東通原発「活断層」断定は、六ヶ所村再処理施設ヘドミノするか
こと次第では単にひとつの原発の再稼働だけにとどまらず、わが国の原子力政策の根本を揺るがしかねないことが露呈しつつあります。
きっかけは青森県の東北電力・東通原発におけるF-3、F-9断層が活断層であるかの地層調査のことでした。
これは調査団のほぼ一致した見解として、敦賀原発と並んで「活断層の可能性が高い」とし、原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理も14日に、「過去に繰り返し(断層活動が)起こっている」と述べています。
この2断層について、調査団は東北電力の主張であった「膨潤(ぼうじゅん)」(※)説を完全に否定し、小規模な断層「s−14」「s−19」で、地層が膨らんだだけでなく、大きくずれている部分を確認しました。
「膨潤だけでは、つじつまが合わない」(調査団・金田平太郎・千葉大准教授)ために、活断層だとほぼ断定されたようです。
したがって、この2断層が調査団によって、「10万年以降に動いた」とされた以上、原発の耐震設計審査指針で12万〜13万年前以降に活動したものを「考慮すべき活断層」と定義している以上、再稼働停止→廃炉の運命にあるのは明白です。
さてこれでお終いになれば、敦賀原発に継ぐ2番目の再稼働停止原発となる「だけ」なのですが、問題はここからが重大になってきました。
ひとつはどうもこの東通原発の「活断層」とほぼ認定されたF−3断層は、北側に隣接する東電の敷地にも延伸しており、この断層についても東電は東北電力と同様に「膨潤である」と説明してきましたが、これが覆る可能性か高まりました。
次に、さらに大きな問題としては、この東通原発の沖には「大陸棚外縁層」と呼ばれる延長84キロにも及ぶ海底断層が存在し、この断層はなんと六ヶ所村の使用済み核燃料再処理施設の直下に伸びている可能性が高まったからです。
かつての六ヶ所村再処理工場)の安全審査では、当時の原子力安全委員会の作業部会で、委員の一人から「(耐震設計上考慮すべき)12万〜13万年前以降の活動性を否定できない」と指摘されています。
また、この断層から枝分かれした別の断層が「再処理工場の直下に延びている」と指摘する専門家もいました。
改めて、この六ヶ所村再処理施設の活断層問題がクロースアップされたわけて、もはや下北半島全体の徹底した地層調査は避けて通れないでしょう。
その調査の結果次第では、先日建設再開したばかりの大間原発も含めて、下北半島すべての原発の再稼働停止→廃炉が現実の問題となり、それにとどまらず核燃料サイクルの要である六ヶ所村再処理施設自体の稼働すらもが不可能となる最悪事態も予想されます。
その場合、「核のゴミ」=使用済み核燃料の処分問題は完全なデッドロックに乗り上げることになります。
個別原発の再稼働問題もさることながら、この再処理の中心的施設である六ヶ所村がもしダメだったとすると、もはや日本の原子力政策は根底から考え直さねばならなくなります。
※膨潤・膨潤とは、岩盤が砕けた弱い部分に地下水が浸入し、地層全体が膨れ上がって、変形を起こす現象のこと。
■写真 早朝の湖。対岸に霞んで筑波山がみえますか。
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図 河北新報より
■青森県下北半島にある東北電力東通原発(青森県)で、複数の断層を調べていた原子力規制委員会の調査団が14日、「活断層の可能性が高い」との見解でほぼ一致した。一部の断層は隣接する東京電力東通原発(2基)の敷地にまで延びており、影響が拡大しそうだ。さらに半島沖には、海底断層「大陸棚外縁断層」(延長84キロ)がある。日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)など、核燃料サイクル施設全体の稼働に影響が及ぶ可能性もある。
「過去に繰り返し(断層活動が)起こっている」。原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理は14日、こう語り、東北電力東通原発の敷地を縦断する比較的規模の大きな「F−3」「F−9」の2断層について、10万年前以降に動いた活断層の可能性が高いとの認識を示した。今後も動く可能性があるという。
東北電は、1号機の設置許可を国に提出した96年以降、聞き慣れない「膨潤(ぼうじゅん)」という用語を使い、活断層の存在を否定し続けてきた。膨潤とは、岩盤が砕けた弱い部分に地下水が浸入し、地層全体が膨れ上がって、変形を起こす現象を意味する。
しかし、調査団が13、14の両日に地層を見た結果、小規模な断層「s−14」「s−19」で、地層が膨らんだだけでなく、大きくずれている部分を確認した。「膨潤だけでは、つじつまが合わない」と金田平太郎・千葉大准教授は指摘した。
島崎氏は「F−3」「F−9」は小規模断層付近にあり、これらの動きによって小規模断層がずれた、と考えるのが合理的に説明がつくと判断。調査団は動いた時期について、周辺の地層分析の結果、「10万年前以降」と推定した。原発の耐震設計審査指針では「12万〜13万年前以降」に活動したものを考慮すべき活断層と定義しており、2断層は合致する。島崎氏は20日の評価会合で、メンバーの見解を最終調整する予定だ。
一方、F−3は北側に隣接する東電の敷地にも延伸する。東電も東北電と足並みをそろえ、「膨潤」との論理を使ってきた。「(両社敷地内の断層の性質は)基本的に同じとの疑いだ」。東電の原発への影響を聞かれた島崎氏は述べた。原発の設置許可申請書の前提だった論理が覆り、東北電だけでなく、東電にも「活断層ドミノ」が拡大する可能性がある。
◇下北半島の断層、再評価も
原子力施設が集中立地する下北半島には、他にも専門家が活動性を指摘する断層がある。事業者はいずれも活動性を否定し、施設の耐震設計で考慮していない。しかし、規制委の調査団が東北電力の評価を事実上否定し、これらの断層も評価が見直される可能性が高まっている。
最も長いのは、下北半島沖を南北に走る海底断層「大陸棚外縁断層」(延長84キロ)だ。マグニチュード(M)8級の巨大地震を引き起こすとされる。使用済み核燃料再処理工場(同県六ケ所村)の安全審査では、国の原子力安全委員会(当時)の作業部会で、委員の一人が「(耐震設計上考慮すべき)12万〜13万年前以降の活動性を否定できない」と指摘。この断層から枝分かれした別の断層が「再処理工場の直下に延びている」と指摘する専門家もいる。再処理工場を所有する日本原燃、東北電力などは今年11月、共同でこの断層の再調査に着手した。
東日本大震災の影響で中断していた建設工事を今年10月に再開したJパワー(電源開発)の大間原発(同県大間町)でも、周辺海域の海底に延長数十キロの活断層があるという指摘が、08年の安全委の部会で出た。当時の委員の一人は安全審査のやり直しを求めた。
こうした背景もあり、調査団の佐藤比呂志・東京大教授は「下北半島の地殻構造の調査はもっとやるべきだ」と訴えた。
■大陸棚外縁断層:六ケ所・東通東方沖の海底断層、原燃と東北電が共同で調査−−年度内着手 /青森
毎日新聞 2012年10月30日 地方版
使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)や東通原発(東通村)の東方沖にある海底断層「大陸棚外縁断層」について、日本原燃と東北電力の両社が共同で海上音波探査を実施することになった。原燃の川井吉彦社長が29日の定例記者会見で明らかにした。来月中にも詳細な計画をまとめ、年度内に着手する見通しだ。
原燃は07年11月にも同断層の南側部分にあたる南北36キロ、沖合約18キロの海域で探査を実施。断層自体は「考慮すべき活断層でない」とした一方、より南側の三沢市沖にある「F−d断層」(長さ6キロ)を新たに活断層と認定した。今回の調査で新たに活断層が判明すれば、再処理工場の操業開始や東通原発の再稼働に影響が及ぶ可能性もある。
大陸棚外縁断層は、下北半島東方沖から津軽海峡にかけ南北約100キロにわたる海底断層。活動すればマグニチュード(M)8クラスの大地震を引き起こすとされる。原燃や東北電は、再処理工場などの耐震安全性評価で「(評価対象となる)12万〜13万年前以降に動いた形跡はない」と活動性を否定。審査に当たった経済産業省原子力安全・保安院(当時)や原子力安全委員会(同)も追認した。
しかし、原子力安全委の作業部会では、委員の池田安隆・東京大准教授が「それ以降における活動を否定することはできない」と述べ、活断層として考慮すべきだと指摘していた。一方、東洋大の渡辺満久教授らの研究グループは、再処理工場直下に活断層があり、大陸棚外縁断層とつながっていると主張している。
■下北半島沖の断層調査 日本原燃と東北電力
2012.10.29 13:34
日本原燃の川井吉彦社長は29日、青森市内での記者会見で、青森県の下北半島の太平洋沖にある「大陸棚外縁断層」の地質構造などを調べる音波探査を、東北電力と共同で年度内に実施することを明らかにした。
下北半島の太平洋側に位置する六ケ所村には日本原燃の使用済み核燃料再処理工場が、東通村には東北電の東通原発がある。
日本原燃は複数回、音波探査を行い、2010年12月には原子力安全委員会から、再処理工場施設の耐震設計に影響を与える活断層ではないとの評価を得ている。
ただ、評価の中で「地下深部の地質構造などについて新たな知見の継続的な収集に努めること」とされたため、音波探査の自主的な実施を決めた。従来より調べる範囲と深さを拡大し、精度を上げるという。
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国会で先送りされてきた、原子力規制委員会の国会同意人事の手続きがどうなるかが、最初の鍵でしょう。まずは自民党の対応が試されます。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1704D_X11C12A2PP8000/
投稿: 南の島 | 2012年12月18日 (火) 10時19分