« 隣国電力会社から「脱原発政策をやめろ」と迫られたドイツの事情とは | トップページ | 規制委員会・勇気ある敦賀原発への最後通告、強い原子力規制委員会の誕生か »

ドイツ・電離料金値上がりに耐えかねて企業脱出が増加

025
ドイツの電気料金は税金を払っているようなものだと言われています。 

下2枚がドイツ連邦エネルギー・水道連合会(BDEW)の公表している電気料金の内訳です。 上が産業向け、下が家庭用向け電気料金です。

一番下の青色部分が発電コスト、いわば純粋の電気代です。その上に乗っているのは、再生可能エネルギー拡大のための賦課金・税金類です。Photo

    (図表は下図共に国際環境経済研究所・竹内純子氏の論文によります。有り難うございました。)

イツがFIT(固定価格・全量買い取り制度)を開始した以前と以後を産業用電力で比較してみます。
・1999年・・・8.51ユーロセント/kWh
・2012年・・・8.52
 

発電コストはほぼ変化はありません。一番違っているのは、賦課金と税金の類です。
・1999年賦課金・税金の計・・・0..35ユーロセント/kWh(3%)
・2012年同上        ・・・5..35(39%
 

家庭用では他の賦課金・税金のかかる率はいっそうひどくなっています。Photo_2
最新年では家庭用では45%が賦課金・税金という比率になっています。 

賦課金という名称は、EUでは建前上、再生可能エネルギーに対して助成が税金で出来ないために「賦課金」という形で泣いても笑っても電気代に乗せるという方法をとっているからで、取られる消費者からすれば税金と一緒です。 

つまりは電気料金の半分弱は税金だと言うことになり、消費者はこれではやっていけません。

ドイツ国民の77%が電気料金のこれ以上の値上がりは歯止めをかけるべきだとアンケートに答えています。

と言ってもFITは20年間固定ですから、そう簡単に値下がりするとは思えませんが。FITは始めるのは簡単ですが、足抜け出来ない悪徳闇金のような制度なのです。

産業界は、ドイツでの国内生産をあきらめて、別の国に逃避する企業が増えました。ドイツの化学薬品会社として世界的企業であるバイエルのマライン・デッカーズCEOはこう言っています。
エネルギー・コストの上昇が止まらないなら生産拠点を外国に移転する。」(「ニューズウィーク2011年10月31日)
 

これはバイエルに限らず多くの企業も考えていることです。BMWも米国に拠点を移す計画です。 

ドイツ商工会議所がドイツ産業界の1520社を対象に行なったアンケートによれば、エネルギー・コストと供給不安を理由にして、5分の1の約300社が国外に出て行ったか、出て行くことを考えているという衝撃的数字が出ました。 

日本でも、経団連が会員企業を対象に同様のアンケートによれば、以下の回答が寄せられています。(経団連タイムス2012年4月26日

・「生産が減少または大きく減少する」           ・・・72.8%
・「国内における設備投資が減少または大きく減少する」・・・55.3%
・「海外における設備投資が増加または大きく増加する」・・・38.9%
・「収益が減少または大きく減少する」           ・・・96.5%
 

日本も再生可能エネルギーのためのFITをドイツのように13年もやれば、ドイツの産業界と同じ答えになると思われます。

ドイツでは、シェールガスの発見でエネルギー不安が一掃された米国に生産拠点を移動する動きが強まっています。 

バーレンホルト(再生可能エネルギー発電会社RWEイノジーCEO)は「原発から再生可能エネルギーへの転換が可能だと考える国は産業が空洞化するだろう。」と述べています。(「ニューズウィーク」同上) 

しかし、ドイツにはロシアからパイプラインで送られる天然ガスがあり、ヨーロッパ電力広域連携による電力輸入も可能です。 

そしてCO2を度外視すれば、安い国内産褐炭も豊富に埋蔵されています。シェールガスすら埋蔵されているようです。 

我が国にはこのようなドイツのようなセーフティネットは皆無です。

天然ガスパイプラインはロシアとつながっておらず、国内パイプライン網もなく、炭鉱はとうの昔に閉鎖されており、いうまでもなく外国との電力広域連携などは望むべくもありません。 

そして、原発停止による電力の供給不安が重なって、電気料金は青天井の様相を見せています。 

このような時期にドイツのまねをする必要があるのか、じっくりと日本人は考えてみるべきでしょう。

まだ始まって間もない日本版FIT。まだ傷が浅い今なら止めることができます。これを10年間続けて、再生可能エネルギーのための送電網まで作り始めたら、我が国の経済と国民生活は大きな取り返しのつかない傷を負うでしょう。

再生可能エネルギーは今後追究されるべき重要な課題です。再生可能エネルギーは地域とそれに根ざす暮らしにあったエネルギー源です。

たとえば、東北被災地における未利用の木質系の瓦礫などは貴重なバイオマス資源です。埋める、焼却する以外の方法も試みられるべきでしょう。

農業には農業から生み出されるメタンガス発酵が可能です。農用水路や小川には小型水力発電機が設置できます。

それらの無数の地域密着型再生可能エネルギーのプラントを作っていくのが、本来の再生可能エネルギーのあり方だったはずです。

それを、脱原発の「風」に乗って、いきなり原発の代替エネルギーとして巨大な投資対象のメガソーラーや、一基数億円の風力発電所から考え始めることが誤っているのだと思います。

そもそも再生可能エネルギーには、そのような一国のベース電源となれるような力量はないし、FIT制度を使えばドイツのような「ドイツ環境政策の歴史でもっとも高価な失敗」を(シュピーゲル誌)を我が国でも再現することになります。

ましてや発送電分離に至っては、原子力とはなんの関係もない火事場泥棒のような新自由主義的構造改革にすぎません。

私たちは、「外国でもやっているから」で追随するのではなく、「どのような結果を外国が出しているか」をしっかり検証してから進むべきです。

|

« 隣国電力会社から「脱原発政策をやめろ」と迫られたドイツの事情とは | トップページ | 規制委員会・勇気ある敦賀原発への最後通告、強い原子力規制委員会の誕生か »

原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

民主党の失政を見直している最中の現政権ですから、民主党が導入したFITも早急に見直すべきです。今が丁度いいタイミングです。

いきなり廃止ができなくても、買取価格の引き下げによる適正化や、蓄電システムや送電への負担を求めるなどすれば、事態は改善できます。(自家消費率の高い個人住宅などは除外すべきとは思います。)
管理人さんがおっしゃるとおり、一刻も早い対応が必要です。


原発への対応が定まらない自民党ですが、FITの見直し以外にも、今すぐできることはあると思います。(記事からズレてすみません。)

まず、絶対に稼働することのない福島原発の代替として、できれば相双地区にLNG火力発電所を早急に設置したらどうでしょうか?第一原発469.6万kw、第二原発440万kw分です。
復興や雇用につながると思いますし、おそらく、福島原発の専用送電網は現在無用の長物になっているはずですから、それも有効利用できます。


自民党政権が原発再稼働を考えているにせよ、安全性を無視しない限り、それは何年も先になるのは明確です。
安全対策コストがかかりすぎて経済的な判断で電力会社自ら廃炉を選択する原発もあるでしょう。
このような状況ですから、今を乗り切るために、他の電力会社に対しても老朽火力の代替も兼ねて、最新鋭LNG火力発電の設置を実施させる必要があります。
仮に原発が再稼働してもバックアップになるのですから、再稼働を考えている方々の体面は保てます。


もう一つは敦賀原発への対処です。1号機2号機合わせて151.7万kw程度を即廃炉にしても電力需給には影響ありません。廃炉技術を実用化するためと割り切ったほうが進歩につながります。これも、原発の是非とは別次元の話です。日本原電は廃炉専門組織として生まれ変わるしかないでしょう。
「日本原子力発電精算事業団」なんてどうでしょうか?国鉄解体の手法を原発にも応用できませんかね?


投稿: 南の島 | 2013年1月30日 (水) 13時02分

ご無沙汰しておりますが、記事は毎日拝見させて頂いております。

十勝管内でも農業分野の発電「メタン発酵発電」にも取り組んで居るところもありますが、発電設備は出来ても「送電」で悩んでおり、中々進まない状況です。
ある町の大型酪農家で発電しても、その町での電気使用量が足りている場合、隣町(と言っても数十キロ離れていますが)の変電所までの送電を自前で整備しなければならず、数千万円から数億円の投資となります。
電柱も「北電」の使用許可が下りなければ、自前で用意しなければなりませんし、地上がダメなら地下ケーブルでの送電になります。当然国道沿いになるのですが、国道の使用許可や途中には大小の橋もありますので、それもクリアしなければなりません。
発電しても、蓄電したり自家消費するなら良いのかも知れませんが、売電となれば色々クリアしなければならないハードルがあり、現実的には難しいです。
電気の地産地消なら可能性が無いではありませんが、そのシステム構築までに時間がかかりそうです。
わが町の酪農家でも、チャレンジを試みていますが、
実現には程遠い状況です。

投稿: 北海道 | 2013年1月30日 (水) 15時32分

先のコメント、本日の記事とズレた内容で申し訳ありません。ご容赦ください。

投稿: 北海道 | 2013年1月30日 (水) 16時21分

北海道様。まさにリアルな再生可能エネルギーの実態です。貴重な情報をありがとうございます。

私もメタン酵装置はさんざんドジ゙りました。発酵が安定しなかったり、し過ぎたり。欲しいとき出なかったり。
そのときはいわば遊びでしたからいいのですが、送電まで考えると、おっしゃるような事例が全国ゴロゴロしていると思われます。

こういう地道な再生可能エネルギーの苦闘を見ずに、バカデカイ投機筋のメガソーラーばかりがもてはやされています。

なんかおかしくないか、再生可能エネルギーというのが私の気分です。

南の島様。いつも鋭いご意見しりがとうございます。「原子力清算事業団」ですか、なるほどありかも。

投稿: 管理人 | 2013年1月30日 (水) 18時44分

ドイツの例について、最近、失敗だとする論説が山のようにありますが、他方でそうではないとの研究もあります。富士通総研の2つのレポートがあるので、決して失敗ではなく無理筋ではない事をみて欲しいと思います。
1・http://jp.fujitsu.com/group/fri/downloads/report/research/2012/no394.pdf
2.
http://jp.fujitsu.com/group/fri/downloads/report/research/2012/no396.pdf

投稿: やーこん | 2013年2月 9日 (土) 16時59分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 隣国電力会社から「脱原発政策をやめろ」と迫られたドイツの事情とは | トップページ | 規制委員会・勇気ある敦賀原発への最後通告、強い原子力規制委員会の誕生か »