« 大飯原発・なぜこんなに「破砕帯の巣」に原発を作ったのか | トップページ | 米兵裁判権問題・外務省公式見解 »

オバマ大統領再選で現実化するTPP

 Dsc_2154_4
オバマ大統領が再選され、TPPが現実のものとなる可能性が濃厚になってきました。

TPPは米国では「オバマの貿易戦略」だとロムニー陣営から批判を浴びてきました。オバマ氏が大統領に再任された以上、米国が遅れてTPPに割って入った最大の理由、すなわち日本の巻き込みを先鋭化させることでしょう。 

こうしたオバマ再選をにらんでか、カトラー米国通商代表部(USTR)代表補が10月18日に来日し、前原国家戦略担当大臣と45分間にわたって会談しています。(読売新聞による)

前原氏は個人的外交プレーを得意とする人です。、内閣官房プレスリリースでは、ただ「前原大臣からは、我が国の経済連携に関する基本的な方針やTPP協定交渉参加に向けた国内での議論の状況等について紹介しました」というだけですが、おそらくはかなり突っ込んだ話になったはずです。

というか、この時期にUSTRの代表補を日本に呼んで話すことなど、TPPの最終的詰め以外にありえません。

一方野田総理は、所信表明演説やJA大会での挨拶などで、TPPと日中韓FTA、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の三本を、「同時並行的」にやるんだと言い始めました。 

この「同時並行的」に行う」という言い方が農業関係者の中であれはなんなんだと論議を呼んでいます。 

日中韓FTAは、年内に交渉に入ることは既に既決のことで、実務者協議も予定されています。 

RCEPは、11月18日からの東アジア首脳会議で交渉開始を宣言することになっています。これら2つの自由貿易協定と、TPPを並べて「同時並行的」と言う以上、野田さんやる気ということなんでしょうな。 

この人、本当に内心何を考えているのか分かりにくいですね。典型的な口跡明瞭、中身不明というタイプ。やるならやるでそうハッキリ言って、農業界全体を敵に回せばいいのです。 

それを「仮に交渉に参加する場合には、守るべきものは守り抜くべく、国益を最大限に実現するために全力を尽くします」、というような何が「国益」なのかを明確にしないような言い方をするからダメなのです。

もし、本気で「国益を守る」決意があるのなら、なにを守るのか明瞭に国民に語るべきです。 

同じJA大会で挨拶した自民党安部総裁は、かなりはっきりとTPPに対して否定的な言い方をしていますから、その明暗が分かれました。(ただし石破幹事長は消極的推進派ですが、総裁を全力で支えると言い切っています。) 

自民党はTPP交渉原則を作って毒素条項に対して明確に反対することを主張しています。私ですらこの原則があるのなら、百歩譲って協議参加もありえるかなと思います。(※)

しかし、交渉原則は示さない、やるのならなにが「国益」にかなうのか、なにがメリットなのか抽象的にしか語れない、それどころか参加するとすらはっきり言わないでは話になりません。

そのくせ外務省に丸投げして「外交交渉事案」として情報を封印してしまいました。まったく悪質この上ないやり口です。

いままでTPPの国民的議論がいまひとつ盛り上がらないのは、推進派がただ「アジアの活力を取り入れる」とか、「平成の開国」だとかわかったようなわからないような一般論ばかり口にして、かんじんなTPPのメリットを提示できないでいるからです。

さて、農業界にも極小派ですがTPP賛成派らしき人たちがいます。大部分が大規模農業を会社型式でやっているアグリビジネスマンの人たちですが、その人たちにしても「TPPで優れた日本農産物を輸出するぞ」というレベルです。(※)

彼らの日本農業は農水省の規制だらけ、減反はナンセンス、という指摘は私の認識と一部重なるのですが、だからと言って日本農業全体が潰れるかもしれない「聖域なき関税自由化」などやられたらたまりません。

「輸出で儲けろ」と言いますが、TPP加盟諸国のたかだか輸入関税ごときと日本農業全体の利益を交換するわけにはいきません

私はこのような農業内TPP賛成派を見ると、つい「そんなに儲けたければひとりでやれ」、というふうに言いたくなります。現在の日本農業の矛盾を、外国に破壊してもらって「改革」しようという根性が歪んでいるのです。

彼らとしても、本来はもっと歯切れよくTPPのこことここがメリットだかと言えれば説得力があるのですが、肝心な中身が分からないので推進派まで「輸出ができるから賛成だ」と言ってます。説得力ゼロです(笑)。

それはさておき、「同時並行的」と言う以上、どうも首相の頭の中には環太平洋-東アジア-ASEANを包括する壮大な自由貿易圏構想でもあるようですが、困ったお人だ。

しかし誰が考えても米国の経済圏ブロック作りであるTPPと、互恵的な利害を大事にしていこうというFTAやEPAが「同時並行」するはずがありません 

やるならどちらかで、「同時並行」などという分裂的な戦略はありえないのです。まぁ、どうせその責任を取る時には間違っても政権にいないのですから、いい気なもんなのかもしれません。 それにしてもあの「脱原発首相」、とんでもないお荷物を残してくれました。

野田首相は未だ「参加に向けた協議」というあいまい戦略で口を濁していますが、オバマ氏の再選でそのやり方はできなくなりました。

おそらく、11月18日からの東アジア首脳会議で、野田首相はオバマ大統領から再び要請があれば、ご祝儀がわりに参加表明する恐れがあります。

民主党を年内に政権の座から引きずり下ろす、TPP潰しの特効薬はこれしかないようです。

■※「週刊ダイヤモンド」11/10号桜井よしこ氏記事中のアグリビジネスマンの言説を参照しました。

■写真 村の道が朝もやで煙っています。

 

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

※自民党TPP交渉原則 

(1)政府が「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対する。
(2)自由貿易の理念に反する自動車などの工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうような投資家・国家訴訟(ISD)条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービスなどは、わが国の特性を踏まえる。

 
■関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/cat22955329/index.html
 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/youtu-1.html 

■TPPについてはカテゴリーTPPに過去ログがありますのでご覧ください。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/cat22955329/index.html 


 

 
 

|

« 大飯原発・なぜこんなに「破砕帯の巣」に原発を作ったのか | トップページ | 米兵裁判権問題・外務省公式見解 »

TPP」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 大飯原発・なぜこんなに「破砕帯の巣」に原発を作ったのか | トップページ | 米兵裁判権問題・外務省公式見解 »