石が流れ、葉が沈む 東国原氏当選、山田正彦氏落選の明暗について
先日の衆院選は、口蹄疫に関わった政治家たちに皮肉な「審判」を下しました。
東国原氏が「勝ち組」として、連日テレビに出て浮かれ騒いでいるのに対して、TPPに反対の筋を守ったが故に政権党を離党した山田正彦氏は「負け犬」として一顧だにされません。
しかし、この浮かれ男に冷や水を浴びせかけるように、集団訴訟がなされました。原告は、口蹄疫で損害を被った宮崎県現地を中心とする43人の畜産農家です。(欄外参照)
さて、宮崎口蹄疫事件に対する対応の失敗はいくつかあります。その最初にして、最大のものは、県が初動において自らの力で抑えこむことができなかったことです。
初発が3月末であったにもかかわらず、初発の農家からの再三に渡る早く検査結果を出してほしいとの訴えを無視し、発生動向調査(サーベイランス)を怠ったのは県でした。
あの2010年4月16日から20日の確定までの期間に、なぜ早く綿密なサーベイランスをしなかったのでしょうか。
サーベイランスは県の権限内にあり、あの時に初動で抑えこんでいたのなら、あのような21万1608頭の殺処分といった悲劇を見ることはなかったはずです。
そして、川南町の県畜産試験場での豚の感染による感染爆発といった事態が、それに続きます。畜産指導機関が感染ハブになるという前代未聞の不祥事を引き起こしたのは、県です。
5月初旬の時点で、既に宮崎県家保(家畜保健衛生所)は殺処分作業の限界を早くも迎えており、まったく収拾不可能な状況に陥っていました。一般県職員すら動員している有り様でも追いつかなかったのです。
そしてなにより、その司令部たる県当局が混乱の極にありました。そしてその混乱の渦の中心は、他ならぬ東国原県知事自身でした。
一番この口蹄疫初動の緊急性をわかっていないのは、他ならぬ知事自身だったのです。
当時、彼は完全に逆上の極みにありました。そして彼が考えたのは、「自分は悪くない」という責任逃れでした。
そして彼は、疫学的知識がまったく欠落しているにもかかわらず場当たり的に指示を出しまくり、発生現場にマスコミの取材陣を引き連れてテレビに出てはしゃべりまくるというのが彼の作法でした。
この作法の悪さは、かの菅首相と酷似しています。危機に当たって、ポピュリスト政治家は似てくるものなのでしょうか。
あたりまえですが、このような不特定多数で感染症の現場に赴くのは非常識も極まれりです。
この知事のパーフォーマンスに対して、私が知るある家保獣医は吐き捨てるように、「馬鹿か、あいつ。県庁でおとなしくしていろ」と言っていたことを思い出します。
そんなことを思いついたのも、なんのことはない、彼が県民向けに「ちゃんと立派に仕事をしております」という言い訳を作りたかったからだけのことなのです。
そしてもうひとつ「仕事をしている」という証拠に、山田氏が政府現地対策本部長(副大臣・後に大臣)として現地入りした直後から、国に対して家畜の所有権を言いたてて補償問題で無駄な時間を費やしました。
この宮崎県庁で費やされた国対県の不毛な「交渉」は実に数週間にも及び、その間、指揮系統は麻痺状態となりました。
この一刻を争うというパンデミック期に、なにを悠長に「殺処分家畜の所有権」を巡って交渉しているのですか。呆れてものが言えません。
知事が「国に突っかかってみせる」というパーフォーマンスのために、どれだけの無駄な家畜の感染があったのかと思うと、まったくやりきれません。
やがて知事は、真の被害者たる家畜と家畜農家から、パーフォーマンスの対象を彼に票を入れてくれた県民に移し始めます。
いちばん宮崎県内の畜産家から批判を浴びたのは、知事が県所有のスーパー種牛の移動をしたことです。
感染拡大期に当該家畜の移動は原則として禁止されています。にもかかわらず、知事は国に「感染がない」と申請してそれを強行しました。
このパンデミックの時期に家畜を移動すれば、見落とした潜伏期の家畜から、より広域に感染拡大する可能性がありました。
確かに種牛は貴重なものですが、代替がきかないものではありません。終息後、他県からの種牛の提供もあり得たでしょう。
なぜ、テレビカメラの前であえてそのリスクを冒さねばなければならなかったのか、大いに疑問とされるべきです。
原告訴訟団はこう訴状で述べています。
「県は牛が発熱するなどの異常を隠して国の承認を取り付けており、意図的で計画的な
違法行為である」。(同上)
このような農家の怒りや焦燥をよそに、県非常事態下にあった県民は防疫など知る由もなく、知事に強い支持を与えました。彼の当時の支持率は実に90%にも登りました。
そして終息宣言後、知事は「ネオンサインが恋しくて」逃げるように辞任し、宮崎を去ります。
この宮崎口蹄疫という大火災をくい止めた山田正彦氏という男が落選し、東国原英夫氏というような政治家が当選したことは、なんともやり切れません。
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■口蹄疫殺処分巡り東国原氏告発、宮崎の畜産農家ら
読売新聞
宮崎県で2010年に起きた口蹄疫(こうていえき)問題を巡り、県内を含む14都道県の畜産農家ら計43人が26日、宮崎県が県有種牛を移動させたり、殺処分しなかったりしたのは家畜伝染病予防法違反に当たるとして、東国原英夫前知事や県幹部ら計3人についての告発状を宮崎地検に提出した。
告発状によると、県は10年5月13日、同法に基づく家畜の移動制限区域内にあった県家畜改良事業団の種牛55頭のうち、主力級の6頭を制限区域外に移動したが、その後、うち1頭が感染。同一農場の家畜は全て殺処分すると同法で定めているにもかかわらず、残り5頭を殺処分しなかった。
宮崎県の措置は特例として国の承認を得ていたが、告発状は「県は牛が発熱するなどの異常を隠して国の承認を取り付けており、意図的で計画的な違法行為」と主張。43人の代表を務める同県川南町の染川良昭さん(59)は「県が自らの利益のため、県有種牛だけを生かそうとした」と指摘している。
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コメント
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口てい疫(口蹄疫)について(横浜市衛生研究所)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/fmd1.html
にあるように宮崎県の口蹄疫は幾つもの経過を経て口蹄疫ウイルスが検出されるまで日数がかかっており、素人目には致し方ないように思います。
また一般的に細菌と異なりウイルスは電子顕微鏡でなければ見えないため検出に日数を要します。
宮崎口蹄疫騒ぎの時に東国原知事の支持率が高かったことも否定されていますが、被害を受けている当事者達の目はごまかせないのではないでしょうか。
本当に彼の対応が不十分だったならリコールを要求することも可能だったでしょう。
投稿: kanryu | 2012年12月20日 (木) 18時45分
kanryu様。私は初発とされた牧場などはまったく責める気はありません。垂涎あどは見逃す可能性は十分にあります。
ただし、それを不信に思った農家が、家保に持ち込んでも長く待たされました。このことを言っています。
口蹄疫は3月下旬には侵入していたはずです。にもかかわらず確定したのがそれから一カ月後の4月20日です。
明確に県の失態です。失敗なら失敗で、それを認めて新たな対策を建てるのが県知事の任務野はずです。
しかし知事は、それを糊塗したまま国との闘争にすり替えてしまいました。なぜなら、責任追及されたくなかったからです。
知事の支持は、農家では一般県民と比較にならないほど低かったのです。一方、知事と対立していた山田大臣に対しては豚農家は圧倒的支持をし、牛農家は背中を向けました。
このように当時の宮崎内部は複雑でした。その時に、私は彼が実は自分だけの利害で動いていたのではないかと思ってしまうのです。
投稿: 管理人 | 2012年12月20日 (木) 19時10分
上のコメントのリンク先に詳しい経緯が書かれているので一度ご覧ください。
宮崎家畜保健衛生所の職員が個別の報告に対して口蹄疫とは考えにくいという判定をしており初めて疑われた報告は4月16日であり、これに対する対応以上に早くできるとはこの資料からは伺えません。
またかなり初期の段階で宮城県が取れる対応の規模を越えており、東国原知事を通して政府に支援の要請が行われましたがその対応が遅れたという経緯もあります。
日数が経過したことにより畜産農家の資金繰りが急速に悪化しており、家畜に対する財産権の面から一定の言質を政府から得る必要はあったといえるでしょう。
推測でこれ以上話をしても水掛け論になってしまうと思いますので、私の方でも当時の宮城県の畜産農家のブログなどを当たってみたいと思います。
投稿: kanryu | 2012年12月20日 (木) 19時28分
口蹄疫被害拡大の原因はワクチン非接種の清浄国利権。
■ 清浄国政策
メリット
肉の輸入を妨げ、国産牛肉を高値で売れる。
この利益は全部畜産農家のもの。
デメリット
ワクチン非接種のため、口蹄疫にかかりやすい。
この損失は全部納税者負担。
清浄国という畜産農家の汚い利権のせいで、損失を押し付けられるのはもう嫌だ。
畜産農家(牛)は日本で唯一所得税法人税を特別法でほぼすべて免除されている。
補助金ばかり受け取り、儲けたときも税金を払っていない畜産農家を税金で助ける義理も道理もない。
投稿: | 2012年12月25日 (火) 02時50分
口蹄疫被害拡大の原因はワクチン非接種の清浄国利権
>>>>>
この意味が、理解不能です。
口蹄疫のワクチンを打てば、殺して、埋却すると言う意味で、ワクチン接種で、牛、豚の命を助けることには、なりません。
オーエスキー病なども含め、いろんな型のある家畜用ワクチンは、人間のワクチンのように、抗体が出来、感染拡大を防ぎ、ワクチン接種した家畜が、生き延びるということは、ありません。
あくまで、と殺して、埋却するまでの、ウイルス拡散の一時的な押さえ込みしかないので、当然、食肉出荷もなく、隔離しながら、殺して、埋めることしか、出来ないのです。
ワクチンの目的が、違うのです。
清浄国利権
>>>>これについては、輸出入問題としての利権は、あるのでしょうが。。。
OIE問題と、ワクチン問題とは、別次元だと、思ってください。
投稿: りぼん。 | 2012年12月25日 (火) 18時59分
>畜産農家(牛)は日本で唯一所得税法人税を特別法でほぼすべて免除されている。
おそらく、1頭100万円以下で売却された牛には所得税が課税されないということに対してだと思うのですが、これはほとんど意味が無いんですよ。
肥育農家、100万円以下では、ほぼ赤字になります。よって、非課税の意味なし。
繁殖農家も飼料代の高騰等によって、青色申告申告したらこの制度を適用しなくても、ほとんどの農家が非課税になります。牛農家の経営状況は厳しいのが現実です。
投稿: 南の島 | 2012年12月25日 (火) 19時40分
掲示板では無いし、名無しさんですから回答したくは無かったのですが・・・
免税証の交付は南の島さんが仰る通り100万円以下の肉牛が対象になります。(繁殖に供した経産牛=子牛を産んだ経験のある牛は対象外)
酪農家での肉用向けの「雄子牛」や生後8~10ヶ月令のこれから肥育する「肥育素牛(ひいくもとうし)」と呼ばれるものも対象になります。
肥育した黒毛和種で100万円以下の枝肉・・と言う感じですが、肉質等級により100万円以上の牛も沢山いますから、全て畜産農家の利権と決めつける事は出来ません。
直売など一部を除いて、農畜産物生産者は値段を自ら付ける事は出来ず、購買者が値段をつけます。
コメント内容を何処から仕入れた情報かは判りませんが、もっと勉強してからコメントしてはいかがでしょうか?
投稿: 北海道 | 2012年12月25日 (火) 21時14分
連投失礼します
先のコメントで、「免税証」と記載しましたが、通称であり「肉用牛売却証明証」が正しいので訂正します。
売却証明書は100万円以上でも発行されますが所得税免税の対象にはなりません。
しかし、若干減税にはなりますので、肉用牛を販売した場合には全頭分発行する事になります。(勿論、販売者の依頼に基づいてですが)
投稿: 北海道 | 2012年12月25日 (火) 22時23分