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大飯原発再審査へ 権威なき「原子力の番人」は無に等しい

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この7月に原発が再度ゼロになる可能性が生まれました。大飯原発3、4号機も停止する可能性が高まったからです。(資料1参照)

もっと早くやってほしかったくらいで、しごくまっとうな判断だと思います。 

この大飯原発の再稼働は、初めから疑問だらけの決定でした。悪い意味での「政治主導」の典型でした。 

当昨年初夏に関西電力が発表したのは、怪しげな電力需要量の読みでした。

しかも何回か大阪市あたりから突っ込まれるたびに上方修正を繰り返すという無様さで、聞かされる国民の側は、「ウソだろぅ~。なにか隠しているに違いない」という気分にさせられたものです。 

そして菅首相の思いつきで始まった政府のストレステストや「安全判断基準」が出され、それを原発立地マネーで四の五の言えない福井県の県原子力安全専門委員会がお墨付きを与えました。 

この報告書が西川福井県知事に提出され、知事は、大飯町の時岡町長と県議会の同意を得て再稼働同意の決断を下し、さらにこれを受けて、首相と関係3閣僚が再稼働を決定してしまいました。 

今これを読むと、「脱原発のために再稼働する」と読めて苦笑が込み上げてきます。(資料3・4参照)

原発を動かしたくてたまらない利害関係者が、形式だけ整えて作った出来の悪い創作劇のようなものです。 こういうのをお手盛りとか、茶番といいます。

こんな時に、大阪市特別顧問という肩書をもらった飯田哲也氏が揚水発電所の存在を暴露したときには、関西電力の電力供給不足の論拠そのものが崩壊してしまっいました。あれあれ。

思えば、あの時が飯田氏が一番カッコよかった時で、あのまま政治家なんぞになろうと思わずに在野の自然エネルギー研究者のままいてくれたらよかったのですが、実に残念。 

まぁそれはさておき、半強制的節電運動で街や家庭を暗くして、工場を操業短縮に追い込んだあげく、政府の大飯原発再稼働となったわけでした。 

では、現実に夏を過ぎての電力需給の結果はどうだったでしょうか。

001             (図 毎日新聞2012年9月3日より 資料5参照)

上図は関西電力管内の電力需給グラフです。これを見ると、大飯原発が稼働を開始した7月9日から右肩上がりに電力供給は増えて、8月初めには3000万キロワットの大台に載せています。 

整理すると、関西電力管内の電力需給はこのような結果になりました。

・1日のピーク時電力使用率が90%を上回った日数・・・3日間(7/6、7/10、8/17)
・電力使用率が10%以上余裕があった日数     ・・・50日間
・昨年夏の関電の最大供給能力            ・・・3000万キロワット超
・昨年夏のピーク時電力需要              ・・・2682万キロワット(8月3日)
・実際の平均的電力需要量               ・・・2500万キロワット弱の日が多い     

 つまり昨年夏の全期間を通して、500万キロワット程度の余裕があったことになります。 

これは大飯原発3、4号機がそれぞれ117.5万キロワット、計235万キロットですから、大飯原発4基分。まったく大飯原発の再稼働は不要だったことになります。 

その上、電力各社の余裕電力は669万キロワットありましたから、十分な電力融通が可能だったわけです。

ちなみに関西電力と中国電力はダイレクトに送電網が連絡しているので、周波数の変換なしに、簡単に融通してもらえたはずです。 

むしろ関西電力は、出力調整ができない大飯原発を再稼働させたために、原子炉は出力調整が効かず、火力発電の稼働を動かしたり止めたりして供給調整しています。

技術的にしかたがないとはいえ、これだけ大騒ぎしてなにをやっているのかと言いたくはなります。

このような7月の政府の再稼働について、9月に出来たばかりの規制委員会はいきなりの判断を迫られることになりました。 

規制委員会の田中俊一委員長は、学者に似合わすズバリとものを言う人ですが、ことこの大飯原発再稼働については歯切れがよくありません。 

田中委員長はこう述べています。
インタビュー全文
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post.html

「大飯原発に今、差し迫った危険があるかについては、そうではない。ストレステストや政府の判断を鵜呑みにしているわけではなく、仮に(断層の直上にある)冷却用取水配管が地震で壊れたとしても、どれくらい冷却できるかなどは把握している。」 

つまり、政府の言ったストレステストや安全判断基準などは信じていたわけじゃないよ、しかし活断層であるということに関しては意見が専門家でも分かれたので、もっと調べてくれと言った、冷却系の一部が壊れても大丈夫だ、というわけです。

う~ん、ですね。この部分だけ取り出して読む人がいると、規制委員会に対して不信感を持つでしょう。「どれくらい冷却できるか把握している」って言われてもねぇ。

試しに壊してみるわけにはいかないから、最大限危機を想定して頑丈に作るんじゃなかったですか、田中さん。

そこで、田中委員長としては今もまだ保留だと言いたいわけです。だからこそ、今度は規制委員会が自ら作った新安全基準に照らして審査し直します、というわけです。 

そこなのです。問題の本質は、大飯原発が危険であるかないかではなく、それを利害関係者の「お手盛り」審査ではなく、原子力の番人が厳重に検証すべきだったのです。

もちろん田中委員長は、この大飯原発同再稼働に対しての規制委員会の判断を十全に正しいと思っていないはずです。

思っていれば゛再審査などする必要はありません。居直っていればいいのです。 それが出来ないのは田中委員長の科学者としての良心なのでしょう。

本来は、規制委員会はあのようないいかげんな「政府安全判断基準」は蹴飛ばすべきで、即刻大飯原発の再稼働を停止させて検証に取りかかるべきでした。

稼働を停止しなければ、原子力施設直下の活断層は調査できませんからね。 

あの時、政府に「規制委員会が作る新安全基準で審査するまで止めておけ。稼働を審査するのは私たちだ」、と言い切れば良かったのです。 

原子力規制は唯一科学に依拠し、政治や経済を超越する、その意味のことを言ったのは他ならぬ田中委員長だったはずです。

これが「原子力の番人」の仕事です。これを立ち上がった前に動かされてしまい、しかも地層調査の意見が分裂したために、グズグズの玉虫色になってしまいました。 

これは規制委員会の権威を大変に損ねました。地層調査の結論が出なかったことではなく、稼働を止めて検証する「蛮勇」が必要だったからです。

しかしあれ以降、規制委員会は鬼になったようです。国民から規制委員会は政治的圧力に屈したと思われたのがよほど悔しかったのでしょう。 

そうです。あの停止を命じられなかったことは、原子力規制機関として命取りになりかねない誤った判断でした。ふさわしい権威なき規制機関は無に等しいのですから。

この夏、「原子力の番人」・規制委員会にはあの屈辱をぜひ晴らしてほしいと私は願っています。

■明日明後日は定休日です。月曜日のお越しをお待ちしています。

■写真 強霜に凍えている稲苗

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■資料1 大飯原発、7月に停止要請の可能性 原子力規制委員長示唆
産経新聞2013.1.23
 

原子力規制委員会の田中俊一委員長は23日の定例会見で、国内で唯一稼働している関西電力大飯原発(福井県)について、原発の新安全基準ができる7月に「大飯だけ例外扱いできない」と述べ、停止を求める可能性を示唆した。再び「原発ゼロ」になり、関西の夏の電力供給に影響を及ぼす可能性がある。 

 大飯原発は9月に定期検査に入るため停止は予定されていたが、2カ月前倒しになることもあり得る。田中委員長は「安全審査には時間がかかり、7月に事業者から申請が出てもすぐに判断はできない」と述べた。 

 ただ、新安全基準の骨子は3月に示されるため、関電が事前に対応を進めて、7月までに基準を満たしていれば、運転を継続させる可能性にも言及した。 

■資料2 田中委員長、大飯原発についてのインタビュー発言(抄) 

科学技術的にデータを出して「グレー」であれば安全側に立つという判断もあろうが、大飯の場合は調査した専門家の間で、活断層であるという意見とそうではないという意見で分かれた。活断層だと言いたい人は、どうであってもずっと活断層だと言いたがる。しかし、それは科学とは違うから、私はもう少し調べてくださいと言った。それで今、早急に調べようとしている

単なる不十分なデータを基に白黒の決着をつけてよい、という簡単な事柄ではない。敦賀原発のように(活断層の可能性が高いということで)意見が明らかに一致すれば、その場で私も感想を述べたように「現段階では(再稼働は)難しい」となるわけで、それぐらい(意見を)明確にしてほしい。

大飯はそうした判断ができないということだ。山の上のトレンチを掘ったらF-6断層(活断層と疑われていた断層)の場所とはずれていたし、海側に地滑りしたのではという説もある。その可能性を強く指摘している岡田篤正教授(立命館大学)は日本の変動地形学で草分け的な方だ。だからこそ、きちんと明らかにすべきだと考えた。明らかになった時点で(運転停止要求を)やればいい。  

それに、大飯原発に今、差し迫った危険があるかについては、そうではない。ストレステストや政府の判断を鵜呑みにしているわけではなく、仮に(断層の直上にある)冷却用取水配管が地震で壊れたとしても、どれくらい冷却できるかなどは把握している。
(赤字引用者)

資料3 大飯原子力発電所3、4号機の再起動について
官邸HP2012年 4月3~13日
 

第6回会合の終了直後の会見で発表された概要は、次の通りです。 

(会見者=枝野経済産業大臣) 発言要旨はこちら全文はこちら 

  1. 政府は「脱・原発依存」の方針。今回の会合も、その枠内で行われたもの。 
  2. 昨年来、原発の安全確保対策を確実に積み上げてきた。 
  3. 徹底的な事故検証から得られた知見の集大成として、「再起動に当たっての安全判断基準」3点を整理した。 
  4. 大飯3、4号機は、その3基準を満たしていると確認した。 
  5. 「安全性」が確認できても、「必要性」が認められなければ、再起動の判断には至らない。 
  6. 関西電力の供給力積み増しを加えてもなお、このまま夏を迎えた場合、厳しい電力不足の可能性。
    代わりに火力発電を最大限活用するとなると、コスト増で、遠からず電力料金値上げも避けられない。そのため、「必要性」はあると判断。
     
  7. 政府として、国民の皆さまや立地自治体の理解が得られるよう全力を挙げる。
    理解が得られた後、再起動の是非を最終決断する。
     
  8. 今後も各発電所について、その都度判断していく。 
  9. 今後も脱・原発依存の方針に沿って、具体的取組みを積み重ねていくことをお約束する。          (太字原文ママ) 

■資料4 野田首相再稼働にあたっての会見全文http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/2012/0608.html 

■資料5 大飯原発 必要だったのかなぁ、再稼働 火力発電止め、余裕調整 そんな本末転倒さえも…
毎日新聞2012年09月03日
http://mainichi.jp/feature/news/20120903dde012040009000c.html

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