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2013年1月22日 (火)

バランスよく代替エネルギーを評価しないか

051

もう少し詳しくエネルギー源について考えてみます。

昨日も書きましたが、原発のリスクをなくすということは、別なリスクを取ることでもあります。その新たなリスクの大小が、代替エネルギーを選ぶ基準となります。

その選択基準となるのか、「エネルギーの価値尺度」というものです。まだるっこいようですが、ここからお話していきます。

ガス・コンバインドサイクルなどの技術的進歩は、この価値尺度の一部でしかありません。

よく素人が技術的ブレークスルーに接すると、すぐこれこそが次世代の救世主と思ってしまうものですが、シェールガスや、メタンハイドレートのような新たなジャンルが誕生したのでなければ、その影響はこの価値尺度の枠の中で判定されるべきです。

さて、このエネルギー価値尺度で世界的にもっとも有名なのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のテルツァキアン教授によるエネルギーの価値を判定する9の基準というリストです。(欄外資料1参照)

これはエネルギー源の利用価値を計るもので、「産出/投入比率」と合わせて使われているものです。 (欄外資料2参照)
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-3.html

テルツァキアンの判定項目は以下です。

汎用性      ・・・どんな用途にでも利用可能
量的柔軟性   ・・・微細にでも巨大にでも調整可能
貯蔵性・運搬性 ・・・自在に移動することが可能
ユビキタス性  ・・・時期と場所を選ばない
エネルギー量  ・・・面積・体積・重量当たりのエネルギー量
出力密度     ・・・時間当たりのエネルギー量
出力安定性   ・・・エネルギー出力の安定性
環境負荷    ・・・CO2や窒素酸化物・硫黄酸化物などの排出量
供給安全保障 ・・・産出地の政治的安定性

そしてこのテルツァキアンの9項目に、私は福島第1原発の過酷事故以後は10番目として「危険度」が付け加えられるべきだと考えています。

安価をうたい文句にして、事故が起きたら国土の半分は人が住めなくなったではシャレになりません。そこで私は10番目の判定基準として
事故時の危険度・・・過酷事故時にいかなる危険があるのかの度合い

また、専門家によっては、派生して出来る副産物を上げる人もいます。たとえば石油は生成の過程で膨大な石油化学製品を生み出しますが、再生可能エネルギーはまったくなにも生み出しません。

そこで11番目の判定基準として
副産物・・・製造時にどのような派生品を生み出すのかの度合い

欄外の表を見ながら読んで頂きたいのですが、この9+2の判定基準でみると、最高得点なのは石油です。

○が壮観なほどズラっと並んでいます。まさにエネルギーの優等生です。だからこそ、石油は現代エネルギーのチャンピオンになったわけですが。

●石油は⑧の環境負荷でCO2を出すことと、⑨の安全保障という点が産地が世界の火薬庫のような中東湾岸ですので、これが低い以外は平均して高い利用価値があるとされています。

私が勝手に追加した11番目の副産物も、プラスチック、ビニール、化学肥料などを先頭にして膨大なジャンルがあり、それがなくては現代生活が営めないほどです。

しかし今や、むしろその高い利用価値が禍して、過剰に投機マネーが流入したり、原油争奪の国家間紛争が起きたりして、そのつど原油価格が大きく変動してしまう欠点を持っています。

その為に数度の石油ショックで学んだ先進各国は、石油依存経済から脱却しようとしています。

●原子力は、どんな用途にでも使えるわけではなく、また移動することなどはぶっそうなのでやめて欲しいので汎用性とユビキタス性に難点がついています。

かつて冷戦初期に、米国もソ連も原子力爆撃機などというもの騒がせなものを作ろうとしましたが、堕ちたらえらいことなので計画が中止されました。

脱線ついでに、鉄腕アトムは原子力エンジンで動いています。足から出ているのは原子炉からの直接排気で、おいおいやめてくれよ(笑)。ちなみに妹はウランちゃん、弟はコバルト君です。

原子力は「環境負荷」において、福島第1原発事故以前はCO2が出ないことで高得点でしたが、今そのように思っているのは日本の環境省くらいなものでしょう。

環境負荷もなにも、事故がいったん起きれば一国の3分の1が住めなくなる可能性が高いわけですから、10番目に「安全性」という評価項目かあれば、原子力は最低最悪の得点であることはいうまでもありません。原子力に未来はありません。

11番目の副産物は核のゴミから 出るプルトニウムです。原爆を作る気ならともかく、これほど始末に悪いものはありません。

●石炭は、貯蔵性、運搬性、体積・重量あたりのエネルギー密度、出力安定性は高得点ですが、あまりにも窒素・硫黄酸化物やCO2の排出か大きく環境に負荷をかけすぎるために今後を期待できるエネルギーではありません。

●水力も出力密度と産地の安定はあるのですが、貯蔵出来たりするものではなく、どうしても巨大なダム施設を作ってしまうため環境負荷が高く、日本ではこれ以上の建設は無理です。(※小型水力発電所は期待できます。)

●天然ガス。平均して特に大きな欠点が見当たらないのが天然ガスです。汎用性、貯蔵性、運搬性にはやや石油より落ちるものの欠陥といえるものは見当たりません。

エネルギー密度、出力密度、出力安定性などのエネルギー効率は高い能力をもっています。クラスで二番目にできるおとなしい子というかんじでした。

これが天然ガス界の革命児のシェールガスや、ガス・コンバインドサイクルなどの新技術で、一躍石油に替わる次世代のエネルギーの主力の地位に躍り出ました。

特に天然ガスは石油、石炭、水力で問題となる環境負荷が少ないのが特徴です。

天然ガスをまとめてみると

①中東などの政治的に危ない地域に偏在することなく、豊富に世界各地に存在する。
②CO2や酸化物の排出も少なく、化石燃料の中で最も良好な環境能力をもつ。
③シェールガスなどによる新たな天然ガス革命により、価格が安価になる期待がある。
④過酷事故が起きる可能性が少なく、仮に起きても原発事故とは比較にならない。

非常にバランスの取れたエネルギー源だと分かります。

ですから、世界のエネルギー専門家の共通した意見では、天然ガスこそが21世紀のベース電源に成長するのではないかと期待されています。

再生可能エネルギーは、脱原発のシンボルのように扱われたために人気が高いエネルギー源です。

環境負荷が少なく、国内で生産されるという点では高評価ですが、それ以外ではすべての評価項目で「悪い」がついてしまっています。

これは再生可能エネルギー推進派のみなさんは反論がおありでしょうが、客観的に見た位置は、残念ですが一国の主要ベース電源(基盤電源)とするにはもっともふさわしくないエネルギー源だと評価されています。

ただしそれは全国共通のベース電源としてであり、そのように再生可能エネルギーを位置づけること自体が間違っています。

私はいままで利用されず眠っていた地域のエネルギーを市民参加型で利用できる地産地消型エネルギーとして発展していくべきだと思います。

ですからなおのこと再生可能エネルギーを活かすには、他のエネルギー源との組み合わせ方をどのようにしていくのかを工夫したり、どこに何を設置したら効率がいいのか、どのような地域送電網があるのかを真剣に考えねばならないのです。

以上のように、様々なエネルギー源があります。脱原発だから再生可能エルギーしかないんだなどと思わずに、また逆に原子力は絶対に必要だなどとも思わずに、バランスよく考えていったらいいのだと思います。

             ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1
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資料2 エネルギー源ごとの産出/投入比率(EROEI)

・石油・天然ガス・・・20倍(米国)~100倍(中東湾岸)
・石炭      ・・・30倍前後
・原子力    ・・・20倍
(注・ただし廃炉・賠償コストなどを含むと大きく下がって10分の1以下になるのではないかと思われます。筆者)
・風力      ・・・10~20倍
・太陽光    ・・・5~10倍

(エネルギー・環境問題研究所 石井彰氏による)

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原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

2回に渡って解説ありがとうございました。

私がコンバインドサイクル発電に触れたのは、
原発に未来はなさそうなこと、石油に頼る
火力発電だけではエネルギーリスクに晒されること、
更にはコンバインドサイクル発電は熱効率がよく、
建設も低コストで、メタンハイドレートも使えることから、主力になる発電方法と思ったのです。

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