• S-009_20240906024801
  • S-017_20240904054601
  • 20240906-004039
  • S2-003_20240904055201
  • S3-037
  • 20240901-044354
  • 20240901-044623
  • 20240901-044830
  • 20240901-051549
  • 20240901-052008

« 農業には単なる農産物製造部門だけではない大事な仕事がある | トップページ | 第2、第3の笹子トンネル崩落事故を起こさないために »

2012年12月 4日 (火)

笹子トンネル崩落事故 破断界に差しかかった70年代製造の公共インフラと原発

Dsc_2660
痛ましい大事故が起きました。

「2日午前8時ごろ、山梨県大月市笹子(ささご)町の中央自動車道・笹子トンネル(全長約4.7キロ)内で、コンクリート製の天井板が110メートルにわたり崩落し、少なくとも車3台が巻き込まれた。県警や消防によると、現場で複数の遺体を確認。3台には少なくとも6人が取り残されていたとみられ、救出作業を急いでいる。もあり、県警は業務上過失傷害容疑などで調べる。」(毎日新聞12月2日 資料1参照) 

上の写真にあるように、笹子トンネルで110メートルにわたり、天井部分の重さ1トン超の天井板が200数十枚崩落し、3台の車を押しつぶし 多数の死者を出しました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。 

この事故の全容はいまだ詳細がわかっていませんが、私は福島第1原発事故と並ぶような「時代の曲がり角」を示す事故のように感じられます。 

さて現時点で原因と考えられているのは、天井金具の何らかの原因による破損です。(下図参照 毎日新聞より引用) 

Dsc_2659

写真でも見られるように、V字型に天井板は崩落しており、吊り金具が天井から一列に垂れていないことから、根元から脱落したと見られます。(上図右側・吊り金具最上部) 

この吊り金具は長さが5メートルあり、この9月に実施された定期点検の際には、下部の天井板との部分は打音検査といってハンマーで叩いて音で確認していたものが、この上部取り付け部分は目視点検で済まされていました。 

この吊り天井型式は換気ダクトのためにあり、現在はジェットファン方式に全面的に切り替わっています。(ただし新東名富士川トンネルの一部を除く。) 

現在これと同じ旧式な取り付け方のトンネルは全国で49カ所あります。いずれも大部分は完成から20年から40年たったものです。(下図参照)

Dsc_2644_3
          (TBS「ひるおび」より参考のために引用いたしました。)

この吊り天井方式はこの笹子トンネルが完成した77年当時には、優秀な大型ジェットファンがなかったために、このような複雑なダクトの取り付け方になっています。  

現在はトンネル全体を大きなダクトに見立てて、自動車の侵入方向からジェットファンで空気を送り込んで強制換気する方式となっています。 

吊り金具式の問題点は、金具が振動や金属疲労、漏水によって腐食しやすいことです。この笹子トンネルは、日本土木史に残る難工事で、膨大な湧水と破砕帯との戦いでした。 

ですから、デリケートな破砕帯は35年間常に交通の振動を受け続け、恒常的にトンネル本体に対して圧力やねじれを与えて多くのヒビを作っていたことは想像に難くありません。 

そこから湧水が漏れ出し、常に吊り金具を侵食していた可能性が高いと思われます。そしてそれが遂に完成から35年後の今、破断界を迎えて重大事故につながりました。

ひとことで言うなら、高速道路インフラの老朽化です。(資料3参照)

先月11月7日に行われたNEXCO東日本・中日本・西日本各社による「高速道路資産の長期保全、及び更新のあり方に関する技術検討委員会」という長たらしい名前の検討会でもこの老朽化問題は検討されており、1年後に答申をまとめる予定を出したばかりのことでした。

現在我が国の高速道路網は建設後30年以上経過するものが4割にも登り、同検討会資料によれば、2019年にはとうとう5割を超えるとされています。

つまり、いつ何時このような天井崩落のような今まで「あり得ない」とされてきた重大事故が起きるかわからないということです。

日本の公共インフラは高度成長期とその後の時期に多くが作られました。当時の技術水準は、この吊り天井方式にも伺えるように、いくつもの技術的限界を持っています。

そしてそれは常にメンテナンスし続けたとしても、50年間たてば大規模な改修工事が必要だと言われています。

特に山間部を通るトンネルや、首都高のような非常に交通量が多い道路、そして大震災にさらされた地域の高速道路などがそうです。

首都高は、東京オリンピックに合わせて作られたために30年以上経過する老朽化した部分が46%も占め、2009年の調査で補修が必要な箇所は実に9万6600カ所に達しました。

もし、予想される首都直下型地震が起きた場合、首都高は巨大な墓場と化すことでしょう。

対策としては鉄環を回すなどが上げられていますが、国が改修工事に対して十分な予算措置をとらないまま多くが放置されています。

この公共インフラの整備・改修事業を「土建国家への逆戻り」として切り捨て続け、「コンクリートから人へ」というバラ撒き政策に固執し続けた民主党政府は強く批判されるべきです。

前原氏などは、「公共事業を32%減らした。自民党政権ではできなかったことだ」と、公共インフラをボロボロにしたことを手柄顔して語っているありさまです。

今後高度成長期に建設した公共インフラは続々と耐久限界を迎えていきます。振動、腐食、金金属疲労などで今後50年で190兆円の老朽化対策費が必要だと言われています。

原発事故と同じく、「起きるはずがない」という安全神話に浸って、着実な整備・改修を怠ったツケが回ってきました。

もはや言い訳はききません。早急に全国の公共インフラを点検し、その補修強化のための予算を大規模に組むべきです。

なお、国交省はNEXCO中日本と共同調査をすると発表しました。規制する側とされる側の共同調査ということになります。

このような重大事故を引き起しながら、茶番を堂々してみせる霞が関官僚はいい度胸です。

この笹子トンネル崩落事故は、福島第1原発同様に時代の深部でなにか大きなことが起きていることを予感させるものでした。

私たちは、今まで「安全であたりまえだ」と思っていた原発のようなエネルギー・インフラや公共インフラが、実は破断界に差しかかっていたことを自覚的せねばなりません。

70年代に多く作られた福島第1原発型BWRは、その耐久年限の30年間を過ぎて今や危険水域の中にあることが分かりました。

また、同じ時期に作られた多くの公共インフラも今、大改修をしないと重大事故を引き起こすことが分かりました。このことを真正面から見つめる時です。

これは新たな総選挙の争点となすべきです。

              ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 中央道トンネル崩落:複数遺体確認 少なくとも6人現場に
毎日新聞 2012年12月02日
 

 2日午前8時ごろ、山梨県大月市笹子(ささご)町の中央自動車道・笹子トンネル(全長約4.7キロ)内で、コンクリート製の天井板が約110メートルにわたり崩落し、車3台が巻き込まれた。県警などによると、1台から複数の遺体を確認。もう1台から1人を救出したが死亡が確認された。3台には少なくとも計6人が取り残されていたとみられ、救出作業を急いでいる。中日本高速道路は設備の老朽化で事故が起きた可能性を認めており、県警は業務上過失致死傷容疑などで調べる。 

 県警や東山梨消防本部によると、3台は多摩ナンバーのレンタカーのワゴン車、トラック、乗用車。天井板の下敷きになり、火災も一時発生した。複数の遺体が見つかったワゴン車から自力で脱出した銀行員の女性(28)=神奈川県三浦市=は「6人で乗っていた」と話したという。死亡した男性はトラックから見つかり、山梨県甲斐市の食品卸売会社の男性運転手(50)とみられる。脱出した女性と甲府市の無職女性(37)がやけどなどで重軽傷。 

 中日本高速によると、現場は上り線の大月市側出入り口から1.7キロ地点。天井板(幅5メートル、奥行き1.2メートル、厚さ8〜9センチ、重さ約1.2〜1.4トン)の上の空間は換気のためのダクトになっており、ダクトを仕切る隔壁と合わせ計約270枚が崩落した。 

 天井板は左右1枚ずつが中央にある鉄板で支えられ、この鉄板はトンネル中央の最上部から伸びるつり金具(長さ5.3メートル)で1.2メートル間隔で固定されていた。同社は調査委員会を設置予定で、名古屋市の本社で記者会見した同社幹部は設備の老朽化について「今後原因を調査するが、そうした可能性もあるかもしれない」と述べた。

 点検は年1回の定期点検と5〜10年ごとの詳細点検があり、最近では今年9月に詳細点検をしたが「異常なし」だったという。だがこれまでの点検で、天井板についてはハンマーでたたいて調べる打音検査をしてきたが、トンネル最上部にボルトで固定してあるつり金具の上部は作業員による目視しかしてこなかった。同社幹部は「高さがあり双眼鏡による目視で十分だと思った」と説明した。 

 同社の金子剛一(たけかず)社長は会見で「大事故を起こし、大変申し訳ない」と陳謝した。 

 笹子トンネルは1977年開通で、大月市と甲州市にまたがる。上下線が別々のトンネルで片側2車線。 

■資料2 トンネル天井のボルト脱落 類似トンネル緊急点検
朝日新聞デジタル 12月3日 

中央自動車道上り線の笹子トンネル(山梨県)の天井崩落事故で、中日本高速道路は3日、崩落した天井板をつる金具をトンネル上部のコンクリートに固定するボルトが崩落現場付近で抜け落ちていたと公表した。また、現場を視察した羽田雄一郎・国土交通相は、同様の構造になっている全国のトンネル49本を緊急点検するよう、高速道路会社などに求める考えを示した。

 国交省によると、笹子トンネルと同様のつり天井は高速道路で40本、国道で9本あるという。緊急点検では、金づちなどでたたいた音で異常を確認する「打音検査」を行う。また、国と中日本高速で調査委員会も近く立ち上げる。
 中日本高速はこれまで、ボルト部分について、腐食などがないかを目視で確認してきた。3日から始めた緊急点検では打音検査に切り替えた。


 笹子トンネルは、長さ約5.3メートルのつり金具で天井板をつり下げていた。金具には鋼材が取り付けられ、ボルト(長さ230ミリ、直径16ミリ)でトンネル最上部のコンクリートに打ち込まれており、接着剤で固定してあるという。崩落現場では、複数のボルトがコンクリートから抜け落ちていたという。

■資料3 中央道トンネル崩落 後手に回った対応
◇老朽化対策、先月から 「経年劣化」の指摘も−−高速3社

毎日新聞 2012年12月03日 東京朝刊

天井板の崩落事故が発生した山梨県の中央自動車道・笹子トンネルは、供用開始から35年が経過しており、中日本高速道路など高速3社は先月、道路全般の老朽化対策について検討を始めたばかりだった。専門家からは経年劣化の可能性が指摘されるとともに、点検方法の見直しや早期の原因究明を求める声が上がった。

 中日本高速道路によると、笹子トンネルは中央道の起点・高井戸インターチェンジ(東京都杉並区)から82・7キロの地点にあり、全長4784メートルで77年12月20日開通。崩落した天井板はプレキャストコンクリート(PC)板と呼ばれ、板1枚は幅5メートル、奥行き1・2メートル、厚さ8〜9センチ、重さ約1・2〜1・4トン。これを左右に1枚ずつ並べ、両端はトンネルの壁に固定し、中央部分はトンネル最上部からつり金具で固定していた。

 つり金具は板の奥行きと同じ1・2メートル間隔で設けられ、金具と金具の間には隔壁がある。隔壁は天井の上の空間を左右に分け、片方はトンネル内の車の排ガスを換気機を使って排出する排気用、もう片方は外部の新鮮な空気を取り入れる送気用として利用しており、これは「横流(おうりゅう)換気方式」と呼ばれる。

 このトンネルの天井が約130メートルにわたり崩壊。つり金具部分も落ちる一方、天井板の両端はトンネルに固定されたままで、V字形になった。施工は76年8月から77年9月に大成建設と大林組の共同企業体が行い、点検は中日本高速グループの中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京(東京都新宿区)が担当していた。

 同社によると、天井の点検は技術者の目視と専用のハンマーを使った打音で行われ、水門直仁・経営企画課長は「技術者はたたいた時の反発や音で劣化の有無についてある程度目安はつく。一番信頼性が高い方法で、他のトンネルや業者でも同様だ」と説明した。

 一方、近年は天井がなく、ジェットファンや車の流れでトンネルの出入り口で換気する「縦流(じゅうりゅう)換気方式」が主流とされる。横流方式には構造物が多くコストがかかる一方、縦流方式は安価なため普及したという。

 中日本高速は「トンネルの更新計画はなかったが、経済性や、天井板があると圧迫感があるので縦流方式の方が好ましいと考えていた。でも工事には長期間の通行止めが必要なので、簡単ではない」と説明した。

« 農業には単なる農産物製造部門だけではない大事な仕事がある | トップページ | 第2、第3の笹子トンネル崩落事故を起こさないために »

公共インフラの危機」カテゴリの記事

コメント

痛ましい事故でした。

私がよく利用する月山トンネル(81年開通)も同じ工法構造です。数年前に全面リニューアル工事をしましたが、なにしろ大変な地滑り地帯。
他人事ではありません。

現在問題になっているトンネルや橋梁の老朽化問題、トンネルの点検体制はどうなっているのか…。
橋に関しては、3年ほど前にNHKスペシャルで山形県庁の土木課係長の取り組みが特集されていましたが、年寄り上司の許可がなかなか出ない。
「こんなに錆が出る前に補修しておけば、まだまだ使えたのに…」
一方で高度成長時代の建築は、とにかく鉄材が不足していたので、極力節約する設計が当たり前に成されていたのが、交通量増加と車両の大型化に対応できない。→トラス切損や路面に穴など発生。
「補修」だと国から補助が一部しか出ないが、隣に架け換えれば9割出るような制度にも問題があります。

上下水道なども含めて、我が国の公共インフラは危機的状況です。
たった今、管理人さんの近所の鹿行大橋崩落の映像がフジテレビで出ていました。
我が国は地震大国であることを、改めて考えさせられます。

山陽新幹線トンネル事故コンクリ崩落の時点で、もっと重く考えて方向転換できていればとも思います。


1980年頃、経済停滞のアメリカでは老朽高速道路の高架や橋の落下が相次ぎました。
そういえば、人為的原因とメカニカルな問題とされていますが、スリーマイル事故は1979年でしたね。
しかもそれ以降新設無し。
何か今の日本と似ていませんか?

原発も同じ。何かが有ってからでは遅い!
しかし、あの枝野大臣にだけは「今までの電力料金が安すぎた」なんて言われたくない。今更ふざけんな!
「脱官僚、政治主導」?
笑わせんな。民主党。

先週のだんご侍さんへのアンサーになりますが、見ておられましたら…。

自民党政権時代の見切り発車の原発推進は、当然ながら批判対象となります。
アイゼンハワーの「核の平和利用」がスタートで、推進した中曽根康広はまだ自民党では無い時代ですね。
そして、推進派というか米国製原子炉を誘致したのは、新聞によるプロパガンダを含めて、読売のナベツネさんです。

この点から前安倍政権までの自民党批判は真っ当でしょう。

しかし、政権交代後の鳩山由紀夫首相が、COPで何を言っていたか覚えていますか?

「原子力発電を大幅に増加することで、CO2の25%削減(1990比)」
ですよ。

過去の自民の政策を踏み台として利用し、美味しいところだけ持って行こうというだけだったのじゃありませんか?

「過去の自民の政策を踏み台として利用し、美味しいところだけ持って行こうというだけだったのじゃありませんか?」

みんなそうです。

国民も。

「コンクリートから人へ」
あたりはいいですね。
そりゃそうだとどっかの党を支持した人多いでしょう。


「金は無いけど安全にしてもらわないと困る。」

「渋滞だらけの高速道路に通行料払えるか」

「大人数の所だけ便利な道路造って。自分たちだって税金払ってるんだ」


個人でなく、会社組織相手にするとスーパーマンみたいに思う人って多いんですよ。

コンクリートなんて一生持ちません。日本人の平均寿命の方が長いですよ。
せっかくコンクリート長持ちさせるいい工法も開発されてても、金無いんで不採用。

どうなる事やら。

あいあいさん。

>みんなそうです。
>国民も。

言ってる意味がわかりません。
私も日本国民で、「みんな」の内のものですが、
民主の薔薇色マニフェストや、他の新興政党を支持したことはありません。
3年前の選挙の時に、民主をハナで笑っていた人は相当いるのですが、「風」で浮動票が一気に流れた結果があれです。

勝手に決めつけないで下さい。

>言ってる意味がわかりません。


判っていない様ですね。

お恥ずかしい。字を間違っていました。

「解る」でしたね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 農業には単なる農産物製造部門だけではない大事な仕事がある | トップページ | 第2、第3の笹子トンネル崩落事故を起こさないために »