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飯田哲也氏のメガ・ミスリードその3 脱原発と発送電分離は無関係だ

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昨年末の衆院選の時に飯田哲也氏は、「原発完全ゼロへの現実的なカリキュラム」というプランを発表しました。(資料1参照) 

このプランは、10年以内に原発ゼロとするための初めの3年間を、「原発と電力システムの大混乱期」として大改革を断行する時期としています。 

そして原発を再稼働させないと、電力会社は火力発電所を代替にするしか方法がないわけですから、政府が国債を発行して電力料金値上げ分をカバーするとしています。 

そして、3年間後をめどにして、発送電分離をしていき再生可能エネルギーの普及で増えた託送料(送電料)の増加でそれを回収しようということのようです。 

失礼ながら、これを読んだ時に思わず失笑してしまいました。困った時の国債頼みですか。エネルギー・デモクラットが泣きますな。 

このような「電力料金値上げの補填」などといった、なんの雇用も所得の増大も生まないような国債の発行をしたとしても、交付金の償還財源は、この案では最終的には送電料に乗るわけですから、結局は消費者が払うことになります。

ちょうど再生可能エネルギーをFIT(全量固定価格買い取り制度)で20年間かけてツケ払いするようなものです。

その時は直ぐに分からなくとも、今のドイツのようにあとでしっかり請求書が毎月回って来ることになります。 (資料2参照)

飯田氏は、「この3年間で再生可能エネルギーを増加させて、送電料金が増えるから大丈夫だ」と言いたいようですが、発送電分離した後の送電会社は私企業ですか、それとも国有企業ですか? 

東電のように事実上国有会社となって、送電網も国有のようなものならともかく、送電会社が私企業なら、「なんでそんな経営的にペイしないことをせにゃならんのだ」と言うでしょう。

そもそも送電部門はメンテナンスの塊のような所で、そんなに儲かる部門ではないのです。 

送電会社をやろうという所があるのかすら疑わしいし、あの孫正義氏すら「送電事業にはうまみがない」(「孫正義のエネルギー革命」)とあっけらかんと言い切っているほどです。 

孫氏もやらないと言っているのに、誰かやる酔狂なお人がいるのでしょうか。 

それはさておき、飯田氏が原発ゼロと発送電分離を強引にくっつけたいのは、既存電力会社以外の「新電力」(PPS※1)を期待してのことだと思います。 

飯田氏によれば、送電まで電力会社が占有しているから、再生可能エネルギーなどのPPSが不当に差別されて高い託送料を吹っ掛けられてケシランので、ならば発電と送電を分離してしまえ、そうすれば再生可能エネルギーも拡大して、電気料金が安くなる、という論理です。 

では、その期待のPPSの内実を見てみましょう。 

・既存電力会社保有の発電設備・・・水力3610万kW
・                   ・・・火力1億2830万kW
・                   ・・・原子力4350万kW
・                   ・・・その他46万kW
・合計                ・・・2億850万kW

 これに対し
・PPS・37社の新電力の発電設備・・・212万kW
 

このように残念ながら、PPSは既存電力会社設備の1%程度が実態です。「いや、こんなもんじゃない自家発電設備は全体で5620万kWもあるゾ」、という人もいますが、それは「売り物」ではないのです。 

それはそうでしょう。これらの工場の多くは電力料金の削減や、不意の停電に備えて自家発電所を回しているのであって、外部への販売はその余剰の2割程度でしかありません。 

また、この自家発電の設備の多くは原油安の時代に作られたもので、今のように原油高、それと連動する天然ガス高が続くと、原油相場をにらみながら、すぐに自家発電を止めてしまったりします。 

第一夜間は発電所を稼働させないし(夜は工場は動きませんからね)、土日はそもそも一日動かないしというわけで、PPSはあてにしていいような電源ではないのです。 

となると、発送電分離をしても送電量の増大が見込めない以上、託送料は増えません 

発送電分離を主張する人がよく主張していたのは、発送電分離すると、自由化により競争が働き送電料が安くなり、したがって電気料金は下がるというものでした。 

電圧により送電料金は違いますが、現在は2円~4円/1kW時です。 

しかし、その送電コストの大部分は膨大な設備投資に対しての原価償却と、日常的に要する保守費用です。 

道路や橋、堤防などの公共インフラがそうであるように、このような国民生活に直結するインフラは絶えずメンテナンスを施していなければなりません 

それを怠ると笹子トンネル天井崩落のように、点検費用が削られたために大事故につながります。 

笹子トンネル事故も、道路公団の民営化により、保守費用が大きく削られたためだと指摘する土木関係者が多いのです。 

かつてニュージーランドでは発送電分離したところ、コスト削減のために保守費用が削られてオークランドへの4本の送電線が全て切断するという大事故が発生しました。

このように公共インフラを競争原理にさらすことは非常に危険なことなのです。

ここで「いや、再生可能エネルギーが増える」、などと言わないで下さいよ。今のところそれがいかに貧弱なエネルギー源か一番よく知っているのは飯田さんのはずですから。

ドイツは国策でこの10年、莫大な国費を投入し、電気料金の値上がりや財政負担で大変な目に会いました。(資料2参照)

それでもいまだ全エネルギー源に占める再生可能エネルギーの割合は16%に過ぎません。

ドイツ人は今後50%にすると言っていますが、それを信じるヨーロッパ人はほとんどいません。信じられるなら、自分の国もやっています。

飯田氏が青春を過ごしたスウェーデンなど、1980年に原発モラトリアムを決めて、2010年にそれを破棄するまで30年もかかっています。

それを飯田氏はわずか3年間で国論を統一し、10年間でやろうと言う、率直に言わせてもらいます。それはただの夢想です。 

第一飯田さん、再生可能エネルギーの発電所はえてして都市部から遠い場所にあるものです。大型風力発電所など辺鄙な海岸淵です。 

そうでなくては低周波公害で周辺住民に被害を与えるからです。もういっそうのこと風力も安定している外洋にもって行こうというのが今のEUの流行なくらいです。 

では、こんな場所まで誰が好き好んで送電線を敷くのでしょうか。今は電力会社は公共事業体ですから、ブツブツ言いながらも大枚の金をかけて、鉄塔を建て電線を引っ張ってきてくれます。 

先だって再生可能エネルギーの発電施設に送電網を引く試算をしたところ、北海道電力と東北電力だけて1兆1700億円のコストがかかることが分かり、関係者一同がのけぞりました。

まぁ、儲かるというので参入した送電会社があったのならば、まず絶対にこんな再生可能エネルギーの発電所などには電線は引きませんね。

ならば、再生可能エネルギーの発電事業者が自らやりますか?鉄塔を建て、送電網までを作ったら、とてもじゃないが合いません。

孫氏がメガソーラーは沢山作っても、送電会社などやりたがらないのは経営的に合わないからでした。

皮肉にも、飯田氏が批判して止まない「電力幕藩体制」の産物の公共事業体だからこそ、電力会社=送電会社は義務としてやるしかないのです。

ですから、再生可能エネルギーの拡大を考えたら、発送電分離などは安易にしてはいけません

競争原理で送電市場を運営すれば、まっさきに淘汰されるのは不安定かつ、辺鄙な場所にある再生可能エネルギー発電所だからです。

ドイツはEU委員会が発想電分離を決めたためにやらざるを得なかったのですが、正直言ってやりたくはなかったはずです。

ですから、ブリュッセル官僚から「最も電力自由化が遅れた国」という注意勧告を受けたほどです。

私も日本が電力の自由化をする必要はあると思いますが、それは各県単位ていどにまでに地域独占を解体し、新規発電業が参入しやすいように電力プール市場を作ることです。

原発は国有化し、厳重な国家管理とします。

また送電網は県単位で一括して分離し、透明性をもった電気卸売市場(電力プール制)を作ります。

飯田氏は全国単位の電力自由化をすることで、スマートグリッド(スーパーグリッド)を導入したいようですが、このような再生エネルギーのための大規模投資をすることなく、県-地域単位でのミニ・スマートグリッドを作るほうがはるかに効率的で、安価です。

また、電力融通が関西電力と中国電力の間でしか満足にできない現状も改革すべきで、全国規模のスマートグリッドなどはそれが出来てからの話です。

つまり、飯田氏の「現実的カリキュラム」は、一番大変な3年間は国債をあてにし、税金をつぎ込んで再生可能エネルギーを増やし、電気料の値上がりしてもニコニコ笑う消費者と、天使のような送電業者を必要とするという、虫のいいものなのです。

飯田氏のシナリオはすべてがドイツのデッドコピーにすぎません。FITにしても、発送電分離にしても、わが国の実情や置かれた環境を一切無視して、ドイツの直輸入をしているだけです。

飯田氏はドイツ語訳の「脱原発聖書」を翻訳して、わが国がそれに合わないと怒っている外国人宣教師のようなものです

しかもこの「ドイツ語訳脱原発聖書」は、実は欠陥品だとほとんどバレてしまったものなのです。

理想を実現するには時間がかかります。もう少し足を地につけたらいかがですか。

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■写真 朝日の中の湖のほとりの蓮池。

 

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※1新電力 「特定規模電気事業者」のこと。2000年4月から進められている電力事業分野の制度改革により、電気の供給は、地域ごとに国から許可された電力会社のみが行うものから、新たに電気事業に参入した「特定規模電気事業者」や、他地域の電力会社からも電気を購入することができるようになった。 

電力会社との契約で高圧 500kW以上の利用者(中規模工場、中小オフィスビル、デパート・スーパーなど)が電力を購入する事業者を選択することができるようになった。さらに、 2005年4月からは、高圧50kW以上に範囲が拡大され、これにより全国の電力需要の6割強が自由化された。http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%B7%C5%C5%CE%CF   

■資料1 交付国債で電気料値上がり抑制 未来、「卒原発」構想案
朝日新聞12月1日
 

日本未来の党(代表・嘉田由紀子滋賀県知事)が今後10年で「卒原発」を実現するための構想案が1日、判明した。電力システム改革を掲げ、脱原発に伴う供給体制移行期の電気料金値上がりを抑制するため、政府が3年間交付国債を発行することなどが柱だ。  

 構想案は、党代表代行に就任する飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長を中心に作成、「原発完全ゼロへの現実的なカリキュラム」とした。10年間で全原発廃炉を表明した嘉田氏の方針を具体的に示すのが狙いだ。2日に発表する総選挙政権公約とあわせ、公認候補者に同意を求める。  

 案では、3年間を「原発と電力システムの大混乱期」として改革集中期間と位置づける。原発を稼働させないことによる電気料金の値上がりを防ぐため、政府が電力会社に値上げ相当分を必要時に現金に交換できる交付国債として給付。3年をメドに発送電分離を進め、再生可能エネルギーの普及で収益が増える託送料(送電料)で回収するとしている。 

■資料2 賦課金引き上げ、8割が反対=電気代高騰に反発-独調査 

【ベルリン時事】ドイツの公共テレビZDFが26日公表した世論調査結果によると、再生可能エネルギーの普及促進のため、電気料金に上乗せされる賦課金が来年から47%引き上げられることについて、77%が反対と回答した。賛成は21%にとどまった。
 ドイツは東京電力福島第1原発の事故後に脱原発姿勢を強め、再生可能エネルギーの開発を急いでいるが、賦課金の引き上げで標準世帯の負担が年約70ユーロ(約7200円)増えるとみられており、反発が強まっている。(2012/10/27-07:54)
 

 

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コメント

私も政府が国債を発行して電力料金値上げ分をカバーするという公約には??と思いました。
実現性はともかく、たんなる対処療法的なものでしかないと思ったからです。


そもそも何が原因で現時点で電気代が高くなるのか?その点を考えました。
単純です。稼働していない原発の存在です。そして、再稼働が不透明だからです。
電力会社は高額な設備投資をして原発を立て、高額な核燃料を購入したのですから、原発を動かさなければ損失が生じるのは当たり前です。
さらに、埋め合わせで老朽化した火力発電も動かさなければなりません。

沖縄電力はどうでしょうか。他電力のような値上げもありませんし、節電もありません。


私は電気代高騰防止・脱原発のためには、発送電分離ではなく電力会社からの原発部門の分離をするべきだと思います。もちろん原発部門は私達国民が負債を負わなければなりません。

分離した上で、電力を巡る現状を電力会社の実力で打開させるのです。発送電分離や電力自由化などは、その段階で考え始める事柄じゃないでしょうか?

分離に際して、電力会社の社員(幹部も)には原子力部門に行くかどうかは自由に選択してもらいます。原発部門に経営的な魅力や将来性・夢や希望が感じられず行きたくなければそれでいいと思います。責任をとってもらいたいという感情はありますが、そこはぐっとこらえましょう。ここで原子力にとって有用な人材かどうかのふるいをかけることになると思います。


経営的な原発の問題と、将来的なエネルギーのビジョン・原発の安全性等の問題を切り離して解決するためにも、原発部門の分離を真剣に考えるべきと思いますが、どうでしょうか?

投稿: 南の島 | 2013年1月 9日 (水) 12時13分

発送電分離は、現行のままで、維持管理しながら、財務部門で、部門別会計にすることや、新電力が、その送電網を使う場合の使用料について、第3者独立機関が、料金設定をすることで、当面、目的は、達成するのではなかろうかと思います。

電話事業者の自由参入のときも、結局、NTT西日本など、通信ネットワークの維持管理は、とても、人件費がかかり、現状では、ユニバーサル料金として、どこの電話会社を使っても、徴収しつづける費用として、設定されてますよね。

離島が多い西日本地区は、メンテナンスが、非常に大事であり、電話線も20年ほどで、線を新品に交換していかないと、抵抗値が、上がったりして、メタル線は、使えなくなるので、維持管理費は、大変でしょうね。

国民側が、いわゆる原子力賠償法で、使った税金の担保として、東電の送電網を、召し上げるのは、ある意味、必要かもしれませんが。。

問題は、決算書上、で、どういう資産内容になっていて、原発と送電網と、原発以外の発電の、利益と経費が、明確に区分経理され、解ることが、まずは、東電に求められることではないかと思います。

投稿: りぼん。 | 2013年1月 9日 (水) 13時26分

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