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2012年11月 2日 (金)

「原発推進」フィンランドの覚悟と知恵

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フィンランドはユニークな原発政策を持っている国です。

グスタフソン・フィンランド駐日大使はこう語っています。
多くのフィンランド人は原発推進派ではない。論理的に導き出された選択であって、情熱やイデオロギーの問題ではない。」(「ニューズウィーク」10月30日号)

グスタフソン大使はフィンランドが、日本の原発護持派によってまるで無原則な原発推進派のように喧伝されていることに不満なようです。

確かにフィンランドは原子力の割合が29.6%あり(※日本23.9%)、新規に3基の建設をしようとしていますが、それが可能となった秘密は「オンカロ」という最終処分地を確保しているからです。

そして最終処分場のキャパシティに合わせて原発を建設する政策をとっています。

つまりエネルギー需要という入り口から発想するのではなく、逆に核廃棄物の出口問題を解決してから新規建設計画を立てるという逆転の発想です。

わが国のように原発を建設し始めた時に、最終処分場はなんとかなるさで始めたツケが今になって抜き差しならないことになった無責任ぶりとは大きく違います。

わが国は最終処分場というバックエンド問題を解決しない限り、実は原発ゼロも推進もないのです。※

民主党政権が原発ゼロといいながら、再処理にこだわるのは使用済み燃料のリサイクル工程がなくなると核廃棄物の最終処分問題がクローズアップされてしまうからです。

「オンカロ」とはフィンランド語で「隠された場所」を意味し、この地下埋却施設の地層はなんと18億年変動していないそうです。この安定した地層を500m掘って二重のキャスクに入れて保管する計画です。(扉写真参照)

「オンカロ」は2020年に操業を始め、2100年代にいっぱいになる予定で、いっぱいになったらコンクリートで蓋をしてしまいます。

実はこの「オンカロ」が人類最初の完全な核廃棄物の最終処理施設なのですが、90年先なのでこの結果を見届けられる人間は残念ながらいません。

フインランドは既存の4基に加えて、新たに3基の原発を作る予定ですが、、この「オンカロ」に核廃棄物を2100年代まで埋設し、その間に再生可能エネルギーを代替エネルギーとして使えるエネルギー源にする計画です。

つまり、フィンランドはこの最終処分場の容量に合わせて原発を作っているわけで、何のあてもないまま54基も作ってしまったわが国は爪のアカを煎じて飲みなさい。

フィンランドは、今でも世論調査をすれば原発反対が賛成を上回るそうですが、この最終処分場の地層が安定しており、国民にそれを丁寧に説明してきているために大きな反対運動は起きなかったそうです。

ところで、フィンラド人が原子力発電を維持し続ける理由はなんでしょうか。

まず第1に、フィンランド人が原発のリスクより地球温暖化によるリスクが大きいと考えたからです。フィンランドは寒帯に属する国で、気候変動が起きた場合大きな破局を迎える可能性があります。

また北極圏にあるために化石燃料の増大によるオゾン層破壊が、そのまま紫外線の増大とつながってしまうことを恐れています。

新規原発3基を建設することによって国内のCO2の3分の1にあたる3000万トンを削減する計画です。そして2020年までに石炭火力発電所をゼロにする予定です。

第2に、80年代にエネルギー供給の多くをロシアに依存している構造を解消して、エネルギーの安全保障を確立したこともあります。

ロシアは湾ひとつ隔てた巨大な燐国で、常に侵略を受けてきた苦い過去があります。ソ連の侵略を受けた1939年の「冬戦争」は今もフインランド人の魂の中に生き続けています。※

ですから、フインランドは「独立」の二字にかけてかつての支配民族ロシアにエネルギーを依存する選択はありえなかったのです。※

電力供給をロシアに握られてしまっていては、フィンランドの独立にも関わります。同様の地政学的位置にあるバルト三国や東欧圏も、ロシアの異民族支配を肌身で知っているだけに安易に原発からの離脱の道を選べないのです。

そして第3に、フィンランドは国際競争力世界順位1位2位を争う工業国です。その彼らにとって、エネルギー・インフラは教育制度や金融制度と並んで重要な国際競争力の源泉です。

小国でありながら技術立国であり続けるためには原発は必要悪であり、その維持のためには「オンカロ」が許容するだけの放射性廃棄物は認めていこう、そう彼らは考えたわけです。

私はドイツの短絡的な脱原発政策より、このようなしたたかなフィンランドの「推進」策のほうを高く評価します。

フィンランドが「オンカロ」の用地選定に乗り出したのは原発稼働と同時期の83年でした。そしてチェルノブイリ以後初めて原発の新設を国会が認めたのもフィンランドが最初でした。

第4に、かつて使用済み核燃料をロシア(当時ソ連)に渡したところ核兵器に転用されたという苦い歴史もあるからです。

そのことがあってフィンランド人は放射性廃棄物を外に持ち出すくらいなら,、国内で最大限安全な場所に保管しようとその時に決意したのです。

しっかりとした核廃棄物の最終処分場を定め、その容量に合わせた原発を容認し、厳重な安全措置を施す、そして国民にそれを周知させていく、このようなフィンランドの原子力政策はわが国にとって学ぶべきことが沢山ありそうです。

■参考文献
「ニューズウィーク」2012年10月30日
「フィンランドの原子力発電開発と原子力政策」 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=14-05-05-02

■※バックエンド. 原子力発電所で、燃料製造・発電所建設・運転などの「フロントエンド事業」に対し、原子炉の廃炉費用や放射性廃棄物の処理、核燃料サイクルにかかわる  事業を「バックエンド事業」と呼んでいます。
参考 http://www.nuketext.org/yasui_backend.html

■※初期の原発であるロビーサ原発は旧ソ連の技術で作られており、使用済み燃料を旧ソ連に返還したところ核兵器に転用されました。

■※冬戦争・第2次世界大戦の勃発から3ヶ月目にあたる1939年11月30日に、旧ソ連がフィンランドに不可侵条約を破って侵入した戦争。フィンランドはこの侵略に英雄的に抵抗し、多くの犠牲を出しながらも、独立を守りました。しかし講和の代償は大きく、産業の中心地であるカレリアの割譲やハンコ半島のソ連軍駐留などの譲歩を支払わざるをえませんでした。
Wikipedia 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%AC%E6%88%A6%E4%BA%89

■写真 フィンランド・オンカロ核処分場。「ニューズウィーク」10月30日号による。

■ 明日明後日は定休日です。月曜日のお越しをお待ちしております。

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コメント

わたくし、「10万年後の安全」は映画館で観ました。

いわゆる「トイレの無いマンション」のトイレの話です。
我が国も同様の構想だけはありますが、いかんせん日本の地層では…

あれっ、震災当日までは「私は必要だと思います!」
と、有名俳優さんを器用したNUMOのCMが流れていましたが…まったく見なくなりましたね。
今こそ重要な案件なんですけど(海外委託も含めて)。

まさか、核燃料サイクルともんじゅ復活させて、夢の高速増殖炉をまだやる気でしょうか。
安全が担保されるのならいいんですが、なにしろトラブル続きに震災。
もんじゅの立地もあやしい。
八方塞がりです。

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

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