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中国海軍、戦争誘発事件を解く

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今回の中国海軍による射撃管制レーダー(FC)の照射は攻撃を前提としたもので、通常の国際ルールにおいては単なる威嚇や挑発ではなく「戦争行為」そのものとみなされます。 

いわば喉頸にナイフをあてがって「切るぞ」とすごむようなものです。

まさに最大級の戦争誘発行為です。中国はこの危険な火遊びに対して、国際社会から最大限の批判を受けるべきです。 

さて私が当初解せなかったのは、その発表の遅れです。 

事実関係を整理します。中国海軍からの射撃管制レーダー照射は2度発生しています。5日の小野寺防衛大臣の発表によれば以下です。(資料1、2参照) 

①「先月19日午後5時ごろにも、東シナ海で、中国海軍のジャンカイ1級フリゲート艦から護衛艦『おおなみ』に搭載されているヘリコプターに射撃管制用のレーダーの照射が疑われる事案があった。」 

②「先月30日午前10時ごろ、東シナ海で、中国海軍のジャンウェイ2級フリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」に対し、射撃管制用のレーダーを照射した。」

実に、最初の「おおなみ」搭載ヘリに対する照射から18日も経過しています。どうしてこのように発表が遅れたのでしょうか。 

小野寺大臣は、「慎重を期し、正確な分析、検討に時間がかかった。きょう分かったので発表した」と述べましたが、これは信用できません。 

なぜなら、同じ会見で「(照射を受けて)現場に緊張感が走る事態だったと」述べているからです。 

そして「おおなみ」はこの照射を避けるために回避行動をしています。自衛艦の艦長はいつ対艦ミサイルが飛来するかに意識を集中していたはずです。

もし発射されたならば、「おおなみ」は瞬時で大破し、百数十名の隊員が死傷したかもしれません。

この射撃管制レーダーの照射により、「おおなみ」艦内には警報音が響きわたったはずであり、その分析に5日間もかかることはありえません 

この中国艦の照射は数秒ではなく、数分間にも及ぶ長い時間のものといわれていますから、これが射撃管制レーダーであるかどうか「わからなかった」ということになれば、海自の能力さえ疑われることになります。 

ちなみに一秒の何分の1で済むレーダー照射を、延々と数分間続ける所に、中国の「悪意」を感じます。まさに足を踏みつけて、グリグリと擦りつけてなぶるような行為です。

同じことを米海軍にすれば、どのようなことになるか、彼らはわかった上で海自にだけにやっているのです。 まさに卑劣の一語に尽きます。

それはさておき、第1回目の「おおなみ」搭載へりに対しての照射前日18日に、米国でクリントン国務長官が尖閣での中国の挑発に反対するという談話を発表しています。

これは中国を怒らせ、即座に中国は反発する声明を出しています。この翌日19日に起きたのが第1回目のヘリ照射事件です。 

この時期、日本政府は中国との関係改善に向けた対話を模索しており、公明党代表・山口那津男氏を特使として派遣する準備中でした。 

加えて、中国は親中派といわれる村山富市元首相や、加藤紘一元自民党幹事長などの日中友好協会の人士を招待しており、村山氏は28日に北京で中日友好協会会長の唐家セン氏と会談しています。 

山口氏は、共産党総書記・習近平との会談希望を中国側に打診しており、現に25日にはそれが実現し、一瞬でしたが日中雪解けムードがかいま見られた時期でした。 

この第1回目レーダー照射は、この中国の「微笑」外交と前後して行われており、我が国への外交的メッセージとしてとらえねばなりません。 

それは「友好を取って尖閣を譲るか、戦争を取るか」という揺さぶりです。それに対して安陪首相はあえて「友好」のカードを切ってみせたわけです。

そして第2回目の自衛艦への照射です。この報告はただちに官邸に上げられたものだと思われます。

ここに至って首相は、中国に対する「友好」カードは通用しないと悟ったはずです。

そして、その2日後の2月1日の本会議答弁で、安陪首相は尖閣への公務員常駐について「選択肢の一つ」と、首相就任以来初めて踏み込んだ発言をすることになります。 

この発言は、明らかに30日の中国の戦争誘発行為に対しての日本政府の回答です。

よく誤解されていますが、安陪、石破両氏はバランスのとれた政治家であり、単純な軍事冒険主義者ではありません。 

この段階で、なぜ政府が2回にわたる中国の軍事挑発を国民に伝えなかったのかについては疑問が残りますが、それは様々なパイプで中国の真の意図を探ろうとしていたためではないかと思われます。 

ところで、レーダー照射が中国海軍、あるいは、艦長の暴走によるものなのか、はたまた、政府や共産党首脳レベルの意志なのかといった問題はどう考えたらいいのでしょうか。 

私は習近平総書記自らの意志だと思います。 

習総書記は、党軍事委主席就任後、軍、特に海軍の掌握に全力を上げています。

わかる限りの習総書記の動向を上げてみます。 

・12月5日、北京・第二砲兵部隊(巡航ミサイル部隊)本部を訪問し、「核ミサイルこそは国家安全の基幹であり中国の国際地位を高める中枢の部隊である」と訓話。
・12月8日から10日。広東省陸軍第42軍と傘下の124機甲師団を視察し戦車に試乗。
・同時期、広東省・海軍南海艦隊基地を視察し、軍艦に試乗。
・同時期、西北第二砲兵部隊(戦略ミサイル軍)の某基地を視察。
・同時期、甘粛省酒泉にある宇宙ロケット発射基地を視察。

これらすべての視察には軍事委員会副主席ふたり、陸海空三軍のトップ、参謀総長などを従えています。

そしてこの流れの中で1月14日には、軍機関紙・解放軍報が一面トップで「中国人民解放軍総参謀部は2013年の軍事訓練に関して、戦争にしっかり備えよと指示した」と報じました。
 

この言辞など、素直に読めばまさに宣戦布告前夜の様相であり、その発言の主が人民解放軍機関紙だというのもぞっとします。

また、今年2月に、習総書記の側近である氾長龍・党中央軍事委員会副主席は、北京軍区空軍基地、東海艦隊潜水艦基地、山東省ミサイル部隊、大連特殊部隊基地などを視察し、これら「釣魚島」戦闘部隊前衛基地に対して、「習近平思想に忠実であり、戦争に備えて実戦訓練を怠るな」と演説したとされています。 

「習思想」なるものがいかなるものか分かりませんが、習総書記が軍部を急速に掌握していることは間違いありません。

1月19日、1月30日2回の中国海軍による軍事挑発の背景には、このような習総書記の軍掌握の流れがありました。(資料3、4参照)

「習思想に忠実で戦争に備えた」軍隊によるレーダー照射という交戦一歩手前の行動、果たしてこれを偶然と呼んでいいのでしょうか。

仮に習政権が戦争の意志をもってるとした場合、「開戦」のタイミングは極めて重要な要素です。

それを、出先の現場指揮官が勝手に戦争になりかねない暴走を独断で行ったなどということは、絶対にありえないことです。

憂鬱な予想ですが、中国政府中枢が考え方を改めないかぎり、次は空になります。

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■資料1 防衛相会見要旨
2013.2.5 22:52

 【事案概要】1月30日午前10時ごろ、中国海軍ジャンウェイII級フリゲート艦1隻から、東シナ海で警戒監視中の海上自衛隊護衛艦「ゆうだち」に火器管制用レーダーのようなものの照射があった。防衛省で精査し、本日、火器管制用レーダー、いわゆる射撃用レーダーの照射と確認した。 

 1月19日午後5時ごろにも、東シナ海において中国海軍ジャンカイI級フリゲート艦から海自護衛艦「おおなみ」登載のSH60哨戒ヘリコプターに対して、同じような火器管制用レーダーの照射が疑われる事案が発生している。このような射撃用レーダーの発出は大変異常なことで、一歩間違うと大変危険な状況に陥る。中国側に外交ルートで申し入れを行った。 

 【政府対応】慎重を期し、正確な分析、検討に時間がかかった。きょう分かったので2月5日午後4時ごろ、安倍晋三首相に報告した。首相からは「しっかりと対応し、外交ルートでこのような事態が発生しないよう抗議するように」と指示があった。 

 5日午後5時半ごろ、外務省中国・モンゴル1課長から在日中国大使館参事官に、午後6時20分ごろには北京の日本大使館次席公使が中国外務省アジア局長にそれぞれ抗議を行った。 

よほどのことがない限り、このような事態にはならない。このような危険な行為については厳しく中国側に自制を求める。場所は東シナ海ということでご了解いただきたい。公海上ではある。

■資料2 レーダー照射は尖閣沖100キロの公海上
NHK
2月6日

先月、海上自衛隊の護衛艦やヘリコプターが、中国海軍の艦艇からレーダーを照射されたのは、いずれも尖閣諸島から北の方向に100キロ以上離れた東シナ海の公海上だったことが関係者への取材で分かりました。
防衛省によりますと、先月30日、東シナ海で、海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」が、中国海軍のフリゲート艦からおよそ3キロの距離で射撃管制レーダーを照射されました。さらに、先月19日にも、同じ東シナ海で海上自衛隊の護衛艦「おおなみ」から飛び立ったヘリコプターが、中国海軍の別のフリゲート艦から数キロの距離で射撃管制用とみられるレーダーを照射されました。

沖縄県・尖閣諸島周辺で中国海軍艦船が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射したことについて、マカオの軍事評論家、黄東氏は「非常に厳重な警告の方法で、上層部の同意を得て行われた可能性がある」との見方を示した。6日付の香港紙、明報が伝えた。

黄氏は、射撃管制用レーダーの照射が武器使用に至る前の「最も戦争行為に近い」危険な事態だと指摘。その上で「日本側が警告を無視して長時間(中国艦船の)周囲を航行したり威嚇したりしたため、中国側がやむなく行った可能性がある」との見解を示した。

■資料3 在米華僑の有力紙 「多維新聞網」(2月4日) 

 習近平は軍事方面の掌握に熱意と心血を注ぎ、党中央軍事委員会主席に就任以来、僅か百日をおかずしてほぼ軍権を掌握した。
胡錦涛のような、緩慢な軍権掌握ぶりに比べると迅速かつ強力であり、日本と、その同盟者アメリカとの戦争準備は整った。

■資料4 中国艦レーダー照射 「臨戦態勢」譲歩引き出す狙い
 産経新聞 2013.2.6 07:09

北京=川越一】中国海軍のフリゲート艦が、海上自衛隊護衛艦に向けて火器管制レーダーを照射した。習近平・共産党中央軍事委員会主席(総書記)の重要指示に基づき、臨戦態勢を強化していることをちらつかせることで、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる問題で安倍政権から譲歩を引き出す狙いがうかがえる。

 軍機関紙、解放軍報は1月14日、総参謀部が全軍に対し「戦争の準備をせよ」と指示したと報じた。同じ日、軍事科学学会副秘書長の羅援少将は国営中央テレビで、「日本が曳光(えいこう)弾を使用するならば、中国はさらに一歩進めてレーダー照射を行え」という趣旨の発言をしていた。 

 羅氏は過激な発言で知られるが、昨年8月、同諸島に関する白書を発表するよう主張。中国政府は約1カ月後に「釣魚島は中国固有の領土」と題する白書を発表した。太子党(高級幹部子弟)に属する羅氏は習氏に近い存在とされる。

今回も習氏が事前に“挑発”を容認していたと推測される。中国が国家海洋局監視船による領海侵犯を繰り返しても、膠着(こうちゃく)状態に変化は見られない。中国側に有利な状況を作ろうと習氏が軍強硬派の意見に耳を傾け始めたとすれば、危険な兆候だ。

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コメント

時系列をこのように整理して頂くと、なにやら見えてきますね。
予想通り中国外交部は知らぬ存ぜぬ。
あちらの新聞は「日本の自作自演だ!」
反日教育を受けて育った若い世代は、ウェイボーで爆発。
曰く「日本人は精神的に欠陥がある民族だ」とか(笑)もう完全に共産党独裁政権と、国内の改革解放路線の矛盾がゴッタ煮になってますね。
全くそのままお返ししたい言葉です。

FCSレーダー連続照射は、明らかな「戦闘行為」です。
海上自衛隊と日本政府の冷静な対応は称賛するべきことです。
一歩間違えば本当に戦争ですよ。

それにしても、急拡大する中国人民解放軍に対して、対抗できるだけの防衛力整備は必要だと思います。


民間でも昨年秋の反日暴動など見れば、どれほど「チャイナリスク」が大きいのか分かると思います。

既に多くの工業メーカーが進出し、汚れた大地の農産物を「安いから」と輸入しまくっている現状そのものが「人質」に取られたうえでの出来事だと思います。

投稿: 山形 | 2013年2月 7日 (木) 09時08分

まあ、照準レーダー波は、数秒当てれば、用件が済みますし、海上自衛隊艦船上、3分以上、照射され、緊急非常ベルを、艦内全域に、3分以上、鳴らさせるのは、非常に、無神経な、嫌がらせなんでしょうね。

すぐ、近くで、米韓海上演習中なのに、日本の艦船のみ、照射するのは、1)嫌がらせ。2)相手の反応をみる愉快犯、3)探知能力の訓練、などなど、レベルの低い行為にしか、見えません。

まあ、海上自衛隊の反撃マニュアルは、すでに、上海での自衛官、ハニートラップ作戦とスパイ活動で、自衛隊は、1分以内に、相手を捕捉し、反撃ミサイルを打てるのに、打ってこないと知っているから、やったのでしょうね。

そんなに、戦争がやりたければ、米韓演習中ですので、米国艦船相手に、照射してみれば、具体的な結果が、わかったと思うのですが。。。

しかし、110人ほどの海上自衛官は、3分以上、警告音に耐えて、無視されたことは、とても、誉めてあげたいことですね。

中国と日本の海上軍備のうち、装備の違いは、ネットワークで繋がっていて、戦略が、複数の艦船や武器に情報が流れ、一艘ごとの能力を超えた作戦がとれることが、進歩している点でしょうか?

胡 錦濤から、軍のトップをもらうには、良いデモンストレーションだったのでしょうね。

まあ、念願の空母も手に入れましたが、まだ、米国に比べれば、実践用に、空母とチームを組む艦船が、完璧ではないので、訓練なんでしょうね。

彼は、上海で、一時、政治をしていたと聞いてますから、
浙江省は、海洋石油施設のパイプラインの行き先ですし、
空母も、彼の縁がある名称「遼寧」と付けられたので、軍のトップと示す、有効な内政行動だったのでしょうね。

ロックオンできる艦船が、米国艦船ですが、近くに居たのに、なぜ、米国艦船には、ロックオンしないのか?は
すれば、必ず、迎撃されるからでしょうね。

まあ、中国の制服組に、好かれたいのでしょうかねえ?

このまま行けば、この2年間で、12隻ほど、海上保安庁の船を新造して、11管区に配備したいそうですが、海上保安庁の船は、ロックオン電波の受信機や、別なダミーの熱発光体なども、装備してませんし、せめて、操舵室のガラスの防弾化と、艦船の鉄板の厚みや、水密扉、海上給油装置や、中国とのホットライン衛星電話や、総理や防衛大臣へのホットライン電話くらい、装備してほしいものです。

拿捕用に、多少の砲弾は持ってると思いますが、彼らの言い分は、先に、南満鉄爆破を自作自演した旧日本軍への、お返しなんでしょうね。

習氏は、チベット人虐殺に、参加したそうですので、軍の実質トップに、早くなりたいのではと、思ってます。

軍事機密でしょうが、当然、米国、日本、中国の潜水艦も、近辺の海に居たのでしょうから、かなり、作戦を練って、日本側の能力を、調べたかったのでは、と、思ってますが。。

6輪高速水陸装甲車を、ラサで、見てから、ハード的には、結構、装備を持ってる国なんだなあ。と、思います。

島嶼上陸は、日本の装備より、レベルが高く、良い装備をたくさん持ってますが、さて、軍として、誠実に、統率され、人民開放軍が、動けるかは、まだ、未知数で、あるいみ、北朝鮮より、最新軍備が多い分、厄介な相手ですよね。

投稿: りぼん。 | 2013年2月 7日 (木) 20時59分

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