拝啓 野田佳彦首相閣下
拝啓 野田佳彦首相閣下。
私はかつてあなたをある種の感動をもって評したことがあります。
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消費税での三党合意の取り付け、なかなか解散を言わない粘り腰、かつての自民党吉田学校の現代版をみる思いでした。
そして海上自衛隊観艦式で、あなたは旧海軍兵学校の「五省」を読み上げます。
一、至誠に悖(もと)る勿(な)かりしか
一、言行に恥づる勿かりしか
一、気力に缺(か)くる勿かりしか
一、努力に憾(うら)み勿かりしか
一、不精に亘(わた)る勿かりしか
私は、このような腹なくして首相という孤独な職業はないのだ、とあなたという人物を改めて見直したものです。
「そのうち」が長引けば長引きほど悪人づらになるあなたの心中を探るとなんとも言えない気分になったことを思い出します。
そして、いったん決意すれば、電光石火幹事長の制止も振り切って解散を決意されました。見事です。私は男として綺麗な所作だとすら思いました。
そのとき、官邸であなたが語られた言葉は、「死中に活を求める」でした。これは99%助からないが、1%の生は死を決意した中にこそある、という意だと私は解釈しました。
なかなか言える言葉ではありません。ほとんど全滅が予想されている戦いに臨む闘将の決意と、計算され尽くして「今」しかないと見極めた勝負師の勘が織りなした見事な一言でした。
この精神は、理念もなく政治的延命のためにはどのような野合もする小沢一郎氏、あるいは脛かじりのドリーマー、あるいは小児性精神錯乱の前職などとは違う対局の高みにあります。
失礼ながら、その時あなたを人物払底の民主党に置くのはもったいない気さえしたものです。
しかし残念ながら、あなたへの共感はここまででした。
いったん選挙という名の「大戦さ」が始まるやいなや、あなたは「吹っ切れ」ます。その断固たる活舌のいい口調こそ同じですが、卑しくなったのです。
「悪いのはみんな自民党」、「自民党が悪かったから我々は失敗した」・・・、いわばこのような言辞が毎日のようにあなたの口から吐き出されるようになります。
最近では、敦賀原発の活断層が確定し、廃炉に追い込まれそうになると、あなたは「70年代からわかっていた。建設許可を出した自民党が悪い」と街頭演説します。
しかし、わずか数カ月前の夏に活断層がほぼ確実にあることがわかっていたはずの大飯原発を、徹底した調査もなく再稼働を認めた時にあなたはなんと言ったのですか。
「国民生活を守るため、再稼働すべきだというのが私の判断だ。」
そのとおりです。盛夏突入を前にして、為政者として首相としてのあなたは憎まれ役をあえて買って出たのです。
それは党内外に烈風のように吹く「脱原発」の人々と、まっこうから為政者としての自分を対置することでした。
私はその判断自体には真っ向から反対ですが、「国民生活を守る」のが使命である為政者としては至極まっとうな気がして、怒りが湧かなかったものです。
ならば野田首相、その「為政者としての悪」を貫きなさい。選挙が始まるやいなや3.11以前の自民党の原子力政策をあげつらってどうなるのです。
3.11以前に原発の危険性は民主党ですら認識していませんでした。だから、政権を奪取し、権力を手中に収めた後は、原発について菅首相は就任直後の2010年6月に「エネルギー基本計画」を策定しています。
その内容は2030年までに新たに14基を新増設し、総発電量の50%を原発で発電するというものでした。
今、あなたが批判する自民党ですら最大で原発依存率が30%でしたから、民主党政府は一気に2割も引き上げようとしたのです。
そして、原発の海外への輸出も、菅政権の成長戦略の一つでした。ベトナムに首脳外交で輸出をとりつけたことを発表する菅首相の得意顔が思い出されます。
つまり、民主党は自民党の上を行く原発推進派だったのです。いまさらそれを隠すも隠さないもないはずです。
民主党、自民党に限らず、9割の日本人は原子力に対して2011年3月11日以前にはその程度の危機意識しかなかったというだけです。
それを1970年代まで遡って、どのように自己正当化できるというのですか。3月11日以前のことを都合よく忘れて、立場を乗り移れるのは、あなたの前職だけで沢山です。
さて私は、あなたがこの選挙戦において、まず国民に自らの力及ばぬことを詫びることから始めるだろうと思っていました。
「失敗も数々ありました。政権をとったことによる奢りもありました。ゆるみも出ました」、と国民に語りかけると思っていました。
その上に立って、「力尽くさずして終わらない」ことを訴えて、「今一度の機会を与えて下さい」と語ると思っていました。
しかし、あなたの口から出るのは、「悪いのはみんな自民党」という、責任転嫁の言葉と、今や虚しくしか聞こえない「決断」という空文句ばかりです。
そんな政治家用語はもういい。もっと生々しい、「死中に活を求める」とまで言ってのけたあなたの政治家としての、いや為政者としての「覚悟」を聞きたいのです。
あなたの必死の言葉を聞きたい。それなくして責任転嫁をしてどうします。
あなたが吐いた党首討論の折りの、「政権を取る覚悟がない自民党には政権を絶対に渡さない」という決意はどこに行ったのですか。
戦が始まって、どの世界に「わが軍が負けたのは敵軍のせいだ」などと言う愚かな将がいますか。
「政権を取る」ということは、前政権の「悪」をも背負いこむことです。原発の「悪」も、財政のひずみも、景気の悪さも、年々悪くなる国民生活も皆、背負い込むという決意をして、あなた方は政権を獲ったはずです。そんなことは百も承知のはずだったのではありませんか。
だから、3年3カ月前、私たちは民主党に政権を委ねました。いまさら、「自民党が悪かったからだ」などという「覚悟」のない泣き言は聞きたくありません。
首相閣下。国民の審判まであと数日です。あなたの「言行に恥づる勿かりしか」という「五省の覚悟」がいかなるものか、私たち国民は見ています。
これを書いていましたところ、我が国沖縄県上空を超えて北朝鮮のミサイルが撃たれて、衛星軌道に乗ったことが確認されました。
これで民主党政権以降の我が国は、ロシア、中国、韓国、そして今回の北朝鮮とまんべんなく近隣国から足蹴にされたことになります。
このような外交的敗北を建て直す時間は、あなたには与えられないかもしれません。
しかし、今月26日といわれる国会まで゛あなたはまがうことなく我が国の最高指導者なのです。その自覚と覚悟をもって残りわずかの選挙戦に望まれることを期待致します。
寒さ厳しき折り、ご健闘をお祈りしております。 お体ご自愛ください。
敬具
野田佳彦首相閣下
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小さなコミュニティで生活している私から見ると、野田総理のような「新自由主義」の人は上から目線なんですよ。国家がまずあって地域がある感じです。
周りの人から推されて議員になるのではなく、自分がなりたい、そんな感じです。
小さなコミュニティでは、付き合いが深いですから人となりがわかりますから、野心家の正体はすぐにバレます。
野田氏の言葉は観念的で私には響きません。
投稿: 南の島 | 2012年12月13日 (木) 20時25分
私は早々に先週水曜日に相方と一緒に期日前投票してきましたので、今日の投票日はノンビリです。
たまたま、相方が選挙(投票)の立会人を仰せつかったもので、相方の監視の中での投票は照れるので、期日前にしたって言うのが本音の所です。(笑)
管理人様が仰る通り、自分の一票を無駄にしたくないし、投票した人が当選した場合、訴えていた事の実現に奮闘して欲しいと願っています。
大抵は当選後「先生」と呼ばれ、頭を下げていたのがうその様に、ふんぞり返るようになります。今度こそはそんな風になって欲しくは無いです。
今晩には大勢が決まるようですが、さてさてどうなるやら・・・・
追伸
管理人様大変ありがとうございました。
電話がつながらなかったので、FAXしました。
相方様共々お元気で!!
本当にありがとうございます。
投稿: 北海道 | 2012年12月16日 (日) 18時34分