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2013年1月11日 (金)

飯田哲也氏のメガ・ミスリードその4 メルケル内閣経済相 「FITは甘い毒だ」

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昨年の夏が原子炉2基だけの体制で乗り切ったために、飯田哲也氏などは「これで原発ゼロでも回ることが実証された」と、なにかにつけて言うようになりました。

なるほど原発をゼロにすることだけなら、そんなに難しいことではありません。電気料金の値上げが続くでしょうが、それは可能なことです。

問題は単に「ゼロ」にすることではなく、国民生活や国民経済に打撃を与えないで継続するにはどうするのか、ということです。

私はドイツの例を知るにつけ、もっと長い眼で考えなければならないと思うようになりました。

ドイツは急進的な脱原発政策とそれに伴う発送電分離政策により、1000社超といわれる新電力販売会社が生まれました。

これはメルケル政権が、再生可能エネルギー拡大のための賦課金制度により、電気料金が高騰し始めたために、電力市場の競争を促進させることで価格を抑えようとしたためです。

賦課金とは、EUの電力業自由化方針により、建前上税金投入ができないためにそう呼んでいるだけで、要するに税金と一緒で泣いても笑ってもかかってきます。笑う人はいないか(笑)。

さてこの新電力販売会社の大部分は「販売」だけで、発電所はおろか送電網すら持っておらず、大手送電会社から電気を卸してもらってるただの小売り会社です。

わが国にはこのようなタイプのものがないので想像しにくいですが、ドイツは電力自由化により、発電-送電-販売までバラバラにほぐされてしまったのです。

ドイツは人口がわが国の約6割程度の約8100万人ですから、そこに1000社はなんぼなんでも多すぎるというものです。

このような過度な自由化をするとどうなるかといえば、当然のこととしてすさまじいまでの過当競争に悩まされています。

たしかによくテレビなどで紹介されるようにエネルギー源の公開などは徹底されるようになり、消費者は選択の自由が大きく増えたという点は進歩でした。

しかし一方、安い電気への乗り換えも頻繁に行われるようになり、電力を乗り換えた市民の比率は電力の自由化が始まってから2年目の2000年と比較すると、2010年には3倍弱にまで増えました。

ここまで価格競争が激化すると、業者は必ず電力のクォリティを落とします。

そのために頻繁に周波数の変動や瞬間停電が起きて、ミリ秒の停電のために工場で製品が廃棄処分になる事件があい続ぎました。

今の工場はすべてコンピュータ管理ですから、瞬間停電で今までのすべての作業が飛びます。これに懲りて、ドイツ製造業は海外逃避をするようになりました。

瞬間停電など、放射能禍と較べたらという俗論があるようですが、違います。

もし、脱原発をしたいのなら、このような具体的問題をひとつひとつあらかじめ検討して、解決案を作っておく必要があります。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-4e06.html

また、儲からない新規の技術投資送電網のメンテナンスを避けるようになっていきます。

ドイツネットワーク庁という電力網のコントロールをする官庁では、毎年の冬を迎えるたびに薄氷を踏む思いだといいます。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-19d4.html

また新規の送電網建設を渋るようになり、それが風力発電所の新規着工の妨げになる場合も出始めました。

Photo_3

                         (「脱原発を決めたドイツの挑戦」 熊谷徹)

そしてなにより、国民生活と経済を直撃したのが電気料金の値上げです。上図でおわかりのように、ドイツでは電気料金に実に39.2%もの賦課金(税金)が課せられています。

これらが、国内のグリーン産業の育成につながるのなら我慢もできるでしょうが、残念ながら大部分は海外投機筋や、中国製パネルメーカーの懐に転がり込みました。

ドイツは2011年1月には、再生可能エネルギーのための助成金の急増がたたって、700社の電気会社が6~7%の電気料金値上げをしました。 

この急激な電気料金の値上げに対して、ドイツ国営放送ZDFの世論調査では、再生可能エネルギーの負担金の引き上げについて、77%が「賛成できない」と答えています。「賛成」は21%、「その他」が2%です。

しかし、いまさら「賛成できない」と言っても、FIT(固定価格全量買い取り制度)は20年間先まで高額価格が決まってしまっていますから、もう引き返すわけにはいきません。

メルケル政権のレスラー経済大臣は、このような太陽光発電に与えてきたFIT(固定価格全量買い取り制度)による助成金制度を「甘い毒」とまで呼んで厳しく批判しています。

これはお金をもらう業者は一時的に潤っても、それにやがて頼る麻薬中毒患者のようになってしまい、国民生活と経済が圧迫されるからです。

そこで、2012年4月1日から、ドイツ政府は太陽光発電の買い取り価格を20~26%に一挙に下げるだけでなく、毎月0.15ユーロセント下げていく決断をしました。

これは、たとえば10キロワット未満の屋上設置型太陽光発電の場合、2016年までにほぼ半分にまで買い取り価格が下がることを意味しています。(下図参照)

Photo                        (同上)

このようにドイツは、スペインについでFITの大幅縮小と太陽光発電からの事実上の離脱を宣言しました。

そしてもう少し現実味のある再生可能エネルギーであるオフショア(洋上)風力発電にシフトを開始しています。

また一方、太陽光から風力にシフトすることで再生可能エネルギーの可能性は育てながらも、ロシアと天然ガスのパイプラインを直結するなどして火力発電所のエネルギー源は確保し続ける努力をしています。

飯田哲也氏のミスリードは、原発ゼロの代替を再生可能エネルギーとしたために、その急激な拡大を図るためにFITを導入し、さらには発送電分離までをも一体のものとして論理構築してしまったことです。

冷静に考えれば、これらは本来別々なものではないでしょうか

原発ゼロの代替は再生可能エネルギーである必要はなく、ならばFITという矛盾に満ちた制度も不要であり、発送電分離に至ってはなぜここで出てくるのかさえ不思議です

このようにふと我に返ると、なぜこんなことにこだわっていたのだろうと思う時があります。そのような時は、最初の場所に戻ることです。

つまり、私たちが本当にやりたかったことは原発をなくすことだったはずじゃないですか。

再生可能エネルギーはそのためのツールでしかないはずで、目的ではなかったはずです。ところがいつしかそれ自体が目的と化してしまいました。

そこからFITというドロボーのような制度が必要となり、本来別次元の発送電分離まで飛び出したのです。

飯田氏の言葉のマジックに惑わされないで、初発の「脱原発」に戻りませんか。まだ間に合います。

 

■写真 関東も寒波で冬の田圃か寒そうです。

■明日明後日は定休日です。月曜日にお会いしましょう。

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1

「ドイツ連邦議会(下院)は29日、太陽光発電の買い取り価格を大幅に引き下げることを柱とした「再生可能エネルギー法」改正案を賛成多数で可決した。4月1日以降に導入した太陽光発電は原則として、規模に応じて価格を約20~30%引き下げる。

ドイツは再生エネルギーの普及を図るため、送電事業者に買い取りを義務づける「固定価格買い取り制度」を採用。これにより太陽光発電は急速に拡大し、設備容量で世界一になった。しかし価格は電気料金に上乗せされるため消費者負担が膨らんでおり、太陽光発電の普及を事実上抑制する形に方針転換する。

法案によると、屋根に取り付けるなどの小規模発電は1キロワット時当たり24.43セント(約27円)から19.50セントに引き下げられる。規模が大きくなると引き下げ幅も拡大、5月以降も毎月価格を下げる。

太陽光発電は風力などに比べ、価格が高く設定されている。価格の見直しは定期的に行われていたが、これまでは10%前後の下げ幅だった。」
(日経新聞2012年3月30日)

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コメント

飯田氏のミスリードという次元ではないのではと、私は危惧しています。

太陽光発電のドイツの失敗を、経産省や環境省、電力幹部は絶対に最初から認識していたはずです。詳細な分析も既に持っていたと思います。

計画が頓挫し電気料金高騰等によって社会に悪影響を及ぼすことを想定して、原発再稼働の布石にしようとしているのではないでしょうか?
あえて、脱原発に最も不適当な方策を採用したのかもしれません。

もちろん、脱原発の論点をはぐらかす狙いもあると思います。

いつも興味深く拝見してます。この記事を見てふと気になったのですが、図表13の解説では「ドイツでは電気料金に実に36.3%もの賦課金(税金)が課せられています。」とありますが、これ税金の比率のことではないのですか?39.2%だと思うのですが。また、税金の比率にせよ発電・販売コストの比率にせよ、ドイツより高い事例があるのはどういうことなんでしょうか…。

ご指摘のとおりで39.2%です。訂正させていただきました。他の国で高いのは個別の事情もあるのですが、デンマークなどは海上風力発電所の拡大を国策化しています。スペインはドイツと同じ太陽光と風力に課題なFITをしています。そのためではないかと思われます。

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