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公害大陸・中国その3 中国市場の米の10%がカドミウム米の疑い 公害病患者の苦しみに日本も中国もない

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ネット界やマスコミでも中国公害問題が一斉に報道されるようになってきました。それはそれで結構なことなのですが、私にはなんだかなぁという気分もあります。 

この中国汚染問題を、単に嫌中材料として使うのは間違っています。感情論になったら、中国大陸を深く覆う公害の闇の実体は分からないでしょう。 

中国にどのような構造があって、なにが、どれだけどこに発生しているのか、全体像を冷静に押さえていかねばなりません。 

この中国公害問題は、政治ネタにするにはあまりにも大きな悲劇的問題なのです。公害病患者の苦しみに日本も中国もないのですから。 

さて、まず公害は農業や漁業で暮らす村に現れます。そして静かに土壌や水に蓄積され、連鎖し濃度を高めながら水系に沿って汚染を拡大していきます。

水俣病の場合は、 最初に猫や犬が狂い、村で正体不明の病人や死人がポツリポツリと出はじめます。その時には土も、水も、食べ物も一切が汚染されており、その汚染は胎児にまで拡がっています。 

そして米や野菜、あるいは水を通じて都市住民にも黒い影を伸ばして行くようになります。 

やがて、地方都市が変色した川とスモッグで覆われ、首都すらも金星のような有毒ガスの濃霧で覆われる頃には、実は全土が公害で覆い尽くされており、この汚染連鎖の最終局面なのです。

首都北京のPM2.5汚染は中国の公害の始まりではなく、その汚染の鎖の最終部分にすぎません。 

さて、まずはこの表から御覧ください。中国の重金属汚染データです。

Photo         (「週刊文春」による。参考のため転載いたしましたありがとうございます。)

これは中国長江河口付近で採取された検出データです。採取地点、日時、採取者が明らかになっていればいっそう信憑性が高まるのですが、具体数値に乏しい中で貴重なデータです。 

というのは中国政府は一貫してこのような土壌汚染を公表してこなかったからで、例によってこんな数値は捏造だと言うなら、当局が公的データを出せばいいだけの話です。むしろそうしていただきたいものです。 

長江河口と言うことですから、上海近辺の長粒米を作る産地のものだと思います。長粒米は昨今の経済成長で、従来のものよりおいしいということで生産が増えています。

河口付近は、河から流れて来た汚染と沿岸からの汚染がクロスする場所で、高度な汚染が出やすい場所です。

さて、この表の右端が我が国の環境基準値(02年制定)です。我が国の基準値と比較してみます。 

・水銀 ・・・244倍
・鉛   ・・・3500倍
・ヒ素・・・1495倍
・カドニウム・・・4.2倍
・BHC   ・・・59倍(※DDTと並んで国際的に検出されてはならない使用禁止農薬)
 

このような地域で生活すれば、水銀を原因とする水俣病が、確実に発生しているはずです。 

水俣病は、感覚障害、運動失調、視野狭窄、聴力障害などが発症し、重度の場合は脳障害や、死に至るケースが多発します。 

カドミウムを原因とするイタイイタイ病も間違いなく発生しているはずです。この症状は、骨の強度が極度に弱くなるために、わずかに身体を動かしたりしただけで骨折します。

くしゃみや医師が検診のために腕を持ち上げた抱けて骨折する場合もあり、身体を動かすことすら出来ず寝たきりとなります。 

イタイイタイ病は、神通川下流域の富山県婦中町(現・富山市婦中町)で1910年から1970年にかけて多発した公害病で、患者が骨の痛みに耐えかねて「痛い、痛い」と泣き叫んだことから命名されたものです。なんと哀しい病名でしょうか。 

この原因は、神通川上流にある岐阜県飛騨市にある三井金属鉱業神岡鉱山亜鉛精錬所から、精錬工程で出た廃液中のカドミウムが、下流の富山県婦中町周辺の土壌を汚染したために起きました。

カドミウムは米に濃縮されるために、米を通して水系周辺のみならず広くカドミウム汚染を拡げます。

富山県イタイイタイ病の場合、基準値を超えた米、野菜を食べ、地下水を飲んだ住民にカドミウム蓄積により発生しました。 

魚介と違って主食の米や野菜を媒介とするので、販路も広く有機水銀より複雑な汚染経路を辿ります。 

規模的にも、日本の場合は水俣病はチッソ水俣工場と昭和電工鹿瀬工場、そしてイタイイタイ病は三井金属工業神岡事業所と特定できる数の工場廃液が原因でした。 

それに対して「中国水俣病」と「中国イタイイタイ病」の原因となる水銀やカドミウムは、いまの時点では見当すらつかないほど多種多数の工場、鉱山から排出されていると考えられます。 

それを考えると、中国の報道による09年の湖南省カドミウム汚染米事件で2名死亡、500人余りがカドミウム中毒などはほんのわずかな露顕した事例にすぎないと思われます。

中国の場合、何度も書いてきているように、公的発表がまったくと言っていいほどありません。

ですから逆に市場の米におけるカドミウム米の混入率から逆算するしか方法がありません。どのていどの率でカドミウム米が混入しているのかを知るわずかな手がかりがあります。 

「2007年、南京農業大学農業資源・環境研究所の潘根興教授が中国の6地区(華東、東北、華中、西南、華南、華北)の県レベルの「市」以上の市場で販売されていたコメのサンプルを無作為に170個以上購入して科学的に分析した結果、その10%のコメに基準値を超えたカドミウムが含まれていたという。」
(北村豊住友商事総合研究所 中国専任シニアアナリストによる)

「これは2002年に中国政府農業部の「コメおよびコメ製品品質監督検査試験センター」が、全国の市場で販売されているコメについてその安全性を抜き取り検査した結果の「カドミウムの基準値超過率」10.3%と基本的に一致した 」。
(同上)
 

また、2002年の中国農業部による市販流通米の抜き取り調査結果によれば、米に含まれていた重金属で基準値超過が最も多かったのは鉛で28.4%を占め、これに次ぐのがカドミウムの10.3%であった。」(同上)

「2008年4月に潘根興が研究チームを引き連れて、江西省、湖南省、広東省などの“農貿市場(農民が生産した農産物を販売する自由市場)”で無作為に買い入れたコメのサンプル63個を分析した結果、何とその60%以上に基準値を超えるカドミウムが含まれていた。」(同上)

このように60%を最大値として、おおむねカドミウム米混入率は約10%であるようです。

すると、 中国の米の年産量は約2億トンで、そのうち基準値を超えるカドミウムを含む米が10%と仮定すると、その量は2000万トンと推定されます。

これは、日本の2007年の米生産量882万トンを2.3倍上回る膨大な量のカドミウム汚染米が中国に出回っていたことになります。

一方、カドミウムによる土壌汚染も深刻です。 

「11月10日から12日まで北京で開催された「中国環境・発展国際合作委員会」の年次会
議において、中国政府国土資源部が全国の耕地面積の10%以上は既に重金属に汚染されており、その面積は“約1.5億畝(約1000万ヘクタール)”に及ぶと表明した。」
(2010年11月17日全国紙「第一財経日報」北村氏による)
 

また他の重金属についても、中国科学院生態環境研究センターはこう述べています。 

「中国科学院生態環境研究センターの調査結果として、「中国の耕地のうち、カドミウム、ヒ素、クロム、鉛などの重金属による汚染の影響を受けている面積は約2000万ヘクタールにおよび、総耕地面積の約20%を占め、全国で重金属汚染による食糧の減産が1000万トン以上、重金属に汚染された食糧も毎年1200万トン以上に達している。」
(2011年1月5日「中国環境報」北村氏による)
 

この環境研究センターの言う「食料1200万トン」を、米以外と考えると、合わせて重金属汚染食料は約3200万トンていどと予想されます。たたし、あまりにアバウトな数字なので、あくまで目安にすぎません。

ところで、このカドミウム汚染の可能性が高い中国米の輸入量は、2011年に2万5千トン、2012年11月集計で4万6800トン(12月は未集計)されており年間5万トンに達すると見られています。

皮肉にも、中国米の輸入量は2011年の福島第1原発事故以来急増しており、消費者の放射能風評被害を巧みに利用して、安値の中国米を導入してしまえという商魂でした。

これらの中国米は西友で5㎏1200円の安値で売られていたり、某牛丼チェーンで国産に混入されて供されています。他にせんべいなどの加工用にも回っているようです。

輸入中国米は、検査されていると称していますが、検査項目は農薬の残留であり、重金属は検査対象外です。

厚労省も、一度中国米を抜き取り検査してみてはいかがでしょうか。

長くなりましたので、中国国内のカドミウム汚染は次回に続けます。

■写真 光のカーテン。クリックしていただくと光の帯がよく見えます。 

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コメント

すでに相当の重金属や化学物質の被害者が出ていることでしょう。
60年代の日本のレベルとは桁違いに多い数でしょうね。
だから何故「隣の反面教師」である日本の失敗に学ばないのかと…。
まさにレイチェル・カーソン「沈黙の春序章・明日のための寓話」になりつつあります。


一昨日の宇井純先生の記事にも出てきた新潟水俣病の阿賀野川は会津を源流(上流では阿賀川と言います)から新潟空港そばの河口まで一見風光明媚な美しい大河(国内のレベルで)ですが、かつてあれほどの水銀汚染があった痕跡はまるでありません。河口近くには多くの釣り人がいます。
少し上流に行けば、未だに腕の震えや痺れが止まらないという老人が、ひっそりと住んでいますよ。
見た目の美しさとは対照的に、複雑な思いになります。
豊かな自然の中を国道49号線と磐越西線が走り、福島県側ではSL撮影スポット多数です。

神通川のカドミウム汚染は、周辺地域で巨額を投じて土壌を入れ換えましたが、有機水銀汚染地域は大丈夫なのか?という疑問も生じますが、米は検査されており、飲み水は水道が普及しています。
厚生労働省は同様に輸入米をしっかり検査すべきです。
東北の米がなんとなく怖いから中国産を、なんて本末転倒も甚だしい。

また、一つ疑問なのは三陸の瓦礫受け入れにとにかく反対!とやってるむちゃくちゃな連中、神通川流域の入れ換え土壌の行き先で何らかの「騒ぎ」を起こしたのかと…。PM2.5すら瓦礫のせいにするバカさ加減。どこのゴミ燃やしても同じだろうに、放射能と何の関係があるのかと失笑しながらあちら関係のサイトを見ております。


このところマスコミが盛んにPM2.5を報道して、高性能防塵マスクがバカ売れしているとのことですが、この20年飛来量が増えているものの、年毎の変化は大して変わっていませんよ。
今になって急に騒ぎ立てることではなく、すでにジワジワと増えながら流れて来ているんです。
個人で防御策を取ることに異存はありませんが、あまりにもセンセーショナルになりすぎです。とっくに解りきっていたことで、山形大学ではずっと樹氷のデータを取り続け、数年前から警鐘を鳴らしていました。地元では以前から報道されていたので「何を今更」感が強いです。

投稿: 山形 | 2013年2月21日 (木) 08時05分

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