尖閣海域 中国海軍射撃管制レーダー照射事件詳細
.
中国海軍射撃用レーダー照射事件について、昨日発売の「週刊文春」2月21日号に麻生幾氏の記事「中国からの宣戦布告」に詳細な事実関係が載っておりましたので、参考のため事実関係のみ要約して転載させていただきます。
麻生氏は作家ですが、取材力には定評かあり、情報の確度は高いと思われます。公式の発表か未だなされていない段階では最良のものと思われます。
いうまでもなく、このような二国間武力紛争に発展しかねない事件においては、事実関係の客観的確認が重要であり、中国側は我が国の対応に対して「捏造」とまで言う以上、それにふさわしい客観的な事実と証拠を開示する必要があります。
なお記事中にはない資料もつけ加えてあります。私のコメントは後日とさせていただきます。
■[1月19日自衛艦「おおなみ」搭載SH-60Kに対する射撃用レーダー照射事件]
・時間 2013年1月19日午後5時頃
・場所 日本と中国の排他的経済水域中間線付近・尖閣諸島から北へ約百数十キロ地点の公海
・概要 中国海軍ジャンカイ1級フリゲート「温州(ウェンジョウ」(艦番号526)から、警戒監視を続けていた自衛艦「おおなみ」(横須賀)から発進した対潜ヘリSH-60Kに対して射撃管制レーダーが照射された。
①中国フリゲートは、主に東シナ海を担当海域とする東海艦隊(浙江省寧波※1)の所属。
②照射時間は約10分というきわめて長い連続照射。(※旧ソ連艦のケースでは数秒)
③射撃管制レーダーの照射は、「ロックオン」(※2)と呼ばれる戦闘行為と国際ルールでは見なされる。
④SH-60Kは急降下して、海面すれすれに飛行してロックオンを外そうと回避飛行した。
⑤SH-60Kから「おおなみ」を経由して、横須賀自衛艦隊司令部に至急報。艦隊司令部から市ヶ谷海上幕僚監部へ第一報。
⑥海幕から「おおなみ」に、「本当に射撃管制レーダーなのか、証拠は保全されているか」などと問い返し。
⑦ヘリなためレーダー照射のデジタルデータは採れていなかった。
⑧午後8時。小野寺防衛大臣に防衛省から報告。証拠保全がなされていないために「調査中」として提出した。
⑨小野寺大臣は公表を考慮したが、調査中とあったため「事柄の性質上、重大な影響を与えることなので、精査して慎重な分析して下さい」と返答した。
■[1月30日自衛艦「ゆうだち」に対する射撃管制用レーダー照射事件]
・時間 2013年1月30日早朝から10時頃
・場所 日中中間線日本側公海上海域
・概要 中国海軍ジャンウェイⅡ級「連雲港」から、自衛艦「ゆうだち」が主砲用射撃管制レーダーの照射を受けた。
●事実関係時系列
①公海上を東方向に航行中の自衛艦「ゆうだち」に対して、左斜め前方100数十キロから相対する態勢(※)で中国海軍ジャンウェイⅡ級(東海艦隊所属・艦番号522)フリゲートの「連雲港」が接近した。(※反航態勢と呼ぶ)
(写真週刊オブイェクトより転載いたしました。ありがとうございます。)
②反航態勢のまま中国艦は、自衛艦から1.8マイル(約3㎞弱)まで接近。
(図 週刊新潮2月21日号より転載しました。ありがとうございます。)
③「ゆうだち」ブリッジ(艦橋)幹部と航海科員たちは双眼鏡で「射撃管制方位盤」を監視。
④午前10時頃。中国艦の各種レーダー類(※3)のうち343GA型火器管制レーダー(速射砲、対艦ミサイル用 上写真2にあたる・)が旋回し、「ゆうだち」に指向。
⑤「ゆうだち」CIC(戦闘指揮情報センター)に、「プゥープゥープゥー」という強烈に耳障りな警報音が鳴り響く。
⑥CICのESM員(電波探知分析装置オペレーター)が、近距離から照射される高周波の強力な射撃管制レーダー波を探知し、「ESM探知!フリゲート艦の射撃管制レーダーらしい、距離近い!」と哨戒長へ報告。
⑦ESM員によって、この射撃管制レーダーの探知方位、周波数、パルス繰り返し周波数などがハードディスクに保存される。
⑧データーベースから、中国フリゲート艦の主砲(ロシア製100㎜)管制レーダーI(アイ)バンドと判明。ちなみに、ジャンウェイⅡ級の武器システムはロシア、イタリア、フランスからの調達品のため、識別は容易だそう。)
⑨CICから横須賀自衛艦司令部運用総括幕僚へ「速報第一報」を衛星通信で発信。
⑩艦長、艦内放送で「我、中国海軍フリゲートの射撃管制レーダーに補足された。艦内、情報収集態勢を強化せよ」と放送。
⑪航海科員、船務科員が双眼鏡やスケッチ、ビデオ撮影、カメラ撮影などで証拠保全。
⑫艦長から「100㎜主砲の旋回位置は定位置にあるのか、確認せよ」の指示。
⑬艦橋見張り員から、「フリゲートの主砲と機関砲用方位盤はストーポジション(定位置)であり、本艦に指向していない」との報告。中国艦がレーダーと主砲を自動にしておらず、レーダーのみで自動追尾していることが判明。
⑭中国艦の射撃管制レーダーの照射は約3分間継続。強力な指向性エネルギー波のために自衛艦側に健康被害の可能性すら出る。
⑮艦長「両舷停止、面舵一杯」を命じて回避行動に移る。
⑯精密なデーター分析の結果、小野寺大臣に報告書が上がったのが6日後の2月5日。小野寺大臣公表。
以上、事実関係のみ要約いたしました。
※1東海艦隊(とうかいかんたい)は、1949年4月23日に結成された中華人民共和国初の海軍部隊で、中国人民解放軍海軍3大艦隊の一つ。司令部を浙江省寧波に移した。旗艦は潜水艦救難艦302祟明島。主な任務は台湾海峡、連雲港より南の東シナ海と黄海の防衛。
東海艦隊(東シナ海方面)基地:寧波基地(司令部)、上海基地、舟山基地、福州基地
旗艦:J302崇明島
wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E8%89%A6%E9%9A%8A
※2 ロックオン・追尾状態。射撃統制装置やミサイルに内蔵する目標追尾機構が目標をセットし、射距離・方位角・高低角を自動的に追跡する状態にすること。
※3 中国海軍ジャンウェイⅡ級レーダー類
1.345型火器管制レーダー(対空ミサイル用)
2.343GA型火器管制レーダー(速射砲、対艦ミサイル用)
3.360型警戒捜索レーダー(対水上、低空用)
4.517型警戒捜索レーダー(長距離対空用)
5.341型火器管制レーダー(機関砲用)
■尖閣:中国艦隊が実戦訓練=中国紙日米の離島奪還訓練に対抗か
朝鮮日報2月14日
中国共産党中央軍事委員会の機関紙「解放軍報」は13日、中国・東海艦隊所属の揚陸艦部隊が12日未明、敵機出現を仮想した実戦訓練をしたと報道した。東海艦隊は日本と領有権問題を抱えている東シナ海の尖閣諸島(中国名:釣魚島)を管轄する部隊だ。香港の日刊紙「明報」も同日「中国軍の第2砲兵部隊(核・弾道ミサイル部隊)は東シナ海を目標にミサイル発射訓練を行った」と報じた。中国軍のこうした動きは、米海兵隊と日本の自衛隊が9日、米国カリフォルニア州で合同で離島奪還訓練を実施したことへの対抗措置とみられる。日米は、今回の訓練は「第三国」(中国)を狙ったものではないとしているが、中国は尖閣諸島を想定しているものと考えている。
同日の解放軍報によると、東海艦隊所属の揚陸艦が有事に備え監視任務に当たっている際、敵機2機が突然現れたことを想定、これらに向かって艦砲で対応するという実戦訓練を行ったという。軍の機関紙が揚陸艦訓練をしたと公表したのは、有事の際に尖閣諸島に上陸する可能性を示唆するためとみられる。
また、明報は解放軍報を引用「『江南群山の奥深く』で第2砲兵部隊がミサイルの迅速発射訓練を行った。部隊の隊員は命令に迅速に対応するため服を着て寝ており、組に分かれ24時間当直をした」と報じた。明報は同部隊が江西省にあるものと推定、東シナ海を目標とした巡航ミサイル部隊だとの見方を示している。この部隊は「空母キラー」と呼ばれる新型巡航ミサイル「長剣」を保有しているとのことだ。
■写真 厚い雲間から漏れる朝日の中を飛翔する。
■明日は週末写真館です。
« 船橋洋一「カウントダウン・メルトダウン」を読む その3 B・5・b 核セキュリティとセーフティ | トップページ | 週末写真館 »
「中国問題」カテゴリの記事
- 中国が軍縮に向うだって?(2015.10.05)
- 尖閣海域 中国海軍射撃管制レーダー照射事件詳細(2013.02.15)
- 中国軍レーダー照射事件 政府はなぜ今公表に踏み切ったか(2013.02.11)
- 19世紀的帝国主義国が燐国にあるという憂鬱(2013.02.08)
« 船橋洋一「カウントダウン・メルトダウン」を読む その3 B・5・b 核セキュリティとセーフティ | トップページ | 週末写真館 »
コメント