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2013年2月22日 (金)

公害大陸・中国その4 村人1800人中1100人がカドミウム中毒の村

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中国のカドミウム汚染実態について、我が国ではほとんど知られてきませんでした。

中国に「ガン村」や「水俣村」があることはかなり前から知られており、訪問した日本人研究者もいるのですが、時間をかけての調査が中国政府によって拒否されているために立ち寄って外から眺めた程度のものが圧倒的でした。

その中で、中国人ジャーナリスト宮靖記者(「新世紀週刊」)による「中国イタイイタイ病村」の現地取材が、北村豊氏(住友商事総合研究所)によって紹介されていますので、紹介させていただきます。

さて、宮記者の記事には「中国米汚染の不完全分布図」が参考例として上げられており、以下の地域が記載されています。

中国米汚染の不完全分布図

カドミウム汚染米地域:広西チワン自治区陽朔県興坪鎮思的村、湖南省株
州市馬家河鎮新馬村、浙江省遂昌県、四川省徳陽地区、江西省大余県タングステン鉱山

カドミウム・鉛汚染米地域:広東省韶関市の大宝山鉱区
鉛・ヒ素汚染米地域:湖南省湘西自治州鳳凰県鉛・亜鉛鉱区
水銀汚染米地域:貴州省銅仁市の万山特区
鉛汚染米地域:遼寧省沈撫汚水灌漑区米

宮靖記者取材した地域は、①の広西チワン族自治区陽朔県興坪鎮の「思的村」と湖南省株州市馬家河鎮新馬村です。取材したのは2年前の2010年12月と翌年の1月です。

Photo_2                       Google Earthより

Google Earthで見ると思的村は険しい山あいの村で、流れが急な思的河が流れています。この村の水田は思的河を水源としているが、村の上流15キロメートルに鉛・亜鉛工場があり、これが汚染源です。

同工場の規模は大きなものではないのですが、1950年代に採掘を開始した頃にはほとんど環境浄化施設がなく、カドミウムを含んだ鉱山廃水を思的河に垂れ流しました。

それを知らずに下流の思的村が灌漑用水としたことで、土壌にカドミウムが蓄積されていきました。因果関係は明白です。

この記事で、村で会った84歳の李という老人が、身体はまだ元気だがもう20年以上にわたって歩行困難な状態で、100メートルも歩かないうちに脚や脛に耐え難い痛みが走ると訴えています。

地元の医者には的確な診断ができず、李老人は脚気だと考えているそうですが、村内にはこれと似た症状の老人が十数人いるのだといいます。

典型的なイタイイタイ病です。李老人は初期症状ですが、これが進行すると、身動きがとれなくなって寝たきりになってしまいます。

李老人は1982年に退職して村に戻って以来、既に28年間も地元産の米を食べていたそうです。

イタイイタイ病は、米に蓄積したカドミウム中毒により発症しますが、市場で必ずしも同じ産地の米を食べるわけでもない一般消費者と違って、農民は自家産米を長年にわたって食べ続けるためにより危険です。

日本でも農家から多く発生しました。我が国の7次に渡った認定裁判では、以下の4項目がイタイイタイ病認定要件となっています。(1972年6月制定)

①イタイイタイ病農耕汚染地域に在住し、カドミウムに対する曝露暦があること。
②先天性のものではなく、成年期以降に発現したこと。
③尿細管障害が認められること。
④骨粗鬆症を伴う骨軟化症の所見が見られること。
※④の条件を欠く場合、将来イタイイタイ病に発展する可能性を否定できないので要観察者と認定される。

この李老人たちは、診断するまでもなく、この要件を満たしています。

中国人研究者によっても、この村の耕地の土壌は1960年代よりも早い時期からカドミウムに汚染されていることが確認されています。

1986年に行われた土壌調査によれば、最高値で国家基準値の26倍ものカドミウムが検出されました。 中国の食品安全基準値はカドニウムが0.45㎎/ℓですから、11.7㎎/ℓあったということになります。

この中国の基準値は国際標準であり、我が国の食品安全基準では玄米で「玄米は10ppm 以上のカドミウムを含んではならない」と定められ、それを超えるものは焼却処分されています。

日本では、カドミウムがphがアルカリに傾くと吸収されやすい性質をもつため、「カドミウムの吸収を抑制するためには、pH6.5に管理する」(島根県農業技術センター)ように指導されています。
http://www.pref.shimane.lg.jp/nogyogijutsu/index.data/kado.pdf

この「思的村」の耕作地のphは不明ですが、中国大陸はおおむねアルカリ土壌ですので、昨日アップした長江河口付近の土壌分析データていどのph8ていどはあると思われます。

ph8以上になると金属は腐食しにくくなり、重金属も分解が遅れます。有機水銀や有機塩素、カドミウムなども、日本の酸性土壌と較べてはるかに土中に残留します。

日本だと炭酸カルシウムや苦土石灰などを使って土壌改良するのですが、中国農業には「土作り」という概念自体が欠落している場合が多いので、そのまま放置されているのかもしれません。

また、乾田のほうがカドミウムを吸収しやすい傾向がありますが、大陸では我が国と違って内陸部では水利が悪いために乾田のほうが多いと思われます。

このように中国農業には元来、重金属汚染を溜め込みやすい体質があります。 ただし、あたりまえですが、このような土壌的条件は、カドミウムを垂れ流していい理由にはなりません。

さて、もう一カ所の宮記者による記事にある湖南省株州市馬家河鎮新馬村はGoogle Earthでみると、思的村と同じく河川付近にあります。

Photo_3

                    Google Earthより
この写真に見える新馬村から1キロメートルの距離にある湘江は、中国で重金属汚染が最も激しい河川と言われています。

新馬村の対岸や湘江上流には多数の工業団地があり、重金属を含む廃水を垂れ流し続けていました。

この新馬村でも、湘江の水を引いて灌漑していたために、新馬村の土壌はカドミウム汚染されました。

南京農業大学の潘根興教授が2008年4月に行った新馬村で生産されたコメの分析結果では、カドミウムの含有量は米1キログラム当たり0.52~0.53ミリグラムで、国家基準値の2.5倍でした。

また、村内にある自動車部品のクロームメッキ加工を行っていた株州龍騰実業有限公司が工場廃水を垂れ流したことにより、地下水汚染が引き起こされました。

この井戸水を飲んだために、2人が死亡し、村人1800人中の1100人がカドミウム中毒と判定される事件にまで発展しました。

このような事件は巨大な氷山のわずかに見える頭頂部でしかありません。思的村や新馬村は無数に全国に点在していると見なければなりません。

このような公害事件が、まったく国からの保護の手を差し伸べられないままなぜ闇から闇に葬られてしまうのか、そのあたりは次週とします。

■写真 湖に至る道の上に気持ちのいい白雲がかかっていました。この湖もかつてはアオコで夏は息も出来なかった時期があります。

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