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2012年12月 3日 (月)

農業には単なる農産物製造部門だけではない大事な仕事がある

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TPP推進派の中には、私たち農業者を既得権益者と見立てて、なにが恨みなのか知りませんが、日本農業潰せばいい世の中になるとでもいいたげな人が多く見受けられます。
 

農業関税はコメが778%という突出して高い関税を持っているために勘違いされていますが、野菜など関税わずか3%です。農業分野全体の関税率平均は11.7%で、他の工業製品関税と変わらない水準か、それ以下です。

グローバリストはコメばかり取り上げて、日本農業は国際競争力がないと言い募りますが、衣類の関税が10%ですから、農業はユニクロより強い国際競争と戦っているのです。 

ではコメをなぜ高関税の防壁で守っているのかといえば、水田が日本の自然コントロールの根幹をなしているからです。

新自由主義者は、コメを生産基盤の「水田という存在」が日本自然の中で果たしている機能から切り離して、ただの市場商品としてしか見ていません

ではここで、「水田」が位置する日本の国土はどのような特質があるのか、改めて考えてみましょう。 

我が国は文句なく世界最大の自然災害大国です。毎年襲ってくる大型台風、地震災害、土砂災害、豪雪災害、まるで自然災害の博覧会のような国です。

それは我が国が過酷な自然条件を持っているからです。

南北2千キロ、東西2千キロにおよぶ島々からなる列島であり、その中央部には2千メートル級の脊梁山脈が伸び、平野部は狭く、山岳地域の地質は崩落しやすい風化岩であり、そして河川はそれに沿って急流で海まで下り落ちます。

積雪地域は国土の60%に達し、いったん豪雪となると、たちまち交通機関が麻痺し、ときには今回の北海道のような大規模停電が引き起こされます。

多くある離島は、時化れば食料不足に陥ります。 急病人もヘリで搬送せねばなりません。

そしてご丁寧にも、3つプレートが集合している所に国土があるために、世界の0.25%の地表面積しかないにもかかわらず、マグネチュード7以上の大地震の実に20%が我が国で発生しています。 

これだけの自然災害大国に、なぜ1億3千万人もの国民が文明生活を営めるのかといえば、自然災害に対していくつもの自然をコントロールする防御機構を備えているからです。 

急峻な山から流れ出した急流は、まず山懐の水田に流れ込み、そこでいったん蓄えられて水量と水速のエネルギーを失います。 

いわば水田はミニ・ダムなのです。実際、水田の貯水量は大型ダムに匹敵する容量をもって、日本の自然をコントロールしています。 

もし水田がなければ、「まるで滝のようだ」と明治期に来日したヨーロッパ人を驚かせた我が国の河川は暴れ川となって、大水のたびに洪水をもたらすでしょう。最近でも四国の四万十川の大洪水は記憶に新しい所です。

上の写真のような小さな川は全国各地にありますが、大水の時には急流となります。その時に溢れた水は、いったん水田が吸収し溜め込みます。

また干ばつの時には、水田に付属するため池から水を放出して凌ぎます。これが水田のダム調節機能です。 

歴史的に我が国ほど治水に知恵と力を出してきた国はありません。川を治めた者のみが為政者たる資格があるとされるのが我が国の伝統でした。 

武田信玄は優れた民政家でしたが、彼が作った霞堤は暴れ川を見事に水田に引き入れて手なずけています。

その伝統はいまでも受け継がれています。それが水田と林業による治水です。

崩落しやすい山肌はいったん裸山にすると崩落して住宅地を襲い、河川を埋めて大水を引き起します。

それをさせないために日本人は山を守り、水田を守ってきたのです。

歴史的に農業と林業は一体のものでした。 しかし林業は輸入材に押されて衰退の一途をたどり、水田農業がかろうじて残っているたけです。

ですから、水田が放棄されていった地域では、「水田ダム」がないために水害が頻発していきます。

このように水田はコメ作り以外にも、治水、環境整備、景観保全、生物多様性の確保などの多機能を備えており 、それらを含めると単にコメの価格だけで計れない大きな意味での自然災害から国土を保全する働きをしているのです。

もし水田がなければ、我が国はこの過酷な自然から国民を守るために、多大な防災コストをかけねばならなかったでしょう。

外国のコメが仮に我が国のコメより安価だとしても、輸入米には我が国の国土と国民を守ることはできません。いったん水田を失くしてしまえば、1年間で雑草が身の丈ほど伸び、2年で田んぼの底が抜けます。

そして、機械はさびつき、世界一と言われる米作りの技術も5年以内に失われていきます。そうなってしまえば、もはや我が国はもう一度コメを作ろうとしてもその基盤も人もなくなるのです。

私たちはTPPを阻止することで、日本の米作りを守ろうとしています。それは高い安いというだけのお金の価値で置き換えることのできない「自然をコントロールする」という価値が農業の中にあるからです。

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■写真 村の朝。静かです。

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コメント

水田が、ミニダムと言う管理人さんの意見は、非常に、同意します。

また、広葉樹林がもたらす、バクテリアや昆虫類が、重要なことなど、自然の中のダムは、コンクリートでは、作れない大切なものであることは、まちがいなく真実だと思います。
ただ、東京の霞ヶ関に居ると、目の前は、人工物だらけなので、自然や水田による治水効果などが、どのくらいの資産価値があるのかは、わからないし、見えにくくなっているのでしょう。

下水道事業も同じで、人口密度が低い地域は、浄化槽の方が、大事なのですが、都会に居ると、下水道完備が、地価評価に、プラスになるというだけで、どこの都市でも、雨量が、基準値を超えれば、海へ、汚水は垂れ流しですから、下水処理場の意味がないのですが、そういうことも、都会に居るとわからないのです。

水田の貯水量は、人工貯水池の何倍にもなりますので、水田を減らすことは、国土を保つことには、逆行していると思います。段々畑などは、治山治水事業として、認識すべきと思います。

松島の小さな島がたくさんあったことで、津波の被害が、減少した事実をみても、自然には、勝てないなあと思っています。

時々上京しますが、空から見ていると管理人様が仰る通り、農業が果たしている効果を感じる事ができます。
かなり前に四国に行ったとき、急峻な山岳地帯に、段々畑が頂上付近まで出来ているのを車窓から見た事があります。
四国は、山から海までの距離が近く、本日の記事の事が如実に実感できるところだと、思い出しています。

テレビ朝日のTVタックルにアグリビジネスで成功している「新○組」代表の人が、あれこれ言っていましたが、違和感を覚えていた所です。頭の回転が鈍くなってきましたので、うまく表現できませんが、農業を経済と言う側面だけで位置づけると、とるに足らないものかも知れませんが、農業・林業の果たしている効果も是非理解して欲しいと願っています。
チョットした大雨で、杉林が崩れ道路や家屋に被害を与えているニュースも頻繁に見るようになってきました。
林業も疲弊し、山を守る人が少なくなった結果なのでしょう。
農業も同じ事が言えます。
一度耕作放棄地となったら、回復させるのに数倍の年数が必要になります。たゆまなく手入れ(補修)を継続する事が必要です。

数年前フランスに行きました。あの華やかなパリの空港から飛び立つと、直ぐに広大な畑を見る事ができます。大都会から少し離れただけで、一面の畑です。
農業を見捨てる国は遠からず滅びるでしょう。

北海道様。ほんとうに励まされます。なんというのか、温かい手を肩に置かれたような気持ちです。本当にありがとうございました!

管理人様
北海道をチョッピリ感じて下さい。
今日は北海道十勝も季節はずれの大嵐で、台風のようです。
明日の朝は、道路ツルツルのスートリンク状態になるかも??交通事故が心配です。

お元気で!!

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