TPP参加を政権公約にした野田首相の思惑 さぁ、日本農業の正念場だ!
●速報! 首相は本日国会の党首討論の席上、16日に解散を明言しました。
(欄外参照)この記事は解散を明言する前日に執筆しました。
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珍しく政局の話をします。報道で伝えられているように、野田首相は「TPP解散」の腹を決めたようです。 (資料1参照)
TPP参加を表明し、そのままこれを政権公約として、原発ゼロと抱き合わせで解散に持ち込むと言われています。
実に老獪な彼らしい選択です。消費税の時に思いましたが、野田首相という人は、輿石幹事長などと違って戦略的発想ができる人です。ただし惜しいことには、肝心な政治理念が欠落していますが。
選挙の争点をTPPとしたことに彼の決断は集約されます。TPPほど、彼と敵対する党内外の勢力にとって攻めづらく、守りにくいテーマはないからです。
野田首相としては、衆院選に敗北することは折り込み済みなはずです。民主党の独自調査でも最悪は二桁という予想が出ており、それで勝てると思っているならよほどの馬鹿です。
だから輿石幹事長のような組織防衛しか念頭にない党内勢力に引きずられて、ここまで解散を先送りにしてきました。(資料2)
結果、「嘘つき」という汚名まで被り、支持率はもう後がない危険ラインに達してしまいました。
解散恐怖症といわれますが、それは1年生議員の話。彼らの大部分は単なる当時の反自民の空気の産物にすぎません。比例区議員に明日はありません。
しかし、現時点で体制を整えるなら民主党には反攻の「資産」はまだ残っています。参議院の比較第1党の地位です。これは来年夏まで確保されています。
ここに目を移すなら、衆参ねじれを利用して反攻をかける余地が残ります。(資料3参照)
今、民主党政権がイニシャチブを握って解散攻勢をかけるなら、自民党ですら全選挙区に候補を擁立しきっておらず、ましてや小沢新党や第3極勢力に至ってはどうやっても準備不足です。
「維新の会」は関西の一部での勝利にとどまるでしょう。小沢新党と石原新党は数人規模になるでしょう。
補正予算をTPP向けで組んで解散という説もあるようですが、むしろ春以降まで解散を引き延ばしたら、TPPを国会討論にかけねばならず、またもや自民党と党内反対派に抵抗されることは目に見えています。
その上、小沢新党は政党助成金を獲得し、第3極各党も準備を整えてしまいます。このように解散を引き延ばすというのは、敵に塩を送るようなものなのです。
したがって首相が「勝てないが、次につなぐことができる次善策を打てるただひとつのチャンス」は今の年末しかないのです。
私は、野田首相ら民主党中枢が、この選挙は勝つための戦いではなく、可能な限り敵を切り崩しすための戦いと位置づけたと考えています。そう考えるなら、年内解散に打って出ることはあながち無謀な選択ではなくなります。
野田首相は、これでふたつの政治的利益を得ることができます。
まず第1に、TPP反対グループとしては、TPPを旗印にされた場合、民主党候補として選挙に出ることは政治的自殺行為となります。 もはや残留はありえません。離党するか、議員バッチをはずすかです。
もし今解散をためらえば、五月雨的に離党し、不信任案可決という最悪の事態になります。ならば今、民主党にとって地獄の釜の蓋を開けるほうがましだということになります。(※)
いっぽう年内解散することにより、首相にとっては山田氏、原口氏、篠原氏など党内反対派が自分から出て行ってくれる、あるいは落選して消滅するという絶好のチャンスが生まれます。
野田首相にとって、前原氏、岡田氏、枝野氏といった首相周辺のいわば「民主党野田派」部分だけか「次の再編の種」として残ればいいのです。これで民主党の宿痾だった「党内ねじれ」が一掃されます。
野田首相らにとって菅氏や鳩山氏は言うに及ばず、現職幹事長の輿石氏すら出ていってくれてかまわないリストに載っていることでしょう。野田首相の読みどおりになれば、彼らの代わりはいくらでもいるからです。
次にふたつめの理由として、TPPは野党が矛先を揃えて与党を攻めにくいテーマなのです。 (資料4)
実はTPPに対しては野党内部にも相当のバラつきがあります。自民党も石破幹事長は消極的賛成論者であり、濃淡はあるにせよ、農村に選挙区を持たない議員のかなりの数は条件付き賛成派でしょう。
党としてみれば、「みんなの党」、「日本維新の会」といった都市型政党は諸手を挙げて賛成です。
となると、野党側は念願叶って解散になってもTPPで足並みが揃わずに、野党同士の批判合戦になる可能性すらあります。
野党勢力は勝つことは確実でしょうが、自民党は先日の鹿児島補選のように大勝しないかもしれません。
そうなると不安定な連合政権を組むこととなり、民主党にとって衆参ねじれを武器にして揺さぶりのチャンスがうかがえます。
これらの要素を考えれば、味方の中の敵を切り、野党を攪乱するためには、TPPというカードは絶好の武器なのです。
さて、このような政治的思惑を持った野田首相によって挑戦状が農業に叩きつけられました。私たちはこれを真正面から受け止めねばなりません。
私たち農業者はこの年末から正月にかけて徹底的に叩かれる覚悟したほうがいいでしょう。おそらくすべてのマスコミが私たち農業者だけが孤立してわがままに反対しているという構図を作り出すはずです。
そして私たち農業者を既得権益にしがみつく守旧派のように描くでしょう。かつての郵政選挙と同じ手法です。私たちは野田戦略のスケープゴートにされるのです。
私たちにとってはTPPが農業問題だけではない、というのは常識になってきていますが、それがどこまで世論の中に浸透しているのかが問われます。
TPPとは、農業、保険、土木、医療、安全基準など、あらゆる分野に対する主権の放棄であることを繰り返し説明していかねばなりません。
また安易に輸入食品などが安くなるという宣伝がなされると思います。米も肉も安くなって、おまけに輸出はしやすくなる万々歳、という歪んだ報道がなされるでしょう。(資料6)
しかし、輸出で得られる利得はほんの一部の企業のわずかな輸出関税だけでしかなく、安さと引き換えに「守るべき国柄」や主権を大量に失うのだということをしっかりと訴えていかねばなりません。
「守るべきものを守る。それが国益なのだ」というあたりまえなことを選挙を通じて農業は訴え続けていかねばなりません。
思ったより早くTPPの天王山が来ました。私たち農業者と日本の風土を愛する人達は、TPPを公約に掲げる民主党を完膚なきまで叩き潰さねばなりません。もうこれ以上民主党に、日本を破壊することを許してはなりりません。
不徹底な勝ち方をすれば、政治はまたしても不安定になり、日本の国益を正面に出した強いTPP交渉ができません。(※)
TPP推進派が壊滅する完勝が求められています。さもないと、私たちには韓国と同じグローバル資本の植民地化の未来が待っています。
グローバル資本に日本を売り渡す彼らに一議席も与えてはなりません。
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■※農村状況
農村一人区の民主党議員の全員がTPP反対ですが、民主党に残ればJAは彼らを絶対に許しません。
JAには前回選挙で、かなりのJAが民主党支持にまわるか、中立化したのですが、その結果がTPPを呼び寄せてしまいました。まさに裏切り以外なにものでもありません。
今回、ひさしぶりにJA全中は全力を挙げて自民党支持に回るはずです。したがって1人区の民主党には一議席も渡らないはずです。
わが選挙区でも既に小沢党はポスターを貼っていますが、民主党現職議員は事務所に野田首相のポスターを貼ることもできず、郡司農水大臣とのツーショット・ポスターでお茶を濁しているありさまです。気の毒ですが、 再選は絶望的でしょう。
■※TPP交渉自体は、国家間交渉のため、いったん開始されれば継続するしかありません。したがって仮に自民党が政権をとっても交渉自体は継続されることになります。問題はその中身なのです。
■資料1 緊迫・解散政局:年内総選挙の意向 早期が得策、首相判断
毎日新聞 2012年11月13日
野田佳彦首相が年内の衆院解散・総選挙に踏み切る意向なのは、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加や、野党が反対している衆院比例定数の削減などを争点に、早期の選挙戦に臨むのが得策との判断がある。日本維新の会など「第三極」の選挙準備が進む前に解散に駆け込みたい思惑もある。自民、公明両党も年内選挙を求めて攻勢を強める構え。政治情勢は解散に向け、緊迫の度合いを増している。
「ウソをついているつもりもないし、ウソをつくつもりもない」
首相は12日の衆院予算委員会で、田村憲久氏(自民)に「(解散しなければ)ウソつきとのそしりを免れなくなるが、それでいいのか」と追及されると、色をなして、こう反論した。
首相が「近いうちに国民に信を問う」と発言したのは8月。それから3カ月以上たち、野党から「ウソつき」批判を浴びている。内閣支持率は10%台後半に落ち込み、「解散時期を引き延ばせば、さらに支持率が落ちかねない」(首相周辺)との危機感が強まり、首相は年内の総選挙に向けて調整に入った。
さらに自公両党が求める年内解散に応じることで選挙後の両党との連携の目を残す狙いもある。次期衆院選で民主党が敗北すれば、自公両党を中心とする政権が誕生する公算が大きいが、参院は自公両党では過半数に達せず「ねじれ状態」は続く。このため民主党が自民党に次ぐ第2党の座を占められれば、影響力を確保できるとの計算があるとみられる。
民主党は「今、選挙をやれば負けは必至」(同党議員)の厳しい環境にあるが、第2党を確保するために打って出る形を作りたい首相が腐心しているのが争点づくりだ。首相官邸幹部によると、首相は自民党との違いを鮮明にできる(1)TPP交渉への参加(2)衆院比例定数の40削減(3)2030年代の原発ゼロ方針−−を打ち出して選挙戦に臨みたい意向だという。
ただ、民主党内には輿石東幹事長ら解散時期の先送りを求める意見が根強くある。
輿石氏は12日の記者会見で、首相から11日の会談で年内解散を伝えられたとの報道を、「そんなことはない」と否定。さらに、衆院の「1票の格差」を是正するための0増5減と比例定数40削減は分離せず、一体の法案にする考えを強調した。
■資料2 民主、年内解散反対「党の総意」首相は断行意向
読売新聞 11月13日
民主党は13日、国会内で常任幹事会を開き、出席者から、年内の衆院解散を目指す野田首相の動きに対する批判や反発が続出した。
幹事会では、年内解散への反対論のほか、首相退陣を求める声が上がり、輿石幹事長が首相に対し、「党の総意」として解散に反対する考えを伝えることを決定した。輿石氏はこの後、国会内で首相と会談し、これを報告した。これに対し、首相は年内解散を断行する考えを崩していない。民主党内の攻防は緊迫している。
首相はこれに先立つ衆院予算委員会で、8月の自民、公明両党との3党首会談で「近いうちに国民に信を問う」と約束したことについて、「『近いうちに』と言った意味は重たいと受け止めているので、近いうちに解散するということだ」と、年内解散の意思が固いことを示した。
■資料4 首相 TPP推進を政権公約に
NHK 11月10日
野田総理大臣は福岡市で記者団に対し、太平洋を囲む国々で関税の撤廃などを進めるTPP=環太平洋パートナーシップ協定について、交渉参加を表明する時期は固めていないとしたうえで、次の衆議院選挙の民主党の政権公約にTPPを推進していく方針を盛り込む考えを示しました。
この中で野田総理大臣は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定について、記者団が、「今月後半に開かれるASEAN=東南アジア諸国連合の首脳会議で、交渉参加を表明する考えはあるか」と質問したのに対し、「特定の時期に表明する方針を固めているということはない。交渉参加に向けて協議をしているのが今の状況だ」と述べました。
そのうえで、野田総理大臣は「政府・与党の考えは、TPPも、日本・中国・韓国の3か国によるFTA=自由貿易協定も、東アジア地域での包括的な経済連携を目指すRCEPも同時に追求する姿勢であり、マニフェストに書くことになる。自民党との対立軸になるかどうかは分からないが、われわれの考え方は、国民に示す必要はある」と述べ、次の衆議院選挙の民主党の政権公約に、TPPを推進していく方針を盛り込む考えを示しました。
また、野田総理大臣は、衆議院の解散について、「特定の時期は言わない」と述べ、時期は明示しない考えを改めて示しました。
石破幹事長“民主党の統一方針になるのか”
自民党の石破幹事長は名古屋市で記者団に対し、「TPPは、衆議院選挙のテーマになりうるものだが、民主党内の議論が全くまとまっておらず、マニフェストに掲げることが民主党の統一した方針になるのかどうか、議論の推移を見なければ分からない。自民党は、例外なき関税の撤廃には反対しており、野田総理大臣は、TPPの交渉に参加するにあたって、何をどのように守るのか説明する義務がある」と述べました。
山口代表“論争するには熟度が足りない”
公明党の山口代表は、東京都内で記者団に対「野田総理大臣が課題設定をするのであれば、われわれもしっかり議論していきたいが、論争するにはあまりにも熟度が足りない気がする。政府側が情報をしっかりと出し、国民的な議論の環境を作るという前提がないと、いい議論にならない。TPPだけではなく、国益を最大限に満たす貿易戦略全体を本当の争点にすべきだ」と述べました。
橋下市長“野田総理大臣に賛成”
日本維新の会を率いる大阪市の橋下市長は、遊説先の広島市内で記者団に対し、「すばらしいことだと思う。野田総理大臣も政界再編を考えながら政策で政治家が集まる『センターピン』を探っているのではないか。TPPの交渉参加は重要な経済政策の『センターピン』で、自由貿易圏の拡大を巡って政治家のグループは分かれると思う。私は野田総理大臣に賛成だ」と述べました。
■資料5 首相、年内解散を検討…TPP参加表明の直後に
読売新聞 11月9日(金)3時6分配信
政局の焦点である衆院解散・総選挙の時期を巡り、野田首相が環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を表明し、その直後に衆院解散に踏み切ることを検討していることが8日、わかった。
複数の首相周辺や民主党幹部が明らかにした。11月下旬から12月中旬に解散し、投開票日は12月中か年明けの1月が有力だ。首相は、TPP参加に慎重な自民党との違いを際立たせ、衆院選の対立軸にできると判断しており、早ければ月内の参加表明を探っている。TPP参加に反対する民主党議員の集団離党につながる可能性があり、政局は一気に緊迫の度合いを増しそうだ。
首相が、解散を判断する環境整備に挙げる赤字国債発行を可能とする特例公債法案は、21日にも参院で可決、成立する見通しとなった。首相は同法案の成立後、TPP交渉参加表明と解散の時期について最終判断するとみられる。
野田佳彦首相は14日午後の党首討論で、自民党の安倍晋三総裁に対し、「次期通常国会で(衆院の)定数削減を必ずやると決断してもらえるなら、16日に解散してもいい」と表明した。この後、公明党の山口那津男代表に対しても、同様に呼び掛けた。自公両党の対応が焦点となる。
首相が国会答弁で特定の解散日に言及するのは異例。16日に解散した場合、11月27日公示―12月9日投開票か、12月4日公示―16日投開票の日程となる見通し。
首相は、赤字国債発行に必要な特例公債法案の16日の成立と、「身を切る改革」として定数削減の実施を要求。実施するまでの間の国会議員歳費の2割削減も提起した。
安倍氏は、首相が8月に自民党の谷垣禎一前総裁に確約した「近いうちの解散」を果たすよう要求。これに対し、首相は「『近いうちに国民に信を問う』と言ったことにうそはなかった」と強調するとともに、衆院選の「1票の格差」是正と定数削減の実現を要求。安倍氏は、定数削減に関し「私と首相で決めていいのか。そんなはずはない」と述べた。
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コメント
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野田さんもようやく「解散時期」を明言しましたね。
TPP対応の意見集約(戦略)出来たのかな?
3年前60年間続いた金属疲労?政治疲労?した自民党政権から、民主党に政権が移りました。
野党時代に言っていた事と実際に政権担当した時のギャップに一番驚いたのは民主党自身だったでしょう。
騙した方が悪いのか騙された方が悪いのか?
政治家には騙され損だという事が国民皆が懲りてくれたらいいのですけどね。
結局の所その付けは国民負担になるのですから・・・
官僚は喜んでいるかも??
投稿: 北海道 | 2012年11月14日 (水) 18時44分
TPPは正念場で、TPP参加反対候補者の当選を願っています。
しかしおそらく、「維新の会」と自民党を合わせて、選挙後に憲法改憲派が2/3を大幅に超えると思います。改憲派の安倍氏が改憲を棚上げにして「喫緊の課題」に専念できるのか不安です。
改憲論争に明け暮れて、失われる空白期間をこれ以上継続しないでもらいたいです。
それ以前に、親米派の安倍氏によって改選後も自民党内でTPP論争がズルズルひきずられそうですが・・・。
投稿: 南の島 | 2012年11月18日 (日) 20時55分
TPP参加は断固反対です!日本維新の会が政権取ったら日本の農業は終わりです!
投稿: ひろゆき | 2012年11月22日 (木) 18時32分