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2013年1月16日 (水)

「脱原発優等生ドイツの憂鬱な現実」その1 80万所帯が電気料金を滞納

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「ニューズウィーク」(2012年10月31日)に元ベルリン支局長のシュテファン・タイル氏の「脱原発優等生ドイツの憂鬱な現実」と題する興味深いレポートが載っていますので、ダイジェストでご紹介します。 

ドイツがあわただしく脱原発に走ってから1年半、きっかけはわが国の福島第1原発事故でした。

「あの先端技術を持つ日本が原発事故を起こした」ということは、同じく技術大国のドイツを震え上がらせました。

アンゲラ・メルケル首相はこう説明します。
「日本のような技術が発達した国でさえ、地震と津波から原発を守れなかったとすれば、その事実はドイツにとっても大きな意味を持つ。」

それまでの原発の依存度は日本とほぼ一緒の23%(日本24%)、そして老朽原発が多く不安な反面、既に償却が終了しているという安い電源でもありました。(下図参照 図表はニューズウイークではありません。)

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ドイツ政府は現在17基の原発のうち、老朽化している7基の原発を稼働停止にし、停止中の1基も再稼働を認めませんでした。22年までに残りのすべての原発の停止をする予定です。 

現在、半数弱の原発の稼働停止に過ぎませんが、既に大きな影響が出はじめています。 

その最大のものは電力料金の値上がりです。首都ベルリンの弁護士事務所で働くマリーナ・ヘッセは3人家族の主婦ですが、こう語っています。 

一般市民が支払える水準に電気代を抑える方法も考えずに原発を止めるなんて、政府はなにを考えているのかしら」。

脱原発政策によりドイツ経済が被った電気料金値上がりによる被害は、約340億ユーロ(1ユーロ=約118円換算で4兆120億円)に達するとOECDのエコノミストであるヤンホルスト・ケプラは計算します。 

そして全廃することによるコストは1200億ユーロ((14兆1600億円)を越える、と有力なシンクタンクであるライン・ウェストファーレン経済研究所のマヌエル・フロンデル教授は指摘します。 

これらの金額は、ドイツのGDPの実に5%にも達します。いかに脱原発政策がドイツ経済に大きな打撃を与えたかお分かりになると思います。

電気料金が上がれば、企業投資は冷え込み、それに連れて個人消費も落ち込んでいきます。その結果、賃金が下がり、失業者は増大していくことになるとフロンデル教授は言います。

産業界は停電を懸念しており、生産施設を海外に移転させることを考え出し始めました。

近隣諸国は、ドイツの電気輸入が増加して、ヨーロッパの電力を融通し合う国際送電網が不安定になることを懸念しています。

代償は極めて大きい。経済が麻痺しかねない」。(フリッツ・バーレンホルト再生可能エネルギー会社RWEイノジーCEO)

この原因は単に原発を止めたことだけではありませんでした。ドイツは再生可能エネルギー関連の補助金のかなりの割合を太陽光発電に注ぎ込んでしまったのです。

しかし、太陽光は現段階では極めてコストが高く、効率が悪い発電手段でした。曇りが多いドイツでは太陽光にはお世辞にも適していないのにそこに比重をかけすぎたために、ドイツは期せずして太陽光発電で世界一の国になってしまったのです。

しかもこれを全量・固定価格買い取り制度(FIT)で、相場よりはるかに高く買い取ることをしたために、その割高のコストを負担させられたのはドイツの消費者でした。

ドイツの平均的な所帯の電気代は年間225ユーロ(2万6550円)増加し、来年には300ユーロ(3万5400円)になりそうです。

特に低所得者層への影響は大きく80万所帯が電気代の滞納をし、電気を止められそうになっています。いわゆる「燃料貧困層」が誕生したのです。

既存の再生可能エネルギー発電施設だけで、これまで2000億ユーロ(23兆6000億円)以上の補助金が交付され、このうち半分の1000億ユーロは太陽光発電です。

しかし、太陽光発電による発電量は、ドイツ全体の発電量のわずか4%にすぎません。

その一方で、投資家や裕福な地主は、太陽光発電施設や風力発電への投資や土地貸与で懐を潤わせています。

このように、原発政策による電力料金値上がりと、再生可能エネルギーの過剰な補助金導入政策のために、燃料貧困層と富裕層にドイツ社会が分裂していきました。

                                           (続く)

■謝辞 本稿は「ニューズ・ウィーク2012年10月31日号」を研究のために参照させて頂きました。有り難うございました。

■写真 昨日の雪で枯れかかったホウズキに雪が被りました。

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