公害大陸中国その5 地元政府によるイタイイタイ病の隠蔽
TPPについては情報が意図的な推進派のリークによって正しく入ってこない状態なので、しばらくお待ち下さい。情報を整理して、近々書きます。
さて中断しましたか、中国人ジャーナリスト宮靖記者(「新世紀週刊」)による「中国イタイイタイ病村」の現地取材が、北村豊氏(住友商事総合研究所)によって紹介されていますので、続きを紹介いたします。
この記事の中で、宮記者は人民政府とその管理下にある大病院によって構造的隠蔽工作がなされているとしています。
そして中国政府は公的には、これだけの重金属汚染を垂れ流しながら一貫して公式には「イタイイタイ病はない」としています。
宮記者は締めくくり部分の小タイトルをこう書きだしています。
[結論を下す際に必ず地元政府の干渉を受ける]
宮靖記者はカドミウム汚染の特集記事の結論として、「中国国内にイタイイタイ病は見当たらない」という皮肉めいた文章で締めくくっています。
(1)長年にわたって、中国国内には多数の鉛・亜鉛、銅、金などの鉱山がなんらの環境保護措置が取られないまま採掘されてきた。
この結果、中国の耕地面積の少なくとも10%が重金属によって汚染されているが、これらの汚染された耕地に対する稲作の禁止命令は全く出されていない。
耕地請負制で自家用食糧を自給するという現実の下で、農民たちは基本的に自分が生産したコメを食べる。この結果として、一部の地区にはイタイイタイ病が発生する要件が備わることになるのである。
(2)この原稿が完成するまでに、宮記者は国内に1人のイタイイタイ病患者も見つけることができなかった。
多くの学者たちが、広西チワン族自治区陽朔県興坪鎮の「某村」でかつてイタイイタイ病の初期症状を示す患者が出現したことがあったと論文や講演で述べていたので、私は大変な苦労をして「思的村」を探し出し、原因不明の骨痛に苦しむ農民たちを見つけ出した。
ただし、この骨痛に対する専門的な検査は行われていないし、地元政府はその原因が長年にわたるカドミウム汚染米の食用によるものとは言明していない。
(3)2カ月間にわたる取材を通じて、私は関係者と会うたびに「中国には、いったい全体、イタイイタイ病患者はいるのかいないのか」という質問を投げかけたが、回答は大同小異で「イタイイタイ病と診断された患者がいるという話しは聞いたことがないが、実際はいるに違いない」というものだった。
そして、多くの人たちが「中国の大病院は各レベルの政府が運営しており、環境が引き起こした疾病を前にした時、医療体制は独立を保つことができず、結論を下す際に必ず地元政府の干渉を受ける」と述べている。
従って、中国国内には「イタイイタイ病」は存在しないのである。
[告発すれば、どんな報復を受けるか]
『新世紀週刊』の特集記事は、中国国内で大きな反響を呼び起こした。毎日食べる主食のコメがカドミウムに汚染され、2000万トンものカドミウム汚染米が市場に流通しているとなれば事は重大である。
そのようなコメを食べ続けていて、健康に影響はないのか。微量ずつでもカドミウムが体内に蓄積されることで子孫に影響が出ることはないのか。こうした国民の不安に対して中国政府はどのように対応するのか。
ある地方で公害病の存在が表沙汰になれば、その地方政府の環境保護局のみならず、
衛生局、工商局など関係部門の役人の責任が追及されることになる。
そんなことになったら「立身出世」に差し障りが出るばかりか、責任を追及されて免職になりかねないし、下手に告発すれば、どのような報復を受けるか分からない。そういう事なら、触らぬ神に祟(たた)りなし」が一番の処世術であり、公害病はますます深刻化して行くこ
とになる。
『論語』には「過ちは改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」とあるが、中国政府が祟りを恐れず公害病という「死に神」の存在を公表するようになるのはいつの日だろうか。
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