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2013年3月

2013年3月30日 (土)

週末写真館 桜の季節

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私も桜が大好きな一日本人です。
桜を見ると一昨年のこの春に亡くなっていった多くの同胞のことを思い出します。
桜の花一つ一つが失われていった彼らの生命のようなそんな気が。

          青い空に
                   和合 亮一
うつむいていると
涙がこぼれそうになるから
空を見あげるといいよ ほら
雲 光 風
表情が変わっていくだろ ほら
生きている
生きてゆく

2013年3月29日 (金)

中国 巨大アグリビジネス展開ヘ 中国でトリインフルエンザ発生か?

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農業情報研究所によれば、中国は巨大アグリビジネスの展開を開始したようです。(資料1参照)

このアグリビジネスは新希望集団といいます。なんかブラックジョークのようなネーミングですね。

どんなものかといえば、中国版タイソンだそうです。タイソンとは世界最大の鶏肉屋です。

「中国最大の動物飼料生産者であり、酪農・養鶏のメジャーである新希望集団が、今後5年間に50億元(約700億円)を投入して事業を拡張、農業資材供給チェーン管理や下流の食肉加工にも進出するという。」(農業情報研究所)

要は、典型的な飼料生産・輸入・加工→搬送→生産・加工→流通を網羅する米国流川上型インテグレーション(統合システム)です。米タイソンと並ぶと言っていますから、世界屈指の規模となります。

まぁ、あの国のことがだからやるのでしょうね。中国は、現在世界有数の穀物輸入国になりつつあり、まるでブラックホールのように世界中の穀物、エネルギーを吸い取ろうとしていますから。(資料2参照)

日本の場合にも、同様なインテグレーションは存在しますが、この新希望集団は養鶏、養豚、乳業まで含めた複合経営をしているようです。このあたりがきな臭い。

というのは、畜産業界の人なら皆ご存じのように、中国の防疫レベルは論外に低く、先進各国の防疫関係者からは「暗黒大陸」とまで言われてきました。

先だっての黄浦江付近の約1万頭といわれる大量の豚の死体の漂着、そして今回の千羽のアヒルの死体大量漂着は、大規模な感染症が発生して、その証拠隠滅の為にされたものと思われています。(資料3,4参照)

今まで口蹄疫が起きようと、トリインフルが出ようと、いや人間のSARSが感染拡大しようと、知らぬ存ぜぬ、そのような事実はない、とシラっとしている国ですから。

あの国が公式に認めるのは逃げも隠れもできなくなってから渋々です。

さすが事物博大の国などと関心している場合ではないわけで、今回のアヒルの大量斃死は、死亡数の多さからいってほぼ間違いなくトリインフルエンザです。

前回の豚大量死は、飼育者は寒さで死んだなどと言っていますが、寒さによって豚インフルエンザなどの呼吸器病が一挙に出たのでしょう。

それでなくとも、トリ、ブタは呼吸器病が多発する畜種で、投薬に頼った管理方法だと、ちょっとした気温の低下で爆発的に発症します。

また今の空気汚染の深刻化も絡んでいるのかもしれません。いずれにせよ、中国防疫当局の発表はなにもありません。まぁ毎度のことですが。

わが国なら大変な騒ぎになって、家畜伝染予防法に基づいて、死体漂着地点から半径5㎞から30㎞は生きた鶏や卵の移動は禁止になり、徹底したサーベイランス(発生動向調査)が行われるはずです。

中国にも似たような動物防疫法という法律はあるのですが、そこは「人治」の国ですから推して知るべしでしょう。

畜産業者は死んだ患畜を平気で河に捨て、当局は賄賂をもらって知らんぷり。河川の清掃業者は、死体を拾い集めて肉にして売りさばき、肉屋はそれを平気で客に食わせる。これで感染が拡大しないほうが奇跡です。

そして感染病はどんどん潜行して拡がっていく、というわけです。あれだけ感染症で腐乱した死体が大量に流れるとなると、病気は下流域すべてに拡大しているとみたほうがいいでしょう。

そしてアヒルなどの鳥類ならば、人畜共通トリインフルエンザ・ウイルスをもっていることもあり得るわけですから、上海などの大都市部付近でそれが発生した場合、もう手に負えない感染経路となってパンデミック(感染爆発)になることでしょう。

ちなみに、東アジアの家畜伝染病(悪性海外伝染病)は、8、9割方が中国から発生したものが朝鮮半島を経由してわが国に伝播したものです。

さて、中国は、耕地の急激な汚染により、作物の汚染が深刻となっており、日本の農産物は安全・安心なブランドとして定着しています。

現在日中韓FTA交渉が始まっていますが、彼ら中国のアグリビジネスがわが国に上陸してくる可能性は大いにあり得ることで、中国による水資源買収に次いで農地についても心配しなければならなくなったようです。

世界のタイソンになりたいのは勝手ですが、もう少し常識をわきまえてもらえませんか。やっぱり無理か。

         ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 農業情報研究所
中国企業 米国並み巨大アグリビジネスを目指す 持続不能な道に突進!

中国に米国のスミスフィールド・フーズ、タイソン・フーズに比肩する巨大アグリビジネスが登場するかもしれない。サウス・モーニング・ポスト(香港)紙の報道として米国・oyatech.comが伝えるところによると、中国最大の動物飼料生産者であり、酪農・養鶏のメジャーである新希望集団が、今後5年間に50億元(約700億円)を投入して事業を拡張、農業資材供給チェーン管理や下流の食肉加工にも進出するという。

 フォーブスによると中国第6位の富豪である集団の劉永好会長が明らかにした。集団はスミスフィールドやタイソンと協同して統合された世界的に競争力のあるアグリビジネスを建設するための中国最初の企業となることを目指す。劉会長は、スミスフィールド、タイソンに比肩する中国企業となることを望んでいるという。

 China's Largest Feed Producer Aims to Double Sales in Five Years, Become 'Tyson' and 'Smithfield' of China,soyatech,3.8
 
http://www.soyatech.com/bluebook/news/viewarticle.ldml?a=20060308-9 

 新希望集団は、昨年の200億元の売り上げを5年間で500億元に増やすことを目指している。昨年は、供給チェーンの拡大を求めて、中国最大の鶏肉加工企業である山東省六和集団の株を購入した。

最近、貴州政府及び地方金融機関と野菜・家禽生産で協同組合的農業供給チェーンを作る協定も結んだ。会長は、それが提供する農薬と栽培方法の利用により、農家は生産物の価格を10%から20%引き上げることが期待できると言う。

 集団は、牛乳収量を引き上げるための改良乳牛種導入のために、四川省と雲南省にも大枚を注ぎ込んでいる。このプロジェクトは、一部資金を世銀の民間部門投資の腕をなす国際金融協会(IFC)から提供されている。

養豚部門では、20万頭の収容能力をもつ国最大の農場を建設するために、浙江省の一企業と協同している。劉会長は、「我々は米国モデルを採用できるかどうか検討したい」と言う。

 会長は、同時に、集団が鶏の価格の50%の下落を引き起こした鳥インフルエンザの拡散で大きな課題を突きつけられていることも明らかにした。昨年後半以来、鳥インフルエンザにより蒙った損失は1億元はくだらない。「しかし、我々は契約義務を守り通し、供給を維持してきたから、競争者に対して市場シェアを伸ばしてきた」と言う。

 中国もまた”持続不能”な道を突き進んでいる ように見える。米国型の工業的畜産の拡散が、”農業三次元汚染”をさらに悪化させないことを祈るのみである(中国専門家 農地”三次元汚染”の穀物生産への悪影響に警告,05.12.12)。

また、中国が鳥インフルエンザのみならず、狂牛病の巣窟にならないことも。今日ヨーロッパからアフリカにまで広がってしまったH5N1鳥インフルエンザウィルスが中国南部起源のものであることは、中国政府の否認にもかかわらず、ほぼ確認されている(NewScientist.com,http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn8686)。また、中国が英国から肉骨粉を輸入していたことも分かっている(イギリスの肉またはくず肉の粉・ミール・ペレットの輸出先と輸出量)。

■資料2
レコードチャイナ 2012年12月10日

外国に養われる中国=穀物純輸入国に転落、米輸入量が前年比4.5倍に急増―中国紙

2012年12月8日、燕趙都市報は記事「中国は海外の米に養われるのか?」を掲載した。

20年以上にわたり、中国は米を自給自足してきた。だが、11年に大きな転換期を迎える。中国は穀物の純輸入国に転落したのだ。今年はさらにその傾向に拍車がかかっている。12年の米輸入量は前年比4.5倍の260万トンに急増。ナイジェリアに次ぐ世界第2位の輸入国になる見通しだ。

米輸入が急増した背景には内外の価格差がある。中国国産米は政府の最低買い取り価格があり、市場価格は500グラムあたり1.9元(約24.3円)が相場。一方、ベトナム米は1.8元(約23円)と価格的に優位に立っている。

今年上半期、中国税関の統計ではベトナムから81万トンの米を輸入したことになっているが、ベトナム側の統計では中国に120万トンを輸出している。差額分は密輸とみられ、政府が把握している以上に輸入米は出回っているもようだ。

こうした短期的要因に加え、長期的にも中国の食料生産は不安を抱えている。中国の人口は13億人と全世界の5分の1を占めているが、耕地面積は全世界の10%に満たない。そもそも1人当たり平均で見れば中国の耕地面積は不足している。今後、さらに都市化が進展し耕地面積が減少、また労働コストや水コストが上昇することから、穀物不足はさらに深刻化するとスンダード・チャータード銀行のリポートは分析している。

中国国内では鉄鉱石や原油のように穀物も外国に価格決定権を握られる危険性があるとして懸念する声が高まっている。

■資料3 中国:病死動物の不法投棄を厳禁=農業部
亜州ビジネス 3月15日
 

 農業部は14日、病死動物の不法投棄を厳格に禁じると改めて通達した。病死が発生した際は、速やかに殺処分、消毒、無害化の処理をとらなければならない。特に口蹄疫、鳥インフルエンザ、PRRS(豚繁殖・呼吸障害症候群)、豚コレラの検疫態勢を強化する必要があると指摘した。
 国が2011年7月に発表した家畜無害化に関する政策を強調。養豚業者が50頭以上を無害化処理した場合、豚1頭あたり80人民元(約1200円)の費用が補助されると説明し、不法な投棄を中止するよう指導した。
 上海市の河川に豚死骸が大量漂着していることが念頭にあるとみられる。引き揚げられた豚死骸の総数は、8日から14日午後3時までの累計で合計7550頭に拡大した。前日比で944頭増えている。こうしたなか、市政府は水質の検査を強化すると発表。新たに加えた「ブタサーコウイルス」のほか、「サルモネラ菌」、「ブタ連鎖球菌」の計測を実施することを明らかにした。検疫検査の結果、一部が「ブタサーコウイルス」に感染していたことが分かったものの、ヒトに感染することはないと指摘。過度に懸念する必要はないと補足した。
 死骸の一部は、上流の浙江省嘉興市から流されてきたようだ。
 

■資料4 次は一体何?上海のブタに続いて、四川省の川ではアヒル1000匹の死骸が漂流―中国
レコードチャイナ 2013年3月25日
 

2013年3月23日、天府早報によると、上海の黄浦江で1万頭を超えるブタの死骸が遺棄された事件に続き、今度は四川省で約1000匹のアヒルの死骸が川に遺棄されているのが発見された。現地の環境保護局は、上海当局と同様に「水質は汚染を受けていない」と回答し、現地住民などから大きな反発を受けている。

上海で発生した1万頭を超えるブタの死骸投棄事件がまだ解決していない段階で、今度は19日に四川省眉山市彭山県の川で約1000匹のアヒルの死骸が遺棄されているのが発見された。アヒルの死骸は数十匹ずつ編み袋に入れられて遺棄されたらしく、編み袋約60袋とともに大量の死骸が川に浮かんでおり、多くはすでに腐乱し、悪臭を放っていた。

彭山県環境保護局の張冀川(ジャン・ジーチュワン)副局長は「腐乱状態から見て、死骸は遺棄されてすでに数日が経過しており、付近の住民が捨てたものではなく、上流から流れてきた可能性が高い」との見方を示している。死因や伝染病の可能性などについては、現段階ではまだ分かっていない。

一方、同局は「水質は汚染を受けていない」と発表。これに対し、現地住民は「検査結果はブタの時と同じで、政府が発表する水質は永遠に“清潔”だ」「上海人は豚骨スープ、四川人はアヒルスープを飲んだ。次はどの地域が何のスープを飲むのか?」などと揶揄(やゆ)している。

現在、中国のネット上や大衆の間では、ブタ、アヒルに続いて次は一体何が流れてくるのかが大きな話題になっているという。

2013年3月28日 (木)

日本農業新聞に私たちのことが掲載されました

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日本農業新聞3月24日に、私たちのことがなんと1面で掲載されました。

私もチラっと出てきます(笑)。記者さんが私のブログを読んでいただいたのがご縁です。いつもけっこう批判したり、この何回かのように農業新聞の論調と真逆だったりしているのに、ありがたいことです。
取材記者様、いい記事を感謝します。
日本農業新聞はやはり農民の味方なんだなぁと改めて思いました。
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2013年3月27日 (水)

三等兵氏のコメントにお答えして 敵は「内国民待遇」を得て上がってくる外国資本です

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三等兵氏が、ひとりで暴れて去っていきました。もう少し冷静に議論できる方かと思ったのに残念です。 

ちゃんとかみ合った議論もしないでどうして一人でそうなっちゃうのか、理解できません。

他人の主張を最後まで聞かず、ひとつひとつ引っかかるところをあげつらって、挙げ句は勝手に私を「折角こつこつ相談を重ねて上手く行っている我々の地域もお前等の都合でぶち壊しにして良いんだな」と決めつけています。わけないでしょが(苦笑)。

こういう感情的態度が、一般国民に農業の閉鎖性として写ることになぜ気がつかないのでしょうか。 

三等兵氏は「政府対農業」との関係でしか状況を見ていません。いま日本農業が、TPPという「グローバル資本対日本農業」という未曾有の嵐に突入する前夜だというのに。

三等兵氏のいう「生産調整」が強制であるかないかなど、はっきり言ってどうでもいいことです。だって事実上強制でしょう。補填金を受けられないんですから。補填金を受けたいので9割の農家は協力してるんでしょう。 

米粉や飼料米が新しい販路とか仰せですが、そうでしょうか。あんなものは農業の屈辱的なシンボル以外なんなのでしょうか。米は米として玉のように磨き上げてきた先人の努力を踏みにじるものです。 

減反、いや生産調整といわなきゃならんのか、専業の規模拡大にとって足かせになっているという認識は持っておられるようですから、ご自分でも農地集積をしてきていらっしゃるのでしょう。40ヘクタールでしたね。たいしたものだ。 ご苦労が偲ばれます。

しかし「兼業が邪魔くせーから補助無くして経営させなきゃいーんだよ!」、なんていつ私がそんなことを言いましたか。いきなり飛躍しないで下さいよ。 

言ってもいないことをさも言ったように、しかも汚い言葉で言い換えるスタイルは、いただけませんね。 

私が言っているのは、このままTPPになったら外国資本に勝てませんよ、ということにすぎないのですから。 

TPPになれは、いくら兼業の土地所有者と交渉が難航していようといまいと嵐は来ます。

私は農業は「保護」されるべきだと思っています。それはずっと書いてきています。ただ、その「保護」の仕方を変えていかねばならない、と思っているだけです。

そのどこが「経営させなきゃいいんだよ」ということなのでしょうか。そういう短絡したものの言い方が嫌いです。

三等兵さん、兼業農家が個別でいろいろ事情があるのは百も承知です。だから地域で集積がうまくいかないのもよくわかっています。うちの地域だって同じです。

私はかつて田んぼを借りるために土下座までしました。借りた田んぼは原っぱだったんですが、台風の時はロープで嵐の中で倒伏しないようにひと晩中濡れ鼠で引っ張りました。

そして最初の米ができた時には男泣きしました。あんなうまい飯は食ったことがない。それが私の百姓の原点です。

私が言いたいのは、だからといってTPPは待ってくれるんでしょうかということです。今年中に断念という事態にならない限り、関税がはずれようとはずれまいと、TPPは来るのだ、ということです。

いま、東京湾の沖にTPPという名の黒船が来ています。JA全農は関税という土塁で防ごうとしています。

しかし本当に怖いのは、黒船から撃ってくる関税撤廃という砲弾ではありません。陸戦隊として上がってきて、日本を制圧してくる「内国民待遇」なのです。

さてここで今日の本題に移ります。本来は三等兵氏にここまで読んでからキレてほしかったのですが、勝手にキレられてしまいました。 

私はTPPの最大の脅威は、外国企業の国内投資が「内国民待遇」となることだと思っています。 

いまの農業のTPP議論はあまりにモノの輸出入に重点が置かれすぎており、関税問題一色といった状況です。 

それは今までわが国農業界が、外国による国内投資というのを経験しておらず、いい意味でも悪い意味でも国内市場のみを気にしていればいいという体質があったからです。 

しかし、現実のTPPやFTAは、モノの移動より、資本の移動が重視されています。それを知るには燐国・韓国をみればいいでしょう。 

TPPに先行して始まっているEU-韓国FTAでは、EUは通信サービスをはじめとして金融、環境、専門職サービス分野でも韓国政府に自由貿易協定により法律改正を要求していく意向を見せています。 

TPPも似た内容となるでしょう。米韓FTAでも、モノを売りたい韓国に対して、EUは圧倒的に資本の自由化を要求しています。これは米国の要求と完全に重なります。 

FTAによる「投資」の自由化は、欄外を御覧ください。 (※1参照)

問題はこの最初の項にある「内国民待遇」です。そして当該国が外国企業に対して投資規制をかける事を禁じて、ISDS条項で外国企業は提訴が可能にしています。 

外国企業にも仮にコメ関税を譲ることになっても、ジャポニカ米のモノとしての流入は限られるのではないか、と考えています。  

したがって短期的にはコメの暴落はないと私は思っています。しかし、中長期的になると様相は違います。それはTPPが関税問題だけではないからです。  

TPPは煎じ詰めると、「モノ、カネ、ヒト」の三つの自由化のことです。  

モノで入ってくるのは、関税問題です。カネで入ってくるのは、資本投資や保険、金融サービスなどです。ヒトで入って来るのは、看護士や介護士、医師、単純労働者の移民問題です。  

米国は農業部門においておそらく資本投資をかけてきます。 

モノである穀物や油糧穀物はすでに日本市場に行き渡っており、牛肉、豚肉、小麦、酪農製品の無関税化は当然のこととしてまっさきに要求するでしょうが、それが主戦場ではありません。 (もちろんこれらは関税問題としてきちんとブロックするべきですが。) 

問題はモノに止まりません。2009年の農地法改訂で、農地に企業参入の道が開かれました。 

TPP発効となれば、仮に関税撤廃はくい止められたとしても米国アグリビジネスの参入は可能となります。 

米国が日本という世界でもっとも生産性の高い沃土と、「世界有数の安全なでおいしい農産物」というジャパンブランドを狙っているとすれば、TPPというビッグチャンスを見逃すはずがありません。 

コメの生産は経団連や同友会の計算どおり農地の統合、整理による大規模化が実現すれば、たぶん今の3分の2以下のコストでの生産が可能だと思います。 

ただし現実には、地権や点在する農地の問題が出てくるでしょうが、国が資本と組んで農業団体の反対を押し切ればまったく不可能なわけではありません。 

整備されているのでそのまま使える水田の土地改良区などは真っ先に標的になり、外国アグリビジネスが札束で頬を叩きに来ます。 

その時には、外国アグリビジネスは、国内農業法人格を取得して外国資本の日本農業法人として農地を借りたり、買ったりできるようになっているかもしれません。 

そこに、TPPで大量に流入してくる安価なベトナム農業労働者を使って大型化すれば、国際競争力のあるコメ商品の一丁上がりです。 

種子はもちろん農業生物資源研究所などで実験されたような遺伝子組み換え種子(GM)  を使います。 

モンサント=住友化学は既にイモチ病耐性GM種を実用段階にしており、これが日本に導入されれば一挙に東北、北海道にまで、外国資本のコメ超大規模農場は展開していくかもしれません。(欄外※2参照) 

それを売りさばくのは同系列のアグリビジネス商社であり、GM種とGM対応農薬とのワンセット販売もアグリビジネスを更に潤おわせることでしょう。 

このようにして、コメのGM品種-GM対応農薬-メガ農場-大量生産-大量流通-大量輸出というコメ・インテグレーション(垂直統合)のラインが完成します。 

現状ではGM種はOECD留保扱いになっているようですが、そのようなものはTPPの前に一瞬で消滅します。 

同じようなことは野菜や果樹でも進行するでしょう。それは外国アグリビジネスの日本農業支配です。TPPによって、米国は日本農産物という世界有数のアグリ商品を手にすることができるのです。 

三等兵氏のような農業者にわかってほしいのは、関税で襲来されるほうが簡単なのです。

日本国内で外国資本が「メイドインジャパン」としてコメや農産物を作り始める。これが一番怖いのです。

その場合、今の「生産調整」でもなんでも呼び方はいいが、そんな国家生産カルテルが通用するとお思いですか。

通用すると思っているなら、やればよろしい。たぶん農水省はやるかもしれませんね。「水田フル活用」とか言って飼料米を作れとか米粉を作れということでしょう。

おとなしいわが国農民はそれに従ってきました。カーギルやモンサントが従いますか?任意ですから当然従わない。

して様々な国内規制はすべて、「内国民待遇」だから異議を唱えるでしょう。そしてここぞという所では伝家の宝刀のISDS条項を抜きます。

ご承知のように、ISDS条項は、「海外投資家が不利益を被ったと自分で判断すれば、協定違反であろうとなかろうと相手国を提訴できる」というすさまじいまでに海外投資家を優遇した条項です。

そしてその「内国民」の外国資本の異議申し立てが接着する間、彼らの横車は続くのです。

おそらくは「国産コシヒカリ」を当初は10㎏1980円などという衝撃的価格で出して、市場を混乱と悲鳴の中に制圧し、国内産地を駆逐し寡占状態になった後に自由に好きな価格をつけるでしょう。これがグローバル資本のよくやる手口です。

三等兵さん、われわれはこんな連中と競合するのですよ。いいかげん村内の論理から出てきなさい。

相手は政府でもなく、国内の新自由主義者のコメンティターでもないのです。敵はグローバル資本そのものなんですよ!どうしてそれがわからないのか。

価格競争は泣いても笑っても来ます。私たち畜産は輸入農産品と常に戦ってきました。野菜や果樹もそうです。

野菜など一時は中国野菜によって壊滅するかもしれないというような状況まで追いやられていました。それを守り抜いて、いまではもっと産地力がついています。

養鶏はとうの昔に国内大手の米国流と真っ向勝負しています。牛肉は高付加価値の極みに達しています。果樹もそうです。

失礼ながら、唯一海外からの競争と自由だったのはコメだけです。それはコメが国土の保全という神聖な機能を持っていたからです。

コメ作はすべての農業の母なのです。だから大切に日本民族は守ってきました

しかし、そんな私たち日本人にだけ通じる論理と感性に無縁な連中が乗り込んで来るのです。これがTPPです。しかも彼らは国内で作るのです。

グローバル資本には私たちの国土を守ろうなんて意識はまるでありません。彼らは自分の国ですら農地を使い切ってはスクラップにしていく収奪農業をしてきた連中です。

異業種の国内企業すら怪しいものです。私は国内の異業種株式会社にすら土地所有権を与えるべきではないと考えています。

いま同じTPPに反対する農業者の異見が聞けないくらいで、どうしてTPPという外国からの荒波を迎えられますか。

三等兵さん。あなたと私は守ろうという価値は一緒だと思います。だから農業の他部門の言う事も少しは聞いてほしいのです。

           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

※1 EU-韓国FTAにおける資本の自由化 

原則として、内国民待遇及び最恵国待遇を付与することを規定。
・協定上の義務範囲を示す方式として,ネガティブ・リスト方式を採用。
・内国民待遇等の規定の適用対象外として留保した措置に関し,自由化の程度を低下させない場合に限って修正できることを定めることを規定(いわゆる「ラチェット条項」)。
投資家と国家間紛争解決の手続等を規定(ISDS条項)。両国の投資家は,国際仲裁ではなく国内の裁判手続等を選択することができるが,米国の投資家が韓国国内の司法または行政手続を一旦選択した場合,国際仲裁を選択することはできなくなる。一方,韓国の投資家が米国政府に対して提訴する場合,米国の国内裁判所を選択した後に,国際仲裁の場で提訴することは可能。
・補償の対象となる間接収用(公式な資金移転もしくは明らかな差押えがないものの,直接収用と同等の効果を有する行為)については,一定の条件を満さなくてはならないことを明確化。
・附属書において,韓国に限り,通貨危機等における一時的セーフガードの発動が可能であることについて規定。
 

※2 遺伝子組換えイネについて
すでに農水省が日本での作付けを認め、あとは厚生省に食品としての安全性評価の申請をすればよいだけになっている組み換えイネには、以下のものがあります。
 

安田節子氏
http://www.yasudasetsuko.com/gmo/column/010607.htm

2013年3月26日 (火)

TPP JAは日本農業を守るため自らコメの大型経営に挑戦しろ

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やはり非難轟々のようですが、もう少し続けさせて下さい。私は減反の廃止をテーマにしています。減反を廃止しない限り、TPP攻勢には勝てないと考えているからです。

お前はいつから構造改革論者になったんだと言われそうですが、まったく違いますので、もう少しおつきあいください。

三等兵さんのご指摘にもありましたが、兼業農家から専業農家層に水田の集約が順調に進んでいればなんの問題もありません。

地域差があるのかも知れないと思いますが、私には進んでいるとは到底思えません。一時はかなり進んだかに見えた時期もあります。兼業にとって今の米価はまったくメリットがないはずですから。

しかし、この数年、特に民主党の農家戸別補償が出てからいっそうひどくなった気がします。あれで貸しはがしのようなことも私の地域ではいくつも起きています。

ですから、この数年は農地の流動性や集積は最悪で、農業者同士の売り買いはおろか、貸し借りすらも低迷しています。

これは石破農政が意識的に進めてきた土地集積化を民主党政権が否定したからです。

では、なぜ石破農政が否定される方向に進んだのかといえば、それはJAが反旗をひるがえしたからです。

あの3年半前の民主党の地滑り的勝利という悪夢は、1人区でのJA単協の隠然たる民主党支持があったからではありませんか。その理由はいうまでもなく4品目横断政策が、JAの逆鱗に触れたからです。

その時、多くのJA関係はなんと言ったのでしょうか。「小規模農家切り捨てを許さない」でしたね。言い換えれば、兼業切り捨てるなということです。

ひとつの地域に専業のコメ農家などそう何人もいるわけではありません。ひとり一票となれば負けます。というか、専業は兼業と争う関係ではなかったので、黙ってしまっただけです。

さて、一般の方にもわかるように減反の説明を続けます。

高関税は減反制度という世にも奇怪な制度と連動しています。なにせ国が半強制的に作らせないのですからスゴイ。

昔は作れ、作れ、沢山作ったら表彰だ、と言っていたのが、今は作ると痛い目に合うぞとばかりに、お国の監視員が見回りに来ます。こんな不毛な仕事に農水省は万余の役人を張り付けています。まったくバッカじゃないかと思います。

コメを作ると悪いことのようで、減反割り当てが、たとえば36%と決まると、減反の消化で本業の農業がおろそかになるほどです。なにせ36%です。

耕作する水田の実に4割弱を「作るな」というのです。冗談ではない。こんな馬鹿なことをやっている国は世界広しといえどわが国だけです。リッパな価格カルテル行為です。公取委なんとかしろ。 

昔は青刈りといって植えてまだ実が入らない前に刈り取っていましたが、余りに農業者の評判が悪いので(そりゃそうだ)、何か植えることにして転作という形にしました。 

だいたいが飼料用米といってまずくて大量に出来る品種を作って、家畜にやるのが流行っています。 

ほとんどが税金の補助で成り立っていて、なにが飼料の自給なんだかと、農家は陰で笑っています。 

表面的には外国に頼っていた家畜飼料を、国産自給のコメで達成すると美辞麗句を吐きますが、内実はなんのことはない税金まみれの減反対策にすきません。 

次なる流行は米粉です。炊きたてにひと粒ずつピンっと立ち上がるような世界一のコメを、うどん粉よろしくなんと粉にしてしまうんですから、なんともかとも。 

そして最大の悩みはこんなうどん粉みたいなコメ粉は売れないときています(苦笑)。

そんなバカな減反があるのは、「赤信号皆んなで渡れば怖くない」とばかりに兼業農家の大量温存をしてしまったからです。 

馬鹿げた農政も大量に利害関係者がいれば合理化できるというわけで、それを何十年もやってくればもはや利害でがんじがらめで、身動きがとれません。 

この減反は、農業者のやる気を著しく削ぎました。説明する必要もないでしょう。20ヘクタール、50ヘクタールやっているやる気のある農家減反割り当ては一律なんですから。

この減反を墨守するために、外国からの安価なコメと価格競争しないように、高関税が必要だったのです。

農業以外の人たちに誤解していただきたくないのですが、こんなおかしな制度はコメだけです。 

よく知ったかぶりのコメンティターが、「高関税で守られている農家のために都会の消費者は世界一高い農産物を食べさせられているんですよ」などと聞いたようなことを言っているのをみると、情けなさでがっくりきます。そりゃコメだけだろうが。 

私はあえて減反という誤った農政を廃止するためには関税がなくなることも視野にいれろ、と言っています。

そんなに輸入米が怖いのなら、市場原理でブロックできるていどの価格にすればいいのです。その目安はカリフォルニア米の9000円です。(※1欄外参照)

日本の農家が思うほど大変ではありません。いまでもコシヒカリ以外の一般米は1万円強じゃないですか。

1万円という心理的な大台を切りたくないというのは分かるのですが、仮に切っても国が直接支払いで補填すればいいだけです。

9000円という価格(変動する可能性はあります)に、国産米が追随できれば、一挙に輸入米を阻止できるだけではなく、日本米という超高級ブランド米の輸出もごくあたりまえに可能となります。 

あらかじめお断りしますが、輸出=構造改革論者ではないですよ。どうもあっちら関係が輸出ばかり言うから、まっとうな農産物輸出までが白い目で見られてしまう。

日本のコメ市場は飽和状態です。ならば生産性を上げて、生産量を増やすためには輸出も必要です。高級米だけてはなく、一般米でもそうとういい勝負になると思っています。

明日書くつもりですが、米国はかならずTPPによって日本農業に参入しようとしてきます。こっちのほうがはるかに輸入米より危険なのです

関税撤廃を守っても、壁の内側で作られてはどうにもなりません。国内異業種の参入も盛んになると思われます。

その時、今のような兼業農家=パートタイム農家ばかりのコメ作りでどうして勝てますか?

私は三等兵さんが言うように兼業農家を「寄生虫」だなどと思ったことは一度もありませんが、(そんなことをともったら村にいられませんよ)限界があると言っているのです。

たしかに、コメの生産額は1.5兆円から最悪で7500億円にまで落ちますが、この落ちた差額を農家への直接支払い(ダイレクト・ペイメント)で補うことは十分に可能です。

だって、今でもそれと同額以上を減反補助金やなんやで使っているでしょう。 

直接支払い制度は欧米でも盛んに行われており、WTOでも認められている農業保護策です。 

そうなった場合の問題は、直接支払いを今の農家戸別所得補償制度のように減反を受け入れることを条件にして「広く薄く」交付するのか、あるいは、まったく両者を切り離してしまって減反を止めて専業のコメ農家をもっと増やす方針に転換するのか、です。

ここで兼業農家を組織化しているJA全農がどのような決断をするかが問題になってきます。

なん度か書いてきていますが、JA全農は揃いの鉢巻きを締めた傘下JAの大部隊の示威運動が、かなりの国民に反感を受けているのを知ったほうがいい。もう米価闘争の時代ではないんですよ

ではどうしたらよいのでしょうか。私は、JAがコメ作りから離れていく兼業農家の農地を異業種に渡さずに、自らが集積して大規模コメ作りに乗り出すことを提案します。

外国にもこのような例はあります。カナダです。

NAFTA(北米自由貿易協定)によってカナダの穀物生産は短期間で危機的状況を迎えます。小麦、大麦、油糧穀物(キャノーラ)、食用牛の加工までもが、7割から9割米国系アグリビジネスに独占されるという事態が生じました。

それに対抗してカナダ農協は、各地域の協同組合組織を統合して株式会社化します。これと似た対抗措置は、米韓FTAにおいても韓国が牛肉などの流通統合や合理化でしています。 

もしこのカナダ農協の統合政策がなければ、間違いなくカナダ農業は短期間でほぼ完全に米国支配に置かれてしまったであろうことが想像できます。

現行法でも「農協出資農業生産法人」は可能であり、このような迂回的方法によらずとも可能です。(※2)

資本力や技術力はJAに集中的に集積しているはずで、今のようにそれを耕作放棄地対策に限定してしまうのはもったいないではありませんか。

さもないと、あの競争力会議に巣くっている新自由主義者どもが「規制改革」の名の下にJAをやり玉に上げてきますよ。

ここで、コメ関税撤廃→減反廃止→直接支払い制度への転換→専業コメ農家への農地集積・JAの大規模生産への本格参入、という新しい流れが生まれれば、日本の農業は大きく変わります。

国内異業種の参入や、農地の株式会社取得、農業委員会の位置づけなどの問題も付随して噴出してくるでしょうが、それは「日本の農家が日本の農地を耕作する」という原則を貫いて判断すればいいことです。

米国にとってTPPの主な課題は関税ではありません。米国の狙いは非関税障壁と投資に移ってきています。

それにもかかわらずコメ関税に固執する余り後者の危険を見ないのであれば、必ず負けてしまいます。

むしろ経団連が考えているような財界主導型農業「改革」をさせないためには、JAによる自主改革が必要な時代ではないでしょうか。

小沢一郎氏が好んで使っていた言葉なのでイヤですが、「変わらないためには、変わるらねばならない」というビテコンティの言葉はまさに今の日本農業に向けられているようです。

日本のかけがえのない美しい風土を守るためには、農業自身が変わって行かねばならないのです。

■写真 畑の片隅の石の祠と筑波山。

      ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

※1カリフォルニア米
・高級品・・・「田牧米クラッシック(コシヒカリブレンド )」「田牧米ゴールド(コシヒカリ)」「玉錦(ゆめごこち・こしひかりブレンド)」「かがやき(コシヒカリ )」「夢(ササニシキ)」「ひとめぼれ」。
・中級米・・・「ひかり米」「望(コシヒカリ )」。
・安価な価格米・・・「国宝ローズ (中粒米)」「錦(中粒米)」「BOTAN RICE」「鶴米」「雪花」。

高級品の田牧米は福島県出身の農民が作っており、まったく日本米と違いがないそうです。

価格的には末端価格で、短粒米は、2011年3月現在では15ポンド(6.8kg)20~28ドル。㎏換算で29ドル~36ドル(94円換算で2726円~3384円)

中粒米だと15ポンド14ドル。ただしまずいとのこと。

参考までに国内米はコシヒカリ以外の普通米が10㎏で2500~4000円。

※2 「JA出資農業生産法人の今日的到達点とあり方をめぐる諸問題について」
http://www.nohken.or.jp/21e.pdf#search='%EF%BC%AA%EF%BC%A1%E3%81%AF%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E7%94%9F%E7%94%A3%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%8B' 

2013年3月25日 (月)

TPP コメを関税、死守するのか、直接支払いに転換するのか 

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TPPは一体どのような形で、日本農業に侵入してくるのでしょうか?シナリオをいくつか考えてみました。 

コメ、小麦、乳製品、肉類などの関税撤廃 

外国アグリビジネスの投資と関税障壁撤廃要求 

まず①無関税化ですが、関税自主権は重要な主権ですし、たしかに砂糖や乳畜産製品のように守らねばならない関税が存在するのも事実です。

だからといって農水省とJA全農が言うような、「自給率が13%になる」とか、「米価崩壊で経営崩壊」になるのかといえば、さてどうなのでしょうか。

首相「決断」前までは友軍撃ちになるので黙っていましたが、結論から言えば、これはJA全農傘下の兼業コメ農家の組合員防衛からのみ発想した論法にすぎません。

TPP反対=コメ兼業農家防衛に短絡させてしまったようなこのJA全農の方針は、「農家と医者はうまいことやってきた。あいつらから既得権を奪い取るのがTPPだ」という攻撃を招き寄せてしまいました。

いくら多くの反TPP論者が、「農業問題だけがTPPではない、保険も医療、金融こそが重要だ」と言っても、大多数の国民にはやはりTPP=高関税=農業保護という構図ががっちりと印象されてしまっています。

それが首相「決断」以後の各社世論調査に出てきたTPP支持率6~7割という数字が示しています。

さて、私たち他の分野の農業者から見ても、コメ兼業農家のあり方は特殊です。野菜とも、果樹とも、畜産とも大きく異なっています。まずはここから押さえていきましょう。

コメを作っている農家は140万戸といわれていますが、このうち1ヘクタール未満が7割です。1ヘクタール以下では、いくら農村でも食えません。

またコメ専業はわずか3万戸ほどにすぎません。というと、2割程度しか専業がいないことになります。 あたりまえですが、専業(官製用語で主業農家)が2割しかいない農業分野などほかにはありません

農水省や自治体農政課は、このような兼業農家のことを「自給的農家」、あるいは「零細農家」と呼んでいます。こういうくだらない言い換えはやめてほしいものです。本質を分かりにくくする日本人の悪い癖です。 

「自給的農家」というと、まるで自給自足の農的生活を送る古典的な農民のようなイメージが浮かびますし、「零細農家」というと小規模だが歯を食いしばってがんばっている農家のようです。

もちろん違います。 日頃は農村に住んで、街に働きに行って土日だけ田んぼだけ出ているパートタイム農家層のことです。当然収入の9割以上は勤め人の給料です。

兼業農家のほうも儲かるからやっているというより、田を荒らしてしまうと申し訳がないのでやっているのが実情です。

沢山売るほど作っていないので「自給的」「零細」ということなのでしょうが、兼業農家と言ったほうが分かりやすいと思います。この層が、地域によっても違いますが、JA組合員のかなりの割合を占めています。 

コメ兼業農家層にとって、関税がはずれて米価が下がるとやっていけないのでJAはTPPに反対しているという側面もあります(それだけではありません。念のため)。 

これは、農業の大きな柱のひとつである野菜と比較してみることでわかります。(欄外※1参照)

コメは最短11日間程度の年間労働で出来てしまうほど機械化が進んでいますが、野菜、畜産農家は手間の塊のためにほとんど兼業はいません。

以上を見ると、こう言えるでしょう。

農家戸数こそ野菜農家と変わらないように見えるが、その8割が兼業農家によって占められ、生産額もまた野菜の6割程度しかない部門が778%の高関税で守られているのです。

ですから、関税撤廃にピリピリしているコメ農家に対して、野菜農家にはほとんど関税撤廃に対しての不安感はありません。

今日は数字ばかりで恐縮なのですか、この不安を具体的な数字で見てみましょう。

県によっても違いますが、昨年のコシヒカリの生産単価が、コシヒカリ1俵(60㎏)1万2000~1万4000円。他の品種だと約1万円ていどです。 これに減反協力で2000円程度上乗せされます。

生産原価は9000円から1万円弱といったところでしょうから、10アール作って3万から5万円ていどの利益といったところです。減反協力金が出なければ、ガソリン代も機械代も鼻血も出ないでしょう。

だからハッキリ言って、兼業農家はコメなど今でもやめたいのが本心です。しかし止められないのは、稲作という農業は歴史的に共同体で維持してきたものが故に、個人の判断だけでどうなるものでもない部分が今でもあるからです。

たとえば自分の田んぼか農地改良区に入ってしまえば、その負担金を含めて替わってくれる農業者の資格を持つ人にしか田んぼを売れません。

こんな人は滅多にいるもんじゃありませんから、自分は街に勤めていても、泣く泣くゴールデンウィークに家族に謝りながら田植えをすることになります。

一方、専業農家は、ブランド化に努力したり、大規模化したりしてスケールメリットを得ることができます。

また生産原価も集約化して15から20ヘクタールに拡大すれば、10アールあたり6500円ていどまで落とすことができます。

コメは集約化か可能な技術が進んでいます。私の友人にも20ヘクタール以上やっている男がいますが、労働力は彼と奥さんだけです。人経営ならばその十数倍は簡単でしょう。ただし減反さえなければですが。

減反は兼業専業の区別なく頭割りで30~40%を削減することを命じてきます。一般の人は想像できますか?作りたいのに作らせない。頑張りたいのに頑張らせない。頑張ったら罰則が来る。それが減反政策です。

この国はことコメだけは社会主義計画経済をやっているのです。

つまり、兼業農家は止めたいのに止められない、専業農家は増やしたいと思ってもできない、こんな行き詰まった状況のなかでTPPは持ち上がったのです。

さてTPPで関税が撤廃された場合、輸入米が市場に参入するでしょう。 もっとも参入の可能性が高いのは、カリフォルニア米です。(欄外※2参照)

ではTPPでコメの関税はどのようになるのかですが、私はフィフティ・フィフティではないかと思っています。

政治的理由で関税が守られるかもしれないし、他の6条件・5品目条件のための捨て石になる可能性もないとはいえません。

問題は、むしろTPP、関税とは関係なく、国内産のコメ作りをどうやって守るのか、なのです。

現在のように778%の高関税のい壁を作って毎年77万トンのMA米(ミニマム・アクセス)を国家輸入し、それの保管に百数十億円かけ、さらに減反のために6千億円の税金を費やし、早くやめたい兼業農家を守り続け、もっと頑張りたい専業農家の足を引っ張る減反を続けるつもりなのでしょうか

こんな形が続くはずがない。そもそもこんな兼業農家頼みにしてしまった農政自体が誤っていました。とうに専業農家がそれを担っていなければならなかったはずでした。

その決断が遅れたために、とうとう東京湾の沖で、TPPという黒船に大砲を撃たれてパニくって、関税という土塁の陰に身を潜めている始末です。

もはやこのような馬鹿げて高いコメ関税が諸外国に受け入れられないことは農水省自身もよくわかっているはずです。

TPPでコメ関税を死守しようとすれば、ウルグアイラウンドの比ではない譲歩をせねばならないことは必至で、国内世論はそれを許さないでしょう。

となるとTPPでコメの関税ブロックが消えたならば、減反維持のためにこそ高関税をしているのですから、関税と減反は同時消滅します。

ここで初めて今のコメの国家管理が崩壊し、コメの自由相場制が誕生します。減反という足かせから自由になった専業農家は、撤退する兼業農家の水田を借り受けて生産に励むことでしょう。

結果、需給バランスが崩れ、おそらく3分の2程度まで一気に米価は下がり、コシヒカリで1万円前後、一般米ならカリフォルニア米の9000円とほぼ同一水準に並びます。十分に経団連がいう国際競争力が可能な水準です。

このテーマ、 次回に続けます。

■写真 菜の花が村中に咲き乱れています。春爛漫。北海道にも早く春が来るといいですね。

           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

※1
農家数の比率
・コメの農家数     ・・・24.9%
・野菜の農家数    ・・・22.5%

農家数が占める比率は一緒です。ただし、コメと野菜を作る農家が重なっている場合があることはお含みおきください。 

②国産比率
・コメの自給率   ・・・95%(ただしミニマム・アクセス米77万トン)
・野菜の自給率  ・・・80%
 

ここもほぼ同一です。

生産額(22年度農林水産統計による)
・コメの生産額   ・・・1兆5517億円
・野菜の生産額  ・・・2兆2485億円
 

ここで大きく差が出ました。野菜はコメよりはるかに大きな経済規模だと分かります。 

関税率
・コメ  ・・・778%
・野菜 ・・・  3%
 

野菜はまったくノーガードだといっていいと思います。野菜分野は熾烈な中国野菜との戦いを経験してきた結果、産地強化されてしまいました。今や質が悪く、まずくて危険な中国野菜ごときはまったく敵ではありません。

※2  
米国産のジャポニカ米は市場でわずか4%しか流通していないので、どこまで今後生産を拡大できるのかわかりません。

 これについては意見が分かれており、カリフォルニアは水に制限があるから難しいとする人と、いやまだまだ生産余力は大きいという人に分かれます。

また東南アジアでは世界屈指のコメ輸出国のベトナムが控えています。日本商社が開発生産方式でコシヒカリを作る可能性は十分ありえます。 

ニュージーランドも、現在まったくジャポニカ米を作っていませんが、水量も多く、高い農業技術を持つので生産に乗り出す可能性は捨てきれません。 

日本の参加承認、早くても4月下旬=「7月会合」は困難に-TPP交渉

【ワシントン時事】日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題で、米国やニュージーランドなど全11カ国の政府が日本の参加を承認するのは、最速でも4月下旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に合わせて開かれるTPP閣僚会合時にずれ込む見通しであることが、21日分かった。

ニュージーランドが、同会合で日本の参加問題を協議する意向を示しているほか、米政府と議会の調整難航などが理由だ。

 日本のTPP交渉参加問題をめぐる事前協議で、これまでに日本の参加を承認していないと明言しているのは、米国と豪州、ニュージーランドの3カ国。このうち、ニュージーランドは、「(4月下旬のTPP閣僚会合で)日本の交渉参加をめぐる次のステップについて協議したい」との意向を表明している。

 一方、米通商代表部(USTR)のマランティス代表代行は20日の記者会見で、日本の交渉参加を承認するかどうかの判断は「11カ国の総意で決定する」と言明。米国が単独で日本の参加を承認することはないとの見解を示した。
 TPP交渉に詳しい業界関係者によると、日本の交渉参加をめぐる米政府と議会の調整も難航しているもよう。今週に入り、USTRは、対日協議を担当するカトラー代表補らが出席して、米業界団体などへのTPP交渉に関する非公式の説明会を開催したが、その席でも具体的な参加承認の表明時期への言及はなかったという。

 日本がTPP交渉国会合に正式参加できるのは、米政府が議会に通知してから90日後となる。このため日本が交渉国会合に参加できるのは8月以降となる公算が大きく、11カ国が開催を検討している7月の交渉国会合に日本が正式参加するのは困難な情勢だ。

11カ国は10月の大筋合意を目指しており、日本がルールづくりに参加できる余地が一段と狭まる可能性がある。(2013/03/22-13:30)

2013年3月23日 (土)

週末写真館 梅まつり

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筑波山の梅まつりに行ってきました。
全山まさに、梅、梅、梅。だからなんなんだ、というくらいに梅また梅。(笑)
まさに梅の香でむせかえります。

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何本かにひとつ丁寧に品種の木札がつけてあり、それは典雅な名がついているのですが、私にはまったく識別できず、「やっぱり梅でしょう」。すいません。

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頂上近くには藁葺きの展望台などがしつらえてあり、全山、これ梅、梅の風景をしっかりと見渡せます。

麓には梅茶の接待などもあり、茨城といったら梅でしょうと、イヤでも思わさせられます。

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当分の間、もう梅はいいやというくらいに堪能した一日でした。写真的には誰が撮っても一緒になっちゃうのが残念ですが。

あ、そうそう筑波山梅まつりは明日24日までです。行かないと損します。入園無料。http://umematsuri.jp/
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水戸偕楽園の梅まつりは
31日(日)まで。
http://www.ibarakiguide.jp/wp_kanko/mimiyori1/%E3%80%90%E6%B0%B4%E6%88%B8%E5%B8%82%E3%80%91%E7%AC%AC117%E5%9B%9E%E6%B0%B4%E6%88%B8%E3%81%AE%E6%A2%85%E3%81%BE%E3%81%A4%E3%82%8A%E9%96%8B%E5%82%AC%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%EF%BC%81%EF%BC%88220.html

桜も満開に向けてまっしぐらですので、梅桜の競演が見られます。行くなら今でしょう。

明日は定休日です。来週またお会いしましょう。

2013年3月22日 (金)

「こくびと」さんにお答えして その1 田んぼという環境スタビライザー装置

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「こくびと」さんのコメントに少しずつお答えしていきます。というのは、私もTPP以後をどう考えていくのかちょっと悩んでいたというのもあります。
 

 

「こくびと」さんのコメントはこうです。

「1) 国土の保全が水田の役割というが、700%超もの関税で守っているのであれば、水田以外の方法でやったほうが最終的なコストは安いのではないのか?

2) 水田が生物多様性に寄与しているというのは本当なのか?農業というのは基本自然破壊を伴うのでは?(景観は確かに保全されるが)

3)仮に1,2の目的を水田が果たしているとしても、コンニャク、小麦、バター、砂糖等の関税が異常に高いことは正当化できない。

4)農業従事者の主たる反対理由は、上記1,2等ではなく「自分達の生活が苦しくなるから」と一般には受け止められている。(集会等で政治家を罵倒している旧態依然とした態度はそうした見方を助長。)

そう受け止められている以上、1)2)は詭弁だと言う人が多数でるのは自然なことの気がする。」 

なるほど。馬鹿にして言うわけではなく、一般の人の農業に対する誤解がギュっと集約されていますね。 

 

さて①についてですが、結論から言えば、農業という環境維持のためのスタビライザー(安定化装置)を利用しないと、防災インフラを再構築せねばならなくなり、その公共投資のコストは天文学的になりますよ。

 

農業という存在を田んぼ単体で考えているから分からなくなるのです。田んぼは「システム」なのです。 

 

Photo                     図 座間市HPより

 

田圃にはその灌漑のための水系が付属します。河川から水を取り込む小規模河川、網の目のような農業用水、そして干天に水を放出し、大水の時に水を蓄え込むため池などがそうです。 

 

また、田んぼに常に水を涵養しておくための山も重要な存在です。田んぼを作るためにはげ山に植林し、その森林が水をしっかりと蓄えられるようになって初めて「田んぼ」が出来るのです。 

 

いわゆる水田は、田んぼという土と水のエコシステムの一部でしかありません。さらにこの水田から出来るコメだけ取り出して700%の関税がうんぬんという議論は、木を見て森を見ない議論に思えます。

 

もっと大きな目で見て御覧になりませんか。これが分からないと、ではどうやってこの700%超の関税を改革していくのかという議論につながりません。

 

そうでしょう。その価値がわからない人が、コメの価格だけ高い安いと言っても始まりませんものね。

 

さて、北朝鮮でなぜ大水が頻繁に起きるかご存じでしょうか。酔狂にもわざわざ見に行った人の話によれば、天井川になっているのです。 

 

天井川とは、河川の底が土砂で埋まって岸より高くなっている河のことです。こんな河はたいした大雨でなくてもすぐに溢れます。 

 

この土砂はどこから来るのかと言えば、河沿いの山肌の崩落が原因です。北朝鮮の山ははげ山なのです。

 

それは樹を引っこ抜いて、山に土留めもせずに根の浅いトウモロコシをビシッと植えたからです。こんなことをすれば、山はどんどん崩れていくのは当たり前です。 

 

今、現代日本人が漫然と見ている山もかつての先人たちの営々とした植林によって出来ました。

 

昔、盛んになるのは江戸中期頃からですが、 米を食いたければ山に樹を植えるところから始まりました。

 

漫然と植えたのではなく、樹が水を蓄えることを当時の人が知っていたからです。それが治水に役立つこともそれ以前から知っていました。

 

そして苗を植えて100年、やっと山が緑に覆われてくる頃、初めてそこから湧き出る水を集めて田んぼを作りました。 

 

そして水を山から引く農業用水路を整備し、天候の変動に備えてのリザーブ・タンクとしてのため池を堀りました。

 

もちろん縄文末期から田んぼはあるのですが、植林、山の手入れ、水路などを一体のものとして作り始めたのはこの頃からです。

 

こうして、今の見学の外国人が公園のようだと評する農村風景が出来上がりました。

 

樹を植えて三代。そこから稲ができるまでまた1代。毎年の山の手入れは永代。川さらい、農道の普請は地域で毎年。まったく気長な話です。

 

これを営々と村の共同の作業として維持してきたのが「田んぼ」なのです。 人々の汗の積み重ねがあって、日本の土と水は保全されてきたといえます。

 

この営為を「こくびと」さんが言うように「生活」のためだというなら、そのとおりです。 「生活」のためにコメを作り、森林を保全し、河川を維持してきたのです。そのなにがいけないのでしょうか。

 

さてこれを、「こくびと」さんがおっしゃるように「水田以外の方法」でやってみるとなると、どうなりますか。 

 

今、60年代に作った全国の公共インフラは耐用年数を迎えつつあります。笹子トンネルの崩落事故などはその前兆です。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-6.html

 

これは公共事業=悪玉論によって公共事業費を削減し続けたからです。公共事業費を消すると、真っ先にメンテナンス部門にしわ寄せが行きます。 

 

ですから、今早急に道路、河川、トンネルなどの補修事業をせねば、想定される大地震などの天災でまた多くの国民が亡くなってしまうことになります。 

 

それだけで巨額な公共投資を要します。しかし、やらないわけにはいかないわけです。 

 

この時期に、わが国の国土特有の治水の要である水田や小規模河川、それに付随するため池、農業用水、そして山の手入れを全部潰すとなるとどうなるでしょうか。 

 

あまりシミュレーションしたくないのですが、基幹的公共インフラの整備ですら膨大な財政支出が必要な上に、今まで「農業」という見えない形で支えていたものが消滅するわけですから余り想像したくないことになるのは明らかです。

 

北朝鮮なみに年中河は溢れ、住宅地や農地は水に漬かり、道路は寸断され、トンネルは埋まり、河口付近の湾は河から押し流される土砂でとんどん浅くなって港湾機能も失われていくことでしょうね。 

 

これを「他の方法で」で解決するとなると、田んぼの代わりに小規模多目的ダムを全国に無数に作ることになりますね。もちろん税金でです。まぁ、そんな金があったらの話ですが。

 

多目的ダムはこんな概要です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%BB%E6%B0%B4%E3%83%80%E3%83%A0

 

容量は河川によっても異なりますが、たとえば小型の熊本県球磨川・五木ダムが36万㎥の貯水量があります。

 

建設コストは一概に言いきれませんが、群馬県倉淵ダム(建設中止)、当初予算の275億円は最終的には550億円となったようです。大体は用地買収などが手間取って当初予算の数倍にハネ上がっています。

 

第一、作りたくとも今や八ッ場ダムで分かるように、環境破壊がひどいので建設のためのコンセンサスがとれなくなってきています

 

一方、仮に田んぼに20㎝分だけ貯水したとすると、大分県の試算では、10アール当たり200トンの雨水を受け止めるのに相当し、大分県内の水田(4万2500ヘクタール)すべての貯水量は、1240万㎥となり、小型ダム約3基分に匹敵する貯水量があります。
http://www.oita-press.co.jp/bousai/115571175632564.html

 

馬鹿げてはいませんか。農業が黙々とやってきた環境スタビライザー機能を他の手段で置き換えるというのは。言うのは簡単ですが、まったく割に合わない愚行です。

 

別にこれはわが国だけに限ったことではなく、世界中どこの国でも農業が国土の基本インフラであるのは常識です。農業は取り替えが効かない部門なのです。

 

だから農業保護ということにどこの国も必死になるわけです。それをしなければ、国土が崩壊して、外国産の安い農産物で潤う以上の損失を国土にもたらすことがわかったからです。

 

よく「食の安全保障」といいますが、それは単にカロリーで表記できるだけのものではなく、農業が守っている国土インフラ保全の安全保障まで含む概念だと私は思っています。

 

今の中国のように無計画にそれを壊してしまうと、修復にはとてつもないコストと時間がかかることを、多くの国は理解しているからです。

 

だから、一般的な競争原理にはなじみません。といって、誤解されたくはないのですが、まったく今までどおりでいいとも私は思っていません。

 

減反政策と高関税は一対のものです。減反を維持するために馬鹿げて高い高関税を敷いているのは事実です。私はもはやこのような関税ブロックは賞味期限切れだと常々思ってきました。

 

その意味で、私は農業は改革が必要だと考えている者です。ただし、それを卑怯にも外国の黒船の力を借りるTPP推進論者ではないだけです。

 

それについては長くなりましたので、次週に続けます。

 

TPPについて生の農業現場の声を集めています。南の島様、離島の砂糖や牛肉について一文いただけないでしょうか。cowboy様、牛肉についていかがでしょうか。北海道様、乳製品についてひとことお願いできないでしょうか。

 

 

 

■写真 「こくびと」さん、これか田んぼです。一度来てみませんか。

 

 

2013年3月21日 (木)

中国世界最大手太陽光パネルメーカー・サンテック、過剰生産で倒産

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中国の太陽光発電最大手、というより世界最大のメーカーだったサンテック・パワーが倒産しました。
 

かねがね倒産するのは目前といわれていたので、いまさらという感じですが、遂に命脈尽きたと思われます。 

この最大の原因は生産過剰です。中国は今、ありとあらゆる製品が過剰生産に陥っています。この太陽光パネルもそうですし、自動車、家電、鉄鋼、セメント、住宅、もはや例外なくハンパでない作りすぎです。 

液晶テレビなどはそのいい例で、エコポイント駆け込み需要が終わった瞬間、叩き売りが始まり、家電メーカーの地獄の釜が開いたのは記憶に新しいことです。

通常、自由主義経済においては過剰生産は、このような冷酷な市場の調整能力によって淘汰されます。要するに、売れてければ、作らなくなるという当たり前の調整弁が機能します。 

ところが中国では経済の調整弁がバカになっています。生産能力が過剰なのは大部分が国有企業だからてす。 

こうした国有企業が生産能力の拡大に走るのは、業界における生産規模の「順位」が大変に重要だからです。 

国務院の国有資産監督管理委員会(国資委)から新しい投資はが受けられるのがこの生産規模の「順位」なので、これに食い込むことは企業にとって死活問題となります。 

「順位」を下げれば、同業他社が国資委融資を得てしまってシェアを奪ってしまうために、負けじと生産設備にジャブジャブと投資を注ぎ込むことになります。

中国企業にとって真の敵は、海外企業ではなく自国の国有企業です。同業他社に勝てないと、自分の地位は来期からなくなってしまいます。

また、地方政府にとっても自分が目をかけた企業が伸びれば賄賂が増えます。

共産党・政府幹部とその一族が汚職によって得た富は、1990年代末にGDPの13~17%(胡鞍鋼・清華大学教授推計)に上ると推定されています。

もはや賄賂は文化というより、経済の重要な一部だと考えたほうがいいのかもしれません。

このような融資と賄賂の関係で堅く結びつい政財癒着は、企業が潰れるところまで突っ走ることになります。

ちなみに、このような狂熱経済の爆発によって、中国の格差は天文学的に拡がってしまいました。

所得格差指標・ジニ係数は0・61(中国人民銀行・西南財経大学調べ)とアフリカの崩壊国家並みです。

革命が起きるのが0.4以上といわれていますから、中国民衆にとって一番必要なのは「共産党」でしょうね(笑)。

そのようなわけで、しなくてもいい企業拡大を経済合理性を度外視して死に物狂いでしたあげく、倉庫には売れ残った製品が山と積まれることになります。 

中国には太陽光パネルメーカーだけで十数社ありますが、最近その大手LDKソーラーも倒産し、社長は国外逃亡して行方知れずです。 

太陽光発電資材メーカーのGCLも倒産寸前で、在庫したウエハーだけでなんと2億枚といいますから、とてつもない規模です。

パワーコンデショナー(インバーター)の世界シェア4割を握るSMAソーラーは、太陽光発電関連資材の暴落を受けて売り上げ激減で、とうとうリストラに踏み切り、株価大暴落で風前の灯火状態。 

これらが日本市場向け製品として叩き売られているのですから、まっとうな競争原理などは通用するはずがありません。

日本のシャープ、ドイツのQセルズなどは気の毒ですが、倒産してあたりまえだったのです。 

「中国は過去3年にわたり、ソーラーパネル分野で低利融資の継続や迅速な値引きなどを武器にして日本企業やドイツ企業を凌駕。主導権を握り続けた。
この間、サンテックをはじめとする中国大手5社の生産能力はそれぞれ倍増。集光型太陽電池の規模も2009年当時の7.7ギガワットから30ギガワットに急拡大した。」(ブルームバーク)

このような無計画な中国の太陽光発電施設の過剰生産によって、現在の世界の太陽光発電の需要は、セルベースで25ギガワットですが、供給能力はその2倍の50ギガワット以上あると言われるようになってしまいました。

この原因を作った中国企業はサンテックパワーの倒産を奇貨として、その不良在庫を買い叩いて、ブランドを貼り替えてまた先進国市場に売りに出すのでしょうから、もう目も当てられません。

太陽光市場は、上品な先進国企業がなんとかできる市場ではもはやないのです。 こんな分野をソーラーパネルで「国興し、産業興し、地域興し」と言っていたバカな首相がどこかの国にいましたね。

というわけで、今後の世界の太陽光発電市場は先進国メーカーの完全撤退と、ひたすら続く中国メーカーのさらなる安売りが常態となるでしょう。

まことにもっとも非エコ的風景が今後も続くことになります。

■写真 クロッカスの花がポツンと咲きました。朝のうちは花弁は閉じていて、温かくなるとパァーと艶やかに拡がります。

 

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中国の太陽光パネル大手サンテック、政府が救済へ=関係筋 

[香港 13日 ロイター] 中国の太陽光パネルメーカー大手、サンテック・パワー・ホールディングス(尚徳太陽能電力)(STP.N: 株価, 企業情報, レポート)が政府による救済を受ける見通しとなった。 

貿易問題や供給過剰に伴う価格暴落が響いてキャッシュの流出が続き、数日内に期限を迎える5億4100万ドルの転換社債の償還が困難になった。サンテックは11日、15日に期限を迎える社債の6割超を保有する投資家との間で、償還を2カ月先送りすることで合意したと発表した。 

ただ、残りの4割を保有する投資家との間では合意に至っておらず、その分の償還資金2億ドルの手当ても済んでいない。 

業界内では過剰供給問題の解決に向け、いくつかのメーカーを破綻させるほうが良いとの見方もあるが、アナリストらは、サンテックの破綻を許せば中国政府が重視する業界でパニックが誘発される可能性があると指摘している。 

CLSAのアナリスト、チャールズ・ヨンツ氏は「2カ月後には社債保有者が妥協を迫られ、部分的なヘアカット(債務免除)に至るだろう。その後、サンテックは地方政府から支援を受けることになる」と指摘した。 

事情に詳しい複数の関係筋はロイターに対し、サンテックが本拠を置く江蘇省無錫市の政府は同社との交渉に入っており、救済に乗り出す可能性があると明らかにした。 

同市政府に電話をかけたが、応答しなかった。 

中国の太陽光発電パネル製造業界は数十万人の雇用を抱えており、生産能力では世界最大。地方政府は積極的に投資誘致を進めてきた。  

また、国有銀行も業界向けに数十億ドルの低利融資を実行していた。 

サンテック デフォルト危機 中国ソーラーパネル大手
ブルームバーグ3月15日
 

中国のソーラーパネル大手サンテック・パワー・ホールディングスがデフォルト(債務不履行)の危機に直面している。

同社は15日が債務返済期日の約5億4100万ドル(約520億円)の転換社債で、支払いを2カ月猶予することに合意していない債券保有者が40%弱に上っていることを明らかにした。中国政府の関係者によると、中国政府がサンテックを支援する可能性は低いという。 

 国家発展改革委員会(NDRC)気候変動対策調査部門の高官、リ・ジュンフェン氏は、中国政府高官は過剰供給を減らし、中国が牽引(けんいん)する同市場の統合を望んでいると述べた。

中国政府はデフォルトは避けたい考えだが、同業界の再編は新政権の課題の一つだ。デフォルトになれば、中国本土に本拠地がある企業の社債で第1号になる。 

 13日付米紙ニューヨーク・タイムズはサンテックの本社がある江蘇省無錫市の無錫市国連発展集団が一部か全体の株式を取得する見込みだと報じている。サンテックは本拠地の無錫市の政府と財務支援の交渉を行っており、救援の可能性が浮上しているが規模は明らかにされていない。 

 米民主党系シンクタンク「アメリカ進歩センター(CAP)」の政治アナリスト、メラニー・ハート氏は「救済が政府系銀行の支援によるものでなければ、規模は小さいものになるだろう。国家開発銀行は政府を代表し、無錫市ではない。北京政府は個別企業の救済より業界全体の発展に関心がある。政府が見放さないとたかをくくらない方がよい」と述べた。 

中国は過去3年にわたり、ソーラーパネル分野で低利融資の継続や迅速な値引きなどを武器にして日本企業やドイツ企業を凌駕(りょうが)。主導権を握り続けた。この間、サンテックをはじめとする中国大手5社の生産能力はそれぞれ倍増。集光型太陽電池の規模も2009年当時の7.7ギガワットから30ギガワットに急拡大した。 

 しかし、パネル価格は供給過剰で世界的に低迷。サンテックは2012年1~3月期に6億4600万ドルの損失を計上して以降、時価総額は72%減少。同社の株価は13日、ニューヨーク市場で約24%安の83セントに値下がりし昨年11月以来の最安値を記録した。 

 ブルームバーグのまとめによると、中国のソーラー大手5社は国家開発銀行が総額432億ドルを融資保証している中国企業12社に入っている。

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2013年3月20日 (水)

TPP なぜ農業は「保護」されねばならないのか

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TPP以降をいやでも考えねばならない時代になりました。だからこそ、今こそなにが「農の価値」なのかはっきりしておかねばなりません。

今後わが日本農業は動乱の時代に入ります。その時、何を私たち農民は守ってきたのか、何が農業の仕事だったのか同胞に対して説明していかねばなりません。

それを皆んな日本人なんだからわかってくれているだろう、という甘えが私たち農業にはありました。

もう甘えは許されません。私たち農民は主張する時がきました。

TPPの関税についての考えは、国境での保護を撤廃しようというのが趣旨であり、国内で保護すること自体は禁止していません 

農業は「保護」されねばなりません。まずこれが大前提です。 

こう書いただけで構造改革論者はアレルギーを起すでしょうが、農業が国の基幹的な国土インフラであるという認識は、洋の東西を問わず共通であり、EUや米国などは強烈な自国農業保護論者ですらあります。

なぜ農業が国土の基幹インフラなのでしょうか。改めてそこから考えていきます。

TPP推進派の中には、私たち農業者を既得権益者と見立てて、なにが恨みなのか知りませんが、日本農業潰せばいい世の中になるとでもいいたげな人が多く見受けられます。

農業関税はコメが778%という突出して高い関税を持っているために勘違いされていますが、野菜など関税わずか3%です。農業分野全体の関税率平均は11.7%で、他の工業製品関税と変わらない水準か、それ以下です。

グローバリストはコメばかり取り上げて、日本農業は国際競争力がないと言い募りますが、衣類の関税が10%ですから、農業はユニクロより強い国際競争と戦っているのです。 

ではコメをなぜ高関税の防壁で守っているのかといえば、水田が日本の自然コントロールの根幹をなしているからです。

新自由主義者は、コメを生産基盤の「水田という存在」が日本自然の中で果たしている機能から切り離して、ただの市場商品としてしか見ていません

ではここで、「水田」が位置する日本の国土はどのような特質があるのか、改めて考えてみましょう。 

我が国は文句なく世界最大の自然災害大国です。毎年襲ってくる大型台風、地震災害、土砂災害、豪雪災害、まるで自然災害の博覧会のような国です。

それは我が国が過酷な自然条件を持っているからです。

南北2千キロ、東西2千キロにおよぶ島々からなる列島であり、その中央部には2千メートル級の脊梁山脈が伸び、平野部は狭く、山岳地域の地質は崩落しやすい風化岩であり、そして河川はそれに沿って急流で海まで下り落ちます。

積雪地域は国土の60%に達し、いったん豪雪となると、たちまち交通機関が麻痺し、ときには今回の北海道のような大規模停電が引き起こされます。

多くある離島は、時化れば食料不足に陥ります。 急病人もヘリで搬送せねばなりません。

そしてご丁寧にも、3つプレートが集合している所に国土があるために、世界の0.25%の地表面積しかないにもかかわらず、マグネチュード7以上の大地震の実に20%が我が国で発生しています。 

これだけの自然災害大国に、なぜ1億3千万人もの国民が文明生活を営めるのかといえば、自然災害に対していくつもの自然をコントロールする防御機構を備えているからです。 

急峻な山から流れ出した急流は、まず山懐の水田に流れ込み、そこでいったん蓄えられて水量と水速のエネルギーを失います。 

いわば水田はミニ・ダムなのです。実際、水田の貯水量は大型ダムに匹敵する容量をもって、日本の自然をコントロールしています。 

もし水田がなければ、「まるで滝のようだ」と明治期に来日したヨーロッパ人を驚かせた我が国の河川は暴れ川となって、大水のたびに洪水をもたらすでしょう。最近でも四国の四万十川の大洪水は記憶に新しい所です。

小さな川は全国各地にありますが、大水の時には急流となります。その時に溢れた水は、いったん水田が吸収し溜め込みます。

また干ばつの時には、水田に付属するため池から水を放出して凌ぎます。これが水田のダム調節機能です。 

歴史的に我が国ほど治水に知恵と力を出してきた国はありません。川を治めた者のみが為政者たる資格があるとされるのが我が国の伝統でした。 

武田信玄は優れた民政家でしたが、彼が作った霞堤は暴れ川を見事に水田に引き入れて手なずけています。

その伝統はいまでも受け継がれています。それが水田と林業による治水です。

崩落しやすい山肌はいったん裸山にすると崩落して住宅地を襲い、河川を埋めて大水を引き起します。

それをさせないために日本人は山を守り、水田を守ってきたのです。

歴史的に農業と林業は一体のものでした。 しかし林業は輸入材に押されて衰退の一途をたどり、水田農業がかろうじて残っているたけです。

ですから、水田が放棄されていった地域では、「水田ダム」がないために水害が頻発していきます。

このように水田はコメ作り以外にも、治水、環境整備、景観保全、生物多様性の確保などの多機能を備えており 、それらを含めると単にコメの価格だけで計れない大きな意味での自然災害から国土を保全する働きをしているのです。

もし水田がなければ、我が国はこの過酷な自然から国民を守るために、多大な防災コストをかけねばならなかったでしょう。

外国のコメが仮に我が国のコメより安価だとしても、輸入米には我が国の国土と国民を守ることはできません。いったん水田を失くしてしまえば、1年間で雑草が身の丈ほど伸び、2年で田んぼの底が抜けます。

そして、機械はさびつき、世界一と言われる米作りの技術も5年以内に失われていきます。そうなってしまえば、もはや我が国はもう一度コメを作ろうとしてもその基盤も人もなくなるのです。

私たちは日本の米作りを守ろうとしています。それは高い安いというだけのお金の価値で置き換えることのできない「自然をコントロールする」という価値が農業の中にあるからです。

2013年3月19日 (火)

公害大陸中国その9  黄砂と共に飛んで来る中国核実験の放射性物質

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石川県で発行されている「北国新聞」によれば、今年の春、1980年代の中国の核実験からのものだと思われるセシウムが微量ですが、見つかったそうです。

「調査期間中に計8回検出されたセシウムの総量は、1平方メートル当たり0.67ベク レルだった。このうち約70%に当たる0.46ベクレルは、金沢市内で大規模な黄砂が観測された10年3月21日を含む4日間に検出された。」
(「北国新聞」)

この放射線量は、3.11で降下した金沢市内の放射線量を桁違いで上回っています。 

このセシウム137は、中国からの黄砂によってPM2.5と共に運ばれてきたものです。
(資料1 硫酸エアロゾル予想分布図)
 

「石川県保健環境センターは平成21年4月から1年間、金沢市のセンター屋上で10日ごとに降下物を採取し、セシウム137の量を測定した。その結果、計8回検出さたセシウムの総量の7割は、大規模な黄砂があった22年3月の4日間に集中していたことが分かった。
また、福井県の環境監視センターが22年3、4月に試料採取を行ったところ、黄砂が観測された週(3月16日~23日)のみ、セシウムが見つかっている。」
(資料2 産経新聞3月18日)

この放射性セシウムを日本列島に持ち込んだのは、例の黄砂です。例のというのは、あの黄砂は大陸からのありとあらゆる汚染物質のメッセンジャーだからです。Photo_2中国西部のタクラマカン砂漠、中国北部から内モンコルにかけてのゴビ砂漠、中国中央部の黄土高原などの三大黄砂発生地域は拡大を続け、今や黄河の源流域を枯渇させ、北京近郊にまで達する勢いです。 

「一昨年、中国国家林業局は、2009年時点で、砂漠化した土地が国土の18・03%に当たる173万平方キロメートルと発表した。砂漠化の可能性がある土地は260万平方キロメートル。」(同)

「山本教授は、中国やモンゴルの土壌に含まれるセシウムが砂漠化の進行で黄砂と ともに飛来している」としています。(資料3 北国新聞)

この放射性物質の飛来は、今に始まったことではなく、米ソ中の大気圏内核実験があった1960年代から始まっており、チェルノブイリ事故のあった1986年にピークに達しています。(下図参照)

下の図をご覧ください。折れ線が核実験の回数。黒いドットが今話題のセシウム137、白いドットはなんとストロンチウム90です。

放出される放射性物質もケタが違います。ビキニ環礁の核実験で放出された放射性物質は、甲状腺の内部被曝に換算するとこうなります。

・ビキニ環礁・・・・・200グレイ
・チェルノブイリ・・・50グレイ
・福島浪江町・・・・・5ミリグレイ
 

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Photo_3            図 NAVERより引用させていただきました。ありかとうございます。 

タクラマカン砂漠に位置するタリム盆地ロプノール17年前まで中国の核実験場でした。 

「ウイグル人の暮らすウイグル地区のロプノールで、中国当局は1964年10月16日から1996年に渡って、0・2メガトン級~4メガトン級の地表、空中、地下で延べ46回、総爆発エネルギー20メガトンの核爆発実験を行っている。うち、放射線災害として最も危険な地表核爆発を含む大気圏実験を、少なくとも1980年までに21回実施した。」
(高田純 「中国の核実験」)
 

この中国核実験場が、他国と大きく異なる点は、少数民族居住地周辺で核実験が行われたことです。核実験場は最も近い居住エリアから10キロしか離れていませんでした。

しかもにわかには信じがたいことには、ウイグル族が核爆発を目視できる距離で、なおかつ地表すれすれで爆発させるという方法をとっています。 住民の中には、核爆発の火球を目撃したケースもあります。

これは地上に組み上げたフレームの上で核爆発させるものです。通常の地下核実験は、岩盤を数㎞に渡って何度か曲げてくり抜き、トンネルを数カ所鉛で遮蔽して実施されるために少ない量の放射性物質しか飛散しません。

しかしこの地表核実験においては大部分の放射性物質は封じ込められず、原爆投下と同程度の被害を周辺地域に及ぼします。 

というのは、地表すれすれで核実験をすると火球の中の核分裂生成物が高温に熱せられて溶解しながら地表の土と結びつくので、核分裂生成物が大量に発生するからです。

これにより大気圏内に放出される大量の光線、熱波、そして放射性物質は巻き上げられた大量の砂に混ざってエアゾル化(粉塵化)されて周囲に降り注ぎました。 

その上、中国政府は周辺住民に対して、いかなる避難措置はおろか事前通告も行わず抜き打ちで強行したのです。自国民に対して無警告で原爆投下をするに等しい蛮行です。

「中国がかつて実施した最大規模の核実験は4メガトンに達したが、旧ソ連の核実験を上回った10倍の威力だった。実験により大量に落下した「核の砂」と放射汚染は周辺住民計19万人の命を一瞬にして奪った。放射線汚染の影響を受けた面積は東京都の136倍に相当した。」(同)

このようなもっとも危険なタイプの核実験を実に21回くりかえしたのです。これは人類史上空前の犯罪的大量被曝事件であったと考えられます。

ウイグル人医師であるアニワル氏は、こう述べています。

「中国では被曝者が団体を作ることも抗議デモをすることも許されないし、国家から治療費も出ない。中国政府は『核汚染はない』と公言し、被害状況を隠蔽しているので、海外の援助支援団体も入れない。原爆症患者が30年以上も放置されたままなのだ。」(Wikipedi)

 国連科学委員会の報告によれば、北緯30度から50度の範囲に降下したストロンチウム90は平方メートル当たり2000~3000bqだそうです。
(高田純 「世界の放射線被曝地調査」)

被害者総数は19万人から75万人とされていますが、未だ闇の中です。それは中国政府に自国の暗部である被害統計を取る意思がそもそもないこと、そして残念なことに国際世論がなぜか無関心でであったことによります。

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 図 NAVERより引用させていただきました。ありかとうございます。

この放射性物質は土壌中に残留し続け、モンゴル自治区中央部での調査によれば地表下2㎝のセシウム137が、日本平均値(6.8bq/㎏)の10倍を越えることがわかりました。(上図参照)

これはタクラマカン砂漠の降雨量がきわめて少ないためで、その為に降雨の多い日本では雨水に流出するものがそのまま半減期を過ぎても多く残留したものと思われます。

調査データを見ると、軒並み1000~3000bq/㎡です。もっとも多いチェンシェンバイでは3707bq/㎡にも達します。ちなみに福島事故以後に定められた日本の暫定規制値は5000bq/㎡でした。

そしてこの放射性物質は、核実験が終了して30年の後も、中国人と私たちの頭上に降り注いでいるのです。

この放射性物質を乗せた黄砂は、九州を中心に飛来しています。瓦礫反対運動の盛んだった北九州市にも降下しています。

この状況に対していままで執拗に低線量被曝の危険性を訴えてきた脱原発派からの発言はありません。皮肉を言っているわけではなく、この問題に対しても声を上げられることを望みます。

※関連記事 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-cd1f.html

※中国の核実験資料(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%A0%B8%E5%AE%9F%E9%A8%93

■写真 ブルーの蘭です。異様に美しい花です。

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資料1 硫酸塩エアロゾル(大気汚染物質)の予想分布
(高度0-1km平均値)

http://www-cfors.nies.go.jp/~cfors/index-j.htmlPhoto

■資料2 PM2・5だけじゃない 黄砂は中国核実験の「セシウム137」を運んでくる
産経新聞 2013.3.18  

中国で深刻化している微小粒子状物質「PM2・5」が日本にも飛来している。拡散は黄砂が原因とされているが、黄砂が運ぶのはPM2・5だけではない。過去に中国、米国、ロシアなどが行った核実験の放射性物質が西日本を中心に観測され、犯人は黄砂だ。中国ではダイキン、シャープなど日系企業の空気清浄機が売れているというが、室内だけきれいにしても仕方がない。この環境汚染は、国家レベルでなければ解決できないことを中国に認識してもらいたい。 

黄砂はセシウムを運ぶ 

 石川県、福井県が行っている環境調査で、核実験でしか発生しない「セシウム137」が微量ながら見つかっている。量が半分になる半減期が30年と長い。 

 石川県保健環境センターは平成21年4月から1年間、金沢市のセンター屋上で10日ごとに降下物を採取し、セシウム137の量を測定した。その結果、計8回検出さたセシウムの総量の7割は、大規模な黄砂があった22年3月の4日間に集中していたことが分かった。 

 また、福井県の環境監視センターが22年3、4月に試料採取を行ったところ、黄砂が観測された週(3月16日~23日)のみ、セシウムが見つかっている。 

 核実験は米国が1945年にニューメキシコ州の砂漠で行った実験で始まったが、米、英、ロシアの3国は1963年以降の地上で実験をやめた。だが、中国が国際世論の圧力で地上実験を中止したのは1980年だった。 

砂漠化進行が理由 

 近年、日本でのセシウム検出例は減ってはいるが、2000年以降、スポット的に観測されるセシウムと黄砂現象の関連が注目されている。これにはゴビ、タクラマカンなどの砂漠拡大や、国土の砂漠化による黄砂量の増大が関係しているという。 

 一昨年、中国国家林業局は、2009年時点で、砂漠化した土地が国土の18・03%に当たる173万平方キロメートルと発表した。砂漠化の可能性がある土地は260万平方キロメートル。近年、植林などで回復の兆しもあるが、依然として深刻だ。 

 中国も環境問題の深刻さを早くから認識しており、2006年の環境保護会議で温家宝氏が唱えた「3つの転換」は、いずれも環境保護が経済成長とセットになっていた。 

 昨今の濃霧が渦巻く中国の映像を見る度にゾッとする。ひょっとして“何処吹く風”だったのか。 

国の判断で解決を 

 PM2・5問題以降、中国ではパナソニック、ダイキンなど、日本メーカーの空気清浄機が売れている。価格は高いものの、中国の消費者は自衛に動いているのだ。ただ、室内の空気だけをきれいにしても、黄砂や自動車の排出ガスなどを抑えない限り問題は解決しない。 

 中国メディアの報道にも変化がある 

中国新聞網など複数のインターネットメディアは、「毒霧の都市封鎖で、謝罪する市長がいない」などとする記事を掲載した。国、行政を挙げての対策の必要性は、中国の国民にも重く受け止められているようだ。 

だが、石原伸晃環境相は2日、中国が日本からの技術協力に難色を示していると経過を説明し、中国側の対応を「腰が引けている」と述べた。沖縄県尖閣諸島など各論はあるだろうが、事態は急を要している。中国は人命を守るという1点で判断するべきではないか。 

■資料3 黄砂に乗って微量セシウム 石川県保健環境センター調査「人体に影響なし」
北国新聞
 

大陸由来の放射性セシウムが黄砂とともに日本に運ばれ、春先の石川県内にも降下して いることが、5日までの石川県保健環境センターの調査で分かった。検出されたセシウム は微量で、1980年代以前の核実験で発生したと考えられる。実験から30年以上が経 過していることから、専門家は「健康への影響は極めて小さい」としている。 

 県保健環境センターは2009(平成21)年4月から10年3月にかけ、金沢市太陽が丘の同センター屋上で10日ごとに降下物を採取、濃縮乾燥した上で半導体検出器を使いセシウム137の量を測定した。 

 調査期間中に計8回検出されたセシウムの総量は、1平方メートル当たり0.67ベク レルだった。このうち約70%に当たる0.46ベクレルは、金沢市内で大規模な黄砂が観測された10年3月21日を含む4日間に検出された。 

 4日間の数値を人体が浴びる放射線量に換算すると、1日当たり0.000925マイ クロシーベルトでエックス線検査1回分の放射線量の約6万4800分の1となる。 

 東日本大震災による福島第一原発事故に伴い、県内で3月21日~4月4日に確認され たセシウムと比較すると、1日当たりでは約71倍に当たるが、同センターは人体に影響がある値ではないとしている。 

 金大低レベル放射能実験施設センター長の山本政儀教授によると、黄砂で運ばれてくる セシウムは、アメリカや旧ソ連が80年以前に実施した大気圏内核実験で発生したと推定される。山本教授は、中国やモンゴルの土壌に含まれるセシウムが砂漠化の進行で黄砂と ともに飛来しているとし、「半減期である30年以上が経過しており、直接健康に影響を与える可能性は極めて小さい」と話す。 

 黄砂にはセシウム以外に硫黄、窒素酸化物など大気汚染物質が含まれており、県保健環 境センターは「セシウムをはじめさまざまな物質で長期的なデータを集めていきたい」と している。 

2013年3月18日 (月)

TPP 首相交渉参加を表明をどう見るのか

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青空様。いつも的確なご意見ありがとうございます。ご意見は欄外に全文転載させていただきました。 

私も交渉脱退は可能だと思っていますし、自民党TPP対策委員会でも「脱退の覚悟」という「覚悟」の表現を巡って紛糾したようです。 

ただの「覚悟」でいいんかい、という訳で、結局、「聖域(死活的利益)の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする。」というかなり強い表現で落ち着きました。(欄外に全文) 

この程度決議文に書き込まないと、どのツラ下げて選挙区に戻るんだという議員諸公も多かったと思われます。

皆さん今週の金曜日夜には一斉に選挙区に帰って、「ぜったいに5品目6条件は死守します!」と農業団体に連呼し続けているでしょう。 

一方安倍首相の交渉参加についての発言は、以下の部分だけに首相らしい国土を愛する息づかいを感じますが、後は通産官僚の作文にすぎません。(欄外に全文) 

「日本には世界に誇るべき国柄があります。息を飲むほど美しい田園風景。日本には、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら五穀豊穣を祈る伝統があります。自助自立を基本としながら、不幸にして誰かが病に倒れれば村の人たちがみんなで助け合う農村文化。その中から生まれた世界に誇る国民皆保険制度を基礎とした社会保障制度。これらの国柄を私は断固として守ります。」

問題は安倍氏が「言ったこと」ではなく、その「タイミング」の読み方なのです。

実は私は、どうしてかくも遅れた時期に、かくも不利な、かくも大変な多国間条約に参加するのか皆目理解ができませんでした。

青空様がおっしゃるように、「目的は米国の牽制と条約の無効化で、やや腹黒い狙いからですが。官僚勢も似たことを狙っている」のでしょうか。 

う~ん、非常にうがったご意見です。茂木経済産業業大臣や石破幹事長などはそう思っていないでしょうが、一部の政府首脳の裏シナリオにはそれがあるかもしれません。 

まず、状況的には崖っぷち一歩手前の判断時期でした。安倍政権が今のような高支持率をバックにしていなければ、このような正面突破は不可能だったでしょう。 

民主党が丸2年以上かけてなにひとつまとまらず、党分裂の原因となったことを忘れてはいけません。それを安倍首相は、わずか政権奪取後3カ月でなし遂げたわけです。

私ですら安倍首相は、7月の参院選以降まで「決断」時期を引っ張ると考えていました。聞くところによれば、菅官房長官や麻生副総理もその腹だったようで、首相から15日の表明を告げられて両人とも一瞬絶句したそうです。

それどころか、読売新聞によれば、2月のオバマ大統領との首脳会談の席上で安倍氏は「2月28日に交渉参加を発表します」と言って、大統領側のほうが「ちょっ、ちょっと待って。2週間国内調整に時間をくれ」とまで言ったと伝えられます。

一部のブログで米国が自動車産業の反対で日本参加を拒否しているという説が流れていますが、もし米国がそれを理由に日本を拒絶したならば、いままでの日本に対する圧力はなんだったんだということになり、メンツ丸潰れ、外交的失点はあちらの方です。

とまれこの勢いで、安倍首相は米国に対して事実上の「聖域あり」を呑ましてしまったわけで、そう考えると共同記者会見のオバマ大統領の浮かない顔はそのせいだったかもしれません。

JA全農としては大っぴらには言えないでしょうが、7月参院選までは絶対に「決断」はありえないと読んでいたはずです。

各地の1人区の与党議員はTPP反対で当選したのは事実であり、「違約」で地獄行きと責めたてられるわけで、したがって無理と思っていたからです。

そして引っ張れば引っ張るほど、9月の交渉参加国会合には間に合わず、「タイムアウト、残念でございました、またの機会に」、ということになると踏んでいたはずです。

このような読みに対して、安倍首相は周到でした。今回の安倍首相の「決断」は、時間がかかっているのです。

民主党のように政権をとってからのにわか勉強ではありません。屈辱的な下野時代から、当時与党だった民主党など比較にならない時間をかけたTPP問題の絞り込みをしていました。

この過程でTPPの問題点を徹底して煮詰めており、それが衆院選前に示されたTPP6条件に結実しています。

これが与党となった今、単なる国内向けだけではない交渉条件として諸外国に提示できる最大の材料になりました。 

この6条件があってこそ17日党大会において「党一丸参院決戦突入」体制が作れるのであって、それなくしては民主党の二の舞となったことでしょう。

このような党内手続きを踏んだ後は、安倍首相はみずから言い訳にまわる必要はありません。

JA全農会長には挨拶くらいはするでしょうが、個々の選挙区の説得は反TPPを掲げた農村議員が自ら行うのです。

そして、これは単なる与党内部の文書ではなく、選挙公約であった以上、それを信頼した「国民との約束」でもあります。

この「国民との約束」を背景にして、既交渉参加国に対しては、このような確固としたわが国の原理原則があり、背水の陣で交渉に来ている以上、「わが国がゴネれば決まらないぞ、困るのはそっちだろう、WTOみたいにしたいのか」とタンカのひとつも切れる攻勢にでられます。 

これが、青空さんがおっしゃるような対外的な「交渉の条件づけ」ができての国際交渉なのです。いままでのわが国がよくやった原則なき国際交渉と本質的に違うのはその点です。 

皮肉にも多国間交渉というのは、一国でも合意できなければ御破算ですから、わが国は国益が守れるカードがテーブルに出るまで12月交渉終結を背景にしてゴネまくっていればいいのです。

強いのは日本であり、弱いのは既交渉参加国なのです。

それでなおも「遅れてきたくせに」と既得権を既交渉国の一部が振りまわすのなら、「ではさようなら。日本を入れないで環太平洋自由貿易圏が出来るものなら作ってみてください」とイヤミのひとことも言って粛々と席を蹴っていただきたいものです。

ただし、この交渉の場はあと1回こっきりだと言われています。相当に腹を据えてかからなければなりません。WTOと日米経済交渉を合わせた以上に困難な交渉となるのは必至です。

ひるがえってJA全農は、もはや組合員を動員して圧力をかける方針には限界があることを知るべきでしょう。

9月に最終決戦が控えている以上、TPPに関しては野党で今なお明確に反対しているのは生活と社民、共産しかないわけですから、与党内反TPP派にがんばってもらってTPP交渉を後押しするしかないわけです。

安倍首相はこのJA全農も含めて、国民の圧倒的多数が「がんばって交渉してこい」という追い風を期待していたのです。

国が分裂して国際交渉に出かけて行くのと、一丸となるのは難しいとしても相当部分までもががんばれと送り出す交渉は天と地の違いがあります

この前回とはうって変わったような安倍首相のしたたかさと強さが、TPP交渉に生かされることを望みます。

■写真 カンボジアで道路を吹っ飛んでいく元気なガキたち。こういうしっかりとした目をもった子供が大好きです。

 

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 

■青空様コメント 

青空です。 

TPP交渉参加を決めたようですね。
自民党が米国のいいなりにならないかを心配する向きはありますが、私は以下の4点があるのでやや楽観しています。
 

①TPPは参加交渉をすれば途中離脱はできず、致命的な打撃を受けるので、交渉参加イコール参加ととらえる方も多くいますが、条約の交渉途中の離脱権利はウィーン条約でも定められた権利です。
事実日本は従来から条約批准していないものは相当数あります。
日中韓印欧米加豪他との各種貿易協定も交渉開始から既に十年超経っていますが、外交信任失墜という事象は見あたりません。
米国も京都議定書はじめ交渉離脱、批准拒否は日常茶飯事です。
 

②多国籍条約であるため全参加国の同意承認が必要であること。
いかなる条約も署名、同意成立、そしてそれぞれの国会承認がなければ実効力を持ちませんし、国内承認を得られなかった条約承認は無効にできると国際条約は定めています。当然無効なので損害賠償は発生しません。交渉途中の文書の公開は4年間の非開示義務がありますが、最終文書と条約内容は開示されます。国会での承認が必要なので当然ですが。
日本に取り不利な内容であればそのとき国会否認することは可能ですし、自民党の支持母体、票田を考えれば不利な内容での承認は困難でしょう。
 

③関税が主財源になっている途上国にとり日本の参加は税収の激減に繋がるため考えの修正が必要になっています。それぞれの国会を通せるかは甚だ疑問です。
TPPは関税と補助金の撤廃を唱っているため米国内の年間1.5兆円の農業補助金も存続の危機になります。
米国国内調整は困難を極めるでしょう。米国の目論見は圧倒的な経済力格差で中小国に対して有利な交渉を進めることでした。しかし日本規模の経済体の参加は調整を複雑にさせ難易度を飛躍的に引き上げます。
 

私は日本参加によりこのTPPは第二のWTOとなるとみています。つまり永久に交渉を継続し決まらないという形です。 

④安倍首相が米国で日本のスタンスをあらかじめ提示したことです。関税撤廃に聖域を設けることが日本の条件と対外発表をしました。これにより日本は条件にそぐわない場合途中離脱することが容易になりました。
つまり途中離脱の大義名分を得る形を提示しておいたのです。途中離脱による外交信頼度の減退を防ぐことが目的でしょう。
 

というように考察しています。
私は本条約は参加反対派ですが交渉参加は賛成派です。
目的は米国の牽制と条約の無効化で、やや腹黒い狙いからですが。官僚勢も似たことを狙っているのではと期待していますが。
 

【安倍総理冒頭発言】 

 本日、TPP/環太平洋パートナーシップ協定に向けた交渉に参加する決断をいたしました。その旨、交渉参加国に通知をいたします。 

 国論を二分するこの問題について、私自身、数多くの様々な御意見を承ってまいりました。そうした御意見を十分に吟味した上で、本日の決断に至りました。なぜ私が参加するという判断をしたのか、そのことを国民の皆様に御説明をいたします。 

 今、地球表面の3分の1を占め、世界最大の海である太平洋がTPPにより、一つの巨大な経済圏の内海になろうとしています。TPP交渉には、太平洋を取り囲む11か国が参加をしています。TPPが目指すものは、太平洋を自由に、モノやサービス、投資などが行き交う海とすることです。世界経済の約3分の1を占める大きな経済圏が生まれつつあります。 

 いまだ占領下にあった昭和24年。焼け野原を前に、戦後最初の通商白書はこう訴えました。「通商の振興なくしては、経済の自立は望み得べくもない」。その決意の下に、我が国は自由貿易体制の下で、繁栄をつかむ道を選択したのであります。1955年、アジアの中でいち早く、世界の自由貿易を推進するGATTに加入しました。輸出を拡大し、日本経済は20年間で20倍もの驚くべき成長を遂げました。1968年には、アメリカに次ぐ、世界第2位の経済大国となりました。 

 そして今、日本は大きな壁にぶつかっています。少子高齢化。長引くデフレ。我が国もいつしか内向き志向が強まってしまったのではないでしょうか。その間に、世界の国々は、海外の成長を取り込むべく、開放経済へとダイナミックに舵を切っています。アメリカと欧州は、お互いの経済連携協定の交渉に向けて動き出しました。韓国もアメリカやEUと自由貿易協定を結ぶなど、アジアの新興国も次々と開放経済へと転換をしています。日本だけが内向きになってしまったら、成長の可能性もありません。企業もそんな日本に投資することはないでしょう。優秀な人材も集まりません。 

 TPPはアジア・太平洋の「未来の繁栄」を約束する枠組みです。
関税撤廃した場合の経済効果については、今後、省庁ばらばらではなく、政府一体で取り組んでいくための一つの土台として試算を行いました。全ての関税をゼロとした前提を置いた場合でも、我が国経済には、全体としてプラスの効果が見込まれています。
 

 この試算では、農林水産物の生産は減少することを見込んでいます。しかしこれは、関税は全て即時撤廃し、国内対策は前提としないという極めて単純化された仮定での計算によるものです。実際には、今後の交渉によって我が国のセンシティブ品目への特別な配慮など、あらゆる努力により、悪影響を最小限にとどめることは当然のことです。
今回の試算に含まれなかったプラスの効果も想定されます。世界経済の3分の1を占める経済圏と連結することによる投資の活性化などの効果も、更に吟味をしていく必要があります。
 

 詳細については、TPPに関する総合調整を担当させることにした甘利大臣から後ほど説明させます。 

 TPPの意義は、我が国への経済効果だけにとどまりません。日本が同盟国である米国とともに、新しい経済圏をつくります。そして、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が加わります。こうした国々と共に、アジア太平洋地域における新たなルールをつくり上げていくことは、日本の国益となるだけではなくて、必ずや世界に繁栄をもたらすものと確信をしております。 

 さらに、共通の経済秩序の下に、こうした国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にとっても、また、アジア・太平洋地域の安定にも大きく寄与することは間違いありません。 

 日本と米国という二つの経済大国が参画してつくられる新たな経済秩序は、単にTPPの中だけのルールにはとどまらないでしょう。その先にある東アジア地域包括的経済連携/RCEPや、もっと大きな構想であるアジア太平洋自由貿易圏/FTAAPにおいて、ルールづくりのたたき台となるはずです。 

 今がラストチャンスです。この機会を逃すということは、すなわち、日本が世界のルールづくりから取り残されることにほかなりません。「TPPがアジア・太平洋の世紀の幕開けとなった」。後世の歴史家はそう評価するに違いありません。アジア太平洋の世紀。その中心に日本は存在しなければなりません。TPPへの交渉参加はまさに国家百年の計であると私は信じます。 

 残念ながら、TPP交渉は既に開始から2年が経過しています。既に合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がそれをひっくり返すことが難しいのは、厳然たる事実です。残されている時間は決して長くありません。だからこそ、1日も早く交渉に参加しなければならないと私は考えました。 

 日本は世界第3位の経済大国です。一旦交渉に参加すれば必ず重要なプレイヤーとして、新たなルールづくりをリードしていくことができると私は確信をしております。 

 一方で、TPPに様々な懸念を抱く方々がいらっしゃるのは当然です。だからこそ先の衆議院選挙で、私たち自由民主党は、「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉参加に反対する」と明確にしました。そのほかにも国民皆保険制度を守るなど五つの判断基準を掲げています。私たちは国民との約束は必ず守ります。そのため、先般オバマ大統領と直接会談し、TPPは聖域なき関税撤廃を前提としないことを確認いたしました。そのほかの五つの判断基準についても交渉の中でしっかり守っていく決意です。 

 交渉力を駆使し、我が国として守るべきものは守り、攻めるものは攻めていきます。国益にかなう最善の道を追求してまいります。 

 最も大切な国益とは何か。日本には世界に誇るべき国柄があります。息を飲むほど美しい田園風景。日本には、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら五穀豊穣を祈る伝統があります。自助自立を基本としながら、不幸にして誰かが病に倒れれば村の人たちがみんなで助け合う農村文化。その中から生まれた世界に誇る国民皆保険制度を基礎とした社会保障制度。これらの国柄を私は断固として守ります。 

 基幹的農業従事者の平均年齢は現在66歳です。20年間で10歳ほど上がりました。今の農業の姿は若い人たちの心を残念ながら惹き付けているとは言えません。耕作放棄地はこの20年間で約2倍に増えました。今や埼玉県全体とほぼ同じ規模です。このまま放置すれば、農村を守り、美しいふるさとを守ることはできません。これらはTPPに参加していない今でも既に目の前で起きている現実です。若者たちが将来に夢を持てるような強くて豊かな農業、農村を取り戻さなければなりません。 

 日本には四季の移ろいの中できめ細やかに育てられた農産物があります。豊かになりつつある世界において、おいしくて安全な日本の農産物の人気が高まることは間違いありません。 

 大分県特産の甘い日田梨は、台湾に向けて現地産の5倍という高い値段にもかかわらず、輸出されています。北海道では雪国の特徴を活かしたお米で、輸出を5年間で8倍に増やした例もあります。攻めの農業政策により農林水産業の競争力を高め、輸出拡大を進めることで成長産業にしてまいります。そのためにもTPPはピンチではなく、むしろ大きなチャンスであります。 

 その一方で、中山間地などの条件不利地域に対する施策を、更に充実させることも当然のことです。東日本大震災からの復興への配慮も欠かせません。 

 農家の皆さん、TPPに参加すると日本の農業は崩壊してしまうのではないか、そういう切実な不安の声を、これまで数多く伺ってきました。私は、皆さんの不安や懸念をしっかり心に刻んで交渉に臨んでまいります。あらゆる努力によって、日本の「農」を守り、「食」を守ることをここにお約束をします。 

 関税自主権を失ってしまうのではないかという指摘もあります。しかし、TPPは全ての参加国が交渉結果に基づいて関税を削減するものであって、日本だけが一方的に関税を削減するものではありません。そのほかにも様々な懸念の声を耳にします。交渉を通じ、こうした御意見にもしっかり対応していきます。そのことを御理解いただくためにも、国民の皆様には、今後状況の進展に応じて、丁寧に情報提供していくことをお約束させていただきます。 

 その上で、私たちが本当に恐れるべきは、過度の恐れをもって何もしないことではないでしょうか。前進することをためらう気持ち、それ自身です。私たちの次の世代、そのまた次の世代に、将来に希望を持てる「強い日本」を残していくために、共に前に進もうではありませんか。 

 本日、私が決断したのは交渉への参加に過ぎません。まさに入口に立ったに過ぎないのであります。国益をかけた交渉はこれからです。私はお約束をします。日本の主権は断固として守り、交渉を通じて国益を踏まえて、最善の道を実現します。
 私からは、以上であります。
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0315kaiken.html 

TPP対策に関する決議全文 

自民党のTPP対策委員会は3月13日夜、「TPP対策に関する決議」(本文参照)を採択した。各グループ会合のとりまとめ報告とともに、14日夕の外交・経済連携本部で正式の了承する。 

平成25年3月13日
自由民主党外交・経済連携本部
TPP対策委員会
 

 本年2月22日の日米首脳会談の結果、安倍総理とオバマ大統領は、「環太平洋パートナーシップ」(TPP)交渉に関する共同声明を発表し、「聖域なき関税撤廃」が前提でないことが文書で確認された。これは、安倍新政権による日本外交の成果と考えられる。 

 これを受けて、自由民主党外交・経済連携本部に置かれたTPP対策委員会は、政府並びに関係諸団体等から意見聴取を行うとともに、分野毎の検証作業などを通じ、全党挙げての集中的な議論を行った。これらの結果として、以下の通り決議し、安倍総理に対し、申し入れを行うものである。 

1.先の総選挙において自由民主党は、TPP交渉参加に関し6項目の約束を国民に対して行って選挙戦に臨み、政権復帰を果たした。これらの公約は、国民との直接の約束であり、党として必ず守らなければならない。 

 このため、政府は、国民生活に対する影響を明らかにし、守るべき国益を如何にして守るかについて明確な方針と十分な情報を国民に速やかに提示しなければならない。また、本年2月27日に自由民主党外交・経済連携調査会で採択した「TPP交渉参加に関する決議」を遵守し、その実現に向けた戦略的方針を確立するべきである。 

2.TPP交渉参加については、国民の間に様々な不安の声が存在している。
 (1)もし、聖域の確保が達成できなければ、食料自給率の低下、農地の荒廃、担い手の減少などにより、国民に安定的に食糧を供給する食料安全保障が確保できなくなるのではないか、離島や農山漁村地域などにおける社会基盤が維持できなくなるのではないか、また、美しい故郷と国土を維持する多面的機能が維持できなくなるのではないか、との声が大きい。
 

 (2)国民の生活に欠かせない医療分野でも、これまで営々と築き上げてきた国民皆保険制度が損なわれるのではないか、また食の分野においては、食品添加物や遺伝子組換え食品などに関する規制緩和によって食の安全・安心が脅かされるのではないか、との強い懸念が示されている。 

 (3)さらに、我が国の主権を損なうようなISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)が導入されるのではないか、政府調達、金融サービス等について、我が国の特性を踏まえることなく、国際調和の名の下に変節を余儀なくされるのではないか、といった様々な懸念が示されている。 

3.一方、今TPP交渉に参加しなければ、今後、我が国の人口減少・高齢化が一層進む中、アジア太平洋地域の成長を十分に取り込むことができず、我が国がこれまで築き上げてきた国民生活の水準、国際社会における地位を保つことはできなくなるのではないか、との懸念する声も大きい。 

また、世界第3位の経済大国である我が国が、アジア太平洋地域における貿易や投資等の経済ルール作りに参加しないことは、この地域における政治的・経済的リーダーシップの低下につながるとの声もある。
 さらに、我が国にとって日米関係が外交の基軸であることにかんがみ、今後のアジア太平洋地域における経済連携を進めるに当たっては、TPP交渉に参加して、米国との一層の経済的連携を深めるとともに、守るべき国益の議論のみでなく、交渉において攻めるべき点を攻めていくべき、との大きな声もある。
 

4.このように、国民の意見が大きく分かれる中で、我が国がTPP交渉参加の是非を判断することは、容易ではない。安倍総理におかれては、岐路に立つ日本の経済・社会が今後進むべき方向を選択するという高い見地から判断願いたい。なかんずく、上記のような様々な意見を十分に尊重され、我が国の自然的・地理的あるいは歴史的・社会的条件、我が国を取り巻く国際環境、経済再生の重要性等を踏まえ、国家百年の計に基づく大きな決断をしていただきたい。 

5.なお、仮に交渉参加を決断する場合において、TPPが国民生活に大きな影響を及ぼし得ることから、以下の諸点を確実に実行すべきである。 

 この場合において、特に、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要5品目等やこれまで営々と築き上げてきた国民皆保険制度などの聖域(死活的利益)の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする。 

 (1)政府は、別紙の党内5グループ並びに21作業分野に対する検討チームの取りまとめの内容を踏まえ、2国間交渉等にも留意しつつ、その主張が交渉結果にしっかりと反映されるよう全力を挙げ、交渉の進展に応じ、適時に十分な情報提供を行うこと。 

 (2)これまで、国内の各産業や各制度については、省庁ごとに個別に交渉することが多かったが、TPP交渉においては、強力な交渉チームを作り、また閣内の連携を強く保つことにより、政府一丸となって国益を十分に実現していくこと。 

[結び]
 仮にTPP交渉に参加する場合は、国益がしっかり守られ、結果として日本の繁栄につながるよう、政府と与党が一体となって交渉を進めるべく、自由民主党外交・経済連携本部内のTPP対策委員会と政府は緊密に連携すべきである。
 また、各国の主張を冷静に見極め、我が国としての主張を効果的に展開していくために、党としても国会議員による議員外交を、戦略的、かつ、積極的に展開してまいる所存である。

以上
(2013.03.14)
 

■毎日新聞3月15日 

安倍晋三首相は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加をにらみ、農地の大規模化や農産物を加工して販売する6次産業化(農商工連携)で農業を立て直す戦略を描いている。しかし、現在の農産品の高関税を永続的に維持できる展望は薄いうえ、関税と補助金で保護してきた農業を「攻め」の成長産業に育てる時間的猶予は最長でも10年前後しかない。近い将来、保護農政の象徴とみられてきたコメの生産調整(減反)の廃止論議などが焦点になるのは必至だ。【川口雅浩】

【首相が会見で】TPP:安倍首相、交渉参加を正式表明 官邸で記者会見

 ◇減反見直し必至

 「世界に日本の特産品を広げていけるよう、従来の発想を超えた大胆な対策を具体化してほしい」。安倍首相は2月の日本経済再生本部で、林芳正農相に指示した。

 農水省がこれまで示した対策は、耕作放棄地の解消や農地の集約による大規模化や、食品の生産、加工、販売を一貫して手掛ける農業事業者向けの官民ファンドの支援などだ。官民ファンドを設立し、国内消費と輸出拡大を目指す。しかし、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「減反など国内農業の構造改革なくして本格的な輸出振興は不可能」と話し、減反政策の見直しは必至と指摘する。

 コメの減反は、政府が翌年のコメの需給を予想し、作付面積の削減を各農家に指示する政策。戦後の増産で60年代後半からコメの生産が過剰となったため、価格の下落を防いで農家の経営を安定させる目的があった。

 しかし、減反に対しては「零細農家を温存させ、農地の集積や大規模化が進まなかった」との批判が強い。高関税で海外から安価なコメが流入しないことを前提にしており、関税が撤廃されれば調整そのものが成り立たなくなる。

 自民党のTPP対策委員会は交渉参加の条件として、コメのほか牛・豚肉、麦、乳製品、砂糖を重要5品目として関税を死守するよう訴えているが、TPPに反対してきた農水省の内部でさえ「5品目すべての関税を残せる可能性は低い」(幹部)とみている。

 仮にこれらの分野で関税が撤廃された場合、政府は生産農家の所得補償(直接支払い)を行う方針。鈴木宣弘東大教授(農業経済学)は、TPPで関税がゼロになった場合、コメだけで1兆7000億円の所得補償が必要になると試算。他の重要品目を含めると、「毎年4兆円の財政負担が必要になる」と主張している。厳しい財政事情の中で財源をどう確保するのか、新たな議論を呼ぶのは確実だ。

 ◇農業の貿易自由化◇

 戦後、日本は農水産物の市場開放を進めてきた。55年に関税貿易一般協定(GATT)に加盟し、大豆、鶏肉、バナナなどの輸入を自由化。日米では88年に牛肉・オレンジの自由化が決定し、食卓に安価な米国産牛肉が並ぶようになった。86年からはGATTの多角的貿易交渉(ラウンド)がウルグアイで始まり、コメ以外の小麦、乳製品などの輸入制限品目の関税化を決定。
 

政府は国内農家に与える影響を緩和するため、94~01年に総事業費6兆100億円の農業対策を実施したが、公共事業が過半を占め、「ムダ遣い」と批判を浴びた。その後、世界貿易機関(WTO)で農業交渉が始まったが、各国の利害が対立し、08年に交渉が決裂した。

2013年3月16日 (土)

週末写真館

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北浦は霞ヶ浦の一部ですが、旧北浦村の私たちは、「西浦(いわゆる霞ヶ浦)が北浦の一部なのだ」と思っています。

Google Earthで見る左手に見える蝶が羽根を伸ばしたような湖が西浦で、右側のたおやかに伸びたのが北浦です。

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こぶりながら、実に姿がいい湖だと私たち北浦地元は思うのですが、西浦の連中は、「デコボコ芋」みたいだと言いやがる(笑)。

この二つの湖は合わさって外浪逆浦(そとなみさかうら)に注ぎ、これが第3の霞ヶ浦です。ここから北利根川、鰐川、常陸川を経て、海に注ぎます。

これら一帯の水系がわが愛する「霞ヶ浦」なのです。

その北浦湖畔のシンボルがこの揚水風車です。何度写しても飽きません。惜しむらくには、回っているのを見たことがありませんが。

2013年3月15日 (金)

米国紙、TPP後発参加国でも再交渉可能だと報じる

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さてさて、TPPについて米国情報と日本の情報が真逆になってまいりました。

例の東京新聞のスクープ記事と、まったく逆なものが米国の「ハフィントンポスト」(3月10日)で出たようです。

まずは、私も記事で取り上げた東京新聞のものです。

「TPP参加に極秘条件 後発国、再交渉できず
 環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加問題で、二〇一一年十一月に後れて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、米国など既に交渉を始めていた九カ国から「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」などと、極めて不利な追加条件を承諾した上で参加を認められていた。複数の外交関係筋への取材で七日分かった。」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013030702000237.ht...

ここでは明確に、新規参加国は再交渉の余地なしということになっています。

一方、新情報として上念司氏がツイッターで米国の「ハフィントンポスト」の記事を紹介しています。

面白いことに東京新聞もハフィントンポストも、立場は一緒で反グローバリズムを掲げるリベラル紙です。

ハフィントンポストはこう書いています。

「一般教書演説でオバマ大統領はTPP交渉の締結を宣言した。オバマ政権はTPPを国務長官の管轄としても、アメリカ通商省ロン カークを通して押し進めた。

太平洋沿岸諸国との自由貿易地域をつくる初めての話し合いであるとおおやけにされているが、すでに15ラウンドの交渉がおこなわれている。11の国には、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカとベトナムだ。日本と中国は現在TPP交渉には参加していないが、「ドッキング条項」がTPP草案に加えられ、協定は日本と中国にも後日、不利益をもたらすことなく参加が許されるだろう。
http://www.huffingtonpost.com/michele-nashhoff/the-transpacific-partners_b_2766729.html?utm_hp_ref=tw(原文は欄外)

米国紙はパブリック・シチズンなどと同じく、「オバマ大統領は、グローバリズムに媚びて、自国の労働者の雇用や利益をそっちのけにして、TPPを包括的グローバルな貿易協定にするべく、ドッキング条約を作って、日本や中国に甘い条件を出している」と怒っています。

おっとと、であります。米国の利益損失はわが国の得というのが冷厳な国際貿易の掟ですので、同じ反グローバリズムである私たちと彼らとはこで大きく読み方がことなってしまいます。

だって、「ドッキング条項」がなにかよく分かりませんが(汗)、ハフィントン・ポストが言うとおりなら、日本は後発交渉参加国であったとしても再交渉がバリバリに出来てしまうではありませんか!

さて藪の中になってまいりました。ある意味、これは推進派のいうのも一部正しくて、「参加してみないと中身は分からない」のも事実かもしれません。

■写真 TPP参加国でもあるベトナムのメコンデルタの熱帯果樹です。右のド派手なのがバラゴンフルーツといいますが、案外味は素直に美味しい。
左はいうまでもなくバナナですが、長い品種と違って味が濃厚です。ウチナンチューなら「島バナナ」と呼ぶでしょうね。

       ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

The Trans-Pacific Partnership Would Destroy our National Sovereignty
In his State of the Union address, President Obama declared in his intent to complete negotiations for a Trans-Pacific Partnership (TPP). The Obama administration has pursued the TPP through the offices of U.S. Trade Representative Ron Kirk instead of under the auspices of the Department of State.
This was the first time negotiations to create a free trade zone with Pacific Rim countries were made public although 15 rounds have been concluded.
Eleven nations are participating: Australia, Brunei, Canada, Chile, Malaysia, Mexico, New Zealand, Peru, Singapore, the United States and Vietnam. Although Japan and China are not presently participating in TPP negotiations, "docking provisions" being written into the TPP draft agreement would permit either Japan or China to join the TPP at a later date without suffering any disadvantage.

2013年3月14日 (木)

TPP交渉 席を蹴る覚悟が自民党政府におありか?

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この15日に安倍首相がTPP参加を表明するのではないかと、取り沙汰されているようです。 

石破幹事長の「自民党は民主党のような醜態をさらしたいのか!決めるまでは徹底的に議論する、しかし決めたからには一致してこれを支えるというのが自民党のあるべき姿だ!」という一喝に、どうも組織的抵抗は終焉しつつあるようです。 

まぁ、あの顔でそう言われたらびびるわな。(苦笑)という訳で、そうとうな確率で交渉参加という未来が見えて参りました。 

たぶん政府は、「あの6条件を守る努力は十分にする」というような言い方で突っ切ると思われます。 

ただし、これまた石破氏が言うように、「交渉だから絶対とは言えない」というただし書きをつけることでしょう。 

さて一方、米国やオーストラリアなどTPP11カ国は、シンガポールで16回目の拡大交渉会合を開き、13日に閉幕しました。  

たいしたことは決まらなかったようですが、やはり交渉筋によると、焦点となっている農産品や工業製品の関税撤廃の例外扱いについてはなかなかまとまらず、次回5月15日からのペルー会合に持ち越されたようです。

日本の交渉参加問題にからめて、安倍晋三首相が米国と文書を取り交わした「例外品目」の設定に対し、一部の国から懸念が寄せられたようです。 

これらの「懸念諸国」(たぶんNZやオージーでしょうが)は、日本が個々の参加国に対して外交ルートでアプローチして根回しや調査活動をしていることに対しても不信感を持っているようです。 

一方、TPPが米国主導になっていることに対して反発する諸国もあり、日本が加わることで自国の農産品や工業製品の重要品目を守りたいとする諸国もあるようです。

思いの外TPP交渉参加国は利害対立を起こしているようで、一枚岩でないことが救いです。

まぁ、このていどのもたつきぶりで、シンガポールの首席交渉官が「交渉の進展はあった」というのですから、一番もめそうな乳製品、牛肉、穀類、砂糖、自動車関税などの関税はまだ決まっていないと思っていいのではないでしょうか。

そうでなければ、米国が首脳の共同声明を合意するはずがありません。

やると決まれば、早くこの交渉に参加しておかないとヤバイという自民党首脳の気分も分からないではありません。

もっともやるという理由は、中国包囲網形成以外にまったく思いつきませんが。

事ここに至って、私は自民党首脳にこれだけは聞いておきたいことがあります。それは医療、保険、農業などの個別具体のことではありません。

それについてはかなり詳細に議論がTPP対策委員会でもなされています。

私が聞きたいのはただ一点。、

本当にわが国の国益を損なうと判断した場合、すなわち自民党公約6条件に違約する可能性が交渉において発生した場合、交渉から敢然として離脱しますね。」

もし国益に一カ条でも反したら交渉を打ち切る。11カ国からクソバカ扱いされようとも、席を蹴る、その覚悟が自民党政府におありでしょうか?

■写真 梅が満開です。見上げる空に筑波山。

2013年3月13日 (水)

名護漁協 普天間移設の埋め立て同意  「基地反対」と振興予算のパラドックスとは

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辺野古の漁業権を持つ名護漁協が埋め立てに同意しました。投票数は賛成88、反対2だったそうです。
全員一致といっていい数字です。

賛成した組合員は、

普天間基地をそのまま宜野湾市に置くのは危険だ。沖縄全体を考えて、どこが安全かといった場合に辺野古のほうがいいと思った。安全を考えれば、軍用機を飛ばすのは海の上のほうがいい」と話していたそうです。

あまりに常識的な意見で、かえってびっくりするほどです。

かつて伊波洋一宜野湾前市長は、普天間基地の危険性をくりかえし訴えながら、辺野古への移設には頑として反対していました。

なぜなら、「日米安保に反対だから」だそうです。それが普天間基地の永久固定化と同義語だと百も承知しておきながら、そう言えてしまう地方自治体の首長とは、一体なんなのだろうと不思議に思ったものです。

伊波氏と同じ反基地・辺野古移設反対を掲げて当選したの稲嶺進名護市長はこう述べたそうです。 

こんなにたくさんの人たちが、会員の殆どに近い人が同意に賛成ということが出たというのは、大変残念であるなというと同時に寂しく、悲しい、そういう思いです」。 

稲嶺市長の出身は、辺野古の隣村の旧久志村です。彼は当然、東部海岸の開発の遅れからくる経済的貧困を自分の身で知りえていたはずです。

もし「寂しい」というのならば、辺野古の貧しさに無力であった市長の自分に対して言うべきであり、辺野古の人々をまったく説得できなかった己に対して「悲しい」というべきです。 

あるマスコミ関係者がこの名護漁協を、「金まみれ」というようなニュアンスで批判していました。

もし「金まみれ」と言うならば、このグラフを見てください。これは沖縄振興事業予算の推移を表しています。面白いことに気づきませんか、山形の曲線のピークが平成10年(1998年)にあります。

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                  (図 日経新聞元那覇支局長・大久保潤氏作成)

平成10年(1998年)が4713億円とピークとなって、徐々に減ってきており、現在は2000億~3000億円規模になってきています。 

この1998年時の沖縄県知事は、太田昌秀氏です。98年は2期目最後の年です。氏はバリバリの革新として良きにつけ悪しきにつけ、存在感がこれほどまでに濃厚な知事は見たことがありません。 

そして皮肉にも、この反戦反基地のシンボル・太田知事在任中が突出して巨額の本土からの税金が流れ込んでいるのがわかります。 

反基地を掲げて当選した反戦知事がしたことは、基地の見返りの増額だったわけで、基地を恒常化させるための「アメ」である振興資金を取れば取るほど米軍基地は居座り続ける道理のはずですが、それを恬として恥じることなく受けとっています。

いや、そのことこそが太田知事の殊勲で、これこそが彼の「政治力」として沖縄政界で評価されたことなのです。

また太田知事末期の96年に普天間移設問題が起きており、97年に名護市が受入れを表明しています。橋本首相とかけあったのは他でもない彼です。

太田氏は不満だったようですが、太田知事の任期中に辺野古移設の大枠が出来たことは事実です。それが故に、その見返りとして98年に沖縄振興事業予算がピークを迎えたのです。

本土政府は、渋る県知事を「なだめる」べく大枚をはたいたということになります。

この一連の経過によって、沖縄県は渋れば渋るほど本土政府から振興予算を取れると勘違いしてしまいました。

こうして生まれたのが、沖縄にとって「基地反対」こそが、バーゲニング・パワー(交渉力)という弱者のしたたかさだったのです。

さて、この振興予算は、本土復帰した1972年から始まり、2008年度までの総額は、実に9兆4056億円という途方もない額に達します。

これは政府援助としては最大だと言われる中国に対するODAが、2005年度までに3兆3千億円ですから、沖縄県への「援助」は実に一国規模の3倍以上に達しています。 

これとはまた別枠で、基地に対する防衛施設庁がらみの軍用地代や地元交付金があります。地代だけで年間900億超に達します。

その他にも、全国一の手厚い社会資本整備、公共投資、泡盛やガソリンなどの軽減措置など十重二十重に沖縄県は優遇されてきました。 

国民新党幹事長であり、かつ沖縄県大手建設会社「大米建設」の副社長であった下地幹郎前衆議院議員はそれをやや偽悪的にこう言っています。

「基地というムチに対する振興策というアメを主体的に受け入れてきたのは沖縄県当局であり、名護市当局だ。アメをもらったということは、(辺野古)移設実現に向けて努力するというメッセージを日米両政府に送っていることになる。」 

このような基地をカードにした「主体的にアメを欲しがる」体質が、今やアメなくしては生きられないような補助金中毒体質に変化しています。 

本土からいくら税金を注がれてもありがたいとはまったく思わない。むしろ足りない、もっと寄こせとすら思う。その権利が自分たちにはあるのだとなぜか信じきっている、それが当たり前になってしまいました。

いったん貰うことが「権利」だと思ったら、その理屈づけは多彩です。

ある時は「唯一の地上戦」、ある時は「長きに渡った異民族支配」、ある時は「日本一の基地負担」、そして今は「オスプレイ」、「中国との国境の島」・・・。種は尽きない。

この「種」をがなくなったら大変だと思っているのが沖縄県です。もういいかげんにしたらどうですか。もう償いは十分受けたのではありませんか

むしろこのような「沖縄の心」を言い立てれば言い立てるほど、沖縄が自らの足で立つことから遠のいていくのではないですか。

さて、この辺野古漁港がある北部の地域を空からグーグル・アースでご覧ください。山また山です。辺野古などは、集落は険しい山と海岸に挟まれて陸にしがみつくようにしてポツンとあるにすぎません。

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                            Google Earth
私はかつてこのような北部山中で農業をしていました。だからリアルに分かります。
北部においては、キャンプ・シュアブ、キャンプ・ハンセン、そして北部訓練場の三基地で、県内基地の三分の二を占めています。
航空基地は中部にあり、海兵隊の陸上基地は北部にあるという構図です。この北部こそ忘れられたもうひとつの基地密集地帯であり、そのことを多くの本土の人間、いや沖縄県民ですら忘れています。

基地公害のない県中心地の南部、航空基地が集中しながらも大都市近郊では開発が進む中部、そして鬱蒼たるジャングルに覆われて発展が進まない北部、それぞれに基地に対する思いが違って当然です。

この北部、ヤンバル東海岸に生きることは、基地もまた好むと好まざるとに関わらず、大事な「地域資源」です。基地すらも糧にして生きていくしかないのです。

本土政府からの各種の振興予算は、等しくすべての自治体に分配されます。他の県内の自治体は、「金にころんだユダ」呼ばわりされる名護漁民たちの犠牲の上に、それがあることを忘れないほうがいいと思います。

スプレイ反対運動に現れたような「オール沖縄」は幻想にすぎず、これがリアルな沖縄なのだと私は思います。

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名護漁協 普天間移設の埋め立て同意
NHK 3月11日
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沖縄県のアメリカ軍普天間基地の移設問題で、移設予定地に漁業権を持つ地元の漁業協同組合は11日、臨時総会を開き、埋め立てへの同意を決めました。

ただ漁協側は、漁業補償を巡る協議がまとまらないかぎり、同意書は提出しない構えで、政府は、漁協側との協議も踏まえて、沖縄県に埋め立て申請を行う時期を判断することにしています。

沖縄県のアメリカ軍普天間基地の移設予定地になっている名護市辺野古の沿岸部に漁業権を持つ名護漁協は、埋め立てに同意するかどうかを組合員に諮るため、11日に臨時総会を開きました。

そして無記名による投票の結果、委任状を含め、出席した組合員90人のうち88人が賛成、2人が反対で、3分の2以上が賛成の意思を示したことから、漁協として埋め立てに同意することを決めました。

そのうえで、漁業補償を巡る国との協議は古波蔵廣組合長ら理事会に一任しました。
これを受けて今後、漁業補償を巡る協議が本格化する見通しですが、漁協側は、協議がまとまらないかぎり、同意書を提出しない姿勢を示しています。

政府は、漁協の同意書がなくても沖縄県に埋め立て申請を行うことは可能だとしていますが、地元の理解を得ながら手続きを進めることにしており、漁協側との協議も踏まえて、申請の時期を判断することにしています。

知事「漁協の考え聞きたい」 

沖縄県の仲井真知事は、訪問先の総務省で記者団に対し、アメリカ軍普天間基地の移設予定地に漁業権を持つ名護漁協が埋め立てに同意したことについて、「名護漁協は、前から移設にノーではなかった。漁協としての考えがあると思うので、一度話を聞いてみたい。いずれ、法律に基づく埋め立て申請を国が出してくることが想像できるが、県としては、結論を出すには小一年かかるという話なので、手続きを踏んで判断したい」と述べました。 

また、仲井真知事は、安倍総理大臣が、11日の衆議院予算委員会で、沖縄県が求めている普天間基地の県外への移設は難しいという考えを示したことについて、「安倍総理は、どこならやさしいと思っているのか。辺野古沖への移設は、いろんな歴史がありすぎて、時間がかかるようになってしまっており、普天間基地を実質的に固定化することと変わらない」と述べました。 

名護漁協の古波蔵廣組合長は、総会のあと、記者団に対し、「移設予定地は、もともとアメリカ軍の訓練で自由に漁ができないうえ、移設計画はいくら反対しても国策で進められており、結果的に一番損をするのは漁業者だ。安倍総理大臣も『県外移設は困難だ』と述べており、いよいよ移設は進むと組合員も思っている。組合員が後悔しないように国は補償してもらいたいし、納得がいく補償額でなければ同意書は出さない」と話していました。 

政府 今月末にも埋立申請の方向で調整 HK3月12日 4時15分

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政府は、沖縄県のアメリカ軍普天間基地の移設問題を巡って、移設予定地になっている地元の漁業協同組合が埋め立てへの同意を決めたことなども踏まえ、アメリカ政府との信頼関係を崩さないためにも手続きを進める必要があるとして、今月末にも沖縄県に埋め立てを申請する方向で最終調整に入りました。 

沖縄県のアメリカ軍普天間基地の移設予定地になっている名護市辺野古の沿岸部に漁業権を持つ名護漁業協同組合は、防衛省からの要請を受けて11日に臨時総会を開き、沿岸部の埋め立てへの同意を決めました。

これについて、沖縄県の仲井真知事は記者団に対し、「名護漁協は、前から移設に『ノー』ではなかった。漁協としての考えがあると思うので、一度、話を聞いてみたい」と述べました。

漁協側は、漁業補償を巡る国との協議がまとまらない限り同意書は提出しない構えですが、政府内からは、外務省幹部が、「漁協の同意は移設に向けたよい動きだ」と述べるなど、歓迎する意見が出ています。 

政府は、先の日米首脳会談で、普天間基地の移設を早期に進めていく考えを伝えたことも踏まえ、アメリカ政府との信頼関係を崩さないためにも移設に向けた手続きを進める必要があるとして、今月末にも沖縄県に対して、移設の前提となる辺野古沿岸部の埋め立てを申請する方向で最終調整に入りました。 

ただ、沖縄県内には根強い反対論があることから、政府としては、地元の理解を得る努力を可能なかぎり進めたいとして、沖縄側が求めている嘉手納基地より南にあるアメリカ軍施設の返還についても、アメリカ政府との間で今月中にも返還計画を策定したいとしています。 

政府が、この時期の申請で調整に入ったのは、来年1月にも名護市長選挙が行われることから、移設問題が選挙に与える影響をできるだけ抑えたいというねらいがあるという見方も出ています。 

また、組合員の男性は、「普天間基地をそのまま宜野湾市に置くのは危険だ。沖縄全体を考えて、どこが安全かといった場合に辺野古のほうがいいと思った。安全を考えれば、軍用機を飛ばすのは海の上のほうがいい」と話していました。 

また、別の組合員の男性は、「普天間基地の移設に向けた本格的な動きが始まったと思った。辺野古へ基地が来ることに不安がないといえばうそになるが、同意はみんなで決めたことなので、自分としては納得している」と話していました。 

一方、名護市の稲嶺進市長は、名護漁協が移設計画に伴う埋め立てに同意したことについて、「組合員の多くが同意に賛成したことは残念であると同時に、寂しく、悲しい。政府は今後も移設計画を進めるだろうが、仮に手続きが進んだとしても実際に事が前に進むことにはつながらない」と述べ、移設計画に反対する考えを改めて強調しました。 

名護漁協 埋め立てに同意
琉球朝日放送
 

日米両政府が普天間基地の移設先とする名護市辺野古沖の漁業権を持つ名護漁協は11日、臨時総会を開き、辺野古沿岸部の埋め立てに同意する議案を賛成多数で可決しました。 

臨時総会には名護漁協の正組合員78人が出席したほか、13人が委任状を提出しました。この中では辺野古沿岸部の埋め立てに同意する議案の賛否についてマルバツ方式で投票が行われ、その結果、88対2で可決されました。 

また、漁業補償交渉については漁協の役員らで作る交渉委員会や理事会に一任することが決まりました。 

参加した組合員は「塩水飲んで働いているんだから、もう本当に食べないと。孫のこと思って賛成するんだから」「これはもう自分1人の意見では嫌とも言わない、はいとも言わない。これはもう組合の意見を聞かないとね」と総会後に話していました。 

名護漁協の古波蔵広組合長は「一任されたことは大変重い責任を感じていますので、ああそうかということで座っていられる立場じゃないので」「漁民が後悔しないようにやっていきたい」と話しました。 

また、名護市の稲嶺市長は「こんなにたくさんの人たちが、会員の殆どに近い人が同意に賛成ということが出たというのは、大変残念であるなというと同時に寂しく、悲しい、そういう思いです」と述べました。 

名護漁協では漁業補償額がまとまるまで国に同意書を提出しない方針ですが、国は29日にも県に埋め立て申請を提出する構えで国と漁協との交渉の行方が注目されます。 

辺野古に暫定移設案 普天間飛行場 政府・与党内浮上 「将来は県外」
産経新聞 3月9日 

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題で、同県名護市辺野古の代替施設への移設を「暫定移設」とする案が政府・与党内で浮上していることが8日、分かった。辺野古への移設は「普天間固定化」を回避するため早期の実現を図るが、一時的な移駐とし、将来的には県外移設を検討する。辺野古移設に反対する地元への説得材料としたい考えで、与党議員は非公式に地元への打診を始めた。

 暫定移設案について、政府高官は「地元と交渉していく上で、将来的な県外移設方針を打ち出すことが不可欠だ」と指摘。沖縄の基地問題に精通する自民党幹部も「普天間固定化を避けるための一時的な辺野古移設という論法を前面に掲げるべきだ」と語る。

 政府は、地元の名護市議会が閉会する今月26日以降にも辺野古移設に必要な海面の埋め立てを仲井真弘多(ひろかず)知事に申請する。埋め立てには知事の許可が必要だが、仲井真氏は県外移設を主張しており、現時点では許可する可能性は低いとされる。

 地元の反対姿勢を軟化させるため、政府は平成25年度予算案で県から要望があった沖縄振興について満額回答となる3001億円を計上した。だが、政府・与党内では「振興策だけでは辺野古移設への理解は得られない」(自民党国防関係議員)との指摘が多い。

 このため暫定移設案が浮上。辺野古移設について、普天間問題の原点である「危険性除去」を早期に実現するための「次善の策」と位置付け、将来的な県外移設を検討する方針に転換し、仲井真氏が辺野古移設容認に転じることを促す狙いがある。

 地元にも、辺野古移設が膠着(こうちゃく)したままだと米側も移設を断念し、普天間の固定化が現実味を帯びるとして、一時的な辺野古移設を容認する向きもある。

 暫定移設案への転換には米政府の同意が必要。しかし、中国海空軍が東シナ海で挑発的な軍事行動を活発化させる中、在沖縄海兵隊の県外移転を打診することは米側の不信を招く可能性もあり、慎重な対応が必要となりそうだ。

2013年3月12日 (火)

TPP参加に極秘条件あり!後発国、再交渉できず!

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安倍首相が前のめりになって、あとは「決断」だけという時期になってとんでもない爆弾が炸裂しました。東京新聞のスクープです。(資料1、2、3参照)
 

これを受けて3月8日の衆院予算委員会において、共産党笠井亮議員が追及しました。 

なかなか鋭い舌鋒で、いままで野党の質問を軽く一蹴しできた政府側が初めてたじたじとなった様子がみてとれました。 

私もこの国会中継を聞いていたのですが、岸田外相もその秘密条項の存在を認めています。http://www.dailymotion.com/video/xy1tgl_yyy-yy-yyy-yyyyy-yyyyyyyyyyy-yyyyyyyyyyyyy_news 

う~ん、推進派にとって致命傷になりかねない秘密条項ですね。 

この秘密条項は、日本より後に交渉参加の意志を示したにもかかかわらず、先に参加表明してしまったカナタ、メキシコのNAFTA(北米自由貿易協定)諸国が、先行参加国から「さて、ご参加されたなら、お教えしましょうか」とはかりに突きつけられたものです。 

内容に入る前に、TPP交渉の流れをおさらいしてとかないとよく分かりにくいかもしれません。TPP交渉の時系列はこんな流れです。 

①TPPは、2005年6月3日に、シンガポール、ブルネイ、チリ、、ニージーランドの4か国間で調印し、2006年月28日に発効しました。

これが原参加国による原協定 (original agreement)で、いまの拡大版と区別するために「P4協定」とも呼ばれることがあります。 

②2011年現在このP4協定に、米国、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルーが加盟交渉国として、原加盟国との拡大交渉会合に加わっています。この9か国による拡大交渉は、2011年11月12日に大枠合意に至り、2012最終妥結。 

2012年11月までにさらにカナダとメキシコが参加表明。 

④日本は2011年11月13日、野田首相がオバマ大統領に参加の意向を伝達。 

2013年2月安倍首相は、オバマ大統領の日米首脳会談の結果、「一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められるものではない」という条件でTPP交渉参加することに事実上合意。 

さて、問題は言うまでもなく、P4諸国、あるいはその拡大版のP9諸国に対して、その後の2012年以降に入った後発諸国が不利な条件になることです。 

これは新たに交渉に参加する国に対して3ツの秘密条項を課すというものです。 

①合意済みの部分をそのまま受け入れ、議論を蒸し返さない。
②交渉の進展を遅らせない。
③包括的で高いレベルの貿易自由化を約束する
 

この3条項はカナタとメキシコが去年6月に交渉参加した時点で、既に参加していた9カ国から「念書」(レター)で知らされたものです。 

この「念書」は、念がいったことには極秘とされており、協定発効後4年間秘匿されることは既に、ニュージーランドのTPP首席交渉官の発表で分かっています。 

①の「合意済み部分は蒸し返さない」というのは、「先行して交渉してきた9カ国が合意した条文はすべて丸ごと受け入れなさい2012年以降の参加国には拒否権はありません」ということです。 

これは既に去年6月時点で野田政権も知っていたようですが、国民には黙っていました。 

おそらくカナダ、メキシコ両国に対して外務省ルートで、いかなることが条件となったのか調査していたはずですが、この守秘義務があるために詳細な内容まではわからなかったはずです。 

②の「交渉の進展を遅らせない」ということは、特定の交渉分野について9カ国が既に合意した場合、その合意に従えという意味です。 

既締結国9カ国にとっては、原協定(P4協定)が発効したのが2005年、9カ国の拡大版となって交渉開始が2011年ですから、既に3年から8年の時間が経過しているわけです。 

この8年の交渉の蓄積を、いくら日本が経済規模がデカイからといって、遅れてやってきてちゃぶ台返しされてたまるか、というのが既参加国の言い分でしょう。

意地が悪いようにも聞こえますが、多国間交渉とはそのように各国の利害が錯綜するために、一国の利害だけで押し切れないということです。 

だから難しいわけで、こんな多国間自由貿易で一方的に得をするのはシンガポールやブルネイのような国だけなのです。

ひとことで言えば、入っては見たものの、内容的に日本にヤバイこと、すなわち③の「包括的で高いレベルの貿易自由化」を無条件で約束させられてしまうことになります 

言い換えれば、「交渉力」があろうとなかろうと関係のない決め事があったということになり、おまけになにが決まっているのかが分からず、いったん入ってしまえば日本には拒否権がないのです。 

推進派のみんなの党の江田憲司氏は国会質問で、「今まで外交交渉で交渉途中でノーといって打ち切った事があったでしょう。国益にそぐわなかったら打ち切ればいいのです」と述べていましたが、TPPは「途中でノー」と言えないのが多国間交渉で、それも既に9割9分出来上がっているということをお忘れのようです。 

よく推進派は、今入らないと「交渉のルール作りに入れなくなり、遅れれば遅れるほど不利になる」と言いますが、そんなルールは既参加国だけで勝手に決めてあり、参加の意志を示せば、教えてやるという実に高ピーなものだったわけです。

まさに二重三重に始末におえないシロモノがTPPだったのです。 

私には、こんなお化け屋敷のようなものに入りたいという人の気持ちが理解できません。

別に参加できなくとも、個別の国とFTAなり、EPAなりを締結して行けばいいわけであり、こんな筋が悪い多国間FTAにのぼせ上がる必要はないのです。

米国とも、そんなにやりたければ日米FTA交渉をすればいいのであって、2カ国間交渉なら安倍首相が言っている「聖域なき関税撤廃はない」という合意も活きてくるのです。 

自民党はもう一回頭を冷やして、外国の作ったルール通りになるのか、否かをしっかりと判断したほうがいいでしょう。

■写真 この温かさで梅が満開です。ただし、黄砂もハンパではありません。

 

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■資料1 TPP参加に極秘条件 後発国、再交渉できず"  

環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加問題で、二〇一一年十一月に後れて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、米国など既に交渉を始めていた九カ国から「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、
再交渉は要求できない」などと、極めて不利な追加条件を承諾した上で参加を認められていた。複数の外交関係筋への取材で七日分かった。
 

各国は今年中の交渉妥結を目指しており、日本が後れて参加した場合もカナダなどと同様に交渉権を著しく制限されるのは必至だ。 

関係筋によると、カナダ、メキシコ両政府は交渉条件をのんだ念書(レター)を極秘扱いしている。交渉全体を遅らせないために、
後から参加する国には不利な条件を要求する内容だ。後から入る国は参加表明した後に、先発の国とレターを取り交わす。
 

カナダなどは交渉終結権を手放したことによって、新たなルールづくりの協議で先発九カ国が交渉をまとめようとした際に、拒否権を持てなくなる。  

東京新聞 2013年3月7日 夕刊  

■資料2 TPP後発国に不利条件 首相 説明は後ろ向き
東京新聞3月9日
 

環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加に関連し、後から交渉に参加したカナダとメキシコが著しく不利な交渉条件を求められた問題が、八日の衆院予算委員会で論戦の主要テーマになった。野党側が事実関係の公表を求めたのに対し、安倍晋三首相らは終始、後ろ向きな姿勢。TPPは国民生活を大きく変える可能性のある重要な課題なのに、首相は説明責任を軽視したまま、交渉参加表明に踏み切ろうとしている。 

 日本維新の会の松野頼久氏はこの問題を報じた本紙を片手に「不利な条件で参加しなければいけないのか、カナダやメキシコに確認したのか」と、何度も政府に迫った。 

 問題は、二〇一〇年までにTPP交渉に参加した九カ国が、一一年十一月に参加の意向を表明したカナダとメキシコに対し、すでに合意した条文は後発の参加国は原則として受け入れ、再協議も要求できないなどの不利な条件を提示したというもの。 

 岸田文雄外相は松野氏の質問に「他国のことをコメントする立場にない」と繰り返した。自民党の山本有二委員長が「日本の立場を明確に」と促しても、答弁を変えず、松野氏は「議会として聞いているのに怠慢だ」と憤った。 

 首相も「交渉にまだ参加していないから情報収集が難しい」と釈明したが、これには松野氏が逆襲。松野氏は、自民党が野党時代の二〇一一年十一月、当時の野田政権による交渉参加表明に反対する決議案を衆院に提出した際、「政府の情報収集と国民への説明が不足している」と批判したことを指摘し、現在の首相の姿勢との矛盾を突いた。 

 また、共産党の笠井亮氏は、七日の予算委で「既に交渉に参加している国と、後から参加する国では条件が違うのか」との質問に、首相が「判然としない部分がある」と答えた点を取り上げた。 

 笠井氏が「判然としない内容を把握しているのか」と聞くと、首相は「取っている情報もあれば、輪郭がぼやっとしているものもある」と答弁。笠井氏は「ぼやっとしたものがあって、入ってみたら大変だったら責任問題だ」と情報把握が不十分なまま、近く交渉参加を表明しようとしている首相を批判した。 

 八日の質疑では、岸田氏が、後発組の国には包括的で高いレベルの貿易自由化を約束し、交渉進展も遅らせないなどの要求があることを明らかにした。 

 日本のTPP参加では、コメなどの農産品が関税を撤廃しない「聖域」となるかが焦点。笠井氏は、林芳正農相が岸田氏の説明を知っていたかと聞くと、林氏は「そういう情報を事前に知っていたことはない」と述べた。閣内でTPPに関する情報共有が不十分なことも露呈した。 

 笠井氏は「国民や国会には都合の悪い情報は出さず、国のあり方に関わる重大問題で、拙速に結論を出そうとする。絶対に許されない」と迫った。 

■資料3 極秘条件 6月には把握 TPP 政府公表せず
東京新聞3月8日
 
環太平洋連携協定(TPP)交渉参加をめぐり、先に交渉を始めた米国など九カ国が遅れて交渉参加したカナダとメキシコに交渉権を著しく制限した条件を課した事実に関し、民主党政権時代に日本政府が把握しながら公表しなかったことが新たに分かった。安倍晋三首相は、近く日本の交渉参加を正式表明する方針だが、国民生活に重大な影響が及ぶ可能性が高いTPP問題で、現政権が説明責任を求められるのは確実だ。  

 一連の事実は、複数の日本政府関係者や外交関係筋への取材で明らかになった。 

 TPPをめぐっては、九カ国は二〇一〇年までに交渉入り。九カ国は、一一年十一月に参加の意向を表明したカナダとメキシコ両国に対し、すでに合意した条文は後発の参加国は原則として受け入れ、交渉を打ち切る終結権もなく、再協議も要求できないなどの不利な条件を提示。両国は受け入れ、念書(レター)も交わしたが、極秘扱いにしている。 

 当時の野田政権は、この事実をカナダとメキシコの参加意向表明後に把握。著しく不利なため、両国政府に水面下で「こんな条件を受け入れるのか」と問い合わせたが、両国は受け入れを決めた。両国の交渉参加が決まったのは昨年六月、実際の参加は同十月で、野田政権は昨年六月までには念書の存在を把握していた。 

 野田政権は両国の参加国入り後も、新たな後発国が九カ国の決めたルールを守る義務があるのかを探った。両国と同様、後発国は再協議できないとの情報を得たが、事実関係を詰める前に十二月の衆院選で下野した。 

 先発組と後発組を分けるルールの有無に関し、安倍首相は七日の衆院予算委員会で「判然としない部分もある。参加表明していないから十分に情報が取れていない」と否定しなかった。 

 菅義偉官房長官は記者会見で「わが国としてメキシコ、カナダのTPP交渉国とのやりとりの内容は掌握していない」と述べたが、政府関係者は本紙の取材に「九カ国が合意したものは再協議できないとの話は聞いたことがある」と認めた。 

 カナダとメキシコの事例では、秘密の念書は交渉参加の正式表明後に届く。安倍首相はオバマ米大統領との会談を受け「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった」と強調しているが、野田政権の政務三役経験者は「カナダとメキシコが条件をのんだことで、日本も約束させられる危険性がある」と指摘する。 

 オバマ氏は先月の一般教書演説で、TPP交渉妥結を目指す考えを明言し、米政府は年内決着を目標に掲げた。九カ国が交渉終結権を握れば、年内という限られた期間に、日本はなし崩しに農業など各分野で譲歩を迫られる可能性もある。 

■資料4 TPP「聖域」守れない交渉参加に不当な条件  衆院予算委 笠井議員が基本的質疑
赤旗しんぶん3月9日
 

TPP問題で笠井氏はカナダとメキシコが昨年6月に交渉に加わる際、(1)先行して交渉してきた9カ国が合意した条文はすべて受け入れる(2)将来、ある交渉分野について9カ国が合意した場合、その合意に従う(3)交渉を打ち切る権利は9カ国にあり、遅れて交渉入りした国には認められない―ことが条件とされていると指摘。いくら「聖域を守る」といっても守れなくなると追及しました。

 安倍首相はそうした参加条件については「判然としない」「ぼやっとしている」と答弁しました。 

 笠井氏は「判然としない状況で参加したら大変な状況になる。参加できないはずだ」と指摘。安倍首相は「いま検討しているのは交渉参加の判断であってTPPの締結ではない」と言い訳しました。 

 笠井氏は、政府が昨年3月に公表した文書で「新規交渉参加国に求める共通の条件」として(1)包括的で質の高い協定への約束(2)合意済みの部分をそのまま受け入れ、議論を蒸し返さないこと(3)交渉の進展を遅らせないこと―が明記されているとして「すでに昨年3月の段階で把握していたはずだ」と強調。岸田文雄外相は「引き続き情報収集に努めている」と繰り返すだけでした。 

 笠井氏は、安倍首相が野党時代、「情報公開はほとんどない」などと当時の民主党政権を批判していたことに言及。「その批判は安倍総理にそのまま返ってくる。国民や国会には都合の悪い情報を出さず、国のあり方の根本、国益にかかわる重大問題で拙速に結論を出そうとする。こんな姿勢は許されない」と批判しました。 

林農水相、「後発不利説」真偽確認 TPP参加条件を情報収集
産経新聞3月8日

林芳正農水相は8日の閣議後会見で、昨年6月に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加が決まったカナダとメキシコについて、「どういう条件が付いて参加が認められたか情報収集をしていきたい」と述べた。先行して交渉入りした米国など9カ国が、後発組の両国に不利な条件を提示したという一部報道を受けた措置。

 TPP交渉は平成22年に米国オーストラリアなど8カ国が開始し、同年10月にマレーシアが加わった。カナダ、メキシコ両国は昨年11月から交渉会合に参加しているが、先行参加9カ国の合意した条文の再協議を要求できないなど不利な条件を受け入れることで参加が認められたという一部報道があった。

 これに対し、林農水相は「現段階で把握していない」とした上で、「情報収集をしっかりやっていく。外交関係で公開できないことはあるが、情報公開に努める」と述べた。

2013年3月11日 (月)

東日本大震災を永遠に忘れないために

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2013年3月 9日 (土)

週末写真館

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夜明け前の神秘の時間。湖の朝は不思議な空間です。
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すべての湖で生きる生き物が動き出しているのに、なぜか声をひそめているのです。
いつもは陽気なカイツブリも、巣の周りで子供の身づくろいをしています。
そして陽が登り、またにぎやかな一日が始まります。

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働き者の母親は叫びます。
さぁ、あたしについておいで、朝ご飯だよ。遅れて来たらもうないよ。

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  日が昇る 日が昇る
  昇るよ

  長くて寒い冬が続いたけど
  もう何年もたったような気がするけど
  日が昇る 日が昇る
  昇るよ

  人々の顔に笑顔がもどる
  もう何年もたったような気がするけど
  日が昇る 日が昇る
  昇るよ

  日が 日が 日が 日が昇る
  日が 日が 日が 日が昇る
  日が 日が 日が 日が昇る
  日が 日が 日が 日が昇る

  氷が少しずつ解けていくよ
  もう何年も明るいような気がするよ
  日が昇る 日が昇る
  昇るよ

ジョージ・ハリスン 「ヒア・カム・ザ・サン」

2013年3月 8日 (金)

米国反TPP団体のYouTube 「TPPはドラキュラです。陽にあてれば退治できる」

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米国のTPP情報のリークを報道した米国のニュース番組です。

この団体は、TPP交渉資料のリークを受けたと見えて、全26章中貿易協定はわずか2章のみで、他はすべて外国人投資に「多大な特権を与え、各国政府の権限を奪う」ものとしています。

また、TPPは本質において「企業による世界統治」であり、「国内法の規制も行政手続もTPPにあわせなければならない」という点を指摘しています。

海外投資家が、米国政府に「国内規制で生じた損害の賠償を請求できる」というのは 、ISD(投資者・国家訴訟制度)を指しています。

これは、先進国が知的所有権の保護を目的にして、開発途上国・新興国に対して結ぶものて、日米両国のような関係で締結すべき性格ではありません。

このような国内法を超越し、政府の権限を規制してしまうTPPを、「600人の企業顧問はTPP情報にアクセスできるのに、米国の議員はできない」おかしさを批判しています。

上院貿­易委員会のワイデン委員長もTPP情報を知らなかったというのは驚きでした。

国の法律を規制し、飛び越えることが可能な貿易条約を交渉しているのに、一国の貿易委員会の議長すら内容を知らないという異常さが、TPPの本質をよく現しています。

まったく同感で、わが国でも国会議員にはなんの情報提供もないというのが現状のまま交渉が進行しているのはありえないことです。

特に、この米国団体も言っているように骨子ができた2年間の間にかなりの部分が出来上がっており、この間わが国の民主党政権が一切情報を公開しなかったことは、許せないことです。

「1%が私たちの生存権を奪う」という表現をしていますが、これは、リーマンショック以後に露になった米国の格差社会に対する異議申し立て運動であるオキュパイド・ウォールストリート運動の流れを組む反グローバリズムの考えだと思われます。

できれば、このニュースの画像でも見えるTPP文書の原文を入手したいものです。

かれらと私たちはまったく連絡がありませんが、太平洋の向こうにも同じ考えの人々がいることは心強い限りです。 

「TPPはドラキュラです。陽にあてれば退治できる」とこの団体「パブリック・シチズン」(※)のリーダー・ローリー・ウォラックさんは言っています。

この中で彼女も言っているように、「TPPはセメントのようなものです。いったん固まったらおしまい。(加盟国)全員が賛成しないと変更できない」のです。

まさに言い得て妙です。多国間協定はパズルのようなもの、あいまいな公約で入っていき、「セメントで固められて」出て来るのです。

現在、自民党内で激しく戦わされている「TPP対策チーム」を中心とする議論の中で、問題点をあらかじめ徹底して煮詰めて行かねばなりません。

自民党を支持するしないとにかかわらず、ここが最後の主戦場です。ここから離れれば、あとは政府間協議というブラックボックスに突入してしまいます。

地元選出議員に電話、メール、FAXなどで声を届けましょう。

パブリック・シチズン(Public Citizen )のHP
http://www.citizen.org/Page.aspx?pid=183

※PCのローリー・ウォラック氏の日本での講演や資料がみつかりましたので、後日アップします。非常に面白いです。

                       ~~~~~~ 

米国市民団体がTPP協定に警鐘を鳴らす(字幕) 20120614 

http://www.youtube.com/watch?v=WFY-z1PcjT8 

リーク文書でわかったTPPの正体とは? 表向きは「貿易協定」ですが、実質は企業による世界統治です。 加盟国には例外なく全ての規定が適用され、国内の法も規制も行政­手続きもTPPに合わせなければなりません 

全26章のうち貿易関連は2章のみ、他はみな企業に多大な特権を­与え、各国政府の権限を奪うものです。  

私たちのサイトに掲載したTPP投資条項によれば外国の投資家が­TPP条約を盾に米国政府に民事訴訟を起こし、国内規制が原因で­生じた損害の賠償を請求できるのです。  

米国企業はみな同じ規制を守っているのに、これでは国庫の略奪で­す。 極秘で進行するTPP交渉には議会も不満を申し立てています。  

約600人の企業顧問はTPP情報にアクセスできるのに米国の議­員はできないのですね? こんなひどい内容をそれもリークで知るとは驚きです。

内容がひどいだけでなく、これは「1%」が私たちの生存権を奪う­ツールです。  

交渉は極秘で行われました。 暴露されるまで2年半も水面下で交渉していた。 600人の企業顧問には草案へのアクセス権を与えながら、上院貿­易委員会のワイデン委員長はカヤの外です。

 

2013年3月 7日 (木)

TPP・鈴木会長、ご一緒に「構造改革」いたしましょう!

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スズキの鈴木修会長が2月26日、新製品発表会の席でTPP米国政府が日本独自規格である軽自動車の税制優遇を問題にしていることについて質問され、「TPPと軽は全然関係がなく、何が何だかさっぱりわからない」と答えたそうです。 

私は思わずプッと吹いてしまいました。鈴木会長、そりゃあたりまえじゃないですか。いままで2年間のTPP論争のなにを聞いていたんですか。 

スズキという会社は、まさにジャパン・オリジナルの塊のような会社です。「軽自動車」という他国にはないカテゴリーの車種を生み出したことだけでスゴイと思っています。 

モータリゼーションが遅れて始まったわが国では、国民にできるだけ安く車を買ってもらうために「軽自動車」という排気量の小さな車種に優遇を与えてきました。 

普通車には、年2万9500円以上の自動車税がかかるところを、軽自動車の場合は年7200円、我が家も使っている軽トラに至っては4000円と7分の1程度です。

まさにこれが自動車業界の「国柄」という奴です。

ところが、 これに米国自動車業界の3バカ大将は目をつけたわけです。 

この3バカ大将たちは、この「軽」への優遇を不当として、こんなものがあるからマスタングやシボレーは売れないのだと主張しました。

ならば、自分も同じ「軽」規格の自動車を作ればよさそうなものですが、そうは考えないで悪いのは日本とするところがスゴイ。このあたりのメンタリティは米国と中国はやや似ていますね。 

米国の性格に問題があるのは分かりきっているので、むしろ問題は日本の財界側です。 

鈴木会長、あなたがた財界は、「どうせ、TPPは農業の問題だ。あんな旧弊な部門は一度ぶっ壊してもっと国際競争力のある部門にせにゃならん」と言ってきたじゃないですか。 

まさにブーメランですな(笑)。この二年間、私たちTPP反対論者は、一貫して米国の要求は我田引水ばかりで、自国の輸出拡大のみを目的とし、関税のみならず国内制度そのものがターゲットだと言い続けてきたはずです。 

しかし、財界はそれが自分たちにも向けられて来るとは思わなかったようです。なんとおめでたい。 

米国通商代表部(USTR)の外国貿易障壁報告書には、日本の「自動車市場の閉鎖性」は常連でした。 

米国最大の労組である「米国労働総同盟・産業別労働組合会議(AFL‐CIO)」は、3月3日にTPP反対の声明を出しました。これは傘下の全米自動車労組(UAW)のTPP反対を受けたものです。

米国は日本農業の「障壁」など問題にはしていないのです。 今でもたっぷり小麦、大豆、トウモロコシを売りつけていますからね。

小麦や豚肉、バターなどのややっこしい関税制度は問題視されるでしょうが、コメなどは天王山でもなんでもありません。 

米国のターゲットは、保険、医療、建設、化学などと並んで、衰えたりといえど米国の主力産業である自動車産業なのです。

ですから、「TPPと軽の関係が全然ない」はずがないじゃないですか。こんなことは中坊にも分かります。 

米国には「軽」を作る製造技術がありません。発想そのものがなかったのですからあたりまえです。

シボレーのエンブレムをつけた軽が走っていましたので、あれまと思ったらやはりスズキとの提携品でした(笑)。GMとの提携を解消したので、もう見なくなるかもしれませんが、なかなかの珍品でした。

しかし、「軽」が日本の自動車業界の重要な一角だったのは、ただ安いからではありませんでした。 

燃費がいい、狭い日本の道路事業に適している、取りまわしも楽、奥さん達の車庫入れも簡単という日本の車事情に合っていたからです。

だから、ワゴンRが「優遇」を廃止されたからといって、ではマスタングを買おうとはならないのは日本人なら誰でも分かる道理です。

繰り返しますが、これが「国柄」というもので、誰に文句を言われる筋合いじゃありません。 

しかし、米国人にはそれがわからない。自国の論理のみを押しつけてきます。そのうち「燃費がいい」という日本車の特徴も関税外障壁だと言い出しそうです(笑)。

米国は、自国のテキサスで石油が足元から湧いて出ることに甘えて、石油税がないに等しく、今まで燃費について真面目に考えたことがありませんでした。 

米国自動車協会(AAA)によると、現在1ガロンのレギュラーガソリン価格は3.53ドル(1リットル当たり0.93ドル=約86円)です。わが国より4割前後安いわけです。 

これでも相当に高くなっているそうですから、石油価格が安い米国の自動車エンジンは燃費を改良しようという意欲がないので、いつまでもガソリンを垂れ流して走り続けています。 

逆に、これも米国の「国柄」という奴です。

また自動車の安全基準も同様の問題をもっています。日本政府が義務づけている自動車の安全基準について、米国は今年2月に自国の輸入車に対しては基準を緩めるよう求めました。

よくそんな恥ずかしいことを言うね、と思いますが、しつこいようですが、これが米国の「国柄」だからしかたありません。 

自分の国の国民の安全基準をどう定めようと勝手なはずですから、輸出相手国にとやかくいうことじゃないでしょうに。

これに悪のりして、国交省は、2010年11月に日本の安全・環境基準を国際標準化することを成長戦略の重要な柱の一つとしました。 心底、こいつらバッカじゃないかと本気で思いました。

これと同じ光景は農業分野の遺伝子組み換え農産物(GM)表示でも見られるはずです。米国はそれはしつこくGM表示義務をハズせと要求していますから。

よりよい方向に合わせていこうというのではなく、いちばんクォリティが低いがパワーだけはある奴に合わせろというわけです。

TPPは多国間交渉ですから、安全基準にしても、米国と合わせてしまったら、他の交渉諸国もそれに右へ倣えする仕組みです。

ここでひとつTPP標語、「安全基準、みんなで緩めりゃ怖くない」。

したがって、高い安全基準を持つ国が低い基準の国々と「調和」することになります。これを「国際基準調和」という耳触りのいい表現を使っていますが、まさに「下方への調和」です。 

自動車業界は、TPP参加の急先鋒でした。それは2010年だけで゛自動車産業がTPP交渉参加9カ国に支払った関税の総額が1300億円以上に昇るからです。

うち米国だけで約850億円関税を支払っていましたから、まんざら気持ちはわからないでもありません。

しかし、何度か書いてきているようにTPPて自動車関税などがなくなっても、「たかだか」850億円浮くだけの話なのです。

2013年2月5日、トヨタ自動車は業績予想の修正を発表しました。売上高を5000億円増額して21兆8000億円、税引前利益を1100億円増額して1兆2900億円としました。

決算説明資料によれば、第2四半期決算時点に比べて為替変動による増益が1400億円にもなるそうです。

ところが、この業績予想は1月以降の為替レートをドル84円、ユーロ110円と仮定して算出しています。

現在の為替レートである1ドル94円、1ユーロ125円が、第4四半期における平均為替レートとなれば、ざっと1590億円の増益が期待できるとファイナンスの専門家は見ています。

自動車業界全体で今まで払った関税が1300億、円安水準が1ドル94円ていどでトヨタ1社だけで1590億円!ホンダ、三菱などいれたらどんな額になることやら。

はっきり言って円安でさえあれば、TPPなどやる必要などはなかったのです。

鈴木会長は、今頃しまったと思っているはずです。自動車税制に対する米国の要求は、TPP交渉参加のための入場料でしかありませんものね。

「軽」の優遇税制や、安全規制などを緩めないと本交渉に参加できないのです。

さて、自動車業界の皆様。覚悟してくださいよ、まだ本交渉は始まってもいませんからね。米国と入場チケットの交渉段階なのです。

だから鈴木会長、今になって「軽とTPPはゼンゼン関係ない」といわれても困るのです。

ならば「軽」などという日本だけの「特殊な」規格と「既得権益」にしがみついていないで、グローバルな国際競争力を身につけるために、積極的に「構造改革」してみようではありませんか。その「改革」こそが成長力を生むのです。

残念ながら、わが国は早々に米国の自動車関税の撤廃は諦めてしまったようですが、私たち農業を逆うらみしないで、自動車業界の皆様もご一緒に「国際基準への調和」を致しましょう。

■写真 昨日につづいて野原の欅林です。

 
 

2013年3月 6日 (水)

安倍さん、日和るな!   付録 TPPに関する自民調査会決議・全文

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TPPについての最近のテレビ、新聞の報道ぶりは、「農業改革待ったなし」といったバッカじゃなかろかというかんじです。 

私は今回のTPP交渉で、むしろ農業は「救済」されるのではないかとすら思っています。7月参院選という政治決戦前に、自民党が1人区をすべて敵に回すようなことをするはずがありません。 

コメの輸出は米国精米業者も熱望しているわけではなく、彼らの政治力などタカがしれています。コメの「聖域化」は八分方守られるでしょう。 

「八分」というのは、交渉参加が現実のものとなりそうな状況のなかで、満額回答を求めるのは石破幹事長が言うとおり交渉に入ってしまえば、「約束できない」からです。

私たちはここに至って、コメ58品目のうち、なにを重点的に守るのか、具体的に考えておいたほうがいい。

他の砂糖や乳製品、畜産品なども、米国も同じ品目を重要品目に入れたいわけですから利害が一致します。 

これらについてもコメと同じく細かい条件闘争が始まるでしょう。総論反対という入口論の時期は終わったと思います。

問題はアチラです。皮肉にも私たち農業者が経団連へこう言ってやらねばなりません。

「むしろ大変なのはそちらの方ではないですか。」

日米共同声明が出て、直ぐに三バカの自動車産業ビックスリーが大騒ぎをしました。どうしようもない連中です。
 

連中は、本気かどうか自分たちの車が日本で売れないことを、なにか日本が卑怯な「関税外障壁」で堅く門戸を閉じているせいだとしています(笑)。 

かつての日米交渉で、日本側から「自動車関税はとっくにゼロですが」と言われて以来、あることないこと「関税外」で攻撃してくるようになりました。 

まともな脳味噌だとは思えません。ディラー網も作らないからメンテナンスも不安、第一どこで売っているのかさえ分からないようで、関税外障壁もあったものではありません。 

ドイツ車がわが国市場に完全に食い込んだのは、その緻密なディラー網と、完璧なメンテナンス体制です。それさえあれば、多少高くても日本人は買います。 

米国車は右ハンドル仕様を申し訳程度しか作らず、ヘッドライトや安全基準においてまったく日本市場に対応していません。 

第一、日本の若者が買いたいカッコイイ車がゼンゼンないのに何言ってんだか。 中産階級に買わせたかったら、燃費が30キロ超える車作ってから出直してこい、つうの。

そのような自助努力をとうにあきらめて、軽自動車の優遇税制を見直せとか、安全基準を緩和しろとか、国内の閉鎖的(爆笑)なディーラー制度を改革しろとか、もはやヤクザのいいがかりです。 

そしてジタバタした結果売れなければ、ISD条項を引っ張りだして来るでしょう。

こんなことほんの始まりにすぎません。ともかくオバマ氏は、アメリカは製造業分野の復活を構想しているわけて、そのためにはなにがなんでも輸出を増やしたいわけです。

TPPは、アメリカ議会の承認がないと交渉に参加できません。日本は「入れてもらう」立場なので、ひたすらアメリカの三バカのたわごとのような要求でも受け承るしかない立場です。

今後、TPPは投資協定として、外国人投資家に対して「内国民待遇」を求めてくるでしょう。

とんでもないことで、この拡大解釈をされると、農業分野への外国法人の参入などや、保険などへの参入が激化すると考えられます。

そして日本企業すら、迂回生産で人件費の安いベトナムやマレーシアに工場を移す企業も増えるかもしれません。既にその兆候は現れています。

経団連のボスたちのグローバル企業にとってそれが望みなのでしょうが、一般の国内企業にとってそれがどのようなことになるのか、農業、農業と言っていないで、もっと真剣に工業サイドも考えたほうがいい思います。 

安倍首相が「聖域なき関税撤廃はありえないという公約を守る以上、交渉に参加できない」という大原則をオバマ氏の前でかましたのは素直に評価します。

この部分が、実務者同士のテーブルだけて隠されてしまうと、国民の世論の後押しをしようがないわけです。

私が言いたいのは、「安倍さん、日和るな!」という一語です。

交渉参加するというなら、欄外の自民党外交・経済連携調査会 の決議文に書かれた内容を死守する覚悟で望んで頂きたい。

自民党調査会決議を転載します。整理されていてしっかりとした内容です。この線を守り通してほしいものです。

これらの自民党が選挙で掲げた6原則が実行されるのならば、誤解を呼ぶ表現かもしれませんが、TPPは「無害化」したとも言えます。

自民党は5日に「TPP対策委員会」を立ち上げました。これは安倍首相の直属機関という位置づけです。ここが今後の主戦場となります。

ここでTPPの危険な「芽」は除草しておかねばなりません。そのためには今になって「交渉参加反対」などという硬直した入口論的方針ではなく、具体的に絞り込んだ議論をする必要があります。

それをしないと、いったん外交交渉となれば相手国との関係から、「アンダー・ザ・テーブル」事案が増えていくからです。

さぁ、これからが正念場です。

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

http://ameblo.jp/tpp-tekkai/entry-11479976348.html

本日開催された、自民党の正式な会議体である「外交・経済連携調査会」に、「TPP参加の即時撤回を求める会」所属議員が多数出席し意見表明を行い、長時間にわたる議論の末、下記のとおり決議が採択されました。
 特に「守り抜くべき国益」については、22日に本会として決議した内容が反映されました。

    TPP交渉参加に関する決議
              平成25年2月27日
             自由民主党政務調査会
             外交・経済連携調査会
 

TPPに関する自民調査会決議・全文

自民党外交・経済連携調査会が27日採択した「TPP交渉参加に関する決議」の全文は次の通り。
 1、先の日米首脳会談を受けて、依然としてTPP交渉参加に対して慎重な意見が党内に多く上がっている。
 2、政府は、交渉参加をするかどうか判断するに当たり、自民党における議論をしっかり受け止めるべきである。
 3、その際、守り抜くべき国益を認知し、その上で仮に交渉参加の判断を行う場合は、それらの国益をどう守っていくのか、明確な方針を示すべきである。
 4、守り抜くべき国益は別紙(TPPに関して守り抜きべき国益)の通り確認する。

 ◇TPPに関して守り抜くべき国益
 ▼政権公約に記された6項目関連
 (1)農林水産品における関税=コメ、麦、牛肉、乳製品、砂糖等の農林水産物の重要品目が、引き続き再生産可能となるよう除外または再協議の対象となること
 

 (2)自動車等の安全基準、環境基準、数値目標等=自動車における排ガス規制、安全基準認証、税制、軽自動車優遇等のわが国固有の安全基準、環境基準等を損なわないこと、および自由貿易の理念に反する工業製品の数値目標は受け入れないこと 

 (3)国民皆保険、公的薬価制度=公的な医療給付範囲を維持すること。医療機関経営への営利企業参入、混合診療の全面解禁を許さないこと。公的薬価算定の仕組みを改悪しないこと 

 (4)食の安全安心の基準=残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組み換え食品の表示義務、輸入原材料の原産地表示、BSE(牛海綿状脳症)基準等において、食の安全安心が損なわれないこと 

 (5)ISD(投資者・国家訴訟制度)条項=国の主権を損なうISD条項は合意しないこと 

 (6)政府調達・金融サービス業=政府調達および、かんぽ、郵貯、共済等の金融サービス等の在り方についてはわが国の特性を踏まえること 

 ▼医薬品の特許権、著作権等=薬事政策の阻害につながる医薬品の特許権の保護強化や国際収支の悪化につながる著作権の保護強化等については合意しないこと 

 ▼事務所開設規制、資格相互承認等=弁護士の事務所開設規制、医師・看護師・介護福祉士・エンジニア・建築家・公認会計士・税理士等の資格制度についてわが国の特性を踏まえること 

 ▼漁業補助金等=漁業補助金等における国の政策決定権を維持すること 

 ▼メディア=放送事業における外資規制、新聞・雑誌・書籍の再販制度や宅配についてはわが国の特性を踏まえること 

 ▼公営企業等と民間企業との競争条件=公営企業等と民間企業との競争条件については、JT・NTT・NHK・JRをはじめ、わが国の特性を踏まえること 

(2013/02/27-13:43)

2013年3月 5日 (火)

公害大陸中国その8 環境規制も統計も信用できない国

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1月29日に、中国を覆うスモッグは143万平方キロにも及び、中国国民の8億人までが影響を受けるまでになりました。 

日本大使館では、在留邦人のお母さんたちからの不安を訴える電話が鳴りっぱなしだったそうです。 

そこで2月6日、日本大使館は在北京邦人向け説明会を開き、医務官はこう説明したそうです。 

「(この空気の中で生活し続けることは)壮大な人体実験のような状況です。」 

もはや人が住めない状況だということを言外に言っているわけで、仕事でどうしようもない方以外のご家族は帰国したほうがいいですよ、というわけです。 

このスモッグの原因は、中国科学院スモッグ原因追及・制御チームによれば、このようなことです。

「北京、天津、河北省地域で発生した深刻なスモッグの汚染物質の原因は、車の排気ガス、暖房用ボイラーの排気、飲食店厨房の排気、及び周辺地域の工場地帯・火力発電所などが出す汚染物質が原因である」。 

まぁ、そりゃ改めてこのご大層な名前の機関に言われなくても、誰でもそう思いますよね。 

でも、よく考えるとありゃという気がしてきました。どこがというと、「車の排気ガス」という部分です。 

2008年の北京五輪の前に、中国政府はスモッグで選手がバタバタ倒れたりしたらメンツ丸潰れというので、大規模な空気清浄化方針を打ち出しました。

実際、各国選手団は直前まで日本などで練習していたほど警戒していましたし、冗談か本気か、マラソンはガスマスク装着だななどと言われていたものです。

北京の近郊の工場は操業停止を食らって、首都鉄鋼集団などは五輪前に地方に追いやられる始末でした。 

車の燃料も「北京4」という「ユーロ4」に匹敵する排ガス規制を敷きました。この「北京4」規制になって、ガソリンは硫黄分が50ppm以下の「国4ガソリン」になりました。 

ならばなぜ、今になってこんな「壮大な人体実験」のような状況になるのでしょうか

それはこの「国4ガソリン」は、実は北京や上海などの一部としでしか使用されていないからです。

9割9分の地域ではあいもかわらず旧来の硫黄分たっぷりのガソリンを使っているのはいい方で、ひどい場合は殺虫剤原料のホルマールや、炭酸ジメチルなど安い原料を使ったニセガソリンがバッコしている始末だったのです。 

その「いい方」のガソリンの硫黄分でさえ日本のガソリンのなんと15倍 

日本は当然のこととして「ユーロ4」基準ですが、東京、大阪だけで使用しているわけではないのは言うまでありません。

いくら国が広いからといって都市部だけのガソリンと、地方向けのガソリンが二通りあるとは! 

ましてや大気汚染のかなりの原因であるディーゼル排気ガスについては、改善がされていませんでした。

大都市だけで排ガス規制しても、車は勝手に外部と出入りするのが習性です。というか、その為に作られたわけで、北京という大消費地には大量のトラックが入ってきます。 

これをストップしたら、北京市民は飯が食えなくなります。

北京市長にかつての石原知事のような人がいれば、「入れない」と頑張ったのでしょうが、結局はザルもザル、大ザルだったのです。 

ではなぜ、こんなハンパな規制をしたのでしょうか。それは国のエネルギー政策で石油価格を非常に安くしているからです。 

中国は改革開放経済を軌道に乗せるために、通貨の為替相場を操作して極度に安くしたり、石油価格を抑制する政策を取りました。

このあたりはやはり輸出依存国の韓国もウォン安とエネルギー安という似た国家方針 を持っています。

それが出来るのも、石油企業が国営企業集団だったからです。石油精製製品は、わずか2つの企業集団によって握られている超寡占体制下に置かれています。 

中国天然ガス集団(CNPC)と、中国石油化工集団(シノペック)のふたつです。 

この巨大国営企業集団は、実は政府そのものでもあります。常に、中国政府には「石油閥」と呼ばれるこの2つの国営企業出身の政治家がいます。 

昨年秋には党中央政治局常務委員というトップに、シノペック出身の張高麗氏が送り込まれています。序列は第7位です。

石油国営企業集団は、GDP世界第2位のエネルギー源を完全独占する権益の代わりに、安価な価格で石油精製品を売ってきたわけです。

ですから、「ユーロ4」に準拠する「国4ガソリン」なんてバカ高いコストがつくものを全国販売してたまるか、というわけです。おいおい、国民の健康はどうでもいいのか。

万事この調子で、火力発電所の排気ガスには2010年までに脱硫装置が義務づけられています、と中国政府は外国に説明してきました。

昨年秋のこと、5大発電企業集団はわれわれの脱硫装置は99%稼働していると鼻高々の発表をしました。

ところが後になってこの脱硫装置の4割が稼働していないことがわかったり、査察の時だけ回してみせるというギャグのようなことをしていたことがバレてしまいました。

そもそもこの地方政府の査察なるもの自体が事前から決まったお約束の日にするもので、仮に稼働していなくても地方政府は中央政府への水増し統計のために目こぼししていました。

もちろん中国社会のホルモン物質である賄賂がまかり通っているのは、今さら言うまでもありません。

このように、ガソリンには「ユーロ4」を使っていますよ、火力発電所には2年前までに脱硫装置が義務づけられました、99%稼働していると統計にも出ていますよ、という中国政府の言い分のことごとくがウソ、ないしは、限りなくウソだと言うことになります。

このことは中国国民は百も承知で、米国大使館が公表した北京市2011年12月4日午後7時のAQI(大気汚染指数)が最高値で500を超えたのをネットで見た瞬間、北京市民は幼児を抱えて病院に駆け込んだのです。

ちなみにその時点での北京市環境局の大気汚染指数は193で、「軽度の汚染」という発表でしたが、誰も信じちゃいなかったわけです。

これはPM2.5を計測せずにPM1.0のみを計っていたという杜撰さもあるにせよ、中国という国が骨がらみに持っている隠蔽体質が故の話です。

■写真 湖の夜明けの万華鏡。中国の河川も七色だそうですが、それとは違います。

 

2013年3月 4日 (月)

公害大陸中国その7  足尾、水俣、都市公害が同時噴出

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日本で公害が一番ひどかった時代の東京都の公害防止行政の責任者だった菱田一雄氏は、1980年代に何度も中国を訪れて、環境汚染の実態調査や対策についてアドバイスを続けてきました。

今から既に30年前の当時、菱田氏はこう感想を語っています。
中国の環境汚染は日本の昭和40年代並。対策は昭和30年代並だ。」

昭和30年代(1955~64年)は、日本の公害の激甚期と言われる時期で、「三丁目の夕陽」はスモッグで霞んでいました。

スモッグ注意報が出ると、私たち子供たちはマスクをかけて学校に行ったものです。帰ってマスクを取ると、うっすらと煤塵がついていた記憶があります。

水質汚染、土壌汚染、大気汚染とあらゆるタイプの公害が日本を覆い尽くそうとしていた時期でした。これが 明るい前のめりの時代だった昭和30年代のダークサイドです。

1964年に、宮本憲一氏と庄司光氏によって「恐るべき公害」という本が発表され、日本人は今自分たちが住む列島が急速に病んでいることを知ります。

昭和40年代(1965~74年)には、公害はいっそう深刻になり、規模も拡大するのですが、患者さんたちの闘いとそれをなんとか解決していこうという世論が急速に盛り上がっていきます。

公害病訴訟団の 「怨」と白く抜いた黒旗がたなびくと、見守る私たちは粛然とした気持ちになったものです。

宇井純氏の「公害列島70年代」が出版されたのは1972年、国民に衝撃を与えた有吉佐和子氏の「複合汚染」が朝日新聞に連載されたのは、1974年10月14日から1975年6 月30日までのことでした。

この本によって、今まで自分が何気なく撒いていた農薬が、恐ろしい結果をもたらすことに気がついた農業者が生まれ、その痛切な反省から有機農業が誕生します。

当時一握りだった有機農業者は、今では農業界の一角にしっかりと根を張るまでになりました。

この昭和30年代から40年代にかけてが「4大公害病の時代」でした。 熊本水俣病が1956年、第2水俣病(新潟水俣病)が1964年、四日市ぜんそくが1960年から1972年、そしてイタイタイ病が1910年代から70年代にかけ相次いで発生しました。

全国各地での患者さんたちの必死の訴えが実を結んで、1970年にはその名も「公害国会」といわれる政策転換が行われました。

さて、中国に話を戻しましょう。冒頭に紹介した菱田氏の言葉は、中国の公害の深刻さは質量共に日本の激甚期を上回るのに、その対策は「昭和30年代並」、つまりなにもされていないに等しいと述べているのです。

中国の公害を難しくさせているのは、公害がひとつひとつのカテゴリーの中で解決されることなく、積み重なってもつれあって拡大深化していることです。

たとえば、広東省北江支流域の大宝山鉱山周辺で発生したガンの多発は、日本が19世紀に経験した足尾鉱毒事件に酷似しています。

また沙瑣頴河(さえいが)流域河南省周口市沈丘県の農村部で見られた、消化器系のガン、死産や乳幼児死亡率の急増、先天性進退障害などは、工場排水による4大公害病の水俣病やイタイイタイ病的です。

先だっては上海の揚子江河口付近の米の土壌からとんでもないケタのDDTが検出されました。これは使用禁止農薬で、検出されること自体がありえないことです。

このような農薬が原因の公害も大規模に発生しています。

そして今騒がれているPM2.5は、ディーゼル車などの自動車排気ガス、石炭火力の煤塵が原因である四日市ぜんそくと都市公害の複合です。

それに加えて、近年のダム建設や道路建設による開発公害、リゾート建設公害、14億を越える人口爆発による砂漠化、草原破壊、そして地球規模の気候変動まで加わって、日本がこの百年で経験したありとあらゆる公害すべてが現代中国に存在します。

これが公害専門家をして、「中国は公害のデパート」、あるいは「公害の生きた博物館」といわれる所以です。

このような、足尾などの古典的公害、水俣、イタイタイ病などの工業が原因の公害、そして都市公害、気候変動までが同時噴出する、これが中国の公害の解決をむずかしくさせています。

本においては、公害列島と言われながら、ひとつひとつの公害病を解決をしてきました。不十分であるにせよ、患者を調査し、救済し、公害工場の操業させて、長い時間かけて破壊された環境を再生した歴史があります。

中国では、解決なきままに放置され、積み重なり、絡まりあって更に巨大な複合汚染体を作り出してしまったのです。

それどころか中国政府は、公式には水俣病やイタイイタイ病は「ない」ものとしています。各種の環境法はあるにはあるのですが、責任の所在追及と患者の救済なき法は、魂なき空文でしかありません。

このことについてもう少し続けたいと思います。

■追記 北海道様。。大変な気象状況で、心配しております。ご無事だったでしょうか?

2013年3月 2日 (土)

週末写真館

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私は花鳥風月派なので、ほとんど人物を撮らないのですが、まぁたまには。
上から2枚がカンボジアで、下2枚はべトナムです。
 

いちおう説明しておきますか(笑)上の写真はアンコールワットのスタッフです。アンコールワットの石仏の表情にびっくりするほど似ていています。

ちなみにアンコールワットの踊り子のレリーフは、「黒いビーナス」と呼ばれるとか。

シェリムアップで絵はがきを売っていた少女です。この子たちの上の世代はポルポトによる虐殺で多くが死にました。この恥ずかしそうな笑顔が続くことを心から祈ります。

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サイゴン(ホーチミン市)のカソリックの小学生です。ベトナム男に言わせると、ベトナムは世界3大美人国だそうです。アオザイは未だ現役で、あれほど女性を美しく見せる衣装は稀です。

はメコンデルタで蜂蜜の飲み物を売っていた女性です。アジア共通なのは、女性が働き者で、男共は頭がまったく上がらないことです(涙)。

これらの女の子も結婚したら亭主を尻に敷くのでありましょう。
そうそう、ベトナム男はこうも言っていました。「べトナムは女が強い世界3大国でもある」。

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■明日は定休日です。月曜日にお会いしましょう。

2013年3月 1日 (金)

公害大陸中国その6 中国公害問題の始まり・毛沢東時代

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PM2.5以降、中国の環境汚染は日本でもよく報道されるようになってきました。

するとよく言われる台詞にこんなものがあります。「ああ、日本も高度成長の時はあんなもんだったよ」。 

これはどうやら、つい最近までよく聞いた、「中国って昔の高度成長期の日本と一緒なんだよ」とペアになっているようです。

つまり、高度成長の産物として公害があるということのようです。残念ですが、これは公害という現象に対しても、そして中国の公害に対しての認識としても二重に誤っています。

現実には、中国では、確認されているだけでも40年以上前から水質汚染、土壌汚染などはひんぱんに起きており、日本の専門家はかなりの所まで実態を把握していました。 

ですから、勘違いしてほしくはないのは、ここにきて急速に悪化したわけではありません

それにもかかわらず、PM2.5事件まで日本で中国の公害について真剣に考えられたことはほとんどなかった気がします。 

今までの日本側の見方はせいぜいが、「中国はこのまま経済発展を続ければかつての日本の高度成長期のような公害で苦労するゾ」という近未来形のものだった気がします。 

これは公害についての誤った認識です。公害は決して高度成長期特有のものではないからです。 

たしかに4大公害病は、高度成長期に注目されましたが、4大公害病のひとつ富山イタイイタイ病は、鉱山の亜鉛精錬の過程で出るカドミウムが原因であり、発生地域となった神通川流域は江戸時代から鉱山開発が盛んでした。 

そして1886年には三井金属鉱業(当時三井組)が大規模な鉱山開発を始めており、大正時代からイタイイタイ病から出ていたという記録があります。 1972年のイタイイタイ病判決による公害救済まで実に86年が経過していています。

熊本水俣病も、原因工程の操業は1932年のことで、翌年から発病者が出ました。熊本水俣病は、最初の認定が1956年のことであり、高度成長期以前のことです。 

足尾鉱毒事件も、古河が大規模な銅山開発を始めたのが1885年、翌年から鮎の大量死か見られ、渡良瀬川流域の農民の第1次東京陳情が1897年、田中正造が住む谷中村が遊水池として水没したのが1927年、そして政府が公害対策か不十分であったことを認めたのが1993年でした。 実に108年の月日がたっています。

公害は高度成長とは関係なく、恐ろしく長い時間尺で起きていることがお分かりになると思います。 

公害はいったん発生すれば、その調査、認定、排出停止、法整備、裁判、そしてなにより患者の健康回復、環境再生などに気が遠くなるような時間がかかるのです。 

ですから、公害病は高度成長とは直接関係なく、経済が未発達な状況でも発生しており、それが高度成長で大きく増幅された結果、注目されるようになったのがこの時期なだけなのです。

さて、中国公害にはこの国特有の歴史がありました。 

中国では、毛沢東時代(1949~76年)に極端な重工業偏重政策をとりました。それは毛沢東の「30年以内に英国を追い抜く」という妄想からだけではなく、当時の米ソと政治的な対立関係をもっていたからです。 

この「反帝国主義・反社会帝国主義」という二正面政策のために、中国は国家財政のすべてを軍事的部門につぎ込みました。

「社会帝国主義」とは聞き慣れない言葉ですが、当時の中国がソ連に浴びせた罵倒語です。まぁ、当時の中国は半鎖国状態で、世界中を敵にまわしていたと思って下さい。

いつ自国の体制が壊されるかとビクビクしていて、ハリネズミのようになっていました。当時の中国は、政府の招待でしか入国できませんでした。

今の北朝鮮を巨大にしたようなものだと思えばいいでしょう。ちなみに北朝鮮の「先軍政治」のオリジナルは、この時代の中国です。

そしてとった政策が、原爆の製造であり、200万を越える膨大な軍事力であり、そして軍事に直結する重工業偏重政策だったわけです。 

一般の国と異なるのは、これらの政策が準臨戦体制下で進められたことであり、強固な共産主義体制下に建設されたことです。 

造る製品は市民の服や靴ではなく、戦車や銃でした。すべてを強大な軍事国家を作ることに注いだのです。

「すべて」というのは、お金や労働力だけではなく、環境もそうでした。

重化学工業は、十分な公害対策を施さなければ、もっとも公害を大量に発生する部門です。 

そしてこの重工業に原料を供給する鉱業もまた、巨大な公害発生源なことは言うまでもありません。 

この重化学工業偏重と活発な鉱山開発が、準臨戦体制下で国を挙げて行われたら一体どうなるのか、考えるまでもないでしょう。

毛沢東時代に、公害病になったらそれは敬愛する毛沢東同志のためであり、救済を求めて陳情などすれば「反革命分子」、「スパイ」として処刑されるか、労働改造所送りになりました。 

世界第2位の経済大国になりながら、今でも多くの政治犯を労働改造所という名の強制収容所で奴隷労働をさせているとアムネスティは告発しています。

毛沢東は、沿海部が敵の上陸を受けやすいことから、工業地帯を内陸部に分散立地させました。これが公害の全国化につながりました。 

毛沢東は大変な怖がりでした。いざ米ソから攻撃を受けても、内陸に生産拠点があれば持久できるし、「人民の海」で溺れさせることが出来ると考えました。

毛沢東は、仮に原爆を落とされても 、1億人くらいならなんともないと言ったそうです。

たとえば、今でも中国自慢の第2砲兵(核ミサイル部隊)の基地と原爆製造工場は、四川省の山奥にあり、州都の重慶は毛沢東時代から重工業地帯でした。

宇井純先生が廃液で泡立つ黒い河を見たのはこの重慶で、1970年代の初期のことです。

この通常の経済発展では考えにくい環境汚染源の内陸部各地への点在が、中国の公害が全国各地に広く分布してしまった歴史的背景です。

それが、改革開放経済によって重工業や鉱業が一挙にフル稼働を開始するのです。

改革開放路線以降については別稿に譲りますが、基本的な構造にはなんの変化もありません。

中国は新たな自由主義社会に生まれ変わったわけではなく、経済だけが資本主義になったにすぎず、上半身は毛沢東以来の旧弊な共産党支配体制のままだったからです。

中国の公害は一般諸国のそれと違って、この強権的構造を変えなければなりません。それ故、解決至るまで極めて長い時間がかかるでしょう。

■写真 なんとなくポーッとのどかな写真を撮ってみたくなりました。ボケているのではなくボカしたのです。ホントです(笑)。それにしても、春が待ち遠しいですね。

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