規制委員会・勇気ある敦賀原発への最後通告、強い原子力規制委員会の誕生か
「見直すこともありえるが、その際には、追加調査によって活断層の可能性を否定する客観的データを揃えることが必要」。(規制委員会・小林勝安全規制管理官)
この言葉が原子力規制委員会・規制管理官から発せられた瞬間、勝負はつきました。
これで99.99%敦賀原発の再稼働は不可能となりました。我が国で第1号の安全規制による廃炉です。この重さはもっと後にその価値がわかるでしょう。
日本原電は、判断の根拠を求める公開質問状を出しましたが、島崎委員長代理は、「原電の質問状は質問になっていなかった。答えるべきところは答えた」と突っぱねています。
原電は、規制委員会本体への報告書提出まで「不利益処分」として抵抗を続けるでしょうが、科学的知見に裏打ちされたこの強烈な決意の前には通用しないと見られています。
私はこの規制委員会の決断に大きな拍手を送ります。規制委員会と調査団の皆さんに、「被曝地」の住民のひとりとして心からの感謝を捧げます。ほんとうに有り難うございました。
あの呪われた日、私たちは頭上を通過する放射能雲を知らされることなく無防備でした。家族を危険にさらし、大地を汚され、作物を捨て、そして1年有余続いた風評被害で倒産寸前まで追い詰められました。
福島県民の悲惨さは私たちの比ではありません。本当に憎い。私は原子力を呪いたい。
これでようやく分厚かった原子力の壁に一矢報いることができました。規制委員会が開けた扉は、今まで我が国が持ち得なかった真の原子力安全規制へつながる第一歩です。
原子力を完全廃絶するまでには、おそらくそれを利用したと同じ時間がかかります。私はその最後を看取れないかもしれない。
その間に、残存する原発の番人は、原子力規制委員会しかないのです。
さて少し具体的なことを書いておきましょう。原子力規制委員会の専門家会議は、28日、敦賀原発直下の断層を活断層だと断定しました。
国が動く可能性のある活断層上に原子力施設を立てることを認めていない以上、結論は廃炉以外ありえません。(資料2参照)
日本原電は強く反発していますが、この規制委員会の判断を覆す決定的証拠が提示できない場合、我が国での活断層による廃炉1号となります。
原電は、「(証拠となる地層が)削り取られて存在していない。今のデータで判断するしかない」(島崎委員長代理)以上、新たな証拠を提出することは不可能だと思われます。
大飯原発の専門家調査においては、活断層とする意見と、それを懐疑する意見に分かれましたが、敦賀原発においては全員一致での活断層と認めました。
上図(東京新聞1月29日)をごらんください。敦賀原発2号機直下を走るD-1断層を延ばしていくと、そこで大きな「浦底断層」にぶち当たります。
この写真は逆の側から見たものですが、敦賀湾を横切って滋賀県長浜にまで至る「浦底−柳ケ瀬山断層帯」・約25キロに及ぶ大きな断層の一部が原子力施設250メートル横を走り、それとD-1断層が「試掘溝」という地点の先数十メートルで交わっているのがわかりますね。
つまり浦底断層がズレた場合、それに連動してD-1断層も動くということです。しかも2号機直下で!
この地形は、今回調査した専門家をして、「活断層だと学生でも分かる。なんでこんな場所に原発を建てたのか」と言わせる地形でした。
70年代に複数の研究者が活断層である可能性を指摘し、学術書「新編日本の活断層」(91年)では長さ約3キロの活断層として載っています。
「浦底断層が活断層であることは1980年代以前から可能性が指摘され、1991年には確実視されていた」(鈴木康弘・名古屋大教授)断層だったのです。
つまり地層学会では、最近4000年以内に活動したと考えられている活断層であることは常識でした。
去年12月の規制委員会の調査で、原電が「いやなものを掘りあててしまった」と嘆いた「怪しいズレ」(島崎規制委員長代理)が、このD-1断層です。
そして今回の試掘溝の調査により、断定されました。
ところで今後ですが、既に安全基準が出来ていれば、即時運転停止命令が下せるのですが、それが出来る7月中まで5カ月間の時間があります。過渡期にありがちな微妙な時間です。
破れた原電は場外戦に持ち込むと思われます。それは「政治」の場です。
原電・荻野広報室長は、「行政手続上の不利益処分なのだから意見を聞くべきだ」とした上で、「規制委員会といっても行政機関。首相の下にあるんだから」と言っているようです。
冗談ではない。こういうことを言うから「原子力村」と言われるのです。国策でやっているのだから、まずくなったら国が助けてくれるはずだ。こういう安易な考えが福島第1原発事故を招いたのではありませんか。
規制委員会は、単なる「行政機関」ではなく、3条委員会です。公取委や公安委員会と同様に庁と同格の高い独立性を持つ機関です。
もし自民党政権が、「政治」的圧力をかけて規制委員会の報告案を書き直させるような愚行をしたならば、国民から手ひどい制裁を7月の参院選で受けるでしょう。
もし、政府が原電を助けたかったら、全原発を国有化するしかないでしょうね。しかし、それにはもっと大きな原子力政策全体の議論が必要です。たった5カ月で出るはずもありません。
原電は、「学生でもわかる」活断層の上に、ろくな地層調査もしないで原発を立てた自分の愚かさを噛みしめることです。
原子力規制機関は徹底して政治から自由でなければなりません。それが、いままでの原子力の政-財-官-学を貫くぬるい「原子力村」の失敗の総括だったはずです。
フランスの原子力安全院(ASN)がそうであるように、原子力規制機関はアンタッチャブルなのです。
したがって淡々と7月を迎え、正式な法的手続きによって敦賀原発2号機は廃炉となります。この敦賀原発のような活断層上の原発に調査が進んでいきます。
・大飯・・・ズレの活断層を見失って足踏み状態
・東通・・・敷地内断層が活断層と判断される。敷地内ではないが至近距離
・志賀・・・地層調査予定。かぎりなく危険と言われる
・六ヶ所村・・・もし活断層判定されれば核燃料サイクル崩壊
・大間・・・建設中だが東通と同じ活断層上
規制委員会の健闘を祈ります。
■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-397c.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post.html
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■資料1
東京新聞1月29日夕刊
■資料2 報告書案“敦賀原発 活断層否定できず”
NHK1月28日 18時0分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130128/k10015118721000.html
国の原子力規制委員会の専門家会議は、福井県の敦賀原発の断層を評価する報告書の案を示し、「安全側の判断として、活断層である可能性が否定できない」と結論づけました。
今後、事業者だけでなく、ほかの専門家からも意見を聞いたうえで、報告書をまとめることになりました。
原子力規制委員会の専門家会議は、28日午後、敦賀原発の断層を評価する会合を開き、先月の現地調査などを踏まえた報告書の案を示しました。
それによりますと、国の調査で確認された新たな断層について、周辺の地層の分析から活断層の定義となっている12万から13万年前以降に活動した可能性が否定できず、また、その方向などから、2号機の原子炉の真下を走る断層の延長である可能性が否定できないとしています。
そのうえで、「2号機の真下を走る断層は、安全側の判断として、活断層である可能性が否定できない」と結論づけています。
規制委員会の専門家会議が原発の断層の報告書の案を示すのは初めてです。
規制委員会の島崎邦彦委員は、「気がつかない穴があるかもしれず、ほかの人にも見てもらい、よりよいものにしたい」と述べて、事業者の日本原子力発電だけでなく、学会から推薦された、規制委員会の活断層調査に携わるほかの専門家からも意見を聞く考えを明らかにしました。
このため、報告書がまとまるまでにはさらに時間がかかる見通しです。
国の指針では、原子炉の真下に活断層があることを認めておらず、規制委員会が報告書を基に、最終的に「運転再開を認めない」と判断すると、去年9月の発足以来初めて、原発の運転を制限することになります。
敦賀原発2号機は、運転が再開できないと廃炉になる可能性もあり、規制委員会の最終的な判断が注目されています。
断層の評価巡る双方の主張
原子力規制委員会の専門家会議の報告書の案では、「2号機の真下を走る『D-1』と呼ばれる断層」が活断層かどうかがポイントになりました。
日本原子力発電が調査で見つけた断層の状況から、「活断層ではない」と主張したのに対し、専門家会議は、独自に注目した別の新たな断層を中心に根拠をまとめ、「活断層である可能性が否定できない」と結論づけました。
日本原子力発電は、2号機の真下を南北に走る「D-1」と呼ばれる断層を詳しく調べるため、2号機から北に300メートルほど離れた場所で大規模な掘削を行いました。
そして、この調査地点で見つけた断層が「D-1」につながっているとしたうえで、少なくとも9万5千年前よりもあとに動いた痕跡がないことから、「『D-1』は活断層ではない」と主張しています。
これに対し、専門家会議の報告書の案では、まず、日本原子力発電が調査地点でみつけた断層を「D-1」と特定した根拠が明確ではないとしています。
また、同じ調査地点で独自に注目した別の新たな断層について、およそ9万5千年前の地層の近くまで及んでいるうえ、活断層の特徴である断層面に粘土が観察されたとしています。
そしてこの新たな断層が、南北に延びる方向や傾きが「D-1」と同じであることから「D-1」の延長部の可能性があるとし、敷地内を走る活断層の「浦底断層」に誘発されて活動するとしています。
そのうえで、「D-1」と呼ばれる2号機の真下を走る断層は、安全側の判断として活断層である可能性が否定できず、活断層の浦底断層と同時に活動し重要な施設に影響を与えるおそれがあるとまとめています。
日本原子力発電は、専門家会議が注目した新たな断層について、新たなデータを集めるために追加の調査を来月まで行うことにしています。
日本原電“疑問に十分答えていない”
原子力規制委員会の専門家会議が示した報告書の案について、日本原子力発電の荻野孝史広報室長は「きょうの議論を見たかぎりでは、先月提出した公開質問状の疑問に十分答えておらず、今なお活断層か否かを判断するうえで重要なポイントについて、科学的データに基づく判断となっているとは思われない」と述べました。
そのうえで、「継続中の調査でデータをそろえ、科学的観点からの総合評価を取りまとめ、原子力規制委員会に提出し公表したい」と述べました。
敦賀市長“今後の審議を注視”
福井県敦賀市の河瀬市長は、「今後、ほかの専門家の意見や事業者からの意見も聞くということであり、市としては今後の原子力規制委員会での審議を注視したい。
また、現在も日本原子力発電による追加調査が行われていることから、それらの調査結果についても予断を持たず、幅広い見地から慎重に審議していただきたい」というコメントを発表しました。
各地の原子力発電所で断層の調査をしている、国の原子力規制委員会の専門家会議は、福井県の敦賀原発について「安全側の判断として活断層である可能性が否定できない」という報告書の案を、28日の会合で示すことになりました。
規制委員会が最終的に「運転再開を認めない」と判断すると、発足以来初めて、原発の運転を制限することになります。
原子力規制委員会の島崎邦彦委員は、学会から推薦された専門家とともに、国内で唯一運転中の福井県の大飯原発を含む3か所で、先月までに断層の現地調査を行っています。
このうち、敦賀原発の断層を評価する28日の会合で報告書の案を示し、国の調査で確認された新たな断層について、周辺の地層や断層面の分析から活断層の定義となっている12万から13万年前以降に活動した可能性が否定できず、またその方向や地層を円筒状にくり抜く「ボーリング調査」の観察から、2号機の原子炉の真下を走る断層の延長である可能性が否定できないとしています。
そのうえで、「2号機の真下を走る断層は、安全側の判断として活断層である可能性が否定できず、重要な施設に影響を与えるおそれがある」と結論づけています。
規制委員会の専門家会議が原発の断層の報告書の案をまとめるのは初めてです。
専門家会議は、次回の会合で「科学的に疑問がある」と反発している電力事業者の日本原子力発電から意見を聞いたうえで、規制委員会に報告書を提出することにしています。
国の指針では、原子炉の真下に活断層があることを認めておらず、規制委員会が、最終的に「2号機の運転再開を認めない」と判断をすると、去年9月の発足以来初めて原発の運転を制限することになります。
敦賀原発2号機は、運転が再開できないと廃炉になる可能性もあり、規制委員会の判断が注目されています。
■資料3 報告書案は“安全側に立った判断”
NHK1月28日 8時18分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130128/k10015102241000.html
原子力規制委員会の専門家会議がまとめた敦賀原発の報告書の案では、おととし3月の原発事故を教訓に、これまでの国の規制ではあまり見られなかった、「状況証拠」を積み重ねたうえで「安全側に立った判断」を行っています。
一方で電力事業者などからは反発もあり、規制委員会は、今後、判断に至った経緯や根拠について丁寧に説明することが求められています。
敦賀原発の報告書の案では、国の調査で確認された新たな断層について、さまざまな「状況証拠」を積み重ねたうえで、原発の耐震指針に基づき、「安全側に立った判断」を行っています。
こうした判断は、これまでの国の規制ではあまり見られませんでした。
その背景には、原子力規制委員会が高い独立性を担保されていることや、委員や専門家が電力事業者の情報に依存せずより主体的に調査したことがあります。
一方で、電力事業者の日本原子力発電は、規制委員会に対し公開質問状を提出したうえで、今月22日、敦賀原発の調査現場を報道陣に公開し、「追加調査で活断層ではないことを示したい」と説明しました。
また地元、福井県の西川知事は「十分な科学的根拠を示してほしい」というコメントを発表しています。
規制委員会の別の専門家会議が検討している地震や津波に備えた原発の新たな安全基準では、考慮する活断層の年代を広げる見通しで、活断層の問題は今後、全国の原発にも広がる可能性があります。
それだけに、規制委員会が電力事業者や地元自治体に加えて国民に対し、判断に至った経緯や根拠について丁寧に説明することが求められています。
規制委員会はおととし3月の原発事故を教訓に発足した組織で、事故で失った信頼を活断層問題で取り戻せるかどうか、注目されます。
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