我が国の「報道の自由度ランキング」世界53位に急落 原因は福島原発事故
「国境なき記者団」の毎年恒例の「報道の自由ランキング」で日本は、22位から53位に急落したそうです。(欄外参照)
なんでまた、と思ったら、原因は福島第1原発事故のようです。いきなり納得(笑)。
まぁ当然ですね。
あれだけ政府当局が、「炉心融解はしていない」だの、「ただちに健康に影響を及ぼす数値ではない」だのと明らかに虚偽の情報を出しまくり、放射能雲の拡散予想図を持っていながら公開すらしませんでした。
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あの時、国民はドイツ気象庁が発表する拡散シミュレーション図を見ながら、在野の火山学者が出したマップで自分の置かれた状況を推測していたのです。
そして避難区域を小出しに広げ、一度逃げた場所のほうが前の地域より線量が高いという悲劇すら起きました。
その結果、数十万以上の方々が被曝しました。そしてそれがわかったのが、事故後5ヶ月経ってからですから、思い出すたびに歯ぎしりしたくなります。
いっそう事故直後、米国のように80㎞以内の避難を指示していたらとすら思います。と言っても、今作っている自治体ごとの避難計画もなかったのですから、やりようがないか。
安全・保安院はまったく機能せず、官邸に唯一いた原子力の専門家であった斑目委員長は、菅首相に子供のように怒鳴られて小さくなっていました。
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http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-3e3b.html
保安院のスポークスマンは経産省出向組のズブの素人だったので、いっかな要領を得ず、質問にも正確に答えられないことがたびたび出ました。
無能だから隠蔽体質なのか、隠蔽したいものが沢山あるほど無能なのか、いずれにせよこんな危機対応は、53位どころか、179位でもいいくらいです。
というか、ここまでくるともはや統治能力の不在というべきでしょう。
一方フランスにおいては、事故直後から連日フランス原子力安全院(ASN)と、その研究機関であるIRSN(フランス放射線防護原子力研究所)が、原子物理学、放射線防護学、放射能災害の専門家たちをずらりと並べて、長時間の記者会見を開いていました。
情けない話ですが、我が国の素人スポークスマンと、「自己弁護士」の官房長官がする会見の数十倍は内容があったことでしょう。
それはさておき、「チェルノブイリ級の事故である」と発表したのは、IRSN所長ルピュサールでした。それは事故後3日後の15日、大統領まで含んだエリゼ宮における会議の席上でした。
フランスは公式、非公式の両方のラインで、日本政府に情報公開を要請したのですが、なしのつぶてでした。
フランスが情報を得たのは、米国経由で英国から伝えられたものです。
この米国情報すらも、米軍が勝手に無人偵察機を福島第1原発の上に飛ばして得たもので、それを日本政府に教えてやったりもしています。一体どこの国の事故なんでしょう。
それにもかかわらず、フランスは少ない情報の断片をつなぎ合わせるようにして、IRSNは3月21日のサイトで、「チェルノブイリ級」と正式に公表しました。
日本政府がレベル7、すなわちチェルノブイリ級であることを公表したのか4月12日です。
また我が国の安全・保安院が、「3号機で焼き固めたペレットが溶けて崩れている」という分かりにくい表現で炉心融解を認めたのが4月18日。
そして東電が、「1から3号機の原子炉の燃料棒が一部溶解している」と認めたのが、4月20日のことです。
フランスが政府内で、炉心融解発生・チェルノブイリ級と認識したのから実に1カ月後もたってのことでした。
安全・保安院は規制機関でありながら、原発周辺で高い放射線量が測定されていたにもかかわらず、暫定評価としては「レベル5(事業所外へのリスクを伴わない事故)」と言い続けていました。
このような政府中枢、東電、安全保安院までが一体となった事実隠蔽こそが、原子力事故でもっともあってはならないことであり、国民は国が出す情報に対してまったく信用をしなくなります。
これが空前の風評被害の温床となりました。
諸外国からは日本の事故情報隠蔽に強い批判が寄せられました。(原発事故調査国際会議の発言より)
米国NRC(原子力規制委員会)の元委員長 リチャード・A・メザーブ元委員長
「日本政府や事業者は国民の信頼を失っている。意思決定の根拠を明らかにし、透明性を確保する必要がある。」
スウェーデン保健福祉庁 ラーシュ・エリック・ホルム長官
「危険だという情報もすべて提供しなくてはならない。」
韓国科学技術院チャン・スンファン教授
「(政府の冷温停止状態宣言について)原子炉内の現状が評価できていないなか、どうして安全だといえるのか。」
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-c25f.html
このような醜態を二度と演じてはなりません。そのために平時における原子力規制、「予防・予知」に並んで重要なことは、事故時における原子力規制委員会の危機対応機能の強化です。
危機管理の中には、事故時の情報の出し方も含まれており、福島事故の失敗を踏まえて徹底した検証と再構築が必要です。
一元的に情報の出口は規制委員会が行うべきでしょう。
現行のように、政府が政治的思惑で事故を過少に発表したり、隠蔽したりするのを防ぐためには、情報の発信元を規制委員会に統一するべきです。
そして事故対処に対しても、規制委員会に所属する事故危機管理官が最高指揮を執るべきでしょう。
政府はその責任だけを取ればいいのであって、当時の首相のようにろくな知識も持たないくせに現場指揮まにで介入するなどもっての他です。
そのために、電力会社と政府の対策本部が二重になっているシステムは廃止し、規制委員会に権限を集中できる危機管理指揮体制を作るべきです。
このことは長くなりましたので、別稿にしたいと思います。
とまれ、このように「強い規制委員会」というキイワードを入れると、いろいろと福島事故であった混乱がかなりすっきりと解決できることに改めて驚かされます。
■写真 不思議な風景ですが、湖の養殖生け簀です。こんな写真を毎朝6時に湖畔を歩きながら撮っています。朝日が上がりきるより、その直前のほうが美しいですね。
かくして撮り貯めた湖写真、うん百枚。毎日眠いのはこのせいか、春が近いからか、生まれつきか。
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■日本、53位に急落=マリ後退、ミャンマー上昇―報道自由度ランク
時事通信 1月30日
国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」(本部パリ)は30日、世界179カ国・地域を対象とした報道の自由度に関するランキングを公表した。日本は、東日本大震災後の東京電力福島第1原発事故に関する情報アクセスに問題があるなどとして、前年の22位から53位に急落した。
イスラム武装勢力が北部を占領しフランスの軍事介入を招いたマリは、2012年春のクーター後に記者への暴力行為が増えたとして前年の25位から99位に後退。一方、最下位グループ常連だったミャンマーは、民主化への取り組みが評価され169位から151位に、アフガニスタンは150位から128位にランクを上げた。
エリトリア、北朝鮮、トルクメニスタン、シリアのワースト4は前年と同じ。北朝鮮に関しては「金正恩体制発足後もニュースや情報の完全な統制に変化はない」と厳しい評価を下した。トップ3はフィンランド、オランダ、ノルウェーで、上位のほとんどを欧州諸国が占めた。
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これまで、情報の提供が無用な混乱を引き起こす・・
と言う行政側の理由で、隠蔽されたり、情報提供が遅れたり、歪曲(作為的に)して伝えられ、その結果責任を取らなかった事が、今回の事件・事故で、より大きな被害をもたらせる事に繋がりました。
正しい情報が迅速に伝えられていたら、被害にあわなかった、或いは最小限の被害で済んだ可能性もあります。でも、その責任は誰もとっていません。(拡大解釈して政権交代が責任と言えばそうかも?)
原発は「クリーンで安全」、地球温暖化防止にも効果あり、事故なんて絶対起きない・・なんて信じさせられてきた事が、今回脆くも崩れたのですから、危機管理は勿論、稼働中・停止中関わらず、委員会での検証を、横やりが入ろうが粛々と行ってほしいと思います。
投稿: 北海道 | 2013年2月 1日 (金) 11時19分
北海道様。大きな地震があったようですが、大丈夫だったでしょうか?
投稿: 管理人 | 2013年2月 3日 (日) 09時45分
管理人様ご心配おかけしました。
震源地は私の町から西へ20㌔ぐらいの所の様です。
震度は5弱だったので、10年前の十勝沖地震に比較して、軽く済みました。
茶箪笥からコップが落ちて4~5個割れたのが被害と言えば被害ですが、私も相方も怪我も無く無事でした。
町内の酪農家4戸で断水となりましたが、夜中から朝まで色々手配して、午後3時半ごろ通水完了しました。(土壌が凍結しているので、断水箇所を探すのが大変です)
かなり以前に、管理人様に送った「酪農現場における災害対策マニュアル」に記載してある、水道設備を2年前から整備していましたので、水を宅配するだけで搾乳作業(機器の洗浄等も含めて)など支障なく終わらせる事ができました。
整備にあたっては、若干の額を支援した為、所属組織の理事者に色々言われましたが、ごり押ししてでも整備しておいて良かったと思っています。
「備えあれば憂い無」と言った所です。
本当は「宝の持ち腐れ」が良いのですが・・・
ご心配おかけしました。
投稿: 北海道 | 2013年2月 3日 (日) 20時58分