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2013年2月

TPP 浮足立つ必要は必要はないが警戒は必要

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「ニューズウィーク」(3月5日)には「オバマの無気力外交」と題されて、「世界をダメにする」とまでダメぶりを批判されています。 

伝統的に米国民主党びいきの「ニューズウィーク」誌ですらそう思うのですから、私たち日本人にはそれ以上に見えてもあたりまえです。 

第1期めの飄然とした青年大統領の姿は消え失せ、2期目が始まったばかりだというのに、鈍い表情で投げやりな政権末期的ムードすら見え隠れします。 

安倍首相の訪米時の内外記者会見では、意気込んで熱く語る首相に対して、なんとそっぽを向いている時すらあり、記者の質問にはすべてパスといった「クール」ぶりです。 

オバマ大統領のビジネスライクなクールぶりは、米国内でも悪評のようで、あれはクールなんてもんじゃなくて「コールド」だろうと言われているとか。 

あの共同記者会見でも、目立った大統領発言はほとんどなく、足を組んだまま国務省官僚の作文を棒読みして、「日米同盟はアジア太平洋地域にとって中心的な礎だ」と言ったようですが、なにを今さら。そんなことは米国首脳としては常識以前ではないですか。

TPP、尖閣といった今の我が国が直面する問題については、完全に口を閉ざしていました。どうやら、オレは、アフガンとイランで手一杯なんだから、中国とまでメンドー起すなよということのようです。
 

新華社電はこのオバマ氏の昼食会のみで済ました「冷遇ぶり」を嘲笑しています。

もっとも人民大会堂で小沢訪中団の国会議員ひとりひとりと写真まで撮ってくれても、日中関係は緊密にはなりませんでしたがね(笑)。

それはともかく、この中でうがった表現がありました。 

中日関係を制御可能な対立状態にしておくことが米国の最高の利益だ」という部分です。なるほど中国、あんがい冷静に観察しているじゃないですか。 

中国の思惑はともかく、今後尖閣については米国は、「制御可能」な範囲で我が国を消極的に支持しても、それ以上の厳しい状況になった場合、それは確約できないということのようです。 

さてTPPです。この新華社記事の「尖閣」の部分をTPPに置き換えてみましょう。「TPP問題において、日米関係を制御可能な対立状態にしておくことが米国の最高の利益だ」。 

安倍首相は、日米関係の建て直しの真っ最中であり、菅政権からのお荷物であるTPPを民主党のようにちゃぶ台返しするわけにもいかず、いかに国益を損なわずに軟着陸するかが問題だったはずです。 

このような安倍首相の意気ごみとは別に、米国は従来の姿勢をほとんど変えていません。 

共同声明では、米国の主張どおり「包括的で高い水準の協定を達成していく」ということをベースにして、以下のことが述べられています。(欄外原文参照)

①日本側は一定の農産品で、米国側は一定の工業製品(=自動車)でセンシティビティを抱えていること

②全ての物品が交渉の対象とされること

③最終的には、交渉の中で決まっていくものであること

④一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものでないこと 
 

⑤自動車や保険について残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処すること

⑥TPPの高い水準を満たすことについて作業を完了すること
 

まず問題は、②の「全ての物品が交渉の対象」という部分です。 

う~んですね。この部分は野田前総理ですら、一応は拒否したわけで、突っ張ってほしかったと思います。この部分を認めてしまうと、農業関税などの重要品目が守りにくくなります。 

と言っても、米国相手に「聖域なき関税撤廃」という日本的あいまい語では通じなかったはずです。 

外務省は、「eliminate tariffs with no sanctuary、eliminate tariffs with no sanctuary」という表現で米国側と事務方同士の事前折衝をしたはずですが、難色を示されて、結局「it is not required to make a prior commitment to unilaterally eliminate all tariffs upon joining the TPP negotiations.」という表現に落ち着きます。 

その結果、両国の原則が並列されることになりました。米国の交渉原則はあくまで「全品目がテーブルに乗る」(オン・ザ・テーブル)ということです。 

そして日本側が望む「聖域」(サンクチュアリ)をあらかじめ排除(エリミネート)することなく、交渉する(ネゴシエート)し、その交渉次第で互いに重要品目(センシティブ)があれば認めようということのようです。 

この部分で米国は、いささかも日本に譲歩していません。ただ、表現に配慮しただけです。 

新聞報道によれば、安倍氏は、「聖域なき関税撤廃があるのならば交渉参加は出来ない」と、「コールド・オバマ」に直言したとのことで、それは素直に評価します。 

日本的あいまいさを嫌う米国人の中でもひときわクールな弁護士気質で、しかも日本に対する関心などはいささかもないオバマ氏に、日本的な国内事情などは言うだけヤボというものですから。 

そこでオバマ氏としては、「そうか、センシティビティでアベの面子を立ててやらないといかんのか。少し飲み安いように脚色するか」と思ってあのような持って回った表現に落ち着いたようです。 

ですから、状況は大きく進展したわけではなく、お互いに原則を言い合ってこれからネゴシエート(交渉)していこうね、ということにすぎません。 

まぁ、日本側としてはあたりまえのことでも、共同声明で公式文書の形で明文化してみせたことに意義があるわけです。 

米国としても、鳩山首相の時のような言った、言わないという低レベルの水掛け論はもうこりごりだったのでしょう。 

日本は「センシティブ」な農産品があることが確認され代わりに、米国にもセンシティブな工業製品(自動車のことですね)があることを認めさせられています。これは失点です。 

米国の自動車関税などはたかだか2.5%にすぎず、そんなものはとっくに円安でお釣りがきています。

つまり円安で意味がなくなりかかっている自動車関税と、絶対譲れない農業関税を不等価交換してしまったことになります。 

産業界からすれば、たいした実害もなく、農業に圧力をかける材料を得てしまったことになります。 

米国自動車産業界は、自分の努力不足を棚に上げて、日本の自動車関税がゼロにもかかわらず、軽自動車の税率などにイチャモンをつけてくるはずです。 

農業は重要品目として、どこまで「オン・ザ・テーブル」できるのかが問題となりました。米の関税といっても、私が勘定したわけではありませんが、一説百種類あるとか言いますから、どうなりますでしょうか。 

ところで、わが農業界は全農を中心に一斉に「違約だ」と言い始めています。「日本農業新聞」などは「関税自由化の保証がない」という言い方をしています。 

どうしてこういう非常識な言い方を「日本農業新聞」はするのでしょうか。 

首脳会談の場で、オバマ大統領が「コメの関税はいいとしましょう」などと「保証」するはずがないじゃないですか。ハイレベルの会議がどのようなものかという国際常識が欠落しています。 

現時点では国内議論の場にボールが投げ返されただけということにすぎません。 

一方、TPP大好きのマスコミはテレビ、新聞でもう決まったような報じ方をしていますが、冗談ではありません。そういう「空気」を推進派が意図的に作り出しているのにまどわされてはダメです。 

たしかに、政府の言うとおり、政府の専権事項というのは、行政上はその通りですが、政権公約とした以上、密室では決まりません。 

これからの議論の中で、論点を明確にしていくべきです。この論点は、予算委員会で安倍首相に厳しい質問をした山田としお議員(自民)のまとめでいいのではないかと思います。 

①日本側の言うセンシティビティな農産品とは何を指すのか、米国側の工業製品というのは何を指すのか、どんな問題を抱えているのか 

②事前協議において、さらなる懸案事項であという自動車や保険、そして非関税措置とは何を言うのか 

③全てが交渉の中で決まると言っても、交渉に際して、あらかじめ関税撤廃でないものとして打ち出すものは一体どんなものであるのか 

④統一的な影響試算 

私はコメ、砂糖、乳製品、畜産品などは重要品目として守られる可能性が高いと思っています。 

畜産品、砂糖は米国も関税でブロックしており、ことこの部分では立場が日米の利害が一緒だからです。 

NZなどはギャギャー言うでしょうが、日米というTPPのGDPの大部分を占める両国が共闘すれば、この部分は大丈夫だと思います。 

むしろ米国の狙いは、関税そのものよりよりむしろ非関税障壁の撤廃にあります。自民党の「6条件」にも明らかなように「聖域」を確認すべきは、医療や保険などの非関税障壁なのです。 

この部分に関しては共同声明に盛り込まれていないこともあり、大きな不安が残ります。 

首相は国家言い答弁でこの部分も守ることを言明しているので、改めて釘を刺しておかねばなりません。 

米国は、今までの常套手段として自国の経済的利害を「日本国内からの提言」の形を取ります。 

ですから、間違いなく、産業競争力会議や経済・財政諮問会議に大量にいる新自由主義者・構造改革論者の提言の形をとってきます。 

これらの諮問会議の提言と、共同声明が言う、「その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業」が一対になる形で「既得権益」の切り崩しにかかります。 

注意せねばならないのは、最悪、TPP交渉に参加するために事務方の事前協議のレベルで非関税障壁に対する米国の要求を飲んでしまう可能性もありえます。これは交渉の進捗状況をガラス化することで、防がねばなりません。 

オバマ大統領はTPP交渉の年内妥結を宣言していることもあって、浮足だつのもわからないではありませんが、大騒ぎする必要はありません。極端に言えば、来年、再来年まで引っ張っていけばいいのです。 

むしろ、農業界が大騒ぎを演じれば、「TPPは農業が既得権益を守りたいために進まない」という経団連の言い分を裏付けてしまうことになります。 

産業競争力会議はJAの解体まで視野に入れており、ただ反対では彼らの思う壺にはまってしまいます。 

参院選を背景にしているだけに、こちらには有利です。数的にも与党内部では圧倒的に反対派が多数です。 

最後に、我が農業界の中に存在する極小派のTPP推進派ですが、この人たちはみっともないから引っ込んでいてほしいものです。 

特に農業界から総スッカンを食ってキャノンに拾ってもらった元農水官僚の山下一仁氏などは、妙にウキウキとしゃべりまくっているようですが、自分の考える「JA解体=農業改革」が受け入れられなかったからといって、TPPで国を売るのは止めて頂きたい。 

浅川芳裕氏(「農業経営者」(副編集長)も勝手に農産物の輸出を伸ばして下さい。止めやしません。しかし、高級りんごを何個売ったら車一台分になるのですか。 

これらの人々は、自分の日本農業に対する願望やルサンチマンを、TPPの形で晴らしているにすぎません。 

そしてTPPを農業問題に矮小化する産業界の一部にうまく利用されてしまっています。 

外圧利用で一挙に自分の考える「農業改革」を実行してしまうという歪んだ根性がたまりません。 

この人たちは待ってましたとばかりに、「農業の国際競争力強化に向けた国内対策」を提言してくるはずです。なまじ農業の内部事情に精通しているだけに、やっかいな人たちです。 

落ち着いて「国益」がなんであるのか、本当にしなければならない「改革」なのか、ただ米国の要求だからするだけなのか、しっかりと納得いくまで議論していきましょう。

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【第一パラグラフ】
両政府は,日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011 年 11 月 12 日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。

The two Governments confirm that should Japan participate in the TPP negotiations, all goods would be subject to negotiation, and Japan would join others in achieving a comprehensive, high-standard agreement, as described in the Outlines of the TPP Agreement announced by TPP Leaders on November 12, 2011.

【第二パラグラフ】
日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。

Recognizing that both countries have bilateral trade sensitivities, such as certain agricultural products for Japan and certain manufactured products for the United States, the two Governments confirm that, as the final outcome will be determined during the negotiations, it is not required to make a prior commitment to unilaterally eliminate all tariffs upon joining the TPP negotiations.

【第三パラグラフ】
両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている。

The two Governments will continue their bilateral consultations with respect to Japan's possible interest in joining the TPP.  While progress has been made in these consultations, more work remains to be done, including addressing outstanding concerns with respect to the automotive and insurance sectors, addressing other non-tariff measures, and completing work regarding meeting the high TPP standards
                                      
(訳大野元裕氏による)

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公害大陸中国その5 地元政府によるイタイイタイ病の隠蔽

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TPPについては情報が意図的な推進派のリークによって正しく入ってこない状態なので、しばらくお待ち下さい。情報を整理して、近々書きます。

さて中断しましたか、中国人ジャーナリスト宮靖記者(「新世紀週刊」)による「中国イタイイタイ病村」の現地取材が、北村豊氏(住友商事総合研究所)によって紹介されていますので、続きを紹介いたします。

この記事の中で、宮記者は人民政府とその管理下にある大病院によって構造的隠蔽工作がなされているとしています。

そして中国政府は公的には、これだけの重金属汚染を垂れ流しながら一貫して公式には「イタイイタイ病はない」としています。 

宮記者は締めくくり部分の小タイトルをこう書きだしています。 

結論を下す際に必ず地元政府の干渉を受ける

宮靖記者はカドミウム汚染の特集記事の結論として、「中国国内にイタイイタイ病は見当たらない」という皮肉めいた文章で締めくくっています。

(1)長年にわたって、中国国内には多数の鉛・亜鉛、銅、金などの鉱山がなんらの環境保護措置が取られないまま採掘されてきた。
 

この結果、中国の耕地面積の少なくとも10%が重金属によって汚染されているが、これらの汚染された耕地に対する稲作の禁止命令は全く出されていない 

耕地請負制で自家用食糧を自給するという現実の下で、農民たちは基本的に自分が生産したコメを食べる。この結果として、一部の地区にはイタイイタイ病が発生する要件が備わることになるのである

(2)この原稿が完成するまでに、宮記者は国内に1人のイタイイタイ病患者も見つけることができなかった。 

多くの学者たちが、広西チワン族自治区陽朔県興坪鎮の「某村」でかつてイタイイタイ病の初期症状を示す患者が出現したことがあったと論文や講演で述べていたので、私は大変な苦労をして「思的村」を探し出し、原因不明の骨痛に苦しむ農民たちを見つけ出した。 

ただし、この骨痛に対する専門的な検査は行われていないし、地元政府はその原因が長年にわたるカドミウム汚染米の食用によるものとは言明していない。

(3)2カ月間にわたる取材を通じて、私は関係者と会うたびに「中国には、いったい全体、イタイイタイ病患者はいるのかいないのか」という質問を投げかけたが、回答は大同小異で「イタイイタイ病と診断された患者がいるという話しは聞いたことがないが、実際はいるに違いない」というものだった。
 

そして、多くの人たちが「中国の大病院は各レベルの政府が運営しており、環境が引き起こした疾病を前にした時、医療体制は独立を保つことができず、結論を下す際に必ず地元政府の干渉を受ける」と述べている。 

従って、中国国内には「イタイイタイ病」は存在しないのである。

告発すれば、どんな報復を受けるか


『新世紀週刊』の特集記事は、中国国内で大きな反響を呼び起こした。毎日食べる主食のコメがカドミウムに汚染され、2000万トンものカドミウム汚染米が市場に流通しているとなれば事は重大である。 

そのようなコメを食べ続けていて、健康に影響はないのか。微量ずつでもカドミウムが体内に蓄積されることで子孫に影響が出ることはないのか。こうした国民の不安に対して中国政府はどのように対応するのか。

ある地方で公害病の存在が表沙汰になれば、その地方政府の環境保護局のみならず、
衛生局、工商局など関係部門の役人の責任が追及されることになる。
 

そんなことになったら「立身出世」に差し障りが出るばかりか、責任を追及されて免職になりかねないし、下手に告発すれば、どのような報復を受けるか分からない。そういう事なら、触らぬ神に祟(たた)りなし」が一番の処世術であり、公害病はますます深刻化して行くこ
とになる。

『論語』には「過ちは改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」とあるが、中国政府が祟りを恐れず公害病という「死に神」の存在を公表するようになるのはいつの日だろうか。

 

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原子力規制委員会 中国の原発事故も想定

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原子力規制委員会が、近燐国の原子力発電所のシビアアクシデント(過酷事故)のシミュレーションを開始しました。(資料1参照)
これは今までまったく視野に入れてこなかった、近燐国である中国や韓国の原発大増産政策を初めて視野に入れたものです。
中国の全国人民代表大会代表(全人代)は2011年に、4年前の計画に比べ倍増になる原発大増設計画を打ち出しました。
これは20年までに設備容量で8000万キロワットに増設するというものです。これは07年の計画が同じ20年までに4000万キロワットとすることと比較すると、一挙に倍の規模にしたわけです。
日本原子力産業協会によると、中国政府が計画している51基(5980万キロワット)は大半が冷却用に海水を取り込める沿岸部に集中しています。
福岡-上海間の距離は890キロしかなく、今後10年で世界中の原発の総数に等しい原発が燐国に雨後の竹の子のように林立し、うち100基近くは北部九州の東1000キロ前後にあることになります。まさに悪夢です。
ところで現時点で稼働している原発は11基で、1700万キロワットです。(下図参照) Photo_2

東北部で紅沿河原発(遼寧省)が福島原発事故後で初の新設原発が稼働したと伝えられました。これはフランス製軽水炉の中国改良型だということです。

Photo_4                    紅沿河原発(赤点) Google Earth

中国が言う「改良型」とは、他国の製品を無断でコピーして、部品を安物に替えたりするスペックダウン・モデルを指すので、中国新幹線事故を知るわれわれにとっては、それだけで危ないと思えてしまいます。

そもそもフランス製原発には問題が多く、スウェーデンの原発幹部からは「フランスの軽水炉なんて誰が信用するか」と言われたという曰くつきのものです。

それを「あの」世界に冠たるコピー王国の中国がコピーして「改良した」と言っているのが、中国製100万キロワット級加圧水型炉「CPR1000」です。

中国では安全対策が今まで大きく遅れており、2011年12月18日の「人民網」(資料2参照)に、「2010年12月18日、中国が初めて自主開発・設計した100万キロワット級原子力発電所の運転訓練シミュレータが福建省の寧徳原子力発電所に導入」したとありますから、逆にいえば今まで20年間操業してきて、安全シュミレーターひとつなかったようです。

その上この建設中の紅沿河原発近くの唐山市では、1976年に直下型の大地震が起き、 死者24万人を出した唐山大地震があった地域で、中国当局の発表は例によってありませんが、紅沿河原発直下には大きな活断層があるはずです。

地震学上では、渤海湾周辺には中国で最も地震を引き起こしやすいとされる2つの地震帯があるのはよく知られていることで、 今までもたびたび大地震が発生した「地震の巣」です。

こともあろうにその真上に建設しているのが紅沿河原発で、07年に1号機の建設が始まり、現在4号機まで着工済みです。

中国原発事情に詳しいテピア総合研究所副所長の窪田秀雄はこう述べています。

「中国は学生時代の序列がモノを言う社会です。当然、電力会社の社員は威張っており、国家核安全局の職員が『もの申せぬ』雰囲気であることは容易に想像できますよね…」。
ここでもPM2.5事件と同じ構図である、規制当局がエネルギー会社よりはるかに格下のために、なんの権限もなく事実上放任状態であることか分かります。
国家核安全局が本来職務として検査すべき原子炉部品について、専門家は「品質にばらつきが大きく納期も安定しない」と指摘しており、これが一挙に8000万キロワット体制に大増産した場合、危険は予測不可能なほど高まるでしょう。
「日中協会が入手した中国側の資料によると、中国の原発1基当たりのトラブル件数は05年2・6件(日本0・3件)、07年2・1件(同0・4件)で、日本の5倍以上の割合で記録されている。トラブルがあった場合、日本は原子炉を止めて安全を確認するが、中国では稼働しながら故障を修理するという経済優先の対処法もみられるという。」
(資料1 産経新聞2月25日)
韓国もヨングァン(霊光)原発3号機(590万kW)の原子炉格納容器内の制御棒案内管で事故を起こしており、コリ(古里)では全電源停止という事態すら起きています。(欄外図参照)
この両国の原発が事故を起こした場合、偏西風に乗って風下の日本は大規模な被曝をすることになります。
中国は今までのやり口として、大事故は必ず隠匿しますから、私たちが気がついた時には頭上に放射能雲があるかもしれません。
そして日本側が調査を申し出た時には、「分解して埋めてしまった」とでも言うのでしょうか。

■韓国原発事故関連過去記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-93d6.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-bf68.html

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■資料1 中国の原発事故想定、対応策を検討、原子力規制委「次々原発が建設され、事故が起きた場合、日本に甚大な影響」
2013.2.25 01:26

 中国の原発で過酷事故(シビアアクシデント)が起こった場合、日本にどういう影響があるかなどについて、原子力規制委員会が事故対応の検討を始めたことが24日、規制委関係者への取材で分かった。国内の原子力規制機関が海外の原発事故を想定し対応策を検討していることが判明したのは初めて。規制委は今後、各国の規制機関とも協力、海外の原発事故対応について本格調査に乗り出す。 規制委関係者は中国を検討対象とした理由について、「次々と原発が建設されており、事故が起きた場合、日本への甚大な影響が考えられる」としている。

 具体策は今後議論されていくが、中国などの近隣諸国の原発がトラブルを起こし放射性物質が放出されると、偏西風に乗って放射性物質が日本に流れ着くことが予想される。日本はすでに、中国からの大気汚染物質の飛来に直面している。このため、放射性物質がどのような経路で日本にたどりつくかを示す拡散予測シミュレーションマップを作成することも考えられるという。

4月からは特に、これまで文部科学省で実施されていた放射性物質の測定業務が規制委に移管されることで、モニタリング態勢も強化できる。規制委はそのためのベテラン技術者の募集もすでに始めた。今月12日の北朝鮮による核実験では、文科省が放射性物質が大気中に漏れた場合の拡散予測を発表している。

 日中科学技術交流協会や日本原子力産業協会によると、経済成長とともに電力事情が悪化している中国は今年1月末現在、原発16基が稼働しており、29基が建設中。2020年までにさらに約50基増やす計画があるという。

 日中協会が入手した中国側の資料によると、中国の原発1基当たりのトラブル件数は05年2・6件(日本0・3件)、07年2・1件(同0・4件)で、日本の5倍以上の割合で記録されている。トラブルがあった場合、日本は原子炉を止めて安全を確認するが、中国では稼働しながら故障を修理するという経済優先の対処法もみられるという。

■資料2 中国、原発プラント運転訓練シミュレータの開発に成功
「人民網日本語版」2011年3月9日

中国の原子力発電技術の自主化、設備の国産化に関する嬉しい知らせが入った。中国の研究者が最近、100万キロワット級原子力発電所の運転訓練シミュレータの開発に成功したのだ。この成果は海外の技術独占状態を打破し、中国の原子力発電建設の大発展に確かな保証を提供する。

 2010年12月18日、中国が初めて自主開発・設計した100万キロワット級原子力発電所の運転訓練シミュレータが福建省の寧徳原子力発電所に導入。原子力発電の設計の自主革新力や重要設備の国産化率が高まり、原子力発電の運転員育成に重要な役割を果たした。新華社のウェブサイト「新華網」が8日伝えた。

 原子力発電シミュレーションは、シミュレーションの方法を使って「バーチャル原子力発電所」を建てる。原子力発電の分野では、資格を持つ運転員を十分確保することが、期限通りの生産、安全運転の重要な条件となるが、こうした運転員の育成には数年かかり、数百万元の投入が必要になる。運転訓練シミュレータは運転員の育成と資格試験を行うのに最適な装置だ。各原子力発電所は2-3プラントにつき、1台のシミュレータを設置するだけですむ。

 運転訓練シミュレータは今後数年間で50億元規模の市場が見込まれている。巨大な市場があるにもかかわらず、これまでこの市場は欧米先進国の限られたメーカーに独占されてきた。


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福島第1原発・ベント前に放射性物質が10キロ圏に拡散していた

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毎日新聞(2月22日)が、福島第1原発事故の極初期の放射性物質の拡散について、新事実の報道がありましたので紹介します。

報道によれば、福島県は
「昨年9月下旬までに20基の蓄積データを回収し解析。県のホームページに解析結果を掲載し、関係自治体に連絡した。しかし、ベント前に放射性物質が拡散していたことは周知されておらず、国会と政府の原発事故調査委員会も把握していなかった」(資料2参照 毎日新聞2月22日)。

また、
「11年3月12日に1号機格納容器の水蒸気を外部に放出する「ベント」を始める約5時間前から、放射性物質が約10キロ圏に拡散していたことがわかった。福島県の放射線モニタリングポストに蓄積されていた観測データの解析で判明した。放射線量が通常の700倍超に達していた地点もあり、避難前の住民が高線量にさらされていた実態が初めて裏づけられた。」(同上)

原子炉の当時の状況
・1号機が1日夜から12日未明にかけて、全電源喪失により炉心溶融(メルトダウン)が発生。圧力容器などが損傷し、放射性物質が外部に漏出。

ベント
第1回目
ベント ・・・3月12日午前10時17分
第4回目のベント・・・同日午後2時半頃

●周辺地区の放射線量の上昇(欄外資料1図参照)
双葉町郡山地区・・・山田地区(西5.5キロ)・上羽鳥地区・新山地区の4地点で放射線量が初回ベント前午前9時頃から急上昇し、ベント直前の同10時に32.47マイクロシーベルト(通常の約720倍)に達した。
上羽鳥地区(原発の北西6キロ)・・・4回目のベントの約30分後には、で線量が1591マイクロシーベルトに急上昇
郡山地区(原発の北2.5キロ)・・・3月12日午前5時0.48マイクロシーベルト、同6時に2.94マイクロシーベルトに上昇。ベント開始約1時間前9時には7.8マイクロシーベルトに達した。

住民への避難指示
・県が11日午後8時50分に2キロ圏
・国が同9時23分に3キロ圏
・ベントを前提に国が12日午前5時44分に10キロ圏に拡大。

●実際の避難開始時刻

・10キロ圏内の住民(約5万人)の多くが圏外へ避難を始めた時刻・・・12日午前8時頃

●国からの情報提供や避難指示がなく、各自治体の自主判断に任されていたために、てんでんバラバラの避難をして、いっそうひどい汚染地域に避難した人たちも多かった。(欄外資料3図参照)

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■資料1

Photo        (図・毎日新聞3月22日から参考の為に転載いたしました。ありがとうございます。)

資料2 <福島第1原発>ベント前 放射性物質が10キロ圏に拡散
毎日新聞 2月22日 

東日本大震災による東京電力福島第1原発事故で、11年3月12日に1号機格納容器の水蒸気を外部に放出する「ベント」を始める約5時間前から、放射性物質が約10キロ圏に拡散していたことがわかった。福島県の放射線モニタリングポストに蓄積されていた観測データの解析で判明した。放射線量が通常の700倍超に達していた地点もあり、避難前の住民が高線量にさらされていた実態が初めて裏づけられた。

【発見されたデータは】福島第1原発ベント前 放射性物質の拡散 データは放置

 県が原発周辺に設置していたモニタリングポストは25基。5基が津波で流され、20基は地震による電源喪失でデータ送信できず、事故当時、住民の避難に活用することはできなかった。県は昨年9月下旬までに20基の蓄積データを回収し解析。県のホームページに解析結果を掲載し、関係自治体に連絡した。しかし、ベント前に放射性物質が拡散していたことは周知されておらず、国会と政府の原発事故調査委員会も把握していなかった。

 最初のベントは3月12日午前10時17分に試みられ、4回目の同日午後2時半ごろに「成功した」とされる。しかし、観測データによると、主に双葉町の▽郡山地区▽山田地区▽上羽鳥地区▽新山地区--の4地点でベント前に放射線量が上昇していた。震災前の線量は毎時0.04~0.05マイクロシーベルトだったが、原発の北2.5キロの郡山地区では3月12日午前5時に0.48マイクロシーベルト、同6時に2.94マイクロシーベルトと上昇。さらにベント開始約1時間前の同9時には7.8マイクロシーベルトになった。西5.5キロの山田地区ではベント直前の同10時に32.47マイクロシーベルトと通常の約720倍を記録した。


 国の平時の被ばく許容線量は毎時に換算すると0.23マイクロシーベルトで、各地で瞬間的に上回ったことになる。数値の変動は風向きの変化によるとみられる。国会事故調の最終報告書などによると、1号機では11日夜から12日未明にかけて、全電源喪失を原因として炉心溶融(メルトダウン)が発生。圧力容器などが損傷し、放射性物質が外部に漏出したと推定されている。

 当時、住民への避難指示は、県が11日午後8時50分に2キロ圏▽国が同9時23分に3キロ圏▽ベントを前提に国が12日午前5時44分に10キロ圏--に拡大。だが10キロ圏内の住民(約5万人)の多くが圏外へ避難を始めたのは12日午前8時ごろとされ、放射性物質が広範囲に拡散し始めたのは、4回目のベントとその後の同日午後3時36分の原子炉建屋の水素爆発によるものとみられていた。4回目のベントの約30分後には、原発の北西6キロの上羽鳥地区で線量が1591マイクロシーベルトに急上昇している。

 ベント前に観測された線量は、1時間浴びたとしても胸部X線検診1回分を下回る。放射線防護に詳しい野口邦和・日大歯学部准教授は「ただちに健康に影響する線量ではない」としながらも、「どのように放射性物質が拡散し、住民がどのくらいの線量を浴びたのかは検証されなければならない」と指摘した。【神保圭作、栗田慎一】

 ◇避難指示が出る前に放射性物質の拡散が始まる

 東京電力福島第1原発事故で、国の10キロ圏避難指示が出る前に放射性物質の拡散が始まっていたことが県の解析データで判明したが、当時、周辺で暮らしていた住民はその事実を知らず、避難もしていなかった。東日本大震災で福島第1原発周辺のモニタリングポストが電源を失い、機能不全に陥っていたためだ。これは住民放射線防護の根幹に関わる重大な問題だ。


 福島第1原発事故ではモニタリングポストのほか、事故対応に当たるオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)やSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)も活用できなかった。これらの事実は、従来の備えでは深刻な原発事故に対処できないことを示している。

 モニタリングに関しては、国の原子力規制委員会で事業者や自治体を交えた議論が進む。その会議に参加した福島県の担当者は積極的な発言はせず、司会者から促されて、事故時にモニタリングポストが使えなかったことなどを伝えるだけだった。

 だが、観測データを住民避難に生かせなかった失敗を福島県が重く受け止めているのであれば、モニタリングポストの電源や通信手段の多重化を図るよう、原発のある他の自治体に提言することもできるはずだ。

 「同じ事故を二度と起こしてはならない」と主張する福島県は、自らの事故対応を再検証し、国が新たに作る「原子力災害対策指針」策定の中心となり改善を求めていくべきだ。【神保圭作】

 ★放射線モニタリングポスト 空気中の放射性物質の濃度を自動観測する装置。全国の原発周辺地域に設置されている。1時間ごとの平均線量を監視施設などにリアルタイムでデータ送信し、避難指示などに活用する。電源喪失で送信できなくなっても、非常用バッテリーで観測データを機器内に蓄積し続けることができる。

■資料3 住民避難の流れPhoto_2        (図・東京工業大学助教澤田哲生氏による。ありがとうございました。)

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週末写真館

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筑波山は信仰の山で、山頂付近の筑波山神社の参道は、昔ながらの風景が残っています。

ここは神郷(かんごおり)といって参道に入る前の街。白壁の蔵と黒塀が美しく青空に映えます。普門寺の赤門です。

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今でも神郷はかつての繁栄の跡が静かに残っています。

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昔ながらの木綿の商店は健在です。まるで大正時代に迷いこんたような不思議な街です。

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公害大陸・中国その4 村人1800人中1100人がカドミウム中毒の村

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中国のカドミウム汚染実態について、我が国ではほとんど知られてきませんでした。

中国に「ガン村」や「水俣村」があることはかなり前から知られており、訪問した日本人研究者もいるのですが、時間をかけての調査が中国政府によって拒否されているために立ち寄って外から眺めた程度のものが圧倒的でした。

その中で、中国人ジャーナリスト宮靖記者(「新世紀週刊」)による「中国イタイイタイ病村」の現地取材が、北村豊氏(住友商事総合研究所)によって紹介されていますので、紹介させていただきます。

さて、宮記者の記事には「中国米汚染の不完全分布図」が参考例として上げられており、以下の地域が記載されています。

中国米汚染の不完全分布図

カドミウム汚染米地域:広西チワン自治区陽朔県興坪鎮思的村、湖南省株
州市馬家河鎮新馬村、浙江省遂昌県、四川省徳陽地区、江西省大余県タングステン鉱山

カドミウム・鉛汚染米地域:広東省韶関市の大宝山鉱区
鉛・ヒ素汚染米地域:湖南省湘西自治州鳳凰県鉛・亜鉛鉱区
水銀汚染米地域:貴州省銅仁市の万山特区
鉛汚染米地域:遼寧省沈撫汚水灌漑区米

宮靖記者取材した地域は、①の広西チワン族自治区陽朔県興坪鎮の「思的村」と湖南省株州市馬家河鎮新馬村です。取材したのは2年前の2010年12月と翌年の1月です。

Photo_2                       Google Earthより

Google Earthで見ると思的村は険しい山あいの村で、流れが急な思的河が流れています。この村の水田は思的河を水源としているが、村の上流15キロメートルに鉛・亜鉛工場があり、これが汚染源です。

同工場の規模は大きなものではないのですが、1950年代に採掘を開始した頃にはほとんど環境浄化施設がなく、カドミウムを含んだ鉱山廃水を思的河に垂れ流しました。

それを知らずに下流の思的村が灌漑用水としたことで、土壌にカドミウムが蓄積されていきました。因果関係は明白です。

この記事で、村で会った84歳の李という老人が、身体はまだ元気だがもう20年以上にわたって歩行困難な状態で、100メートルも歩かないうちに脚や脛に耐え難い痛みが走ると訴えています。

地元の医者には的確な診断ができず、李老人は脚気だと考えているそうですが、村内にはこれと似た症状の老人が十数人いるのだといいます。

典型的なイタイイタイ病です。李老人は初期症状ですが、これが進行すると、身動きがとれなくなって寝たきりになってしまいます。

李老人は1982年に退職して村に戻って以来、既に28年間も地元産の米を食べていたそうです。

イタイイタイ病は、米に蓄積したカドミウム中毒により発症しますが、市場で必ずしも同じ産地の米を食べるわけでもない一般消費者と違って、農民は自家産米を長年にわたって食べ続けるためにより危険です。

日本でも農家から多く発生しました。我が国の7次に渡った認定裁判では、以下の4項目がイタイイタイ病認定要件となっています。(1972年6月制定)

①イタイイタイ病農耕汚染地域に在住し、カドミウムに対する曝露暦があること。
②先天性のものではなく、成年期以降に発現したこと。
③尿細管障害が認められること。
④骨粗鬆症を伴う骨軟化症の所見が見られること。
※④の条件を欠く場合、将来イタイイタイ病に発展する可能性を否定できないので要観察者と認定される。

この李老人たちは、診断するまでもなく、この要件を満たしています。

中国人研究者によっても、この村の耕地の土壌は1960年代よりも早い時期からカドミウムに汚染されていることが確認されています。

1986年に行われた土壌調査によれば、最高値で国家基準値の26倍ものカドミウムが検出されました。 中国の食品安全基準値はカドニウムが0.45㎎/ℓですから、11.7㎎/ℓあったということになります。

この中国の基準値は国際標準であり、我が国の食品安全基準では玄米で「玄米は10ppm 以上のカドミウムを含んではならない」と定められ、それを超えるものは焼却処分されています。

日本では、カドミウムがphがアルカリに傾くと吸収されやすい性質をもつため、「カドミウムの吸収を抑制するためには、pH6.5に管理する」(島根県農業技術センター)ように指導されています。
http://www.pref.shimane.lg.jp/nogyogijutsu/index.data/kado.pdf

この「思的村」の耕作地のphは不明ですが、中国大陸はおおむねアルカリ土壌ですので、昨日アップした長江河口付近の土壌分析データていどのph8ていどはあると思われます。

ph8以上になると金属は腐食しにくくなり、重金属も分解が遅れます。有機水銀や有機塩素、カドミウムなども、日本の酸性土壌と較べてはるかに土中に残留します。

日本だと炭酸カルシウムや苦土石灰などを使って土壌改良するのですが、中国農業には「土作り」という概念自体が欠落している場合が多いので、そのまま放置されているのかもしれません。

また、乾田のほうがカドミウムを吸収しやすい傾向がありますが、大陸では我が国と違って内陸部では水利が悪いために乾田のほうが多いと思われます。

このように中国農業には元来、重金属汚染を溜め込みやすい体質があります。 ただし、あたりまえですが、このような土壌的条件は、カドミウムを垂れ流していい理由にはなりません。

さて、もう一カ所の宮記者による記事にある湖南省株州市馬家河鎮新馬村はGoogle Earthでみると、思的村と同じく河川付近にあります。

Photo_3

                    Google Earthより
この写真に見える新馬村から1キロメートルの距離にある湘江は、中国で重金属汚染が最も激しい河川と言われています。

新馬村の対岸や湘江上流には多数の工業団地があり、重金属を含む廃水を垂れ流し続けていました。

この新馬村でも、湘江の水を引いて灌漑していたために、新馬村の土壌はカドミウム汚染されました。

南京農業大学の潘根興教授が2008年4月に行った新馬村で生産されたコメの分析結果では、カドミウムの含有量は米1キログラム当たり0.52~0.53ミリグラムで、国家基準値の2.5倍でした。

また、村内にある自動車部品のクロームメッキ加工を行っていた株州龍騰実業有限公司が工場廃水を垂れ流したことにより、地下水汚染が引き起こされました。

この井戸水を飲んだために、2人が死亡し、村人1800人中の1100人がカドミウム中毒と判定される事件にまで発展しました。

このような事件は巨大な氷山のわずかに見える頭頂部でしかありません。思的村や新馬村は無数に全国に点在していると見なければなりません。

このような公害事件が、まったく国からの保護の手を差し伸べられないままなぜ闇から闇に葬られてしまうのか、そのあたりは次週とします。

■写真 湖に至る道の上に気持ちのいい白雲がかかっていました。この湖もかつてはアオコで夏は息も出来なかった時期があります。

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公害大陸・中国その3 中国市場の米の10%がカドミウム米の疑い 公害病患者の苦しみに日本も中国もない

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ネット界やマスコミでも中国公害問題が一斉に報道されるようになってきました。それはそれで結構なことなのですが、私にはなんだかなぁという気分もあります。 

この中国汚染問題を、単に嫌中材料として使うのは間違っています。感情論になったら、中国大陸を深く覆う公害の闇の実体は分からないでしょう。 

中国にどのような構造があって、なにが、どれだけどこに発生しているのか、全体像を冷静に押さえていかねばなりません。 

この中国公害問題は、政治ネタにするにはあまりにも大きな悲劇的問題なのです。公害病患者の苦しみに日本も中国もないのですから。 

さて、まず公害は農業や漁業で暮らす村に現れます。そして静かに土壌や水に蓄積され、連鎖し濃度を高めながら水系に沿って汚染を拡大していきます。

水俣病の場合は、 最初に猫や犬が狂い、村で正体不明の病人や死人がポツリポツリと出はじめます。その時には土も、水も、食べ物も一切が汚染されており、その汚染は胎児にまで拡がっています。 

そして米や野菜、あるいは水を通じて都市住民にも黒い影を伸ばして行くようになります。 

やがて、地方都市が変色した川とスモッグで覆われ、首都すらも金星のような有毒ガスの濃霧で覆われる頃には、実は全土が公害で覆い尽くされており、この汚染連鎖の最終局面なのです。

首都北京のPM2.5汚染は中国の公害の始まりではなく、その汚染の鎖の最終部分にすぎません。 

さて、まずはこの表から御覧ください。中国の重金属汚染データです。

Photo         (「週刊文春」による。参考のため転載いたしましたありがとうございます。)

これは中国長江河口付近で採取された検出データです。採取地点、日時、採取者が明らかになっていればいっそう信憑性が高まるのですが、具体数値に乏しい中で貴重なデータです。 

というのは中国政府は一貫してこのような土壌汚染を公表してこなかったからで、例によってこんな数値は捏造だと言うなら、当局が公的データを出せばいいだけの話です。むしろそうしていただきたいものです。 

長江河口と言うことですから、上海近辺の長粒米を作る産地のものだと思います。長粒米は昨今の経済成長で、従来のものよりおいしいということで生産が増えています。

河口付近は、河から流れて来た汚染と沿岸からの汚染がクロスする場所で、高度な汚染が出やすい場所です。

さて、この表の右端が我が国の環境基準値(02年制定)です。我が国の基準値と比較してみます。 

・水銀 ・・・244倍
・鉛   ・・・3500倍
・ヒ素・・・1495倍
・カドニウム・・・4.2倍
・BHC   ・・・59倍(※DDTと並んで国際的に検出されてはならない使用禁止農薬)
 

このような地域で生活すれば、水銀を原因とする水俣病が、確実に発生しているはずです。 

水俣病は、感覚障害、運動失調、視野狭窄、聴力障害などが発症し、重度の場合は脳障害や、死に至るケースが多発します。 

カドミウムを原因とするイタイイタイ病も間違いなく発生しているはずです。この症状は、骨の強度が極度に弱くなるために、わずかに身体を動かしたりしただけで骨折します。

くしゃみや医師が検診のために腕を持ち上げた抱けて骨折する場合もあり、身体を動かすことすら出来ず寝たきりとなります。 

イタイイタイ病は、神通川下流域の富山県婦中町(現・富山市婦中町)で1910年から1970年にかけて多発した公害病で、患者が骨の痛みに耐えかねて「痛い、痛い」と泣き叫んだことから命名されたものです。なんと哀しい病名でしょうか。 

この原因は、神通川上流にある岐阜県飛騨市にある三井金属鉱業神岡鉱山亜鉛精錬所から、精錬工程で出た廃液中のカドミウムが、下流の富山県婦中町周辺の土壌を汚染したために起きました。

カドミウムは米に濃縮されるために、米を通して水系周辺のみならず広くカドミウム汚染を拡げます。

富山県イタイイタイ病の場合、基準値を超えた米、野菜を食べ、地下水を飲んだ住民にカドミウム蓄積により発生しました。 

魚介と違って主食の米や野菜を媒介とするので、販路も広く有機水銀より複雑な汚染経路を辿ります。 

規模的にも、日本の場合は水俣病はチッソ水俣工場と昭和電工鹿瀬工場、そしてイタイイタイ病は三井金属工業神岡事業所と特定できる数の工場廃液が原因でした。 

それに対して「中国水俣病」と「中国イタイイタイ病」の原因となる水銀やカドミウムは、いまの時点では見当すらつかないほど多種多数の工場、鉱山から排出されていると考えられます。 

それを考えると、中国の報道による09年の湖南省カドミウム汚染米事件で2名死亡、500人余りがカドミウム中毒などはほんのわずかな露顕した事例にすぎないと思われます。

中国の場合、何度も書いてきているように、公的発表がまったくと言っていいほどありません。

ですから逆に市場の米におけるカドミウム米の混入率から逆算するしか方法がありません。どのていどの率でカドミウム米が混入しているのかを知るわずかな手がかりがあります。 

「2007年、南京農業大学農業資源・環境研究所の潘根興教授が中国の6地区(華東、東北、華中、西南、華南、華北)の県レベルの「市」以上の市場で販売されていたコメのサンプルを無作為に170個以上購入して科学的に分析した結果、その10%のコメに基準値を超えたカドミウムが含まれていたという。」
(北村豊住友商事総合研究所 中国専任シニアアナリストによる)

「これは2002年に中国政府農業部の「コメおよびコメ製品品質監督検査試験センター」が、全国の市場で販売されているコメについてその安全性を抜き取り検査した結果の「カドミウムの基準値超過率」10.3%と基本的に一致した 」。
(同上)
 

また、2002年の中国農業部による市販流通米の抜き取り調査結果によれば、米に含まれていた重金属で基準値超過が最も多かったのは鉛で28.4%を占め、これに次ぐのがカドミウムの10.3%であった。」(同上)

「2008年4月に潘根興が研究チームを引き連れて、江西省、湖南省、広東省などの“農貿市場(農民が生産した農産物を販売する自由市場)”で無作為に買い入れたコメのサンプル63個を分析した結果、何とその60%以上に基準値を超えるカドミウムが含まれていた。」(同上)

このように60%を最大値として、おおむねカドミウム米混入率は約10%であるようです。

すると、 中国の米の年産量は約2億トンで、そのうち基準値を超えるカドミウムを含む米が10%と仮定すると、その量は2000万トンと推定されます。

これは、日本の2007年の米生産量882万トンを2.3倍上回る膨大な量のカドミウム汚染米が中国に出回っていたことになります。

一方、カドミウムによる土壌汚染も深刻です。 

「11月10日から12日まで北京で開催された「中国環境・発展国際合作委員会」の年次会
議において、中国政府国土資源部が全国の耕地面積の10%以上は既に重金属に汚染されており、その面積は“約1.5億畝(約1000万ヘクタール)”に及ぶと表明した。」
(2010年11月17日全国紙「第一財経日報」北村氏による)
 

また他の重金属についても、中国科学院生態環境研究センターはこう述べています。 

「中国科学院生態環境研究センターの調査結果として、「中国の耕地のうち、カドミウム、ヒ素、クロム、鉛などの重金属による汚染の影響を受けている面積は約2000万ヘクタールにおよび、総耕地面積の約20%を占め、全国で重金属汚染による食糧の減産が1000万トン以上、重金属に汚染された食糧も毎年1200万トン以上に達している。」
(2011年1月5日「中国環境報」北村氏による)
 

この環境研究センターの言う「食料1200万トン」を、米以外と考えると、合わせて重金属汚染食料は約3200万トンていどと予想されます。たたし、あまりにアバウトな数字なので、あくまで目安にすぎません。

ところで、このカドミウム汚染の可能性が高い中国米の輸入量は、2011年に2万5千トン、2012年11月集計で4万6800トン(12月は未集計)されており年間5万トンに達すると見られています。

皮肉にも、中国米の輸入量は2011年の福島第1原発事故以来急増しており、消費者の放射能風評被害を巧みに利用して、安値の中国米を導入してしまえという商魂でした。

これらの中国米は西友で5㎏1200円の安値で売られていたり、某牛丼チェーンで国産に混入されて供されています。他にせんべいなどの加工用にも回っているようです。

輸入中国米は、検査されていると称していますが、検査項目は農薬の残留であり、重金属は検査対象外です。

厚労省も、一度中国米を抜き取り検査してみてはいかがでしょうか。

長くなりましたので、中国国内のカドミウム汚染は次回に続けます。

■写真 光のカーテン。クリックしていただくと光の帯がよく見えます。 

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公害大陸・中国その2 農業から吹き出す公害

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中国の国土が「狭い」と言ったら、おかしなことを言うと思われるかもしれません。13億の民、万里の長城、桂林などから日本人が受けるイメージは、ひたすら事物博大といった感があります。

たしかにデータ上では、中国の国土は約960万平方キロ、日本が約37万平方キロですから、ざっと約26倍の面積を誇っています。

しかし北京から少し出てみましょう。西に重慶、成都に飛び、さらに新疆ウイグル自治区に旅すると、中国の「事物博大」の裏側がもう少し見えてきます。

長江付近の巨大な都市は人を溢れさせんばかりにしていますが、そこからわずかに奥に入った農村部では傾斜のきつい山肌にへばりつくように生きているのが分かります。

そして、そこからさらに奥に進めば、乾燥した強アルカリの土漠がどこまでも続きます。人はわずかのオアシスの付近で生活を営んでいるにすぎません。

実は、このような地域が中国の大きな部分を占めています。そこでは牧畜しかできないので、政府は砂漠化を恐れて定住政策をとっていますが、そのために人口が集中してかえって都市周辺の砂漠化が進むという皮肉な現象すら起きています。

中国で、農業に向いている地域は、東北部(旧満州)の吉林省、そして沿岸部の黒竜江省、江蘇省 、安徽省に集中し、後は山岳部の四川省、陜西省にわずかに点在するだけです。

にもかかわらず、人口が13億人(一説14億人とも。政府もわかっていないみたい)いますから、狭小な分母の上に、過大な人口を抱えるというのが中国の実態です。

これは、農家一戸あたりの平均耕作面積をみれば分かります。日本の農家の平均は約2ヘクタールですが、中国は約0.67ヘクタールです。

狭い狭い、だからお前らは国際競争力がないとなにかにつけて言われる日本の3割強ていどです。ヨーロッパの平均はイタリアなどで約26ヘクタールですから38倍ですから、較べるべくもありつせん。

ちなみに、米国は中国とほぼ同じ約963万平方キロの面積がありますが、作付け可能面積は国土の2割に当たり、中国の約2倍に達しています。

中国は斜度25度以上という土地で作る薬草、綿花、麻類栽培などの非食料栽培も含めて、国土の1割に満たない部分しか耕作可能ではないのです。

斜度25度とは、日本で言えば山間地農業ですから、そこまで入れて1割となると、中国農業の技術的レベルから考えれば、よく喰っているなという気分になります。

ですから、国民一人当たりに換算すると、耕地面積は米国の10分の1以下となります。つまり、人口は米国の3億人の4.3倍ありながら、米国の10分の1の耕地しかなく、それで食を支えねばならないわけです。

世界人口の22%を世界の耕作可能面積のたった7%で養っていることになりますが、いくら国民の6割が農民でもそりゃ無理だということで、輸入食糧は激増の一途を辿っています。

「今後5~10年で、中国は世界最大の農産物輸入国となる」(中国国務院発展研究センター)

既に中国は現在、大豆と綿花に関しては世界最大の輸入国となっていて、シカゴ穀物相場を混乱させるモンスターと化しています。

このようなアンバランスな条件で、食糧自給などがそもそも無理で、ましてや日本への農産物輸出など、正気の沙汰とも思えません。

それもあってか、中国は07年末からは食料輸出の抑制政策をとるようになっています。

ところで、私は外国に旅すると、哀しい職業病で、ついそこの国の農地を触ってみたくなります。手首まで土に入れてひとつかみ土を握り、手でほぐしてみればおおよそのことが分かります。

掴んだ土がにぎり寿司のように軽く握ればまとまり、力を抜くとはらりとほぐれればいい土質です。そのような土は有機質や微生物を大量に含み、色も深い褐色をしています。ほのかな芳香すら漂います

中国の土は、粘り気がなく、乾燥してバサバサで、まるで砕いたグレイのレンガのようでした。芳香などは望むべくもありません。

率直に言って、私が今まで見た耕作地の中で最悪の部類に属します。こんな土になるまで放置しておいた農民の気が知れないというとすら思いました。たぶんただの一度も土作りをしたことがないことだけはたしかです。

失礼ながら、このひどい土を見て、中国産農産物がなんの味もしない無味乾燥な理由が分かりました。土の力で作物を作っているのではなく、化学肥料の力だけに頼って作っているのです。

聞けば、中国にはそもそも堆肥を作るという伝統がないそうです。この最悪の土の上で、過剰な人口を養うことを可能にしたのが、化学肥料と化学農薬の度はずれた多投です。

中国環境科学研究院のGao Jixi生態学研究所長はこう述べています。
China's agriculture causing environmental deterioration,xinhua
.net,7.5

「化学肥料と農薬の大量使用は厳しい土壌・水・大気汚染をもたらしてきた。中国農民は毎年、4124万トンの化学肥料を使っており、これは農地1ha当たりでは400kgになる。これは先進国の1ha当たり225kgという安全限界をはるかに上回る。」

「中国で大量に使われる化学肥料である窒素肥料は、40%が有効に利用されているにすぎない。ほとんど半分が作物に吸収される前に蒸発するか、流れ出し、水・土壌・大気汚染を引き起こしている。」

化学肥料は土を豊かにしません。単に作物に成長栄養を与えるだけです。むしろ過剰な窒素は、作物をひ弱にし、植物が利用しきれなかった窒素は硝酸態窒素として、土壌に沈下し、そして水系に流れ込みます。

1985年から2000年の間に、1億4100万トン、1年当たりにして900万トンの窒素肥料が流出し、土壌や水系を汚染しました。

病虫害を抑え、見てくれをよくして商品価値を高める化学肥料を過剰に使用すれば、作物を化学汚染させていくばかりか、天敵生物を滅亡に追い込み生態系を破壊し、畑の外にまで汚染を拡げます。

中国の農薬使用量は年間120万トンにのぼり、年々増加する一方です。

これは、日本も経験したことですが、害虫には農薬に対して耐性を持つようになります。

仮に100匹の害虫がいたとして、それに農薬散布して、仮に百回に一度農薬耐性を持つ個体が発生した場合、以後農薬の効果は急速に衰えていき、やがてまるで効かなくなります。

農薬耐性を持つ害虫は繁殖力も強いからです。人間は毎年より濃度を上げた農薬を散布するしかなくなり、その無限地獄が始まります。

現在の中国は、農業外からの工場排水に冒される前に、内在的に大きな問題を抱えていたのです。それは化学肥料と化学農薬の過剰投入という問題です。

結果、中国の湖沼の75%、地下水の50%が汚染されています。その原因の一部に農業であることは疑い得ないでしょう。

このようにi中国農業は、工業排水の最初の被害者でありながら、自らもまた化学肥料、化学農薬の多投による汚染源でもあるという加害者でもあったようです。

「狭小」な国土に過剰な人口、そして成長至上主義の農業政策からはその副作用として公害が吹き出てきたのです。

■写真 そろそろ梅の季節ですが、まだつぼみのまま。今年も桜と重なりそうだと村の人は言っています。見上げる空に筑波山。

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公害大陸・中国その1 公害研究創始者、宇井純先生の「予言」

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今から35年以上前になりますが、私は宇井純先生の「公害原論」の自主講座に参加していたことかあります。

今にして思えば、この後に沖縄で住民運動に関わり、有機農業へ飛び込むきっかけを与えていただいたのが、宇井先生でした。

まだ40歳になったばかりの宇井先生は、当時ようやく研究の端緒についたばかりの「公害」、今の言葉でいえば環境問題を専門とする日本で最初の研究者でした。

いまでこそ環境問題は金になるようですが、当時は異端の学問でした。いや不遇なんてものじゃなく、従来の学問に楯突く奴と見なされて「永久助手」のままでした。

ことに先生は助手時代に実名で新潟水俣病を告発したために、後に国連環境計画から「グローバル500賞」を授与されるほどの業績を上げているにもかかわらず、東大でやらされているのは教授の実験の手伝いだったようです。

このあたりは、今でも助教(助手)のままで自転車で通い、電気のない家に住む小出裕章氏によく似ています。

ただし、小出氏のように時代の上昇気流に押し上げられることなく、74歳でお亡くなりになるまで世間的にはほとんど知られていない存在だったかもしれません。

先生は、日本ゼオンの技術者として勤務していた時に、塩化ビニール工場の製造工程で使用した水銀の廃棄に疑問をもち、水俣病に関わるようになっていきます。

そして一貫して公害患者の立場に身を置き、新潟水俣病では手弁当で弁護人補佐を努めて、水俣病の解明と患者救済のために尽くしました。

さて宇井先生が、招かれて中国を訪問した直後に私たち自主ゼミのメンバーに言った言葉を今でも忘れられません。

先生は重慶を中心に視察したのですが、その有り様をこうおっしゃっていました。

君たち、中国で今後膨大な数の水俣病が生まれるかもしれない。いや、もう多数の患者がいるはずだ。ありとあらゆる化学廃液が野放図に川に捨てられている。有機水銀、カドミウム、六価クロム、鉛・・・。
市当局に忠告したが、まったく聞いてもらえなかった。今、中国は公害を止めないと大変なことになる
。」

この先生の35年前の「予言」は、先生の想像をはるかに越える形で現実のものになりつつあります。

北京での都市機能が麻痺するほどのPM2.5汚染の凄まじさによって、中国の環境汚染が行くところまで行き着いてしまっている現状が、やっと我が国にも知られてきました。

当然のことですが、都市部の汚染が発覚する時は、農村部は既に汚染で覆い尽くされています。

環境汚染は、まず農村部や沿岸部で最初に現れます

それは都市部の食料供給基地である農業や漁業が、工場の廃液が大量に流れ込んだ水質汚染の最初の被害者だからです。

我が国でも、1950年代後半から始まったチッソ水俣工場からの有機水銀(メチル水銀)廃液による水俣病、60年代初頭の新潟水俣病、岐阜県三井金属工業の神岡鉱山の鉱滓(こうさい)から出たカドミウム汚染によるイタイイタイ病など多くの公害病は、農漁村部から始まっています。 (下図参照)

Photo_3図 環境省環境白書平成18年版 
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/hakusyo.php3?kid=225

熊本県水俣病の場合は、チッソ水俣工場が製造していたアセトアルデヒドの製造工程に用いた水銀が、工場排水として自然界に流され、それが有機水銀(メチル水銀)となり、生物濃縮を繰り返すなかで、魚介類の体内で高濃度に濃縮されました。(欄外図参照)

これを食べた多くの人から、感覚障害、運動失調、視野狭窄、聴力障害などが発症し、重度の場合は脳障害や、死に至るケースも多発しました。

また母親が妊娠中に水銀汚染の魚介類を食べた場合、胎児水俣病が発症することがあり、障害をもって生まれた子供が誕生しました。

熊本水俣病は、1956年頃が発生のピークであるといわれていますが、国が認定したのは1968年と、遅れること8年後のことでした。

熊本大学医学部水俣病研究班は、1959年に原因物質を究明してチッソ水俣工場の水銀廃液であることを突き止めていましたが、この研究は直ちに生かされることはありませんでした。

この国の認定の遅れが、次の新潟水俣病を防げなかった原因につながっていきます。

新潟県昭和電工の公害廃液は、阿賀野川を汚染し、1965年頃をピークとして多数の患者を発生させています。

政府の認定の遅れが、既に新潟で同様の病気が出ていたにもかかわらずそれを阻止することができず、悲劇を全国で再生産させ続けてきたのです。

この我が国の公害病の歴史から学べるものは、公害は初期に国が責任をもって解決しない限り蔓延し、再現なく連鎖していくものだという苦い教訓です。

もう一度、上の地図の公害患者発生マップを御覧ください。黄色の部分が患者が発生した地域です。

熊本水俣病の場合、河口から水俣湾沿岸部の長島、下島、御所浦、厨子島などで患者を拡げています。

また新潟水俣病は、阿賀野川流域から、河口部にかけて患者を拡げています。

これは多くの工場が排水を容易にするために河川や沿岸部に工場を設置するからで、そのために公害病の多くは水系周辺から発生します。

これで分かることは、公害病は、発生点の工場周辺のみならず、水系をたどって、河川流域、河口、あるいは湖や沿岸まで広く展開していきます。

したがって、工場周辺のみにとらわれていては実態がわからないので、その地域の水系や公害物質が残留しやすい地形などを大きくエリアとして見て、その水質分析、土壌分析、大気分析などをする必要があります。

次に、公害はダイレクトに生体に障害を与える場合もありますが、その多くはなにかしらの伝播する媒介をもっています。

たとえば、水俣病の場合は魚介類でした。水中の食物連鎖により高濃度の汚染が魚介類の体内に生じます。 イタイイタイ病の原因物質はカドミウムは米でした。

それを食物連鎖最上位の人間が食べることで、濃縮されて高濃度になった重金属を食べてしまうことになります。

宇井先生の「予言」から30数年後、中国を訪れた日本の農業関係者は、中国に流れる七色の川や、どす黒い湖、白い泡で沸き立っている池、シロアリ駆除剤を撒かれた野菜などを目撃することになります。

彼らは、この現象の奥でなにが進行しているのか、農民の直感で感じ取ったのです。これはおれたちが高度成長期に体験した「複合汚染」なんて生易しいものじゃないぞ、と。

あるいは、中国内部から細々と報じられる環境汚染や公害報道から判断して、中国公害病の現状は、日本の「4大公害病」を遥かにしのぐと想像されていました。

今週は、人類が遭遇した最大、最悪の中国の環境汚染を取り上げていきます。

※「4大公害病」 日本の高度成長期の1950年代後半から1970年代にかけて発生した公害によって発症した公害病のうち、特に被害が甚大なものを称する。
①有機水銀による水質汚染を原因とする「水俣病(熊本県)」
②「新潟水俣病(第2水俣病)・新潟県」
③亜硫酸ガスによる大気汚染を原因とする「四日市ぜんそ・三重県」
④カドミウムによる水質汚染を原因とする「イタイイタイ病・富山県」
日本の厚生省によって最初に認定された公害病は1968年5月の「イタイイタイ病」であった。

写真 なにやらファンタジーな写真ですが、ただの農業用水であります(笑)。

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Photo_4図 環境省環境白書平成18年版より

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船橋洋一「カウントダウン・メルトダウン」を読む       その4 SPEEDIはなぜ隠匿されたのか

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船橋洋一(民間事故調プログラムディレクター)「カウントダウン・メルトダウン」を読み続けて4回目になります。 

SPEEDIがなぜ隠匿されたのか、発表されてもどうしてこんなに遅れたのかについて長い間疑問に思っていました。 

本書に入る前に、なにがあったのか当時の状況を見てみましょう。 政府事故調報告書はこう書いています。

(政府の避難指示は)ともかく指示範囲の外に逃げよと言っているのみで、住民はどの方向にどの程度避難すれば安全かわからないまま、かつ市町村長が手さぐりで行った判断に従うしかなかった」 

SPEEDIはそもそもはスリーマイル島原発事故の翌年の1980年から、過去30年間に渡って巨額の費用を投じて作られたもので、まさに3.11の為に作られたようなシステムでした。 

単に避難指示だけではなく、政府の事故対応を決定する意味でも極めて重要な基礎データだったはずです。

しかし、ご承知のようにSPEEDIの結果が「国内向けに」発表されたのが、3月23日午後9時の原子力安全委員会の記者会見でした。事故から遅れること12日後のことです。 

ここで「国内向け」と書いたのは、気象庁はIAEAには事故直後から逐次報告していたからです。 

IAEAは、独自に各地で放射性物質の計測を行っており、福島第1原発から30㎞の飯館村での計測で、避難勧告の2倍の値が出たというニュースは、私たち国民を恐怖に陥れました。 

政府が出す4回も変化し、そのつど拡大する避難範囲以外にも、実は汚染地域が拡がっているのではないか、と思わざるを得なかったからです。 

国民はパニックになり、ミネラルウォーターが買い占められ、ネットで見るドイツ気象庁シミュレーションと早川マップに釘付けになります。

しかし実は、気象庁はSPEEDI情報を把握しており、それはIAEAにだけは連絡していました。IAEAフローリー事務局長の30日のウィーン本部での会見は、実は気象庁の情報を基にしています。 

一体どこの国の官庁なのか、その倫理性すら問われます。 

政府事故調報告書はSPEEDI問題について3つ要点を上げています。

文科省は3月12日から16日にかけて、38件のSPEEDI計算をして、結果を経済産業省の緊急時対応センター(ERC)に送付した。 

②原子力安全委員会は、3月12日に原安技センターに計算を依頼した。しかし、あくまで内部の検討のためであるとして、結果は一切委員会の外に出さなかった 

保安員は、3月11日から15日にかけて、45件の予測計算を行った。12日午前1時半過ぎに、官邸地下に詰めていた保安員職員に送った。 
その結果は内閣官房職員を介して、官邸地下にいた各省庁職員に配布し共有した。しかし、この情報は内閣官房職員も保安員も一切、菅総理(官邸5階)には報告しなかった 

つまり、気象庁はSPEEDI情報を知りながら、公表せず、保安院は計算しておきながら国民はおろか、官邸にも伏せていたということになります。 

前置きが長くなりましたが、「カウントダウン・メルトダウン」はこのSPEEDIの内幕を綿密な取材の積み重ねで解いていきます。 

文科省は、事故の翌日から単位量放出に基づいた予測以外にも、様々な状況を予測して計算を行ってきました。

そのシミュレーションには、原子炉1基分のすべての飛散、複数の飛散、すべての原子炉からの飛散などが含まれていました。 

同時に世界規模の広域拡散シミュレーションであるW-SPEEDIすら動かして計算しています。 

ところが、文科省内部に動揺が生まれます。 

このSPEEDIシミュレーションは避難に利用できるほど、飛散の実態を反映したものではないし、かといってまったく役に立たないものでもない、だから公表してこなかったのだか、いつまでも持っていると追究されるのではないだろうか・・・。 

当時原子炉の水素爆発によって、SPEEDIがにわかに注目を集めていました。このままでは、厳しい避難民と世論の批判を浴びかねない、さっさとよその官庁に渡してしまおう、そう文科省は考えたのです。 

公表しなかったことを情報隠蔽だと批判され、被曝の責任まで追究されてはたまらない。かといって、今までのシミュレーションを全面公開すればパニックになる、それの責任をとらされてたまらない。 

そこで枝野官房長官のモニタリングデータの役割分担指示(「枝野仕切り」)にかこつけて、SPEEDIを原子力安全委員会に「裏口移管」したのです。 

斑目委員長はこれを文科省の「奇襲作戦」と呼んでいます。

その上、文科省はSPEEDIのデータセットを安全委員会に委譲せず、文科省HPで見ろとまで言い、安全委員会スタッフはひとつひとつ手書きでそれを書き移すことになります。 

一方当時、「(官邸は)みんなプラント収束しか念頭にない」、と「助言チーム」の小佐古(当時内閣官房参与)には思えました。 

小佐古は、鹿野農水大臣や、細川厚大臣と立て続けに面会し、次のように訴えました。 

「最初から食品の放射能検査をやって下さい」、「放射能検査機が自衛隊の大宮(化学防護隊)に2000台あります。あれを直ちに取り寄せていただきたい。」 

小佐古はチェルノブイリの現地調査の経験から、「チェルノブイリをそのままなぞって先回りすれば事故被害を緩和できる」と考えていたのです。

小佐古は内閣危機管理監にも会いまが、「全部保安院に任せてある」と答えが返って来るのみでした。

小佐古は、「保安院はプラント(事故収束)は出来るが、環境影響、被曝はどうなのか」と強い不安を覚えました。彼のこの不安は的中します。

官邸の反応は鈍く、そもそも彼ら政治家たちはSPEEDIの存在そのものを知りませんでした。枝野(当時官房長官)すらそれを知ったのは、15日頃に「マスコミかなんかから」知ったと明かしています。

その後、枝野は文科省、安全委員会、保安院にSPEEDIの実態を尋ねると、いずれも「放出源情報がないので動かしていません」との答えでした。

枝野は後に、「実際使えない情報として、私にまで隠していた」と文科省を非難することになります。

海江田経産大臣が知ったのは、枝野から遅れて5日後の20日頃のことでした。実際、当時保安院は、11日に2号機のベントを仮定した環境予測をして以来、何十とSPEEDIの試算結果を出していましたが、一切海江田には報告していませんでした。

他の関係部署にいた政治家たちもこの時期の前後別々にSPEEDIの存在を知り、官僚に問い合わせています。そしてその答えは決まって、「ソースデータがないから使えない。動かしていない」という偽りの回答でした。

このような官僚たちの対応は、「環境放射線量モニタリング指針」に違反しています。

「モニタリング指針」はこう述べています。

「緊急時には、放出源情報を迅速かつ性格に入手する必要があるが」、「一般に、事故発生後の初期段階において、放出源情報を定量的に把握することは困難であるため、単位放出量またはあらかじめ設定した値による計算を行う」。

また、この指針に基づいて2010年10月の浜岡原発の原子力総合防災訓練でも、ヨウ素の放出量を単位放出量としたSPEEDIの予測計算は現実に使われています。

かくして政府は、15日から16日にかけての福島県内から北関東一円に降下した放射線量ピーク時期にこのような発表をしてしまうことになります。

16日午後5時56分、枝野官房長官記者会見。「直ちに人体に影響を及ぼす数値ではない」。

これが、後々まで日本政府の情報隠蔽体質として国内はおろか、国際社会からも強い批判を受けるSPEEDI隠匿事件だったのです。

■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-2.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-15e5.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-a56d.html

■写真 今や珍しくなった火の見櫓。しかし村ではいまでもリッパに現役です。

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週末写真館

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私の村は、霞ヶ浦と北浦にはさまれている実に贅沢な場所に住んでいます。よほど前世でいいことをしたのでしょうか。

朝日はこの写真の北浦に昇ります。そして夕陽は、筑波山に向けて沈むのです。

通常の記事では縦位置写真は大きすぎてなかなか使えないので、こういう時には失礼してド~ンと。ああ気分がいいこと。

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北浦は実は大きな霞ヶ浦の東の一部なので、本来は霞ヶ浦と言ってもいいのですが、私たち北浦地元は逆に大きな方を「西浦」と呼んでおります。
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上の写真をもう少し手前から撮るとこんなかんじに。風景写真というのは雲が主役だとつくづく思います。

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さて私のブログは、できるだけ「事実と証拠」を基に書こうと思っているのでやたら時間がかかります。

かつて私は書くのが速いのが自慢だったのですが、データとグラフを探しているだけで数時間という時もあって、かかる時で4時間くらいは必要でしょうか。

人気ブログが止めてしまうのは、生活がもたないからです。お~と、グチになったぞ。

しかし写真特集だと、あっという間に出来てしまうのでこれもいいかな、と。(笑)

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尖閣海域 中国海軍射撃管制レーダー照射事件詳細

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中国海軍射撃用レーダー照射事件について、昨日発売の「週刊文春」2月21日号に麻生幾氏の記事「中国からの宣戦布告」に詳細な事実関係が載っておりましたので、参考のため事実関係のみ要約して転載させていただきます。

麻生氏は作家ですが、取材力には定評かあり、情報の確度は高いと思われます。公式の発表か未だなされていない段階では最良のものと思われます。

いうまでもなく、このような二国間武力紛争に発展しかねない事件においては、事実関係の客観的確認が重要であり、中国側は我が国の対応に対して「捏造」とまで言う以上、それにふさわしい客観的な事実と証拠を開示する必要があります。

なお記事中にはない資料もつけ加えてあります。私のコメントは後日とさせていただきます。

■[1月19日自衛艦「おおなみ」搭載SH-60Kに対する射撃用レーダー照射事件 

時間  2013年1月19日午後5時頃
場所  日本と中国の排他的経済水域中間線付近・尖閣諸島から北へ約百数十キロ地点の公海
 

・概要 中国海軍ジャンカイ1級フリゲート「温州(ウェンジョウ」(艦番号526)から、警戒監視を続けていた自衛艦「おおなみ」(横須賀)から発進した対潜ヘリSH-60Kに対して射撃管制レーダーが照射された。

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事実関係時系列

①中国フリゲートは、主に東シナ海を担当海域とする東海艦隊(浙江省寧波※1)の所属。 

②照射時間は約10分というきわめて長い連続照射。(※旧ソ連艦のケースでは数秒) 

③射撃管制レーダーの照射は、「ロックオン」(※2)と呼ばれる戦闘行為と国際ルールでは見なされる。

④SH-60Kは急降下して、海面すれすれに飛行してロックオンを外そうと回避飛行した。
 

⑤SH-60Kから「おおなみ」を経由して、横須賀自衛艦隊司令部に至急報。艦隊司令部から市ヶ谷海上幕僚監部へ第一報。 

⑥海幕から「おおなみ」に、「本当に射撃管制レーダーなのか、証拠は保全されているか」などと問い返し。 

⑦ヘリなためレーダー照射のデジタルデータは採れていなかった 

⑧午後8時。小野寺防衛大臣に防衛省から報告。証拠保全がなされていないために「調査中」として提出した。 

⑨小野寺大臣は公表を考慮したが、調査中とあったため「事柄の性質上、重大な影響を与えることなので、精査して慎重な分析して下さい」と返答した。 

■[1月30日自衛艦「ゆうだち」に対する射撃管制用レーダー照射事件 

時間  2013年1月30日早朝から10時頃
場所  日中中間線日本側公海上海域
 

・概要 中国海軍ジャンウェイⅡ級「連雲港」から、自衛艦「ゆうだち」が主砲用射撃管制レーダーの照射を受けた。

事実関係時系列

①公海上を東方向に航行中の自衛艦「ゆうだち」に対して、左斜め前方100数十キロから相対する態勢(※)で中国海軍ジャンウェイⅡ級(東海艦隊所属・艦番号522)フリゲートの「連雲港」が接近した。(※反航態勢と呼ぶ)

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            (写真週刊オブイェクトより転載いたしました。ありがとうございます。)

反航態勢のまま中国艦は、自衛艦から1.8マイル(約3㎞弱)まで接近

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  (図 週刊新潮2月21日号より転載しました。ありがとうございます。) 

③「ゆうだち」ブリッジ(艦橋)幹部と航海科員たちは双眼鏡で「射撃管制方位盤」を監視。 

④午前10時頃。中国艦の各種レーダー類(※3)のうち343GA型火器管制レーダー(速射砲、対艦ミサイル用 上写真2にあたる・)が旋回し、「ゆうだち」に指向。 

⑤「ゆうだち」CIC(戦闘指揮情報センター)に、「プゥープゥープゥー」という強烈に耳障りな警報音が鳴り響く。 

⑥CICのESM員(電波探知分析装置オペレーター)が、近距離から照射される高周波の強力な射撃管制レーダー波を探知し、「ESM探知!フリゲート艦の射撃管制レーダーらしい、距離近い!」と哨戒長へ報告。 

⑦ESM員によって、この射撃管制レーダーの探知方位、周波数、パルス繰り返し周波数などがハードディスクに保存される。 

⑧データーベースから、中国フリゲート艦の主砲(ロシア製100㎜)管制レーダーI(アイ)バンドと判明。ちなみに、ジャンウェイⅡ級の武器システムはロシア、イタリア、フランスからの調達品のため、識別は容易だそう。) 

⑨CICから横須賀自衛艦司令部運用総括幕僚へ「速報第一報」を衛星通信で発信。 

⑩艦長、艦内放送で「我、中国海軍フリゲートの射撃管制レーダーに補足された。艦内、情報収集態勢を強化せよ」と放送。 

⑪航海科員、船務科員が双眼鏡やスケッチ、ビデオ撮影、カメラ撮影などで証拠保全 

⑫艦長から「100㎜主砲の旋回位置は定位置にあるのか、確認せよ」の指示。 

⑬艦橋見張り員から、「フリゲートの主砲と機関砲用方位盤はストーポジション(定位置)であり、本艦に指向していない」との報告。中国艦がレーダーと主砲を自動にしておらず、レーダーのみで自動追尾していることが判明。 

⑭中国艦の射撃管制レーダーの照射は約3分間継続。強力な指向性エネルギー波のために自衛艦側に健康被害の可能性すら出る。

⑮艦長「両舷停止、面舵一杯」を命じて回避行動に移る。

⑯精密なデーター分析の結果、小野寺大臣に報告書が上がったのが6日後の2月5日。小野寺大臣公表。

以上、事実関係のみ要約いたしました。

ジャンカイⅠ型 
http://wiki.livedoor.jp/namacha2/d/054%b7%bf%a5%d5%a5%ea%a5%b2%a5%a4%a5%c8%a1%ca%a5%b8%a5%e3%a5%f3%a5%ab%a5%a4I%b7%bf/%b9%be%b3%aeI%b7%bf%a1%cb                                            

ジャンウェイⅡ型
http://wiki.livedoor.jp/namacha2/d/053H3%b7%bf%a5%d5%a5%ea%a5%b2%a5%a4%a5%c8%a1%ca%a5%b8%a5%e3%a5%f3%a5%a6%a5%a7%a5%a4II%b7%bf/%b9%be%b1%d2II%b7%bf%a1%cb

※1東海艦隊(とうかいかんたい)は、1949年4月23日に結成された中華人民共和国初の海軍部隊で、中国人民解放軍海軍3大艦隊の一つ。司令部を浙江省寧波に移した。旗艦は潜水艦救難艦302祟明島。主な任務は台湾海峡連雲港より南の東シナ海黄海の防衛。
東海艦隊東シナ海方面)基地:寧波基地(司令部)、上海基地、舟山基地、福州基地
旗艦:J302崇明島

wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E8%89%A6%E9%9A%8A

※2 ロックオン・追尾状態。射撃統制装置やミサイルに内蔵する目標追尾機構が目標をセットし、射距離・方位角・高低角を自動的に追跡する状態にすること。

※3 中国海軍ジャンウェイⅡ級レーダー類
1.345型火器管制レーダー(対空ミサイル用)
2.343GA型火器管制レーダー(速射砲、対艦ミサイル用)
3.360型警戒捜索レーダー(対水上、低空用)
4.517型警戒捜索レーダー(長距離対空用)
5.341型火器管制レーダー(機関砲用)

尖閣:中国艦隊が実戦訓練=中国紙日米の離島奪還訓練に対抗か
朝鮮日報2月14日

中国共産党中央軍事委員会の機関紙「解放軍報」は13日、中国・東海艦隊所属の揚陸艦部隊が12日未明、敵機出現を仮想した実戦訓練をしたと報道した。東海艦隊は日本と領有権問題を抱えている東シナ海の尖閣諸島(中国名:釣魚島)を管轄する部隊だ。香港の日刊紙「明報」も同日「中国軍の第2砲兵部隊(核・弾道ミサイル部隊)は東シナ海を目標にミサイル発射訓練を行った」と報じた。中国軍のこうした動きは、米海兵隊と日本の自衛隊が9日、米国カリフォルニア州で合同で離島奪還訓練を実施したことへの対抗措置とみられる。日米は、今回の訓練は「第三国」(中国)を狙ったものではないとしているが、中国は尖閣諸島を想定しているものと考えている。

 同日の解放軍報によると、東海艦隊所属の揚陸艦が有事に備え監視任務に当たっている際、敵機2機が突然現れたことを想定、これらに向かって艦砲で対応するという実戦訓練を行ったという。軍の機関紙が揚陸艦訓練をしたと公表したのは、有事の際に尖閣諸島に上陸する可能性を示唆するためとみられる。 

 また、明報は解放軍報を引用「『江南群山の奥深く』で第2砲兵部隊がミサイルの迅速発射訓練を行った。部隊の隊員は命令に迅速に対応するため服を着て寝ており、組に分かれ24時間当直をした」と報じた。明報は同部隊が江西省にあるものと推定、東シナ海を目標とした巡航ミサイル部隊だとの見方を示している。この部隊は「空母キラー」と呼ばれる新型巡航ミサイル「長剣」を保有しているとのことだ。

■写真 厚い雲間から漏れる朝日の中を飛翔する。

■明日は週末写真館です

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船橋洋一「カウントダウン・メルトダウン」を読む       その3 B・5・b 核セキュリティとセーフティ

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船橋洋一(民間事故調プログラムディレクター)「カウントダウン・メルトダウン」を読み続けています。
 

本書は膨大な民間事故調の聞き取りと、その後の船橋の取材によって構成され、熟達の平易な文体で書かれています。 

評者によっては新たな知見が乏しいと言う人もいますが、米国NRC(原子力規制委員会)、ホワイトハウス科学技術補佐官、国務省、米大使館、米海軍までを網羅した重厚なドキュメントは、これまで存在しませんでした。 

国際政治の狭間で福島事故がどのように受け止められ、そして日米が軋轢を重ねつつ「放射能という悪魔」を封じ込めていく姿は感動的ですらあります。 

さて、「B・5・b」という謎のような言葉をご存じでしょうか。 

この言葉は、14日、福島事故対策にあたっていた米国NRCの技術スタッフの一人がこれを利用できないかと発言したことに発しています。

「B・5・b」は2002年2月にNRCが作成した原発事故・核テロにおける減災対策連邦基準B5条b項のことです。 

B・5・bは 

・第1段階。、想定される事態に対応可能な機材や人員の準備。  

・第2段階。使用済み燃料プールの機能維持及び回復のための措置。  

・第3段階。炉心冷却と格納容器の機能の維持及び回復ための措置。 

この際に、第2段階では

・サイト内では給水手段の多重化  

・サイト外では給水装置の柔軟性と動力の独立性 

を求めています。 

また第3段階では

・原子炉への攻撃に対する初動時の指揮命令系統の強化  

・原子炉への攻撃に対する対処戦略の強化 

を求めています。 

一読して分かるように、米国は、核テロをも想定しています。テロリストがサイト内に侵入し制御室を制圧し、制御室へのアクセスが不可能になるといった事態です。 

そして全交流電源と直流電源が失われてしまう事態を想定して立てられているのが、この「B・5・b」なのです。 

一方、日本警察の担当者も核・原発テロは4つのシナリオを考えていました。 

①核施設に潜入して、中央制御室に立てこもり、要求を受け入れないとベントするか爆破する。 

②9.11スタイルで、乗っ取った航空機をで核施設を自爆攻撃する。 

③電源喪失などの核インフラを切断する。 

配管・パイプを切断する。 

テロリストという部分を除けば、④こそがまさに福島第1原発事故そのものです。ですから米国NRCは真っ先にこれを援用できると考えて、日本側に打診したわけです。 

しかし、日本側にはそのような「B・5・b」が求める安全防護設計による減災対策は存在しませんでした。それはありえないこと、「想定外」だったからです。 

明石真言放射性医学研究所緊急被曝医療研究センター長は、そのことを事故時に深く悔いることになります。 

今まで我が国は「核テロ訓練」らしきものはやっていました。しかしそれは2010年APECの時の訓練のように、「成田空港に外国から放射性物質が大量に持ち込まれたという想定は止めて下さい」と釘を押され、セシウム検出訓練もできず、ただ救急車がサイレンを鳴らして走り回るだけのものでした。 

あるいは、新潟県のように、原発テロを「想定」しておきながら、県から「被曝者が出たという想定は止めて下さい」、「安定ヨウ素剤は配布しないで下さい」といった現実離れしたものでした。

2002年既に米国はこの「B・5・b」を日本政府に伝えて協議していますが、原子力安全・保安院は関心を持ちませんでした。 

米国代表団は、東海村や大学の核研究施設を訪問し、東海村ではプルトニウムに南京錠がかかっているだけといった有り様にショックを受けます。 

原発の警備は、丸腰の門番が行っており、SAT(警察特殊部隊)配備などは検討さえされていませんでした。

いや、提案はされたのです。 IOC事故を受けて茨城選出の議員は、警備員に武装させることを提案しましたが、警察が抵抗し、結局武装テロリストに攻撃された場合、駐在のお巡りさんにご一報をということになってしまったようです。もはや笑うしかありません。 

日本は、このように原発のセキュリティ(保安)が、セイフティ(安全)の強化につながるという思考が大きく欠落していたのです。 

自衛隊や警察のテロ警備担当者からすれば、核テロ対策をしておけば、福島第1原発事故はまったく違った対処があったのにという苦い思いが残りました。 

1990年代から2000年代初めに核テロ問題を手がけた防衛省高官はこう述べています。 

「東京電力に対して、原発が止まって、電源が切れた時にはどうするのかということで、何回も訓練をしようという話を持ちかけたように理解している。それに対して、規制官庁サイドがそんなことをやったら大変だということで出来なかった、という部分がある。」

ここでいう「規制官庁」とは、原子力安全・保安院を指します。

そしてこれらの減災対策は、「官僚制度の縦割り構造と、リスク回避のメンタリティが壁となって、脅威への準備ができていない」(シェファー米駐日大使が本国に出した報告書)現状のまま、我が国は3.11当日を迎えてしまうことになります。 

この縦割り構造と縄張りの壁は、本書上巻に描写されているように事故が燃え盛っている中でも随所で見られました。 

福島第1原発正門の守衛たちは、外部電源を確保するための電線敷設をしようと駆けつけた協力会社の作業員の入構を連絡を受けていないと拒否し、支援要請を受けた自衛隊は、東電から空撮した地図を受けとることができず、東電からの政府への情報は遅れに遅れました。

指揮系統はいくつもの系統にも分かれて相互の連絡を欠き、菅首相の私的独走も手伝って乱れ続けました。

斑目春樹原子力安全委員長は船橋のインタビューに答えて、次のように語っています。 

「B・5・bなんかに至っては安全委員会は実はまったく知らなかった。今回初めて知って、ああ、これももっとちゃんと読み込んでおくべきであった。あれがたまたま核セキュリティのほうの話としてあったもんですら、安全委員会の所掌ではなくて原子力委員会の所掌で・・・」。

唖然とするような無責任な言い逃れです。このような人が日本の原子力安全行政のトップだったのです。

原子力安全・保安院はこの福島事故で醜悪な姿をさらしました。

本書上巻第1章は、本来原発にいなければならない保安院検査官が爆発と共に、オフサイトセンターに逃亡し、しかもそこの放射線量が上がるとそこすらさっさと逃げ出してしまった姿が描かれています。

これは、多くの作業員、自衛隊、消防、警察の人々が退くことなく留まって戦っていたにもかかわらず、国による事故現場の把握をいっそう困難にしたまさに背任行為でした。

同じサイト敷地内で懸命の注水活動を行っていた自衛隊化学特殊部隊の指揮官は、この保安院検査官たちを吐き捨てるようにこう評しています。

「われわれの言葉で言えば、連中は敵前逃亡をした。保安院というところは逃げても罰則規定を作っていない。」

我が国にNRCの「B・5・b」といった減災対策を導入することを妨げ、事故においては現場から真っ先に逃げ出すような国家機関、それが原子力安全・保安院でした。

この惨めに逃亡した保安院検査官たちの姿こそが、日本の原子力安全・規制行政そのものを象徴しているようです。 

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船橋洋一「カウントダウン・メルトダウン」を読む       その2  「最悪のシナリオ」

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船橋洋一(民間事故調プログラムディレクター)の「カウントダウン・メルトダウン」を読んでいます。この大著の白眉は、下巻16章「最悪のシナリオ」の部分です。 

当時、15日早朝の4号炉建屋の爆発と、2号炉格納容器の損傷で大規模な放射能汚染が起きるという心配が現実のものになりつつありました。 

官邸スタッフによれば、官邸中枢の抱いたイメージはこのようなものです。 

「原子炉の中の水が減って、燃料棒がバタンと倒れたら、原子炉の底が抜けて核物質がドーンと落ちる。いずれ地下水に至れば、そこで大規模な水蒸気爆発を起こしてチェルノブイリだ。福島第1、第2合わせて10基の原子炉が飛び、総理は東アジア全体が大変なことになるとおっしゃっていました。」 

つまり官邸は、この3月15日段階で、連鎖的に多数の原子炉でメルトダウン、メルトスルーが起きて大規模水蒸気爆発が起き、チェルノブイリ級「最悪のシナリオ」事態になることを予想し得ていたわけてす。

この時、菅首相たち官邸中枢は、「日本の半分が住めなくなる。そして米国が再占領するという悪夢に苛まれていたようです。

内閣危機管理監は天皇陛下を九州に移すことまで頭をよぎったそうです。

15日早朝に起きた「菅首相東電怒鳴り込み事件」は、まさにこの時期のことです。菅がいかに度を失っていたのかは、この状況背景を照らし合わせるとよく分かります。

対策統合本部事務局長の細野は、官邸に専門家を中心とする実行部隊の知恵袋的「助言チーム」を作ることを構想し、近藤駿介原子力委員会委員長にリーダーを依頼します。 

近藤は、原子炉の確率論的安全評価の第一人者であり、この時期、海を隔てて同じく福島事故の分析と対応に苦慮していた米国側原子力機関トップとも人的ネットワークを持っていました。 

近藤は、当時原子力委員会委員長という「推進側」にたまたまいたために、斑目安全委員長の領分を荒らさなかっただけでした。

しかしおそらく、斑目よりはるかにこの危機的状況にふさわしい人材だったと思われます。 

16日、近藤たちは東電本社に向かいますが、この時近藤たちがもっとも心配したのは、吉田所長が事故指揮を執っている重要免震棟の線量が高くなって使えなくなることでした。 

もしそうなった場合、福島原発からの撤退という、米側がもっとも恐れた事態に発展していき、原子炉はもはや完全に制御不能に陥る可能性がありました。 

この状態になった場合、福島原発の「もっとも弱い環」である4号炉使用済み燃料プールの水が抜けて、炉から取り出して間もない崩壊熱の大きな使用済み核燃料がメルトダウンすることもありえます。 

そして4号炉プールがメルトダウンすれば、1、2、3号炉で今やっている注水による冷却作業は出来なくなり、再び連鎖的に炉心融解が始まります。その場合も同じく撤収のやむなきに到ります。 

近藤たちのチームは徹夜で、原子炉の「最悪のシナリオ」、別名「プランB」を計算し、放射性物質拡散の最悪シナリオをシュミレートしていきました。そして25日、その解析結果が出ました。

政府「最悪のシナリオ」(正式名「福島第1原子力発電所の不測事態シナリオの素描」] 

現在の20㎞の避難区域は当面据え置く。 

・4号機の燃料プールが損傷し、コアコンクリート相互作用が起きた場合は、50㎞圏内の住民を避難させ、70㎞圏内の住民を「屋内退避」させる。 

・他の燃料プールでも同じことが起きた場合は、170㎞が強制退避、250㎞は自主退避を考える。 

・最終手段としてはスラリー(※砂と水を混ぜた泥)による遮蔽がもっとも有効。必要量1100トン/基) 

これを見た細野は、「もしこれが外に出たら、だれが漏らしたのかを徹底的に追究しますからね」とメンバーを見据えて言い、この作業で使った資料、データをすべて廃棄するように命じました。 

この「最悪のシナリオ」は、直ちに既に出来ていた米NRC(原子力規制委員会)の「最悪シナリオ」とすりあわされ似た結果だったそうです。

そしてこの政府「最悪のシナリオ」は、北沢防衛相を経て、統合幕僚監部を中心として「作戦計画」が練られていきます。 

これも突貫作業で行われ、フェーズ1からフェーズ4に至るシナリオの悪化に応じた作戦計画と実施要領を作成していきます。 

・フェーズ1。福島第1原発の原子炉か格納容器が爆発するか、あるいは新たな建屋の爆発が起きて、大量の放射性物質が拡散する場合の東電と協力会社社員の撤退と救出作戦 

・フェーズ2。放射性物質が拡散した場合の、福島県全域で実施する陸海空自衛隊の救出作戦。その際、原発から半径50㎞圏内で自力で避難できない住民を輸送支援する。 

・フェーズ3。1号炉から4号炉まで連鎖的にメルトスルーし、膨大な放射性物質の拡散の蓋然性が高くなった時、原発から半径250㎞圏内の治安活動を行う。対象となる総人口は、3500万人を越えるだろう。 

・フェーズ4。複数の原子炉や格納容器が爆発した場合、それに伴って完全な制御不能状態が起きる。そうなった時には、コンクリートによる石棺作戦を実施する。 

自衛隊はこれを基にして、部隊動員計画と車両の準備、フェーズ4の石棺作戦に備えた「キリン」(高所コンクリート車)につけるコンクリート圧送機などを準備し、数百名の隊員は既に訓練に入っていました。

これがもし実施される事態になれば、首都東京の避難を含む3500万人というチェルノブイリを優に越える世界史上空前の避難作戦になったと思われます。 

菅は、劇作家の平田オリザに「最悪のシナリオ」に至った場合の「総理談話」の草稿を準備するように要請しました。

このようにして、密かに政府は「最悪のシナリオ」を想定した動きを開始していくことになります。

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船橋洋一「カウントダウン・メルトダウン」を読む     その1 原発事故における日米関係の真実

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福島原発事故独立検証委員会、通称「民間事故調」の設立者であり、プログラムディレクターをつとめた船橋洋一氏(元朝日新聞社主筆)による、福島第1原発事故の大著「カウントダウン・メルトダウン」(文芸春秋)が出されました。 

この本は、上巻の事故の状況と同時に、今までの類書になかった米国政府、軍内部のやりとりが重層的に書かれて思わず引き込まれます。

閉鎖的な艦船という性格から、いかなる被曝も認めないある種の「ゼロリスク」論に立つ米海軍、日本との同盟関係を重視する国務省・大使館原子力のプロとして冷徹に事故を分析し、対策を練るNRC(米国原子力規制委員会)が、三者三様の立場でぶつかり合いながら進むというやりとりなどは、日本で初めて公にされるものです。 

事故発生直後、横須賀基地からの全面撤退を主張する米海軍とNRCは相当に違う分析と対策をたてます。

米海軍は米国の世界戦略の基本である空母をいかなる形でも汚染させるこはできないと判断しました。

もし、いったん汚染されれば、世界のどこにでも自由に航海し、寄港できなくなるからです。そうなれば作戦に重大な支障をまねきかねない、と米海軍は判断しました。

そして海軍は横須賀基地の中で放射能が測定された段階で原子力空母ジョージ・ワシントンの緊急出航を決意します。

また横須賀に近づいていた原子力空母ロナルド・レーガンも急遽寄港を取りやめて遠ざかっていきました。

しかし、この決定は在日米国人を混乱に陥れます。その時のことを著者は「情緒的メルトダウン」と評しています。

そして米海軍が突出して米海軍軍人とその家族に「室内避難」をするように米軍放送で放送したために、大使館や在日米国人は混乱の真っ只中に投げ込まれます。

「われわれはなにもしなくていいのか。海軍が逃げているのに東京にいて大丈夫なのか」。

ルース大使は悩んだ結果、「館員家族は自主的外国退避を認める」と苦肉の承認を与えました。

一方、ホワイトハウス高官は、「もしあの時、在日米軍が日本から撤退したら、日米同盟は終わっていただろう」と述べています。

この危機意識は、ホワイトハウスと国務省の担当官は共有していました。在日大使館も同様の立場でした。

そして彼らは米海軍の提案する200マイル(320㎞)避難案を「身体を張って」阻止したのです。

もしこの海軍「200マイル退避案」が採用されたのなら、米大使館の移転、東京からの米国市民の全面退避、横須賀基地からの全面撤退は不可避だったでしょう。この瞬間、日米安保は事実上終了していたかもしれません。

こうして米国は、他国のほとんどの大使館と職員が逃げ出した中で、最後まで日本に留まり、NRC(米国原子力規制委員会)のプロ中のプロを派遣し、放射線モニタリング、事故のシミュレーション、分析、対応策、物資の提供などを行ったのです。

一方、大統領科学技術担当補佐官のジョン・ホルドレン(原子力の専門家)は、米エネルギー省と共に「最悪シナリオ」を作成していました。

たとえば、拡散シミュレーションを作る場合においても、機械的にデータを入れればいいのではなく、プラントを操作する人間の判断と決断が重要な要素です。

もし福島第1原発が撤退となると、「最悪シナリオ」は一気に最大値にまではね上がるわけです。

ホルドレンは、前提として「日本人が事故を途中で投げ出すとはとても考えられない。日本人はそのようなことはしない」という認識に立っていました。

これは、吉田昌郎所長以下いわゆる「フクシマ・フィフティ」(実際は69人)の戦いを海を越えて予測したものでした。

その結果フルドレンが作った「最悪シナリオ」はこのようになりました。

・米環境保護局の基準を越えるプルーム(原子力雲)は東京から75~100マイル(120~160㎞)までは届かない。

・横須賀の放射線量は海軍の予測の5%にすぎない。

・放射性物質のうちヨウ素は、海軍の予測の1~2%に留まる。

・したがって、東京、横須賀、横田が放射能汚染の危険にさらされるリスクは当面、考慮する必要はない

この予測が正しかったことは後に証明されます。この新たなフルドレン・シミュレーションで米国は日本の支援体制を組んでいくことになります。

米国は事故直後から、「米海軍原子炉機関」(NR)による福島、栃木、茨城の放射線モニタリングや、無人偵察機グローバルホークを使った空中からのデータ収拾を行いました。

福島県いわき市、茨城県石岡市、栃木県宇都宮市・・・指示された地点の放射線量を15分おきに24時間、大型のバンで測定し、それは1カ月間継続されました。

我が国はこの段階ではモニタリングポストによる計測のみでしかなく、それは福島、茨城に限定されていました。文科省、環境省が、このような広域の放射線量実測をするのははるかに後のことです。

しかし、その米国情報を受け取る官邸中枢では、「なんでも言ってくれ。全面的に協力する」という米国側の申し出に対して、対米依存と対米排除のアンビバレンツな心理が同時に吹き出ました。

それは民主党政権が持つ反米的体質と、反面の米国への甘えに似た依存体質が、危機のピークにおいて一気に吹き出したものでした。

官邸中枢は、原子炉が制御不能になるなかで、一気に米国に依存心が高まっていくのと同時に、そうなった場合の米国の介入の重苦しさと政治的自負心の間で大きく動揺していたのです。

菅首相や細野氏は、「自分たちでかたづけないと米国に占領されるのだ」と真剣に思っていたそうてす。

ところが米国はそんな「日本占領シナリオ」などはまったく考慮していませんでした。

東電が撤退し、日本政府がお手上げになった場合、米国はどうするのか」の一点に問題は絞られていました。

「最大限の支援はするが、一体で動くわけではない」というのが米国の基本姿勢であり、その「最後の砦」は自衛隊であって米軍ではないと考えていました。

だから日本政府の重度の情報隠匿体質は、米国をして「日本側が原子炉や4号炉燃料プールの状況を本当に知らないのか、知っていてなんらかの理由でわれわれと共有しないのか、それがわからなかった」という摩擦につながっていきます。

また日本側の「指揮所」が見えず、原発事故のような巨大科学の反乱に対して、官邸のだれが科学的知見を持っているのかもつかめませんでした。

米政府高官はこう述べています。

「通常は外務省を通じてすりあわせるが、外務省は原発事故では脇役でしかない。ホワイトハウスは、強力でたしかなカウンターパートを探したが、そういう相談相手はいなかった。官邸がその役割を果たすべきなのだろうが、官邸は科学的知見の取り込み方が十分でなかった。」

米国側はこの対策を立てている日本側の責任者と直接に意見交換したいと願いましたがかないませんでした。

そして米国が恐れたのは、実は既に日本政府が統治能力を欠いているのではないかという不安だったのです。

長くなりましたので、次回に続けます。

 

 

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中国軍レーダー照射事件 政府はなぜ今公表に踏み切ったか

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中国軍の戦争誘発行為について続けます。

中国の言い分の変化を追ってみましょう。 外交部の会見です。

6日会見・・・「(質問から5秒の沈黙の後に)レーダー照射は報道で知った」(資料1参照)

7日会見・・・「日本側が危機をあおり、中国のイメージを落としめている」

8日会見・・・「日本の言い分はねつ造」、「日本側は危機を故意に騒ぎ立て、緊張状態を作り出し、中国のイメージに泥を塗るようなことをしている。中国側が強硬姿勢を示しているのではなく、日本側が挑発している。」
「日本側は中国の脅威を誇張して緊張を作り出し、国際世論を間違った方向に導いている」「中国側は対話と協議を通じて問題を解決しようと努力してきたが、日本は多くの船や航空機を出動させる行動をエスカレートさせている」
「最近、日本は危機を煽り、緊張を作り出し、中国のイメージの貶めを図ろうとしている。このやり方は日中関係改善の努力に反する」(資料2参照)

8日国防部談話・・・「中国側に事実の確認をしないで、一方的に虚偽の状況を発表し、日本政府の高官が無責任な発言で『中国の脅威』を誇張し、緊張した雰囲気を作り出し、国際世論を誤った方向に導いている。」(資料3参照)

中国政府準機関紙 環球時報・・・「レーダー照射は日本の自作自演で茶番だ、右傾化したヤクザの政治に中国は警戒せよ」(資料5参照)

まず外交部が知らなかったのは、驚くに値しません。外交部は中国で格下官庁でしかないからで、事前に軍部からなにか相談にあずかることはあまりないようです。

「捏造」だの「緊張を煽る」だのと、我が国を批判していますが、ロシアがどのように見ているのか紹介しておきます。

ちなみにロシアは北方領土の日にも戦闘機2機で領空侵犯していますが、ミサイル類を搭載しない状態で飛行するていどの自制心は兼ね備えています。

もちろん、今までさんざん領空侵犯してきましたが、射撃照準レーダーの照射などという、一歩間違えば戦争になるような行為は謹んできています。

「もし2隻の船を2人の兵士になぞらえるなら、レーダーによる標的の捕捉とそれに付随する行為は、弾丸の入ったライフル銃を敵に向け照準を合わせるに等しい。そうした条件においては、挑発者自身により偶然引き金が弾かれる可能性もないわけではないし、標的とされた側の船の乗組員が、生命の危険を感じて衝動的に危険な行為に出る事もあり得る。」

「以前も中国人民解放軍が威嚇のため、そうした行為をしてきたことはよく知られている。」

「はっきりしているのは、中国が、領土問題における行動方針を変え、相手の強さを試す事にしたということだ。」(ボイス・オブ・ロシア・資料9参照)

さて、8日に中国国防部は、あれは「艦載レーダーで通常の警戒に当たった」としています。 外交部ではなく、当事者の国防部ですから、これがほんとうの中国政府のコメントだと思えます。

子供だましです。艦船や軍用機にはレーダー警戒装置(ESM)が搭載されています。自衛艦ならばもっともよく受信てきるマストの頂上に設置してあります。

相手の艦船や航空機が射撃のために火器管制レーダー波を発信すると、それを受信し、警告を発して、自動的に記録するようになっています。

この装置により、相手が発したレーダーの種類、照射方向、信号源からの距離、敵が捜索中か、ロックオン(照準)しているかという状態が判別ができます。

通常の航海用レーダーは、漁船や商船の上でクルクルと旋回しているのですが、射撃管制用レーダーは、射撃対象に指向して追尾しますので一目で分かります。

もちろん自衛艦を指向している中国側フリゲートの射撃管制レーダーの映像は、海自に撮影されていますから、小野寺大臣が言うように近く国際社会に提出されるでしょう。(資料6参照)

当然ですが、照準用レーダーは、気象用レーダーや、航海用レーダーとはまったく違った周波数帯で照射されています。これも記録されていますが、探知能力がわかるので、全面公開されるかどうか不明です。

さらに、この行為は「西大西洋海軍シンポジウム」が作った「紳士協定」(CUES・Code for Unalerted  Encounters at Sea)にも違反しています。

これは日本、中国、米国、韓国のほか、ロシアやASEANの海洋国家が参加するもので、CUESは、平時において、不測の事態を避けるための行動基準を定めています。

この中で、レーダー照射は以下のように禁止されています。
[PDF]  Code for Unalerted Encounters at Sea (CUES) | Western Pacific Naval Symposium 2012
Assurance Measures for Ships

3.14.1 Simulation of attacks by aiming guns, missiles, fire control radars, torpedo tubes or other weapons in the direction of vessels or aircraft encountered..

残念ながら、「一部の国の反対で」採択には至っていませんでした。

この「一部の国」がどこかは不明ですが、今回の行為をみれば自ずと明らかでしょう。 しかし、西太平洋のほぼすべての海軍で偶発的戦争に到らないような認識が共有されていることに注目すべきです。

人民日報下にある「環球時報」は、韓国が北朝鮮に対して威嚇行為をしたことで今回の中国側の行動を合理化しようとしています。

つまり、「艦の行動を妨害する相手に対して、砲塔を向けて狙いをつけたり、射撃管制用レーダーを照射して警告するのは国際的な慣例だ」と言いたいわけですが、北朝鮮と韓国は未だ朝鮮戦争が終結していない休戦状態の準交戦国関係にあります。

果たして我が国と中国は現在「準交戦国」関係なのでしょうか?

環球時報の言う通りなら、中国は我が国と準交戦国関係だと認識して、あるいはそのような関係にするべく軍事的威嚇を行ったことになります。語るに落ちたとはこのことです。

我が国が着々と証拠を整え、国際社会に対して働きかけているにもかかわらず、このような理屈にもならないことを言うこと自体が、中国の混乱を物語っています。

さて、続々と追加情報が上がってきていますので、わかっているものだけでも整理しておきます。

2005年・海自P3Cに対するレーダー照射。政府衆院安保委での答弁。
「航空機に対して当然中国艦艇は対空レーダーを用いて照準を合わせる。それに対して自動的に探知するESMという装置があって、これで照準が合わされたかどうかということについてはわかるようなっている。」
※第3次小泉内閣時 官房長官・安陪現首相

2010年4月・民主党政権時代・海自P3Cに艦載砲の照準を合わせた。同時にレーダー照射もあったと思われる。
※民主党鳩山首相 仙谷氏官房長官
コメントなし。

・BSフジ6日、元海幕長古庄幸一氏、「中国は、レーダー照射しても日本政府が公表すると思わなかった。なぜかと言えば、いままで3年間は公表してなかったからだ」
※ただし古庄氏退任後の事件であって未確認情報だが、ほんとうならば民主党政権は一貫して隠蔽したことになる。

2012年9月以前・レーダー照射事件
※野田前首相は否定。未確認。

2013年1月19日・海自「おおなみ」搭載ヘリにレーダー照射・

同年1月30日・海自「ゆうだち」にレーダー照射。
※この射撃用レーダーは搭載砲のものであるが、砲自体は動いていない。

このようにほとんど日常的に中国艦艇は日本側にレーダー照射をしており、「気軽に」攻撃の意志があるとなしに関わらず、戦争挑発行為を行っていたのです。

安倍-石破両氏は、常態化した尖閣周辺空海域の緊迫した状況を、政権奪還前から知り得ていたはずです。

なにせ、安陪首相は2005年の小泉内閣時代のレーダー照射事件時の官房長官だったのですから。

第2次安倍政権以前、特に民主党政権期に中国海軍、海監(中国海保)の艦艇は自由に領海侵犯し、気ままに射撃管制レーダーを照射しては威嚇を続けていても日本側は耐え忍ぶしかないという状態が既成事実化しかけていました。

目的のためには、執拗に軍事威嚇を積み上げていき、我が国に「領土問題」を認めさせて、交渉テーブルに追い込むか、あるいは、「最初の一発」を耐えかねた日本側に発射させることで一気に軍事的結着を図るということが、中国側のシナリオでした。

中国側はこの長期間(おそらくは3年以上)の侵犯行為を蓄積していき、日本側が慣れっこになって諦めるか、激昂して先に手を出してくる事態を狙っていました。

そしてそれは8分通り目論見が完成し、あとは昭和12年7月7日の「盧溝橋」を再現すれば中国側の大手でした。

我が国はそれに乗らず、言い訳の聞かない証拠を固めていき、武力を使うことなく一気に攻勢に転じました。

安倍首相が、今回5日に公表に踏み切ったのは、国際世論を味方につけるためです。

そして、今月末に予定されているオバマ大統領との会談に、この中国の横暴を議題に乗せることで日米同盟関係を固めて、中国と対抗することでした。

この時期を選んだのは、衆院予算委員会が7日から始まる時期にあたって、もっとも政府から情報発信がしやすい時期だったからでしょう。

その意図は見事に当たり、パネッタ米国防長官の強い中国批判を引き出しました。(資料7参照)

米国にはレーダー照射という戦闘行為を中国から挑まれたのにも関わらず、よく日本側は自制したという世論が生まれています。

中国軍部にしてみればいままでやりたい放題にしてきた武力威嚇が、いきなり国際社会の批判を浴びてしまったことに対する混乱が生まれています。(資料8参照)

中国は最大の年中行事の春節に入りました。この期間、対外的な動きは停止します。(※昨日複数の中国海監艦艇が接続海域を航行した。また航空機も複数が飛行した。)

そして以後中国軍が同じことを繰り返せば、それは確信犯的な武力行為であると知ってのことになります。

今後の中国の動きを冷静に注視せねばなりません。

        ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 中国外務省“レーダー照射は報道で知った”
NHK 2月6日

中国海軍のフリゲート艦が先月、東シナ海で海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射したことについて、中国外務省の報道官は「報道によって初めて知った」と述べ、外務省としては、事実関係について直接、知らなかったという立場を示しました。

中国外務省の華春瑩報道官は6日の定例記者会見で、中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射したことについて「自分も報道を見たが、具体的には分からない。中国の関係部門に聞いてほしい」と述べました。

さらに、「中国外務省は、日本側が抗議するまで事実関係を知らなかったという意味なのか」という質問に対しては「そう理解してもらっていい。われわれも報道を通して、初めて関連の情報を知った」と述べました。

今回のレーダーの照射は、中国の政府や軍のどのレベルでの判断によるものなのか分かっていませんが、6日の華報道官の発言で中国政府全体としての行動ではなかったことは明らかになりました。

今後は、軍のトップでもある習近平総書記など指導者の指示によるものだったのかどうかなどが焦点になるとみられます。

■資料2 中国外務省“日本の言い分はねつ造”
NHK 2月8日

中国海軍の艦艇が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制レーダーを照射した問題について、中国外務省の華春瑩報道官は8日の定例の記者会見で、「中国の関係部門がすでに事の真相を公表している。日本側の言い分は完全なねつ造だ」と述べ、強く反論しました。

さらに、「中国側は対話と協議を通じて両国が直面する問題を解決しようと努力してきたが、日本は過ちを正すどころか、多くの船や航空機を出動させ、中国の主権を損なう行動をますますエスカレートさせている」と主張しました。

そのうえで、華報道官は、「日本がこのようなことをするのはいったい何のためなのか問わずにはいられない。われわれも強い警戒を続けざるをえない」と述べました。中国外務省は、問題が発表された翌日、6日の会見では、事実関係について知らなかったという立場を示していました。

しかし、7日、「日本側が危機をあおり、中国のイメージを落としめている」と述べるなど、日本への反発を次第に強めています。

また、先月19日は、中国海軍の艦艇が通常の訓練を実施していたところ、自衛隊のヘリコプターが接近してきたため、艦載レーダーで警戒を行ったとしています。

そのうえで、いずれについても、「射撃管制レーダーは使用していない」として、「日本側の言っていることは事実と異なる」としています。

さらに、国防省の談話は、「中国側に事実の確認をしないで、一方的に虚偽の状況を発表し、日本政府の高官が無責任な発言で『中国の脅威』を誇張し、緊張した雰囲気を作り出し、国際世論を誤った方向に導いている」として、強く反発しています。

この問題を巡り、中国政府が正式な談話を発表するのは初めてです。
中国政府は、問題が発表された翌日の6日には、事実関係については知らないとしていましたが、7日、外務省の報道官が「日本側が危機をあおり、中国のイメージを落としめている」と述べ、日本への反発を強めています。

■資料3 中国国防部ウェッブサイト中国版 2013年2月7日Photo

日本艦、機の近距離追跡、監視こそが日中の海空安全問題の根源である

日本防衛相が中国海軍艦艇が射撃管制用レーダーをで日本自衛隊艦艇、機に照準をつけたと指摘したという日本メディアの報道に対して、中国国防部ニュース事務局は以下のとおり説明する。

1月19日午後4時頃、中国海軍の護衛艦1隻が東シナ海関連海域で定期訓練を実施していたところ、日本自衛隊の艦載ヘリによる中国側艦艇への接近を発見した。中国側の艦載レーダーは正常な観察、警戒を続けたが、射撃管制用レーダーは使用していない。

1月30日9時頃、中国海軍艦艇が東シナ海の関連海域で定期訓練任務を実施していたところ、日本駆逐艦・ゆうだちが中国側艦艇の付近で近距離の追跡、監視を続けていることを発見した。

中国側艦載レーダーは正常な観察、警戒を続けたが、射撃管制用レーダーは使用していない。日本側の、いわゆる中国海軍艦艇が射撃管制用レーダーで日本側の艦艇・機体に照準を合わせたという主張は事実に合致しない。

指摘する必要があるのは、近年、日本側の艦艇、機体はしばしば中国海軍の艦艇、機体に対して長時間の近距離からの追跡、監視を続けていることである。これこそが日中の海空安全問題の根源である。中国側は何度も日本側に交渉を申し入れた。

先日来、日本側は事実を歪曲し、中国軍の正常な戦闘訓練活動をあしざまに描く、事実に合致しない言論を流布している。今回もまた中国側に事実を確認しない状況で、一方的にメディアに虚偽の状況を公表した。日本政府高官の無責任な言論、“中国脅威”論の喧伝、緊張ムードの造成、国際世論のミスリード。

これらの動向は警戒、熟考に値するものである。中国側は日本側は真摯に有効な措置を取り、東シナ海の緊張ムードを作り出す行為をやめ、無責任な言論を二度と発表することのないよう希望するものである。
http://news.mod.gov.cn/headlines/2013-02/08/content_4432510.htm

■資料4 レーダー照射は日本の自作自演で茶番だ、右傾化したヤクザの政治に中国は警戒せよ
環球時報 2月7日

敵対的な尾行および航行妨害を行う相手側の艦艇に対して、海軍艦艇が警告を行うことは国際的な慣例である。

一般的に、A側の艦艇がB側の艦艇の航行に実質的な脅威を与えた場合、もしくはその安全に深刻な影響を及した場合、
B側の艦艇は無線連絡により相手国に対して間違った行動をとらないよう口頭の警告を行う。口頭の警告に効果がなかった場合、 B側の艦艇は艦砲を向けることにより、A側の艦艇の措置に対して警告を行う。当然ながら、火器管制レーダー照射により、 A側の艦艇の措置に対して警告を行うことも可能だ。最後に、B側の艦艇は艦砲による威嚇射撃により、警告を行うことが可能だ。

このような事件には先例がある。2002年11月、朝鮮の海軍巡視船が白?島の北3.5海里の海面で、北方警戒線を1.5海里越境した。
韓国海軍の5隻の海軍艦艇が出動し、そのうち1隻の韓国艦艇が2度に渡り威嚇射撃を行った。朝鮮の巡視船は反撃せず、Uターンし撤退した。

中日の今回の事件において、日本側は双方の艦艇の距離がわずか3キロに接近したと称した。これは対艦ミサイルの近距離射撃を行うため限界とされる距離を大きく下回っており、
対艦ミサイルの発射は想像しがたい。日本側は、中国側が対艦ミサイルの火器管制レーダーにより照射を行なったとしたが、これは日本側に良からぬ了見があるのではないかと疑わざるをえない。
これはまた、中国艦のレーダー信号に関する日本側のデータ不足を反映している可能性がある。これにより、中国艦の行動に対する日本側の判断ミス、もしくは判断の遅れが生じる可能性がある。

海上自衛隊の「盗人が他人を盗人呼ばわりする」茶番は、これが初めてのことではない。2010年4月、日本側は中国海軍の駆逐艦の速射砲が、 中国の艦隊を尾行していた日本のP-3C哨戒機に照準を合わせたと称した。しかし実際には、日本のP-3Cはいわゆる「防空識別圏」を目標確認の口実とし、中国艦に対して超低空尾行および挑発を行なっている。中国側も必要な措置を講じ、これに対して警告を行わざるをえない。

日本側は今回の「レーダー照射」事件の中で、当時の中日間に摩擦が生じていたという背景を発表せず、 また当時の双方の艦艇の航行に関する情報を提供しなかった。これはあたかも、当時の日本の理不尽さを故意に隠しているかのようだ。
しかしながら、日本側は断固否定するか、理非曲直をわざと曖昧にし、逆に中国を非難し、中国海軍の艦艇が「極めて珍しい行動」をとったと称した。

これは完全に日本の自作自演の茶番であり、その裏側には釣魚島(日本名:尖閣諸島)問題をヒートアップさせ、 安倍首相の訪米前の下準備をしようとする日本の意図が隠されている。日本はまた国際社会において、「いじめられている」ふりをしようとしている。

このような「理不尽でも三分の理を求める」という外交戦術は、まさに典型的な「日本の右傾化したヤクザの政治」であり、 日本の中国に対する欺瞞に満ちた外交的常套手段である。これに対して中国は警戒心を高め続ける必要がある。
■資料5 政府、レーダー情報の開示検討=防衛相「証拠持っている」―中国公船の動きは沈静化
時事通信 2月9日
中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への火器管制レーダーの照射に関し、日本政府は護衛艦が捕捉した電波データや撮影した画像などの一部開示に向け、検討に入った。中国政府が日本側の発表を「完全な捏造(ねつぞう)」と全面否定したことを受け、レーダー照射の事実を裏付ける証拠を国際社会に示す必要があると判断した。
 小野寺五典防衛相は9日午前、都内で記者団に「証拠はしっかり持っている。政府内で今(どこまで開示できるか)検討している」と表明。「防衛上の秘密にも当たる内容なので慎重に考えていきたい」とも語った。
 防衛省内には「自衛隊の解析能力を相手に教えることになる」として、開示に否定的な意見が強い。このため日本政府は、中国側の今後の出方も見極めながら、外務・防衛両省を中心に、公開できる情報の範囲を慎重に検討する方針だ。
 中国側は、軍艦が照射したのは通常の監視レーダーで、射撃用の火器管制レーダーではないと主張している。これに関し、防衛相は「通常のレーダーはくるくる回って警戒監視をするが、火器管制レーダーはその(目標の)方向に向けてずっと追いかける」と指摘。
その上で「私どもは相手の船のどのレーダーが火器管制レーダーか分かっている。それが一定期間ずっとわが方の船を追いかけていた証拠がある」と語った。
 さらに、火器管制レーダーについて「電波を発する機械で、しかも(周波数などが)特殊なレーダーだ。それもしっかり記録しており、証拠として間違いない」と強調した。
 一方、防衛相は9日午前の読売テレビ番組で、東シナ海での中国の動向に関し、「(レーダー照射を)公表した5日以降、尖閣(諸島)周辺の中国公船の動きは収まっている」と述べ、中国軍などの日本に対する挑発行為が沈静化していることを明らかにした。
■資料7 読売新聞2月7日
パネッタ長官の講演はワシントンのジョージタウン大で行われ、長官は尖閣問題に関し、
「他国を脅かし、領土を追い求め、紛争を生み出す中国にはなるべきではない」と述べ、
中国を名指しで批判した。

レーダー照射などの挑発行為については、「領有権の主張が制御不能となり、 より大きな危機を招く可能性がある」として強い懸念を表明した。

こうした米政府の懸念を日中両政府に伝えたことも明らかにした。

長官はまた、北朝鮮の核・ミサイル開発など北東アジアの課題に対応するため、 同盟国である日本、韓国との連携が重要だと指摘。

中国に対し、「日米韓3国に対抗するのではなく、共に地域の繁栄のために 努力するべきだ」と訴えた。
■資料8 中国軍の挑発沈静化 日本政府、「軍独断」の見方
産経新聞 .2月.9日

政府が5日に中国海軍艦艇の射撃管制用レーダー照射を発表して以降東シナ海での中国軍の挑発が沈静化していることが8日、分かった。フリゲート艦は沖縄県・尖閣諸島の北方海域に展開しているものの動きは小さく、連日続いていた戦闘機などの領空接近は途絶えた。

中国共産党指導部が挑発を自粛するよう指示したためとみられ、政府は照射が「軍の独断」だったとの見方を強めている。

東シナ海上空では昨年9月以降、中国海軍のY8哨戒機とY8情報収集機が日本領空に連日接近。12月からはY8を護衛する形で空軍戦闘機J10も近づき始めた。緊急発進(スクランブル)する航空自衛隊のF15戦闘機や警戒監視中の海上自衛隊P3C哨戒機などが入り乱れ、偶発的な衝突が懸念されていた。

政府高官は「年末から一触即発の状態が続いていたが、6日以降は驚くほど静かになった」と指摘。別の高官も「フリゲート艦を尖閣北方から後退させることはないが、この3日間の領空接近は皆無だ」と語る。

レーダー照射では、党指導部の指示か、軍の現場の独断だったかが焦点。防衛省幹部は「指導部の指示であれば照射を即座に正当化した上で、反発のメッセージとして別の形で挑発に出る準備をしていたはずだ」と分析する。

逆に、挑発が沈静化したことで、国際社会の批判を恐れた指導部が慌てて挑発の自粛を軍に命じたとの指摘が多い。パネッタ米国防長官も中国に自制を求めており、政府の積極的な公表が中国軍の挑発を封じる上で奏功したといえる。

中国では今月10日に春節(旧正月)を迎え、政府は祝賀ムードの中で軍が挑発を再開させるかにも注目している。仮に挑発に出てくれば、今度は指導部の指示であることは明白だ。
資料9 ザ・ボイス・オブ・ロシア
http://japanese.ruvr.ru/2013_02_08/104048660/

ロシアの国防問題専門家に聞く「レーダー照射は外交政策の手段となる

中国政府は、中国海軍の艦船が、東シナ海で日本の海上自衛隊の護衛艦に対し火器管制レーダーを照射したとの日本側の非難を斥けた。これについては、中国国防省の声明の中で述べられている。一方、分析専門家らは「そうした事はやはりあった」と見ている。VOR記者は国防問題のエキスパートであるワシーリイ・カーシン氏に、意見を聞いた。以下、氏の見解をまとめて御紹介したい。

中国の053H3型フリゲート艦が日本の海自の護衛艦を標的としてレーダー照射したのは1月30日の事だったが、この行為は、尖閣諸島をめぐる係争海域での中国の行動モデルが取って替わるというテーゼを最終的に確認するものと見なす事ができる。

比較的最近まで、中国は、自国の軍事力を尖閣諸島沖や南シナ海といった係争地区で誇示する事をそもそも避けていた。こうした場所で中国が存在を誇示していたのは、国家海洋局海洋モニタリング部の艦船や航空機、魚類保護や税関の船上の中国旗によってだった。これらの船や飛行機を操縦しているのは軍人ではなく、搭載している武器も原則として偶発的な出来事に備えるためのもので本格的なものではない。

このように中国は、領土的利益を断固主張しながらも、その一方で、軍事力で隣国を威嚇する気持ちがなく、あらゆる努力を傾けて軍事紛争を避けようとしている姿勢を示してきた。

   ところが状況は変化した。まず1月10日、中国は係争地区に北海艦隊の偵察機Y-8を派遣、その後、自分達のパトロール・ゾーンに日本のF-15J戦闘機2機が現れたことに対抗して、同じく2機のJ-10戦闘機をそこに送った。翌日この示威行動に、日本側の情報では「武器を搭載した」ほぼ完全な編隊を組んだ形での爆撃機JH-7/7Aによる尖閣諸島周囲での飛行が加わった

   そして、こうした行動がエスカレートしてゆく次の段階として行われたのが、今回問題になった日本の護衛艦へのレーダー照射だった。火器管制レーダーの照射は、武器を使用する前の最後の措置である。これは、火器管制システムが、標的を攻撃するためのデータを連続して作成している事を意味する。

もし2隻の船を2人の兵士になぞらえるなら、レーダーによる標的の捕捉とそれに付随する行為は、弾丸の入ったライフル銃を敵に向け照準を合わせるに等しい。そうした条件においては、挑発者自身により偶然引き金が弾かれる可能性もないわけではないし、標的とされた側の船の乗組員が、生命の危険を感じて衝動的に危険な行為に出る事もあり得る。

   なお日本側へのレーダー照射は、1月30日が最初ではなかった。1月19日にも中国側は、日本の艦船から飛び立ったパトロール用ヘリコプターにレーダー照射を行った。尖閣諸島海域において日本と中国の艦船は、互いに大変近い距離でパトロール活動を展開している。

   日本の艦船にレーダー照射した053H3型フリゲート艦は、その後「ツャンフー」タイプのフリゲート艦に発展しているもので、1990年代から2000年代初めにかけて建造された。053H3型は、短距離高射ミサイルHQ-7、巡航ミサイルYJ-83、100ミリ砲などのシステムを搭載している。全体的に旧式ではあるが、このタイプのフリゲート艦は、近距離での戦闘ではかなり危険な存在と言える。今回のレーダー照射では、中国と日本の艦船の間の距離は、およそ3千メートルに過ぎなかった。

   中国側は、自国の艦船が日本の護衛艦をレーダー照射した事を否定し、これは中傷であるとし、中国船のすぐ近くで日本が危険な策略をめぐらしていると非難している。しかし、以前も中国人民解放軍が威嚇のため、そうした行為をしてきたことはよく知られている。例えば2001年、中国空軍のスホイ27型機は、台湾海峡上空で台湾のミラージュ戦闘機に対しレーダー照射を行った。また今回の事件の直前、中国の軍事専門家の一部には、レーダー照射をすべきだとの声があったのも事実である。

   はっきりしているのは、中国が、領土問題における行動方針を変え、相手の強さを試す事にしたということだ。近く我々は、中国指導部の目論見が正しかったかどうか、この目で見る事になるだろう。

    以上、ロシアの国防問題のエキスパートであるワシーリイ・カーシン氏の意見を御紹介した。

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週末写真館

029

湖でいちばん美しい時間というのは、私は夜明け前の数分間だと思います。

湖は、その日、その天候によって微妙に表情を変えていきます。

ある時は曇って垂れ込めた雲の間から、わずかな朝日が差し、生まれたての太陽は姿を見せることなく雲の中を登っていきます。

水面と空を横切る一本の淡い紅色だけが朝が始まったことを教えてくれます。

そしてある日は、晴天の空に若い太陽が顔をのぞかせ、おどろくような速度で天空に駆け上っていきます。

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またある日は重苦しい群青の雲をかきのけるようにして、太陽が朝を告げます。まるで雲と太陽が争いあっているようです。

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雲の軍勢は払いのけられ、淡い万華鏡のような朝が束の間始まります。
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おはようございます。今日もまた静かな朝が始まりました。

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19世紀的帝国主義国が燐国にあるという憂鬱

045 
昨日の記事に追加情報が出ましたので記しておきます。 

情報の出所は朝日新聞ですが、現在なぜかサイト上からは削除されており、魚拓の形で見ることができます。 

これはまちがいなくスクープ記事なのに、朝日新聞はもったいないことをします。 

尖閣国有化前から射撃照準レーダー照射 政府関係者明かす 
朝日新聞2月4日
 

 東シナ海での中国軍による自衛隊への射撃用レーダー照射が、野田政権が昨年9月に尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化する前にもあったことがわかった。 政府関係者が明らかにした。安倍政権が5日に公表した今年1月下旬の事案以前にも、同じ海域で複数回、照射があったとしている。

 政府関係者によると、1月30日に中国軍艦が海上自衛隊護衛艦に火器管制用レーダーを照射したのは尖閣諸島の北西百数十キロの公海上。同月19日に海自ヘリコプターへの照射があったとみられるのも同じ海域。防衛省は今回公表したケース以前にも周辺海域で複数回、自衛隊への中国軍のレーダー照射を把握

 今回の「数分間」(防衛省)より長く照射したケースもあるという。日本政府は「日中関係を悪化させる懸念がある」(政府高官)とこれまで公表を避けてきたが、今回は立て続けにレーダー照射されたため、安倍政権が事態を重く見て公表に踏み切った。(後略)」

さて、このニュースの意味することは明解です。 

まず第1に、2012年9月11日の日本政府の国有化以前から、中国軍の戦争誘発行為があったということです。 

したがって、中国政府がなにかにつけて問題とし、反日デモの引き金となった尖閣国有化は、本当はなにも関係がなかったということになります。 

海上保安庁と中国海洋監視機関同士の衝突なら、引き返し可能です。海保はいわば戦争を回避する「知恵」なわけです。

だから、海軍同士の衝突だけは避けようというのが、今までの日中間の最低限の了解事項だったはずです。

ところが、中国は習政権となって、武力による威嚇と恫喝により、日本を交渉テーブルに日本を引きずり出す方針に転換したと思われます。 

これに我が国が屈すれば、外堀は埋められたことになります。意味のない交渉をしつつ、時をうかがって我が国の実行支配を崩せばよいだけです。 

また、中国側から再び「棚上げ論」も出たようですが、これも同類の論理です。

一見日本側にとって飲み込み易いような糖衣が被っていますが、いったん同意したら最後、事実上尖閣に領土問題が存在する、だから係争地であると認めたも同然となってしまいます。

この論理は日本国内でも支持者が多く、現に、丹羽前駐中国大使などは、「外交上の係争はある。ないというのは理解不能だ。」(2012年12月20日)と述べています。

係争地でないものを係争地にして、戦争を誘致しているのですから、とんでもない人を民主党は中国大使に任命したものです。

一方、経団連米倉弘昌会長は、「中国がこれほど問題視しているのに、日本側が問題ないというのは理解しがたい」(2012年9月27日)と,これまた中国政府の代理人のようなことを言っています。この人にとってTPPもそうですが、自社の利益が国益なようです。 

第2に、民主党政府は、「日中関係を悪化させる懸念がある」(朝日新聞同上)として、この公表を握り潰していました。 

一説、親中派の岡田氏が関与したと言われていますが、未確認です。いずれにせよ、この国有化前にレーダー照射が常態化していたという重大情報を、国民にはまったく知らせていなかったことことは言い逃れできないでしょう。 

もっとも、民主党内でも海江田、細野各氏も知らなかったようなので、民主党政権中枢の数人だけで情報は止まっていたようです。

まぁ唯一、野田首相が「領土問題は存在しない」という原則を保ってくれたことだけで、首の皮一枚で救われましたが。

このような政権引き継ぎを受けた自民党政権も、さぞかしびっくりしたことだと思います。そこで、公表の機会を考えているうちに立て続けに再び三度の照射事件が起きてしまったようです。

別の未確認情報によれば、安陪政権は19日、30日の事件における中国艦と自衛艦の速度と位置、射撃管制レーダーの周波数などを、当時近くを飛行中だったP3Cの情報も含めて徹底的に分析して、国際社会にいつでも提出できるまでに精査していたそうです。そのめどが出て公表に踏み切ったと言われています。 

ところで現在の日中関係は、日中戦争の前夜に似ている指摘する人もいます。中央の意志を背景にして、現場が暴走を繰り返し、それを制止する仕組みが内在的に中国にないために、偶発的に戦争が開始される危険があります。 

現在中国のゴールデンタイムのテレビ番組の多くは抗日戦争ドラマです。

「中国紙、重慶晩報によると昨年、中国全土のテレビ局でゴールデンタイムに放送されたテレビドラマは200本余りで、うち70本以上は日本軍との戦争や日本人スパイとの暗闘がテーマだった。浙江省東陽市には当時の町並みを再現した抗日ドラマの撮影基地があり、13年1月末現在、9本が撮影中だという。」(産経新聞2月4日)

中国の子供たちは、「小東洋鬼」がバタバタと殺されるのを見て喝采を叫んでいるようで、まったく憂鬱になります。このように中国政府は意識的に戦争の機運を煽っています。

昨年の反日デモなど、中国人が清王朝末期の義和団の乱から一歩も進化していないことを見せつけられました。

政権は、国内矛盾を逸らすために阿Qたちを煽って外国にけしかけて暴動を起こす・・・。

1月26日付ワシントン・ポスト紙はこう述べています。

「中国の国家管理下にあるメディアは、戦争にかられた熱病のような状況をかき立ててきている。その一紙は、軍事衝突は「可能性が高い」とし、「最悪の事態に備える必要がある」とうたいあげた。不穏なことに、この挑発的かつ危険なキャンペーンは、習近平指導下の新しい共産党指導者によって、国内問題から関心をそらすという十分な動機をもって、監督されているのである。」(finalvent氏訳による。ありがとうございました。) 

戦争の始まりというのはこのような熱病じみた憎悪から芽生えるのでしょうか。その狂気を政府が意図的に煽っているのですからなんとも救いがありません。

昨年の11月29日のことですが、クリントン国務長官(当時)が、ワシントン市内で講演された際の質疑応答の中で、「過去に南シナ海の領有権問題を中国と協議した際、中国側が「我々はハワイの領有権を主張することもできる」と発言したそうです。

彼女は即座に、「やってみてください。われわれは仲裁機関で領有権を証明する。これこそあなた方に求める対応だ」と応じたという事です。
そういえば、ハワイをめぐっては、太平洋軍のキーティング司令官(当時)が2007年5月に訪中した際、中国海軍幹部からハワイより東を米軍、西を中国海軍が管理しようと持ちかけられたと議会で証言したこともありました。
長官はジョークと受け流したそうですが、「冗談めかした本音」だったようです。 
白髪三千丈の国の言うことだからと気をとりなおしてみるのですが、ここは自分の領土、あそこも自分の領土と言う19世紀的帝国主義国家と「領有権争い」をしている不気味さはたまらないものがあります。

ただ気休めは、かつてと違って我が国がいったって冷静なことです。

私たちは、石破幹事長が言うとおり、「いかなる挑発的な行為が行われても、我々はそれに乗ることはない」(2月4日)決意が必要です。

あの黙っていれば、際限なく膨張しようとする中華帝国の毒消しにはそれしかないようです。

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中国海軍、戦争誘発事件を解く

063
今回の中国海軍による射撃管制レーダー(FC)の照射は攻撃を前提としたもので、通常の国際ルールにおいては単なる威嚇や挑発ではなく「戦争行為」そのものとみなされます。 

いわば喉頸にナイフをあてがって「切るぞ」とすごむようなものです。

まさに最大級の戦争誘発行為です。中国はこの危険な火遊びに対して、国際社会から最大限の批判を受けるべきです。 

さて私が当初解せなかったのは、その発表の遅れです。 

事実関係を整理します。中国海軍からの射撃管制レーダー照射は2度発生しています。5日の小野寺防衛大臣の発表によれば以下です。(資料1、2参照) 

①「先月19日午後5時ごろにも、東シナ海で、中国海軍のジャンカイ1級フリゲート艦から護衛艦『おおなみ』に搭載されているヘリコプターに射撃管制用のレーダーの照射が疑われる事案があった。」 

②「先月30日午前10時ごろ、東シナ海で、中国海軍のジャンウェイ2級フリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」に対し、射撃管制用のレーダーを照射した。」

実に、最初の「おおなみ」搭載ヘリに対する照射から18日も経過しています。どうしてこのように発表が遅れたのでしょうか。 

小野寺大臣は、「慎重を期し、正確な分析、検討に時間がかかった。きょう分かったので発表した」と述べましたが、これは信用できません。 

なぜなら、同じ会見で「(照射を受けて)現場に緊張感が走る事態だったと」述べているからです。 

そして「おおなみ」はこの照射を避けるために回避行動をしています。自衛艦の艦長はいつ対艦ミサイルが飛来するかに意識を集中していたはずです。

もし発射されたならば、「おおなみ」は瞬時で大破し、百数十名の隊員が死傷したかもしれません。

この射撃管制レーダーの照射により、「おおなみ」艦内には警報音が響きわたったはずであり、その分析に5日間もかかることはありえません 

この中国艦の照射は数秒ではなく、数分間にも及ぶ長い時間のものといわれていますから、これが射撃管制レーダーであるかどうか「わからなかった」ということになれば、海自の能力さえ疑われることになります。 

ちなみに一秒の何分の1で済むレーダー照射を、延々と数分間続ける所に、中国の「悪意」を感じます。まさに足を踏みつけて、グリグリと擦りつけてなぶるような行為です。

同じことを米海軍にすれば、どのようなことになるか、彼らはわかった上で海自にだけにやっているのです。 まさに卑劣の一語に尽きます。

それはさておき、第1回目の「おおなみ」搭載へりに対しての照射前日18日に、米国でクリントン国務長官が尖閣での中国の挑発に反対するという談話を発表しています。

これは中国を怒らせ、即座に中国は反発する声明を出しています。この翌日19日に起きたのが第1回目のヘリ照射事件です。 

この時期、日本政府は中国との関係改善に向けた対話を模索しており、公明党代表・山口那津男氏を特使として派遣する準備中でした。 

加えて、中国は親中派といわれる村山富市元首相や、加藤紘一元自民党幹事長などの日中友好協会の人士を招待しており、村山氏は28日に北京で中日友好協会会長の唐家セン氏と会談しています。 

山口氏は、共産党総書記・習近平との会談希望を中国側に打診しており、現に25日にはそれが実現し、一瞬でしたが日中雪解けムードがかいま見られた時期でした。 

この第1回目レーダー照射は、この中国の「微笑」外交と前後して行われており、我が国への外交的メッセージとしてとらえねばなりません。 

それは「友好を取って尖閣を譲るか、戦争を取るか」という揺さぶりです。それに対して安陪首相はあえて「友好」のカードを切ってみせたわけです。

そして第2回目の自衛艦への照射です。この報告はただちに官邸に上げられたものだと思われます。

ここに至って首相は、中国に対する「友好」カードは通用しないと悟ったはずです。

そして、その2日後の2月1日の本会議答弁で、安陪首相は尖閣への公務員常駐について「選択肢の一つ」と、首相就任以来初めて踏み込んだ発言をすることになります。 

この発言は、明らかに30日の中国の戦争誘発行為に対しての日本政府の回答です。

よく誤解されていますが、安陪、石破両氏はバランスのとれた政治家であり、単純な軍事冒険主義者ではありません。 

この段階で、なぜ政府が2回にわたる中国の軍事挑発を国民に伝えなかったのかについては疑問が残りますが、それは様々なパイプで中国の真の意図を探ろうとしていたためではないかと思われます。 

ところで、レーダー照射が中国海軍、あるいは、艦長の暴走によるものなのか、はたまた、政府や共産党首脳レベルの意志なのかといった問題はどう考えたらいいのでしょうか。 

私は習近平総書記自らの意志だと思います。 

習総書記は、党軍事委主席就任後、軍、特に海軍の掌握に全力を上げています。

わかる限りの習総書記の動向を上げてみます。 

・12月5日、北京・第二砲兵部隊(巡航ミサイル部隊)本部を訪問し、「核ミサイルこそは国家安全の基幹であり中国の国際地位を高める中枢の部隊である」と訓話。
・12月8日から10日。広東省陸軍第42軍と傘下の124機甲師団を視察し戦車に試乗。
・同時期、広東省・海軍南海艦隊基地を視察し、軍艦に試乗。
・同時期、西北第二砲兵部隊(戦略ミサイル軍)の某基地を視察。
・同時期、甘粛省酒泉にある宇宙ロケット発射基地を視察。

これらすべての視察には軍事委員会副主席ふたり、陸海空三軍のトップ、参謀総長などを従えています。

そしてこの流れの中で1月14日には、軍機関紙・解放軍報が一面トップで「中国人民解放軍総参謀部は2013年の軍事訓練に関して、戦争にしっかり備えよと指示した」と報じました。
 

この言辞など、素直に読めばまさに宣戦布告前夜の様相であり、その発言の主が人民解放軍機関紙だというのもぞっとします。

また、今年2月に、習総書記の側近である氾長龍・党中央軍事委員会副主席は、北京軍区空軍基地、東海艦隊潜水艦基地、山東省ミサイル部隊、大連特殊部隊基地などを視察し、これら「釣魚島」戦闘部隊前衛基地に対して、「習近平思想に忠実であり、戦争に備えて実戦訓練を怠るな」と演説したとされています。 

「習思想」なるものがいかなるものか分かりませんが、習総書記が軍部を急速に掌握していることは間違いありません。

1月19日、1月30日2回の中国海軍による軍事挑発の背景には、このような習総書記の軍掌握の流れがありました。(資料3、4参照)

「習思想に忠実で戦争に備えた」軍隊によるレーダー照射という交戦一歩手前の行動、果たしてこれを偶然と呼んでいいのでしょうか。

仮に習政権が戦争の意志をもってるとした場合、「開戦」のタイミングは極めて重要な要素です。

それを、出先の現場指揮官が勝手に戦争になりかねない暴走を独断で行ったなどということは、絶対にありえないことです。

憂鬱な予想ですが、中国政府中枢が考え方を改めないかぎり、次は空になります。

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■資料1 防衛相会見要旨
2013.2.5 22:52

 【事案概要】1月30日午前10時ごろ、中国海軍ジャンウェイII級フリゲート艦1隻から、東シナ海で警戒監視中の海上自衛隊護衛艦「ゆうだち」に火器管制用レーダーのようなものの照射があった。防衛省で精査し、本日、火器管制用レーダー、いわゆる射撃用レーダーの照射と確認した。 

 1月19日午後5時ごろにも、東シナ海において中国海軍ジャンカイI級フリゲート艦から海自護衛艦「おおなみ」登載のSH60哨戒ヘリコプターに対して、同じような火器管制用レーダーの照射が疑われる事案が発生している。このような射撃用レーダーの発出は大変異常なことで、一歩間違うと大変危険な状況に陥る。中国側に外交ルートで申し入れを行った。 

 【政府対応】慎重を期し、正確な分析、検討に時間がかかった。きょう分かったので2月5日午後4時ごろ、安倍晋三首相に報告した。首相からは「しっかりと対応し、外交ルートでこのような事態が発生しないよう抗議するように」と指示があった。 

 5日午後5時半ごろ、外務省中国・モンゴル1課長から在日中国大使館参事官に、午後6時20分ごろには北京の日本大使館次席公使が中国外務省アジア局長にそれぞれ抗議を行った。 

よほどのことがない限り、このような事態にはならない。このような危険な行為については厳しく中国側に自制を求める。場所は東シナ海ということでご了解いただきたい。公海上ではある。

■資料2 レーダー照射は尖閣沖100キロの公海上
NHK
2月6日

先月、海上自衛隊の護衛艦やヘリコプターが、中国海軍の艦艇からレーダーを照射されたのは、いずれも尖閣諸島から北の方向に100キロ以上離れた東シナ海の公海上だったことが関係者への取材で分かりました。
防衛省によりますと、先月30日、東シナ海で、海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」が、中国海軍のフリゲート艦からおよそ3キロの距離で射撃管制レーダーを照射されました。さらに、先月19日にも、同じ東シナ海で海上自衛隊の護衛艦「おおなみ」から飛び立ったヘリコプターが、中国海軍の別のフリゲート艦から数キロの距離で射撃管制用とみられるレーダーを照射されました。

沖縄県・尖閣諸島周辺で中国海軍艦船が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射したことについて、マカオの軍事評論家、黄東氏は「非常に厳重な警告の方法で、上層部の同意を得て行われた可能性がある」との見方を示した。6日付の香港紙、明報が伝えた。

黄氏は、射撃管制用レーダーの照射が武器使用に至る前の「最も戦争行為に近い」危険な事態だと指摘。その上で「日本側が警告を無視して長時間(中国艦船の)周囲を航行したり威嚇したりしたため、中国側がやむなく行った可能性がある」との見解を示した。

■資料3 在米華僑の有力紙 「多維新聞網」(2月4日) 

 習近平は軍事方面の掌握に熱意と心血を注ぎ、党中央軍事委員会主席に就任以来、僅か百日をおかずしてほぼ軍権を掌握した。
胡錦涛のような、緩慢な軍権掌握ぶりに比べると迅速かつ強力であり、日本と、その同盟者アメリカとの戦争準備は整った。

■資料4 中国艦レーダー照射 「臨戦態勢」譲歩引き出す狙い
 産経新聞 2013.2.6 07:09

北京=川越一】中国海軍のフリゲート艦が、海上自衛隊護衛艦に向けて火器管制レーダーを照射した。習近平・共産党中央軍事委員会主席(総書記)の重要指示に基づき、臨戦態勢を強化していることをちらつかせることで、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる問題で安倍政権から譲歩を引き出す狙いがうかがえる。

 軍機関紙、解放軍報は1月14日、総参謀部が全軍に対し「戦争の準備をせよ」と指示したと報じた。同じ日、軍事科学学会副秘書長の羅援少将は国営中央テレビで、「日本が曳光(えいこう)弾を使用するならば、中国はさらに一歩進めてレーダー照射を行え」という趣旨の発言をしていた。 

 羅氏は過激な発言で知られるが、昨年8月、同諸島に関する白書を発表するよう主張。中国政府は約1カ月後に「釣魚島は中国固有の領土」と題する白書を発表した。太子党(高級幹部子弟)に属する羅氏は習氏に近い存在とされる。

今回も習氏が事前に“挑発”を容認していたと推測される。中国が国家海洋局監視船による領海侵犯を繰り返しても、膠着(こうちゃく)状態に変化は見られない。中国側に有利な状況を作ろうと習氏が軍強硬派の意見に耳を傾け始めたとすれば、危険な兆候だ。

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中国環境汚染・弱すぎる環境行政、強すぎる国営石油企業

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今回の中国の大気汚染は、中国環境保護省によれば、17の省、自治区、直轄市の及び、中国全土の4分の1の約240万平方キロ、日本の国土面積の約 6・5倍に相当する範囲にまで拡がりました。 

人口の半分にあたる6億人がこの分厚い大気汚染の雲の下にいます。まさに「人類史上空前」という表現をしても、あながち大げさではない規模にまで達してしまいました。 

「中国環境保護省は4日、1月24日に開かれた全国会議での周生賢環境保護相の発言全文をウェブサイト上で公表した。それによると、1月の大気汚染は中国全土の4分の1、全人口の半数近い6億人に影響が出たという。」
(毎日新聞2月4日資料1、2参照)
 

今回の大気汚染の原因は、2.5μmという超微粒子の「PM20」と、それよりさらに微小な10μm以下のSPM遊粒子状物質)の汚染物質が原因です。(※μm=ミクロン・ミリの1000分の1)

失礼ながら笑えることには、中国政府はこれだけ壮大な汚染を垂れ流しておきながSPMはおろか、PM20についても満足な計測をしていなかったことが発覚しました。 

中国がとりあえず計測していたのは、なんとPM10で、こんな粗い単位で計っているものだから、市民は「たいしたことないや」とタカをくくっていたようです。 

しかし、このPM20を測定していた所が一カ所ありました。それはこともあろうに、中国にとっての仮想敵国・米国大使館だったのです。 

北京の米国大使館は中国政府の環境政策などまるで信じていませんでしたから、独自にPM2・5の観測を続けており、「危険な状態」とネットで公表してしまいました。

中国市民の方は米国大使館のサイトを見て初めてとんでもない状況になっていることに気がついて仰天したわけです。 

批判の高まりを受けて慌てて、昨年1月からデータの公表に踏み切ったところ、既に大気汚染の状況はもはや待ったなしの最悪の状況になっていました。

周環境保護相は、この爆発的大気汚染になってようやく、「社会の関心が高い環境データの公表を進め、環境問題をめぐる対応の重要な指標としてもらう必要があると述べ、PM2.5の観測網の拡充と情報公開に努める考えを示した」(2月3日ロイター」そうです。
 

我が国のお役所仕事も相当なもんですが、ここのような「人類史的」な状況になるまで公害を放置し、なおかつ観測体制すらなかったというのですから、お粗末というより近代国家の態をなしていません。

中国のメディアによれば、このメガ大気汚染を受けて先週ようやく、中国政府はディーゼル燃料に含まれる硫黄分をEUの規制値と同じ50ppm以下とする基準強化を適用する見通しだと報じました。 

移行期間が与えられるため、新基準が中国全土で義務付けられるのは2014年末以降になるといいます。 

残念ながら、私は無理だと思っています。 

その理由は追々書いていきますが、環境保護省(前身)の初代局長である曲格平氏が指摘するとおり中国は「人治」の国であり、すべてが「法」によらず、政治的な駆け引きと人脈で決定されているからです。 

環境保護省は存在しますが、権限が与えられていません。なぜなら、国是である経済成長至上主義に水を差し、国営企業の既得権益に揺さぶりをかける目の上のタンコブ的存在だからです。 

「中国では環境に関する政策の策定に、国家発展改革委員会(NDRC)や工業情報化省(MIIT)など10以上の組織が関与する。」(ロイター同上)

米国の環境保護庁とは異なって、中国の環境保護省には独自に排出の基準を定める権限はありません。

他の省庁とすり合わせるということは、我が国の環境省もよくやっていることですが、あくまでも主体は環境省です。 

中国の環境保護省は重要な環境に関する決定が下される場合にすら、相談に与らないことすらあります。 

「自動車排ガスコントロールセンターのDing Yan氏によると、NDRCとMIITが環境対応車への補助金政策を検討する会議を開いた際、環境保護省には連絡さえなかった。」(ロイター同上)

中国は2008年に、環境問題に取り組む姿勢をアッピールするために、従来の国家環境保護総局を環境保護省に格上げしました。しかしそれに伴う権限はあたえませんでした。
 

公害の最大の発生源である巨大国営企業や地方政府を従わせる「力」は初めからなかったのです。それは環境保護省を政治的に支える党幹部がいなかったからです。

「環境保護省の役割を本当に機能させたいのなら、習近平氏や李克強氏のような最高指導者が(バックに)必要だ(ロイター同上)
 

しかし、それは無理な相談です。党最高幹部はむしろ巨大国営企業とのつながりが強いからです。 

大気汚染の元凶は自動車用ディーゼル燃料ですが、中国では地域ごとに基準が違い、平均して硫黄分がEU基準の15倍含まれた燃料を使っています。

そのため環境基準の統一と強化は、環境保護省が何度か国営石油企業2社に申し入れていたことでした。 

この2社とは、国営企業である中国石油天然ガス集団(CNPC)と中国石油(シノペック)です。いずれも今や欧米のセブンシスターズに並らぼうとするまで肥大した超巨大企業集団です。

彼らがクリーンなディーゼル燃料を供給するためには、石油企業は硫黄分の除去費用として数十億ドルを投じる必要があります。 

「この環境基準の強化が何度も遅れていることに業を煮やした環境保護省の張力軍次官は、2011年後半にCNPCとシノペックの幹部らとの会議を開き、これ以上は基準の強化を遅らせるつもりはないと明言した。」(ロイター同上) 

しかしこの環境保護省の要請はあっさりとホゴにされました。 

「2社の幹部はこれに対し、2012年の旧正月以降にクリーンな燃料を供給することを誓約したが、湯氏によれば、数カ月後に同省が検査を実施したところ、2社は依然として通常のディーゼル燃料を供給していた。」(ロイター同上) 

これが中国の現実です。今回のメガ大気汚染を受けて中国政府も重い腰を上げて、環境基準の強化を打ち出すでしょう。 

しかしCNPCとシノペックは、原油価格がイラン問題で高止まりしているために:これ以上のコスト負担は飲めないはずです。しかも、ガソリン価格は政府公定価格なために、石油会社の思うに任せません。 

また石油価格は、中国政府の方針て安く設定されています。国営石油会社の言い分では、多くの精油所は赤字だと主張しています。

エネルギー専門家によれば、クリーンなディーゼル燃料を供給するためには、石油企業は硫黄分の除去費用として数十億ドルを投じる必要があります。 

彼らは、共産党中央に圧力をかけるでしょう。現にクリーン燃料を受け入れるとしても、優遇税制の見返りをもらうなどの条件を出しています。 

「エネルギー価格が大幅に上昇するということは世間に発信しなければならない。安い燃料費ときれいな空気の両方を同時に手に入れる方法はない」。(NDRC能源研究所・Jiang Kejun・ロイター同上)

結局、中国国民の悲劇は、自らの利害を代表する政党を持たないことです。どんなに生活環境が劣悪になろうと、その声をすくい上げて政権に伝える回路が中国には存在しないのです。

国民が政党の形で政権と合法的に交渉することがあらかじめ禁じられている以上、いつものように暴動でも起こして車でも燃やすしかないということになります。

ただし、車を燃やせば、いっそう大気汚染がひどくなるので止めたほうがいいと思いますが。

■写真 霞ヶ浦の出島水位観測所の標識です。 

   
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■資料1 中国全土の4分の1でスモッグ、6億人に影響
毎日新聞 2月4日(月)20時51分配信

【北京・成沢健一】中国環境保護省は4日、1月24日に開かれた全国会議での周生賢(しゅう・せいけん)環境保護相の発言全文をウェブサイト上で公表した。それによると、1月の大気汚染は中国全土の4分の1、全人口の半数近い6億人に影響が出たという。

有害物質を含んだスモッグは1月10日ごろから中国の華北地方を中心に広がった。環境保護相は公表された発言で「最近の長時間、広範囲のスモッグ」としか言及しておらず、1月中旬から会議直前までの状況を説明した模様だ。

スモッグは17の省や自治区、直轄市に及んだとしている。中国全土の4分の1だと約240万平方キロで日本の国土面積の約 6・5倍に相当する。

「4分の1」は影響を受けた地域の累計の可能性もある。環境保護省は情報公開を求める声に押されるように1月下旬から大気汚染の影響範囲を公表している。特に汚染が深刻だった1月29日は約143万平方キロがスモッグに覆われた。この日を約100万平方キロも上回る日が全国会議の前にあったのか、あるいは面積の算出基準が異なるのかは不明
だ。

環境保護相はまた、1年間に車が約1500万台増える状況が続く中で汚染物質の排出量も増え、7割前後の都市で大気が環境基準を満たしていないことも明らかにした。

さらに、呼吸器や循環器の疾患を引き起こす微小粒子状物質「PM2・5」に対する国民の関心が高まっていることを認め、2015年までに濃度を5%下げる目標の達成に取り組む姿勢を強調した。

PM2・5をめぐっては、北京の米国大使館が独自に観測して「危険な状態」などと公表し、中国でも関心が高まった。中国の環境当局はより粒子の大きなPM10の観測データに基づいて汚染状況を発表していたが、実態と異なるとの批判が強まり、昨年1月からデータの公表に踏み切った経緯がある。

周環境保護相は「社会の関心が高い環境データの公表を進め、環境問題をめぐる対応の重要な指標としてもらう必要がある」と述べ、PM2.5の観測網の拡充と情報公開に努める考えを示した。

 ◇福岡でも基準値のPM2・5測定

日本では、福岡市で、1月24、30、31日の3日間、環境基本法で定められた基準値(1日平均で1立方メートルあたり35マイクログラム)を超える数値のPM2・5を測定した。中でも31日は、市内6カ所の観測所すべてで基準値を超え、最高で同53マイクログラムを記録した。
 

■資料2 中国“大気汚染で6億人に影響”
NHK 2月5日 4時34分 

中国の環境保護省は、深刻な大気汚染の状況について、有害物質を含む濃霧が国土の4分の1に広がり、全人口の半数近い6億人が影響を受けたとする報告を公表し、強い危機感を示しました。 

これは、中国の周生賢環境保護相が先月24日、環境問題について話し合う会議で報告したものとして、4日、公表されました。
このなかで、周環境保護相は「毎年1500万台ずつ自動車が増え続けるなか、70%前後の都市の大気が環境基準を満たしていない」と指摘しました。
さらに、車の排気ガスなどに含まれるPM2.5というきわめて小さな粒子を含む濃霧について、国土の4分の1に広がり、全人口の半数近い6億人が影響を受けたとして、大気汚染が深刻な状態だと強い危機感を示しました。

一方で、周環境保護相は、大気中のPM2.5の濃度を再来年までに5%下げるという政府の目標を打ち出しました。
また、中国メディアも4日、政府系のシンクタンクがまとめた先月の大気汚染の状況について、首都北京ではPM2.5の大気中の濃度が、国の基準を上回った日は合わせて27日に上ったほか、大気汚染の影響は全国で8億人以上に及ぶなど厳しい状況にあると伝え、対策を急ぐ必要があると警告しています。
 

■北京 大気汚染: リアルタイムの大気質指標(AQI)
http://www.aqicn.info/?lang=jp 

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震災瓦礫の放射能より、中国からの有害黄砂を心配しなさい

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大阪で震災瓦礫の焼却試験が行われた時も、北九州市ほどの混乱はなかったものの反対運動が起きました。

その人たちは、「北九州市では周辺の子供9人に鼻血が出た」、などということをネットで流していますhttp://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/3dcd62d9d68708795887451af6fe00d6

別な大阪の瓦礫反対運動のサイトでは、「結核,ウィルス性肝炎,急性呼吸器病等の感染病の増加につながっている」としています。
http://mimislifestyle.blog.fc2.com/blog-entry-42.html

また別なサイトでは、「瓦礫を受け入れた焼却場を中心とする地域で、肺がんやさまざまな呼吸器系の病気が増えていくだろうと予想」されると述べています。(※このサイトは具体的数値や防波堤型瓦礫処理も紹介していますので、好感が持てました。防波堤型瓦礫処理は良案です。)
http://radiationexposure.blog.fc2.com/blog-entry-17.html

ではこの原因はなんでしょう。この人たちが言うように瓦礫焼却から出た放射性物質でしょうか?

素直に考えれば、肺ガン、急性呼吸器病と言うくらいですから、呼吸器病と密接な関係のある空気汚染物質と関連づけるべきでしょう。

現時点でもっとも疑われる最大の空気汚染物質はいうまでもなく黄砂です。これには瓦礫反対運動の方も同意していただけると思います。

昨日のブログでもしっかり書きましたが、中国からの黄砂には硫酸塩エアロゾルや病原菌など有害物質が大量に付着しているのが知られています。単なる砂ではないのです。

この大気汚染物質は別名「PM2.5」(※)といわれ2・5μmという超微粒子ですが、浮遊粒子状物質(SPM)と呼ばれる10μm以下のさらに微細な粒子もあり、肺胞に沈着していきます。

すると肺の機能が落ちて、気管支系疾患や呼吸器疾患や心臓病での死亡率が高くなることが知られています。また、肺がんリスクも高まります。

年平均100mg/m³になると呼吸器への影響、全死亡率の上昇などがみられることなどが知られています。

使用を禁じられた猛毒のアスベストも同じ超微粒子で、気管支や呼吸器、肺に侵入して多数の死亡者を出しました。

この黄砂には、工場の煤煙、車の排ガスが大量に付着しており、それには一酸化炭素、二酸化硫黄、窒素酸化物などの有害物質が含まれています。

これらは気道粘膜を刺激して、喘息などの急性呼吸器病を引き起こし、肺奥まで侵入して沈着し肺ガンを引き起こす原因物質です。

北京大学では、北京、上海、広州、西安の4都市だけで昨年、約8600人が死亡したとされています。Photo_6       図 「アジアの大気汚染:リアルタイム気質指数ビジュアルマップ」より
http://www.aqicn.info/?map&lang=jp

広東省の「南方週末」紙は、「中国の主要都市部では年間30万人前後が死亡。約60万人が呼吸器系疾患で入院、25万人以上が慢性気管支炎になっている」と報じました。

もちろんこれらの死者数は正式の統計ではありませんが、中国という情報統制国家においてはいたしかたがないでしょう。

とまれ、少なめに見積もっても1万人超の死者が毎年出ているというのは疑う余地がありません。

さて北九州市で瓦礫搬入が行われたのは2012年5月22日からでしたが、5月以降にこの黄砂が観測された日は以下です。

2012年5月・・・01,02,03,04,05,06,07,08,09,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31 

  • 6月・・・01,02,03,04,05,06,07,08,09  
  • 7月・・・少ない 
  • 8月・・・少ない 
  • 9月・・・少ない 
  • 10月・・・14,15,20,21,23,25,26,27,28  
  • 11月・・・05,06,07,08,09,10,19,22,23,24,28,29  
  • 12月・・・04,05,06,07,08,09  
  • ご覧のように北九州市で焼却が開始された5月23日からずっと黄砂は到来しているのがお分かりになると思います。

    黄砂は春にだけのように思われていますが、先に見たように夏期を除いてほぼ通年現れます。

    日本の気象庁の黄砂情報は、予報による見通しに基づく観測を中心にしてプレスリリースしているため、黄砂が出た後に「出ました」ということをしないからです。 

    結果として誤情報なわけですが、医療関係者も予報が出ていないのだからと、PM2.5との因果関係を疑わなかったというのが実態です。

    そういえば、これから盛りとなる花粉症も、黄砂とは無縁ではありません。黄砂・硫酸エアロロルを吸い込んだ場合、粘膜や呼吸器系が傷めつけられているために、花粉の飛散と重複して症状が重くなります。

    「子供が鼻血を出す」というのもアレルギー性鼻炎などによく見られる症状で、空気汚染によって鼻粘膜が刺激されて、鼻血が出た可能性もあります。http://kodomo.kmayct.com/77_1.html

    残念ながら寡聞にして、セシウム134、137と鼻血との因果関係があるとした学説は聞いたことがありません。

    あの「有名」なパンダジェフスキー氏も、心臓、肝臓、腎臓などへの影響は述べていますが、「鼻血」はあったっけ。伝聞で恐怖を煽るのは褒められた作法ではありませんよ。

    では、この人たちが反対している大阪ではどうなのでしょうか。

    大阪の瓦礫焼却試験初日の硫酸塩エアロゾルと黄砂の分布状況 
    国立環境研究所
    http://kobe-haricure.net/health/so4-gazou.htm
    2012年11月29日(木)12時

    Photo_52012年11月29日(木)18時

    Photo_4

    焼却試験初日の硫酸塩エアロゾルの飛散状況は、中国からの黄砂の影響で、全国的に高い数値を示しています。

    特にひどいのはオレンジ色の北陸から三陸にかけてで、関西のPM2.5濃度も上昇しています。 

    環境省の観測データをみると(※基準値35マイクログラム)
    ・大阪大正区   ・・・63マイクログラム
    ・堺市東区     ・・・60マイクログラム
    ・神戸市中央区  ・・・41マイクログラム

    もう一枚分布図を見てみましょう。これは今年2月現在のものですが、あいかわらず関西、特に大阪に比較的高い数値がでているのがわかりますね。
    http://www.aqicn.info/?map&lang=jp

    Photo_2

    ところで2枚目のマップのように、なぜ大阪が空気汚染度が高いのでしょうか。それは大阪の地形は、中国から近畿にかけての大気汚染物質を集めやすい地形となっているからです。 

    大阪の場合、空気汚染物質は日本海側から山越えして来る風よりも、壇ノ浦沖あたりで発生した上昇気流に乗って飛んで来て、大阪めがけて吹き下ろします。その時に中国大陸からのPM2.5を運んでしまうのです。 

    その上、大阪平野は奈良や滋賀、兵庫などの山に阻まれているためにいっそう濃度が上昇することになります。

    というわけで、もしこの大阪市の瓦礫焼却で、なんらかの呼吸器病が生じた場合、真っ先に疑われるべきなのはなんなのか改めて書く必要もないでしょう。震災瓦礫か、黄砂か常識で判断してください。

    震災瓦礫の放射能を騒ぐのは自由ですが、親としては現実に今あなたの子供の頭上に毎日降っている桁違いの量の黄砂に乗った有害物質や病原菌に対して、守りを固めたほうがいいと思うのですが。

    私は瓦礫反対運動が、このように呼吸器病との因果関係が明確に黄砂と判明しているのに、まだ瓦礫焼却と結びつけようというのが理解できません。

    仮に焼却場から放射性物質が漏れ出ているとしても、この凄まじい黄砂という大気汚染物質の前にはノイズ程度の意味しか持たないでしょう。

    反対運動をなさっているのは環境意識が高い方々なのですから、もう少し多方面からバランスよく眺められたらいいのに老婆心ながら思った次第です。

    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-943f.html
            http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/
    ■写真 冬の筑波山を見る。そろそろ春の田おこしが始まりました。

    ※PM2.5(ピーエムニーテンゴ)
    http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2234

    直径が2.5μm以下の超微粒子。微小粒子状物質という呼び方もある。大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質(SPM)は、環境基準として「大気中に浮遊する粒子状物質であってその粒径が 10μm以下のものをいう」と定められているが、それよりもはるかに小さい粒子。
    PM2.5はぜんそくや気管支炎を引き起こす。それは大きな粒子より小さな粒子の方が気管を通過しやすく、肺胞など気道より奥に付着するため、人体への影響が大きいと考えられている。
    代表的な微小粒子状物質であるディーゼル排気微粒子は、大部分が粒径0.1~0.3μmの範囲内にあり、発ガン性や気管支ぜんそく花粉症などの健康影響との関連が懸念されている。

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    中国の大気汚染 WHO基準値の20倍、広さは日本の国土の3倍に拡がる

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    中国の環境汚染が、史上空前の規模になっています。
    (資料3・4・5・6参照)

    下の衛星写真は、NASAが撮ったものですが、画面中央右の白いスモッグ帯に小さな白字でBeijingとあるのが北京です。スモッグの海底に完全に沈んでいるのが分かります。

    Photo_6
    「環境省によると、10日夜から北京市を中心に中国東部で大気汚染が発生、14日まで主要都市で汚染が確認された。同市内の濃度は多い時には大気1立方メートルあたり約500マイクロ・グラムで日本国内の基準(1日平均35マイクロ・グラム以下)の十数倍にあたる。」(読売新聞1月30日) 

    「専門家によると、霧には多くの有害物質のほか病原菌も付着。気管支炎やのどの炎症、結膜炎などのほか、お年寄りや疾患を抱えた人だと高血圧や脳疾患を誘発する危険があると指摘した。」(ロイター) 

    私も何回か中国に行きましたが、北京に入るとまず気づかされるのは、空気の妙な「味」です。 

    コークスを焼くような匂いに、排気ガスを加えたような臭いとでもいうのでしょうか。これが硫酸塩エアロゾルの「味」です。 (※エアロゾル・大気中浮遊物質)

    そして晴れているのにもやがかかったようになっているのですから、実に奇妙な感じでした。自慢ではありませんが、高度成長期のスモッグの下で育った私にも、あそこまですごいものは経験したことがありません。

    下の中国の写真が撮影されたのは夕暮れではなく昼間ですが、自動車の姿が霞んでしまっています。特派員は十数メートル先も見えないと書いています。(写真2枚 共同)

    Photo_2

    現在、この有害ガスの「濃霧」は、北は長春、瀋陽、珠江デルタ、東は済南、西は西安まで、中国の広域に広がっています。 

    北京の米国大使館の発表によれば、肺がんやぜんそくを引き起こす微小粒子物質の世界保健機関(WHO)の基準値20倍のPM2.5に達することが分かりました。 

    この汚染地域は、中国の7分の1に相当する130万平方キロ日本の3倍という途方もない面積に達します。大げさな表現ではなく、まさに空前絶後の汚染規模だと言えます。 

    Photo                      

    中国各紙によると、14日、全国67都市が汚染された「濃霧」に覆われ、北京市は58の企業の操業を止め、41の企業については汚染物質の流出を30%削減するよう指示しました。

    公務車両の稼働も30%減らし、病院には急性の喘息や気管支炎を起こした子供を抱えた母親が殺到しました。

    この「濃霧」の正体は、硫酸塩エアロゾルですが、主成分の酸化硫黄は、硫黄を含む質の悪い石炭などの燃焼によって発生します。

    気体の二酸化硫黄は、眼と気道と肺に障害を与え、重度の場合は肺ガンの原因にもなります。

    特に抵抗力の弱い乳児や子供には強烈な刺激で呼吸器系を蝕みます。

    この発生源は、中国のエネルギー源が石炭に81%も依存していることによります。しかもこの石炭は、国内産の硫黄分を多く含んだ低品位炭です。

    中国は世界最大の石炭生産国(2011年度)であり、同年の石炭 生産量は35億トンを越えました。これは世界総生産量の46%あたり、輸入量も世界一ですから世界総消費量のほぼ半分は中国が消費していることになります。

    また中国の工場や火力発電所は、甘い環境基準の上に排ガス対策装置が不十分です。我が国ならば稼働すら許可されない施設ばかりです。

    共産党機関紙・人民日報ですら、「不純物を多く含む石炭を燃やしている。この時に煙を浄化する装置の稼働率が低い。この煙には毒性がある」と書いているほどです。

    中国では、障害児の出生率が2001年以来40%も上昇しています。明らかに開放改革路線による急激な工業化が背景にあるのは明らかです。

    汚染はあらゆるものに拡がっており、大気汚染、水質汚染、食物汚染などに市民は取り囲まれています。

    それが原因で、1年間に出生する2千万人の乳児のうち、百万人もが何らかの先天性障害児だと言われています。そしてそのうち、3分の1は生まれてすぐに死亡してしまいます。

    WHOの統計(WHO, World Health Statistics 2012)によれば、中国の新生児・乳児死亡率は、1000人あたり11人です。ちなみに我が国は1人です。http://memorva.jp/ranking/unfpa/who_2012_neonatal_infant_mortality_rate.php

    中国政府は、出生前診断で障害児と判明すれば、中絶するように命令しています。この優生政策のために、出生前に葬られてしまった胎児の数はWHOの統計には現れません。

    なりふりかまわぬ経済成長至上主義こそが、中国の国是です。人権、環境などあらゆるものを切り捨ててそれに邁進してきました。

    政府批判は許さない、集会結社言論の自由などもってのほか、普通選挙はしたことがない、政府の腐敗、貧富の格差は天文学的、そして工業排水で河川がどす黒く染まろうと、スモッグに街が沈もうと、そのために赤子が大勢死のうと、銭さえ儲かっていれば文句はないのだろう、と傲然と言ってのけたのが中国政府でした。

    そしてそれを放置してきたツケが今になって回ってきたわけです。Google中国汚染マップを見るとその凄まじい環境汚染に背筋が冷たくなります。
    http://maps.google.co.jp/maps/ms?ie=UTF8&oe=UTF8&msa=0&msid=117240148292975184990.0004484bc61e243e4e6b8

    そしてこの銭ゲバのツケが回ってきた時には、世界史上でもっとも大規模かつ深刻に環境汚染が進行して、住むことすらできない土地になりつつあるというわけです。 

    「このはね返りを回避するチャンスはあった」と、中国国家環保局(環保部の前身)の初代局長・曲格平氏はこう述べます。 

    「中国の今の深刻な環境汚染はこの40年間、すべてを犠牲にし、経済発展のみを追及してきた結果だと言い切り、先進国の教訓や、1987年にはすでに存在した持続可能な発展の概念を無視したツケだ。問題の根本は、中国は「人治」社会で、政策決定者の権利はいかなる制約も受けないことにある。」
    (香港 サウスチャイナ・モーニング・ポスト)
     

    北京市長代行は2020年までに解決すると言っていますが、この83歳の初代環境局長の言う通り、巨大独裁国家が構造的に抱え込んだ汚染構造は、政体が変わらない限り解決することは不可能でしょう。 

    環境汚染と政治-社会の汚染構造とが一体である以上、その解決は公害除去装置をつければいい、操業を減らせばいいという対処療法では済まないのです。

    中国の環境保護活動家の戴晴氏が言うとおり、「中国社会に暴動が起きるとすれば、それは貧富の格差や腐敗によるものではなく、環境によるもの」になるかもしれません。

    一方、我が国に対する影響は既に近畿地方で現れており、国立環境研究所の大気汚染予測システムでは1月28日午後以降、大陸から九州地方に汚染物質が流れ込んでいることが観測されています。(資料1参照) 

    「30日夜から31日早朝には、大阪府や奈良県などで微小粒子状物質「PM2.5」が、環境基準(1立方メートル当たり1日平均値35マイクログラム以下)を超すレベルになったことが示された。30日午後6時の地上観測点の実測速報値も阪神地区などで基準を超え、予測結果をほぼ裏付けた。」
    (毎日新聞1月31日 欄外参照)

    環境省の観測データをみると(※基準値35マイクログラム)
    ・大阪大正区   ・・・63マイクログラム
    ・堺市東区     ・・・60マイクログラム
    ・神戸市中央区  ・・・41マイクログラム

    「富山県・立山で約10年前から、積雪や雨、霧の成分を調査している富山県立大の渡辺幸一准教授は、汚染物質粒子のデータと気象データをあわせて判定することで、有害物質が中国から運ばれてきたことを確認。「特に黄海沿岸の工業地帯から運ばれてきた可能性は高い。シミュレーションでは九州、山陰の日本海側を中心に、近畿から太平洋側にも及んでいる」と話す。」
    (産経新聞2月2日)

    この中国発「毒ガス」は、この春には黄砂に乗って大量に我が国に吹いてきます。(資料2、9参照)http://www-cfors.nies.go.jp/~cfors/index-j.html        

    日本人は、海を隔てて世界史上まれに見る汚染大国と接していることを自覚したほうがいいようです。

    この問題は次回も続けます。

    ■写真 神郡(かんごおり)筑波山神社の参道に前に拡がる古い家並みの街です。ここを撮りに行くと時間が古い昔に遡っていきます。 

                ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

    ■資料1  国立環境研究所・大気汚染予測システムによる31日午前0時時点のシミュレーション。汚染濃度が高い黄色とオレンジ色、赤色がでているのが分かる。http://envgis5.nies.go.jp/osenyosoku/

    ■資料2 九州大学竹村俊彦准教授のデータによる中国からの大気汚染粒子の拡散予想図
    (産経新聞2月3日)

    Photo_5
    ■資料3 <中国大気汚染>流入の西日本「物質濃度が急上昇」
    毎日新聞1月31日

    中国で深刻化する大気汚染が「越境汚染」として西日本に流入した影響で、30〜31日にかけて近畿地方で大気汚染物質「硫酸塩エアロゾル」の濃度が急上昇したとみられることが、国立環境研究所の分析で分かった。地上の実測速報値も、環境基準を超す地点があった。  

    資料4中国の大気汚染深刻 濃霧、日本の面積の3倍
    (日経新聞1月31日 )

     大気汚染が最も深刻なのは北京市、天津市、河北省、山東省など中国北部。北京の米大使館の観測によると、ぜんそくや気管支炎を引き起こす微粒子状物質「PM2.5」の大気中濃度は29日に一時、世界保健機関(WHO)の安全基準の20倍に達した。

    中央気象台はスモッグに関する新たな警戒レベルを導入。PM2.5の濃度などから黄色(軽度のスモッグ)、オレンジ(深刻なスモッグ)、赤(極めて深刻なスモッグ)の3段階で情報を発信し、市民に警戒を呼び掛ける。  

     PM2.5は車の排出ガスや暖房用の石炭燃焼が原因。北京では30日夜に雨と雪が降る見通しで、濃霧はやや解消される見通しだ。
    硫酸塩エアロゾルは、石炭などの燃焼で発生し、濃度が高くなると、ぜんそくなどの呼吸器疾患を起こす恐れもある。 

     国環研のシミュレーションでは28日午後以降、大陸から九州地方に流入し、30日夜から31日早朝には、大阪府や奈良県などで微小粒子状物質「PM2.5」が、環境基準(1立方メートル当たり1日平均値35マイクログラム以下)を超すレベルになったことが示された。30日午後6時の地上観測点の実測速報値も阪神地区などで基準を超え、予測結果をほぼ裏付けた。ただ、基準は1日平均値を基に判断するため、基準を超えたとはみなされない。 

     中国では近年、石炭など化石燃料の大量消費が原因の大気汚染が社会問題化している。国環研は、東アジア地域で大気汚染物質の濃度を推定。風向や風速などの気象データを加えて移動状況をシミュレーションし、公表している。ただ汚染の全てが中国由来ではなく、国内の暖房使用や自動車の排ガスなども影響しているとみられる。 

     国環研は「濃度上昇の予測結果は、大陸の大気汚染物質が流れ込んだためと解釈できるが、国内の濃度は中国の汚染レベルに比べると格段に低く、健康な大人が気にするレベルではない」と説明している。
    中国の環境保護省は、ここ数日にわたり中国の空を覆っている有害な濃霧の総面積が130万平方キロメートルに及ぶと発表した。日本の3倍以上の面積がスモッグに覆われている形で、市民は外出を控えたりマスクを購入したり対応に追われている。  

     
    ■資料5 中国東部で深刻化している大気汚染が、日本にも影響を及ぼすことに懸念が出ている。

    中国では今年に入り、北京市などで汚染物質を含んだスモッグに覆われる日が続き、体調を崩す住民が急増。飛来したとみられる汚染物質が日本でも確認され、西日本の一部では基準値を超える汚染物質が観測されている。

    加藤勝信官房副長官は31日の記者会見で、「ただちに日本への影響があるレベルではないが、引き続き環境省で大気汚染物質の状況を調査するなど、適切な対応を図っていく」と述べた。

    懸念されているのは、大気汚染物質の一つで、直径2・5マイクロ・メートル(1マイクロは100万分の1)以下の微粒子状物質「PM2・5」。吸い込むと肺の奥まで入り込み、肺がんなど呼吸器や循環器の疾患の原因になる可能性がある。

    環境省によると、10日夜から北京市を中心に中国東部で大気汚染が発生、14日まで主要都市で汚染が確認された。同市内の濃度は多い時には大気1立方メートルあたり約500マイクロ・グラムで日本国内の基準(1日平均35マイクロ・グラム以下)の十数倍にあたる。(読売)
     

    ■資料6 中国、連日有害物質含んだ濃霧 呼吸器系疾患が急増 

    中国各都市で連日、有害物質を含んだ霧が立ち込めている。12日付の中国紙によると、北京市の大気汚染を調べる全ての観測地点で、6段階の大気汚染指数で最悪の「深刻な汚染」を記録した。 

    病院では呼吸器系疾患の外来患者が急増、市当局は住民に外出を控えるよう呼び掛けた。北京市は12日も朝から濃霧となり、数百メートル先のビルがかすんで見えない状態。 

    中国メディアによると、河北、河南、湖北3省や天津市でも霧が立ち込め、深刻な大気汚染が続いている。専門家によると、霧には多くの有害物質のほか病原菌も付着。気管支炎やのどの炎症、結膜炎などのほか、お年寄りや疾患を抱えた人だと高血圧や脳疾患を誘発する危険があると指摘した。

    北京市の小中学校は11日に体育など戸外活動を中止。外出する際は交通機関を利用するなどした上マスクを着用するようメディアを通じて呼び掛けた。(共同) <中国・北京では大気汚染が深刻な問題となり、マスクを着用する人が多くなっている
    (1月13日、ロイター)>
     

    ■資料7 九州大学竹本俊彦准教授のデータによる硫酸塩エアロゾル拡散予想図Photo_3 

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    週末写真館 

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    霞ヶ浦湖畔に「出島水位観測所」という無人の観測施設があります。

    私の大好きな撮影スポットで、昇る朝日を湖を吹き渡る風の中で真っ正面に眺めることができます。

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    ここには不思議な風景がいくつかあって、上の写真は満潮時に湖岸から数十メートルに突き出した水中の林です。

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    フォーカスをぼかして撮ると、私の眠気が伝わってくるかもしれません。ところが、この眠気は強い朝日のために続かないのです。
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    我が国の「報道の自由度ランキング」世界53位に急落 原因は福島原発事故

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    「国境なき記者団」の毎年恒例の「報道の自由ランキング」で日本は、22位から53位に急落したそうです。(欄外参照)
     

    なんでまた、と思ったら、原因は福島第1原発事故のようです。いきなり納得(笑)。 

    まぁ当然ですね。

    あれだけ政府当局が、「炉心融解はしていない」だの、「ただちに健康に影響を及ぼす数値ではない」だのと明らかに虚偽の情報を出しまくり、放射能雲の拡散予想図を持っていながら公開すらしませんでした。
    ※関連記事
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-101d.html

    あの時、国民はドイツ気象庁が発表する拡散シミュレーション図を見ながら、在野の火山学者が出したマップで自分の置かれた状況を推測していたのです。 

    そして避難区域を小出しに広げ、一度逃げた場所のほうが前の地域より線量が高いという悲劇すら起きました。 

    その結果、数十万以上の方々が被曝しました。そしてそれがわかったのが、事故後5ヶ月経ってからですから、思い出すたびに歯ぎしりしたくなります。 

    いっそう事故直後、米国のように80㎞以内の避難を指示していたらとすら思います。と言っても、今作っている自治体ごとの避難計画もなかったのですから、やりようがないか。 

    安全・保安院はまったく機能せず、官邸に唯一いた原子力の専門家であった斑目委員長は、菅首相に子供のように怒鳴られて小さくなっていました。 

    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-c3aa.html
            http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-06c5-1.html
            http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-3e3b.html

    保安院のスポークスマンは経産省出向組のズブの素人だったので、いっかな要領を得ず、質問にも正確に答えられないことがたびたび出ました。 

    無能だから隠蔽体質なのか、隠蔽したいものが沢山あるほど無能なのか、いずれにせよこんな危機対応は、53位どころか、179位でもいいくらいです。

    というか、ここまでくるともはや統治能力の不在というべきでしょう。 

    一方フランスにおいては、事故直後から連日フランス原子力安全院(ASN)と、その研究機関であるIRSN(フランス放射線防護原子力研究所)が、原子物理学、放射線防護学、放射能災害の専門家たちをずらりと並べて、長時間の記者会見を開いていました。 

    情けない話ですが、我が国の素人スポークスマンと、「自己弁護士」の官房長官がする会見の数十倍は内容があったことでしょう。

    それはさておき、「チェルノブイリ級の事故である」と発表したのは、IRSN所長ルピュサールでした。それは事故後3日後の15日、大統領まで含んだエリゼ宮における会議の席上でした。 

    フランスは公式、非公式の両方のラインで、日本政府に情報公開を要請したのですが、なしのつぶてでした。 

    フランスが情報を得たのは、米国経由で英国から伝えられたものです。 

    この米国情報すらも、米軍が勝手に無人偵察機を福島第1原発の上に飛ばして得たもので、それを日本政府に教えてやったりもしています。一体どこの国の事故なんでしょう。

    それにもかかわらず、フランスは少ない情報の断片をつなぎ合わせるようにして、IRSNは3月21日のサイトで、「チェルノブイリ級」と正式に公表しました。 

    日本政府がレベル7、すなわちチェルノブイリ級であることを公表したのか4月12日です。

    また我が国の安全・保安院が、「3号機で焼き固めたペレットが溶けて崩れている」という分かりにくい表現で炉心融解を認めたのが4月18日 

    そして東電が、「1から3号機の原子炉の燃料棒が一部溶解している」と認めたのが、4月20日のことです。 

    フランスが政府内で、炉心融解発生・チェルノブイリ級と認識したのから実に1カ月後もたってのことでした。 

    安全・保安院は規制機関でありながら、原発周辺で高い放射線量が測定されていたにもかかわらず、暫定評価としては「レベル5(事業所外へのリスクを伴わない事故)」と言い続けていました。 

    このような政府中枢、東電、安全保安院までが一体となった事実隠蔽こそが、原子力事故でもっともあってはならないことであり、国民は国が出す情報に対してまったく信用をしなくなります。

    これが空前の風評被害の温床となりました。

    諸外国からは日本の事故情報隠蔽に強い批判が寄せられました。(原発事故調査国際会議の発言より)

    米国NRC(原子力規制委員会)の元委員長 リチャード・A・メザーブ元委員長
    日本政府や事業者は国民の信頼を失っている。意思決定の根拠を明らかにし、透明性を確保する必要がある。」
     

    スウェーデン保健福祉庁 ラーシュ・エリック・ホルム長官
    危険だという情報もすべて提供しなくてはならない。」
     

    韓国科学技術院チャン・スンファン教授
    「(政府の冷温停止状態宣言について)原子炉内の現状が評価できていないなか、どうして安全だといえるのか。」
    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-c25f.html

    このような醜態を二度と演じてはなりません。そのために平時における原子力規制、「予防・予知」に並んで重要なことは、事故時における原子力規制委員会の危機対応機能の強化です。

    危機管理の中には、事故時の情報の出し方も含まれており、福島事故の失敗を踏まえて徹底した検証と再構築が必要です。

    一元的に情報の出口は規制委員会が行うべきでしょう。

    現行のように、政府が政治的思惑で事故を過少に発表したり、隠蔽したりするのを防ぐためには、情報の発信元を規制委員会に統一するべきです。

    そして事故対処に対しても、規制委員会に所属する事故危機管理官が最高指揮を執るべきでしょう。

    政府はその責任だけを取ればいいのであって、当時の首相のようにろくな知識も持たないくせに現場指揮まにで介入するなどもっての他です。

    そのために、電力会社と政府の対策本部が二重になっているシステムは廃止し、規制委員会に権限を集中できる危機管理指揮体制を作るべきです。

    このことは長くなりましたので、別稿にしたいと思います。

    とまれ、このように「強い規制委員会というキイワードを入れると、いろいろと福島事故であった混乱がかなりすっきりと解決できることに改めて驚かされます。

    ■写真 不思議な風景ですが、湖の養殖生け簀です。こんな写真を毎朝6時に湖畔を歩きながら撮っています。朝日が上がりきるより、その直前のほうが美しいですね。

    かくして撮り貯めた湖写真、うん百枚。毎日眠いのはこのせいか、春が近いからか、生まれつきか。

                 ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

     

    日本、53位に急落=マリ後退、ミャンマー上昇―報道自由度ランク
    時事通信 1月30日 

    国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」(本部パリ)は30日、世界179カ国・地域を対象とした報道の自由度に関するランキングを公表した。日本は、東日本大震災後の東京電力福島第1原発事故に関する情報アクセスに問題があるなどとして、前年の22位から53位に急落した。
     イスラム武装勢力が北部を占領しフランスの軍事介入を招いたマリは、2012年春のクーター後に記者への暴力行為が増えたとして前年の25位から99位に後退。一方、最下位グループ常連だったミャンマーは、民主化への取り組みが評価され169位から151位に、アフガニスタンは150位から128位にランクを上げた。
     エリトリア、北朝鮮、トルクメニスタン、シリアのワースト4は前年と同じ。北朝鮮に関しては「金正恩体制発足後もニュースや情報の完全な統制に変化はない」と厳しい評価を下した。トップ3はフィンランド、オランダ、ノルウェーで、上位のほとんどを欧州諸国が占めた。

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