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2012年12月21日 (金)

「未来の党」飯田哲也氏が見なかったスウェーデン1980年代以後の民意の変化

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「未来の党」代表代行の飯田哲也氏が、スウェーデンに対してある種の憧憬を込めて語る時、私はいつも「なんだかなぁ」、という気分に襲われていました。 

というのは、スウェーデンは脱原発派の人たちにとって反面教師のような存在だからです。 

飯田氏は、「今の日本は80年頃のスウェーデンに似ている」(ニューズウィーク日本版 2012年10月31日)と述べています。 

飯田氏は1980年代から90年代初頭に、かの国に留学していますから、肌でその空気を知っているのでしょう。

そのあたりは、「北欧のエネルギー・デモクラシー」(2004年)という著書に詳しく書かれています。私もかつてはかなり影響されました。

このころの飯田氏を、私は高く評価していました。新しい時代の高木仁三郎になってほしいと思っていました。

そう、確かに彼が言うとおりスリーマイル原発の事故を受けて、スウェーデンの国論を二分した1980年代頃に今の日本は似ていることは事実です。ここまでは飯田氏の言うとおりです。 ただし、この話には続きがあります。

スウェーデンはスリーマイル事故の翌年、国を二分して「原発容認」か、「原発反対」かに別れました。 そして全政党を挙げての政争にまで発展し、連日のように両派のデモが繰り返されました。 

もはや冷戦期さながらのイデオロギー論争となって、その決着を世界最初の原発をめぐる国民投票で問うことになります。そして原発反対派が勝利し、30年先の2010年までを原発モラトリアムとすることに決します。

しかしそれならば、国民投票どおりに2010年にスウェーデンは全原発を廃炉にしていなければなりません。 

残念ながら、スウェーデンでは、現在10基の原発が稼働しています。つまり、「原発ゼロ」政策は撤回されていたのです。 

そして皮肉にも、国民投票で廃止期限と定めた2010年に、逆に旧式原発の建て替え承認が決められています。 

国民投票どおりに廃炉になったのは、1980年の国民投票以来、耐用年数が尽きた2基のみです。 このスウェーデンの原発10基分の原発を、日本と比較してみましょう。

スウェーデンの人口・・・900万人
・日本                    ・・・1億2800万人

わが国は人口で14倍です。なにせ日本は世界に10国しかない1億人クラブのメンバーだからです。少子化が叫ばれていても、依然わが国は人口「大国」なのですよ。 

ここまで、国家規模が違うと、簡単な比較は難しくなりますが、単純計算でわが国の140基相当となりますから、2倍以上の原子力依存となります。 

・スウェーデンの消費電力量・・・123,374GWh(2009年)
・日本              ・・・934,149GWh
(IAEA資料による)

消費電力で見ても、国の規模に比してスウェーデンにおける原子力の存在は決して軽くはないことがお分かりになるだろうと思います。

飯田氏は「日本が1980年代の頃のスウェーデンに似ている」ところまで正確に言っています。きっとスウェーデンを見習って、原子力の国民投票をしろとつなげたいのではないでしょうか。

飯田氏はスウェーデンの2010年の脱原発政策放棄にまで触れるべきでした。原子力政策の専門家の彼が知らないはずがありません。なぜ、そうなったのかの理由まで明らかにしないとフェアとは言えません。

飯田氏は優れた脱原発の理論家ですが、かつてのリベラル理論家の多くがそうであったように、特定の外国を理想化して、個別の国の事情を無視して、恣意的に外国事例をわが国に当てはめるという悪い癖がありました。

たとえば、ドイツのFIT(全量・固定価格買い上げ制度)について大絶賛し、現実にわが国のエネルギー政策に導入するような影響力まで発揮したのに対して、ドイツ脱原発の失敗部分には一切言及しようとしていません。

もうかなりの人が知るようになりましたが、ドイツのFITは明らかに失敗です。今やドイツはその財政負担と電気料金の値上がり、瞬間停電などにより、いかにしてFITから離脱するのかを真剣に考えるまでになっています。

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-e850.html
                http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-cb78.html
               http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-ceb6.html
              http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-ceb6.html

飯田氏が片目だけを開けて好きな風景のみを見るのは個人の自由ですが、脱原発政党の責任者となった以上、もう片目も開けてそのネガティブな側面も国民に伝えるべきです

今回の「未来の党」の惨敗も、いいことだけしか言おうとしない脱原発のセールスマンのような彼のスタイルが、国民に受け入れられなかった結果のようにも思われます。

飯田氏は元から運動家的研究者でしたが、3.11以後にただの「カリスマ運動家」になってしまいます。

正義か邪かの二分法で国民に迫り、他政党を罵る姿には、到底「エネルギー・デモクラシー」を説いた若き日の彼の姿は見つからなくなりました。

それはさておき、スウェーデンに話を戻します。スウェーデンのヨーテボリ大学・世論メディア研究所で、、原子力についての意識調査がなされてきています。その推移は興味深いものがあります。

Photo     (図 「スウェーデンで生きる。海外移住便り」より引用いたしました。ありがとうございます。)

上の意識調査を見ると赤線の原発廃止の意見は1988年を頂点として毎年減少し、2002年を境目にして原発利用と逆転しているのが分かります。

より正確に言えば、日本で考えるようにスウェーデンは1980年の国民投票で「即時ゼロ」を決定したわけではありませんでした。
 

1980年の国民投票の内訳はこうです。 

①反原発開発、10年以内の原発全廃止・・・39.7%
②化石燃料依存から脱却し、社会に十分なエネルギーを再生可能エネルギーで生産できるようになるにつれて徐々に原発廃止  ・・・58%
③無記入                        ・・・3.3%

脱原発に投票したのは約4割、一方「徐々に原発を廃止する」と、「無記入」(おそらくは現状維持)で合わせて約6割です。

つまり①の脱原発は、狭い意味では負けていたのです。にもかかわらず、この②の「徐々に移行」派も含めての政治的妥協の産物として、とりあえず2010年までモラトリアムとしようと当時の政府は考えたようです。 

そしてこの間にチェルノブイリによる国土被曝なども被りながらも、やがて「原発維持」が増加しました。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/1-6a51.html
                http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-7f9f.html

この「民意」の逆転の結果、2010年に1980年の国民投票は破棄され、原発維持に変化したわけです。

私が「民意の風」頼みは危険だと言うのは、このスウェーデンの事例があるからです。 

まだ終わりではありません。スウェーデンの「民意」はもう一回変化します。それがこのグラフにはありませんが、2011年3月11日の東日本大震災とそれに伴う福島第1原発事故による変化です。

福島事故前と事故後を比較します。 

・2010年「原発即時停止」・・・8% (スウェーデン世論調査機関Sifo)
・2012年(福島事故後)  ・・・25% (ヨーテボリ大学の世論メディア研究所)

このように福島事故後に脱原発が増加していることはたしかです。しかし、現在のスゥエーデンの中道右派政権は原発維持を明言しているために、大きな政策上の変化はないと思われます。 

このように、ひとつの国でも「民意」は時間の流れで大きく変化していきます。今の時点で「民意」だから脱原発と言っていると、数年後には「民意」で原発推進に変わるかもしれません。

だから、しっかりとした将来を見通したシナリオと論理構築がいるのです。

そのような時に、自分の主張にとって都合のいい一点、たとえば飯田氏にとっての「1980年代頃のスゥエーデン国民投票時」で輪切りにしてして、都合の悪いその後を切り捨てるようでは、正しいバランスで脱原発を見れなくなるでしょう。

今、必要なことは、脱原発「総論」賛成ではなく脱原発の「各論」の成熟なのです。

■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-a46d.html

■写真 風の強い日の雲と湖畔

■明日明後日は定休日です。月曜日にお会いいたしましょう。

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コメント

日本における政策をいつまでも、海外のいいとこ取りをする風潮は、未だに、崇拝しているのですね。

スウェーデン福祉政策を、理想だと言ったり、次は、フランス、その後は、ノルウエーとか、少子化問題でも、時の流行、トレンドを取り入れることで、無駄なスキームや予算を使うことこそ、馬鹿な話はなく、その冠のついた事業は、すべての省庁で認められると言う、異常な予算分捕り合戦は、いつまでたっても終わりませんね。

ノルウエーを真似れば、ノルウエーの消費税は25%以上ですので、それを、覚悟する必要があるし、子育てを若いうちに経験し、その後、キャリアとして、社会に受け入れられるには、若いうちに、合格すれば、一生使える医師免許のような、高卒国家免許や大卒国家免許のような、完全な、能力評価資格試験の導入を諸外国のように、取り入れないと、うまく行かないでしょうね。
東大出でも、20年くらいフリーターだった人を、積極的に雇う企業が、存在するのでしょうか?

管理人さんのおっしゃるように、すでに、スウェーデンの福祉構造は、外国人移民が増えた現在、急速に、福祉レベルがおちましたし、ノルウエー、ベルギーも、国内報道では、デメリット部分は、報道されませんね。(大量射殺事件の背景をみれば、解るはず)

嘉田氏が、あえて、民主小沢氏のマニフェストどおりの子供手当てを出すと公約した時点で、嘉田氏は、国家財政がわかっていないのだと、解りました。

嘉田氏は、小沢と組むべきでは、無かったと思いますし、飯田氏は、未だ、使用済み核燃料や、現在溜まっている、核燃料プールの、処理方法について、発言がないなど、学者としては、落第点ですね。

まあ、小沢氏の子飼になり、出来もしないことを言って、決められない日本状態を、伸ばすと言う言動しかしないと言う、党首ですから、そういう党が、伸びなかったことは、結果的に良かったのかもしれません。

原発の廃炉は、難しい問題で、簡単に、卒原発、脱原発と言えないと言うのが、理想と現実のギャップでしょう。

唯一、今日、良かったとおもうのは、セシウムに、発光体を合成することが出来、目視しやすくなったことが、ありがたいことでした。

日本として、あらゆる方向から、検証して、危険度の高い原発から、安価に安全に、スピーディに、廃炉できる技術革新が出来ることを、期待しています。

FIT制も、トラスト・ミーと同様に、言わば、政局を自党に引き入れたい道具であっただけですよね。

スウェーデンが脱原発を「放棄した」と書くのは少々誤解ではないでしょうか。(そのような報道も散見されますが。)

「長期的には段階的に脱原発、但しそれは代替エネルギーの進捗に合わせて」というのがスウェーデンの基本方針です。

こちらなどお読みください。
@yoshisatose さんブログ「フクシマ以降のスウェーデンにおける原発議論」
http://blog.goo.ne.jp/yoshi_swe/e/77ffb40d59a6c08985101d6692283894 (その1、2011/5/4)
http://blog.goo.ne.jp/yoshi_swe/e/a883296589289629babd712f3c38a538 (その2、2011/5/7)

コンタンさん。いつもご指摘ありがとうございます。
スゥエーデンもフィンランドも似た方針ですね。つまり再生可能エネルギーなどの代替エネルギーが確立するまでの期間は、原発を維持していくということです。

飯田氏に関する分析、スウェーデンやドイツに関する事実のご認識、素晴らしいです。感激しました。どうも有り難うございました。

私が原発で気になるのは、廃炉です。
そして使用済み核燃料です。
これが明確にならないと脱原発議論は始まらないと思います。
たまたまGoogleから到達したのですが、とても勉強になる内容でした。有難うございます。
菊池正樹

なるほど飯田さんが選挙後に登場しない訳が分かりました、落選を確認しただけではなく、なぜ落選したのかが分かりました。
あの柔らかな語り口に惑わされていましたことになります。ここでの議論が正しい認識だと思えました。有難うございました。

方や「徐々に」で多くを取り込み得る選択肢で、
方や「10年以内」なんて非現実的な選択肢、
後者が多数を占める訳が無いではないか

破棄されて当然の投票だ

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