と合流へ 政策丸のみ、「減税」とは白紙
毎日新聞 2012年11月17日 東京朝刊
日本維新の会と太陽の党は16日、近く合流することで合意した。維新の橋下徹代表が同日、太陽の石原慎太郎共同代表らと国会近くのホテルで会談して政策を提示、太陽が受け入れを決めた。太陽が解党して維新に合流し、維新の政党名も変更しない。第三極の連携は、太陽が加わる維新とみんなの党を軸に進む。【藤田剛、福岡静哉】
橋下氏は会談で、維新が衆院選公約に盛り込む脱原発▽環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加▽消費税の地方税化などの政策課題と、維新とみんなとの政策合意の内容を提示。太陽にとって隔たりの大きな主張が含まれるものの、受け入れを決めた。橋下氏は会談で石原氏が新代表に就任することを提案したが石原氏は2人が「共同代表」となる案を示し、結論は出なかった。維新は17日に合流を正式に決める。
また、太陽は16日の幹部会合で、減税日本との合流を先送りする方針を決めた。太陽幹部は「減税とは事実上白紙だ」と述べた。
■<維新の会> 太陽が合流、代表に石原氏 1次公認47人発表
毎日新聞11月17日
日本維新の会は17日、大阪市内で全所属国会・地方議員による全体会議を開き、太陽の党が解党して維新に合流したと発表した。新代表には太陽の石原慎太郎共同代表が就き、維新代表だった橋下徹大阪市長は代表代行に就任した。維新はさらにこの日、衆院選の1次公認候補47人を発表。石原氏はみんなの党との選挙協力協議を急ぎ、第三極の結集を図る考えを強調した。
全体会議に同席した石原氏は「大同団結して最初の一戦で戦おう。後は橋下さんにバトンタッチする」と述べ、衆院選後に橋下氏に国政を託す考えを示した。橋下氏は、今回の衆院選出馬を改めて否定した。
両者が合意した基本政策は、中央集権の打破▽環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加▽新エネルギー需給体制の構築−−など8項目。両者の政策の隔たりについて、橋下氏は「既成政党に比べれば一致している」と、他党からの野合批判に反論した。
政策文書によると、消費税の地方税化を改めて掲げ、中央集権の打破の項目に盛り込んだ。税率は11%を目安としたが、増税の是非には直接触れていない。新エネルギー需給体制では、安全基準などのルールづくりを提言し、「脱原発」とは記述しなかった。
党人事では、幹事長は松井一郎大阪府知事が続投し、国会議員団代表には平沼赳夫前衆院議員が就いた。太陽は週明けにも総務相に解党を届け出る。
一方、1次公認候補者は28~65歳の官僚や地方首長・議員経験者、医師らで、擁立は21都道府県。1次で80人超の擁立を目指していたが、大幅に下回った。最終目標とする衆院過半数の241人以上は難しい情勢だ。みんなの党との競合は、両党の協議によって複数の小選挙区で回避、2カ所にとどめた。ただ、みんなの江田憲司、維新の松井両幹事長は、選挙区のすみ分けを進める考えを示したものの、合流は否定した。
一方、減税日本の河村たかし代表(名古屋市長)は同日、同市内で記者団に対し「名前がいかんと言われれば変える」と述べ、維新との合流が実現するなら党名にこだわらない姿勢を示した。しかし、松井幹事長は依然難色を示している。
« 関西電力が活断層報告を偽造した新証拠! | トップページ | 山田正彦元農相離党 民主党政権はTPP反対ならば公認せずの踏み絵を踏ませた! »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- ニューズ・ウィークにまで「妄想報道の罪」と評された日本のマスメディア(2013.12.24)
- 特定秘密保護法案が通ったら、その「手柄」の半分は石破発言で浮かれていた連中のものだ(2013.12.05)
- 「小異を捨てて大同につく」などという第3極は信用できない。もう「風」はいらない!(2012.11.19)
- 愚者は歴史に学ばず・1997年消費税増税の悲劇を忘れたのか!(2012.01.26)
- 地域の保育所から子供手当てを考えてみよう(2010.03.16)
コメント
« 関西電力が活断層報告を偽造した新証拠! | トップページ | 山田正彦元農相離党 民主党政権はTPP反対ならば公認せずの踏み絵を踏ませた! »
平沼さん始め、旧たちあがれ日本の議員さんやその支持者は納得できているのでしょうか?
私にはとてもそうは思えません。調整する暇も無かったでしょう。
以前冗談で言っていた「立ち枯れ」日本になってしまいました。
それにしても、今回の石原慎太郎の行動は焦り過ぎです。
投稿: 山形 | 2012年11月19日 (月) 07時01分
お久しぶりです。
明治維新は海外勢(英国等)の命を受けた維新の志士といわれた人々が成し遂げたとの説がありますが、平成の日本維新の会は、どうなんでしょうかねぇ。
投稿: 下請けです | 2012年11月19日 (月) 11時50分
タイまでTPP参加検討とのことですが、我が国とは友好関係とはいえ、事情は大きく異なります。
長い歴史の中で選挙利権組織として弱体化されてきた農協組合、もっともっと怒ってTPP反対運動すべきです。
農協以外の独立系農家さんグループや、生協なんかも。ありゃ、東京・埼玉・千葉の生協が合併かよ。
もう、実質普通のスーパーと変わらんのだから、税制優遇なんか放棄するべきだろう!「毒ギョーザ事件」が象徴的でしたが、もはや悪質な巨大組織です。
山形は生協(共立社)の強い土地柄ですが、もう組織が寿命です。
幹部・代表には代々、教育委員会のカスの定年教師が務めています。私の知る暴力・暴言連発教師がいたりね。
「生協なら安心」なんて、それこそ安全神話など20年前に崩壊しています!これが実感です。
北海道さん。
以前わたくし、農協の自動車共済の評判の悪さを「安いだけの9時~5時対応で最悪だ」と、こき下ろしましたが…そこは残念ながら未だに事実です。
が、住宅保険の「たてこう護り」は県内4分の1のシェアを持っていて、絶大な信頼を誇っていますよ!
ウチはたまたま親が銀行系なので違いますが…。
何を言いたいのかグチャグチャになってしまいましたが、
つまりは『人』だろう!
ということ。
選挙も同じこと。
もう『風』なんか要らない!
中身で選ぶべきである。
2005郵政解散・2009とにかく政権交代解散。
1993政変の混乱(みんな忘れちゃったの?)を忘れた浮動票が流れ捲った結果です。
あんなのはもう御免だ!
しかし今朝もテレビでは、今回の選挙は「〇〇〇解散」のスローガンばかり。
怒りを覚えております。
そう。『風』などいらない。もうウンザリです。
投稿: 山形 | 2012年11月19日 (月) 12時48分
橋下氏をこれだけ簡単に明確に論評した文章を初めて見ました。恐れ入ります。
解散表明以来、頭の中がモヤモヤしていて、昨日中途半端なコメントをしたのですが、今日の記事には全面的に同意です。
橋下氏や石原氏にとって、TPPや原発は大した問題ではないのでしょう。極端に言ったら「どちらでもいい」ということなのです。
ですから、橋下氏では原発0はできないし、石原氏ではTPPを拒絶できない。そういう人達なのでしょう。
ただ・・・、彼らが本当にしたいことは何なのか?壊して作りたいものがあるはずです。
それが今ひとつわからず不気味です。
投稿: 南の島 | 2012年11月19日 (月) 13時12分
すべてに同意です。
素晴らしい分析です。
投稿: 通りすがり | 2012年11月23日 (金) 15時58分
実際に見た事も話をした事も無いので、あくまでもテレビ報道を見ての感想ですが、橋下さんは「地方区」での活躍はそれなりにこなしているようですが、「全国区」に打って出ようとした時、大同団結の名の下、柱となる主義主張・政策を方向転換する姿勢を見ると、本当に全国区で大丈夫??と思っています。
一般国民は3年前の風(郵政の時も風が吹きましたが)に、この3年間で懲りたはずなのに、世論調査の結果では中々の人気ぶりですね。
投稿: 北海道 | 2012年11月24日 (土) 22時20分