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TPP コメを関税、死守するのか、直接支払いに転換するのか 

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TPPは一体どのような形で、日本農業に侵入してくるのでしょうか?シナリオをいくつか考えてみました。 

コメ、小麦、乳製品、肉類などの関税撤廃 

外国アグリビジネスの投資と関税障壁撤廃要求 

まず①無関税化ですが、関税自主権は重要な主権ですし、たしかに砂糖や乳畜産製品のように守らねばならない関税が存在するのも事実です。

だからといって農水省とJA全農が言うような、「自給率が13%になる」とか、「米価崩壊で経営崩壊」になるのかといえば、さてどうなのでしょうか。

首相「決断」前までは友軍撃ちになるので黙っていましたが、結論から言えば、これはJA全農傘下の兼業コメ農家の組合員防衛からのみ発想した論法にすぎません。

TPP反対=コメ兼業農家防衛に短絡させてしまったようなこのJA全農の方針は、「農家と医者はうまいことやってきた。あいつらから既得権を奪い取るのがTPPだ」という攻撃を招き寄せてしまいました。

いくら多くの反TPP論者が、「農業問題だけがTPPではない、保険も医療、金融こそが重要だ」と言っても、大多数の国民にはやはりTPP=高関税=農業保護という構図ががっちりと印象されてしまっています。

それが首相「決断」以後の各社世論調査に出てきたTPP支持率6~7割という数字が示しています。

さて、私たち他の分野の農業者から見ても、コメ兼業農家のあり方は特殊です。野菜とも、果樹とも、畜産とも大きく異なっています。まずはここから押さえていきましょう。

コメを作っている農家は140万戸といわれていますが、このうち1ヘクタール未満が7割です。1ヘクタール以下では、いくら農村でも食えません。

またコメ専業はわずか3万戸ほどにすぎません。というと、2割程度しか専業がいないことになります。 あたりまえですが、専業(官製用語で主業農家)が2割しかいない農業分野などほかにはありません

農水省や自治体農政課は、このような兼業農家のことを「自給的農家」、あるいは「零細農家」と呼んでいます。こういうくだらない言い換えはやめてほしいものです。本質を分かりにくくする日本人の悪い癖です。 

「自給的農家」というと、まるで自給自足の農的生活を送る古典的な農民のようなイメージが浮かびますし、「零細農家」というと小規模だが歯を食いしばってがんばっている農家のようです。

もちろん違います。 日頃は農村に住んで、街に働きに行って土日だけ田んぼだけ出ているパートタイム農家層のことです。当然収入の9割以上は勤め人の給料です。

兼業農家のほうも儲かるからやっているというより、田を荒らしてしまうと申し訳がないのでやっているのが実情です。

沢山売るほど作っていないので「自給的」「零細」ということなのでしょうが、兼業農家と言ったほうが分かりやすいと思います。この層が、地域によっても違いますが、JA組合員のかなりの割合を占めています。 

コメ兼業農家層にとって、関税がはずれて米価が下がるとやっていけないのでJAはTPPに反対しているという側面もあります(それだけではありません。念のため)。 

これは、農業の大きな柱のひとつである野菜と比較してみることでわかります。(欄外※1参照)

コメは最短11日間程度の年間労働で出来てしまうほど機械化が進んでいますが、野菜、畜産農家は手間の塊のためにほとんど兼業はいません。

以上を見ると、こう言えるでしょう。

農家戸数こそ野菜農家と変わらないように見えるが、その8割が兼業農家によって占められ、生産額もまた野菜の6割程度しかない部門が778%の高関税で守られているのです。

ですから、関税撤廃にピリピリしているコメ農家に対して、野菜農家にはほとんど関税撤廃に対しての不安感はありません。

今日は数字ばかりで恐縮なのですか、この不安を具体的な数字で見てみましょう。

県によっても違いますが、昨年のコシヒカリの生産単価が、コシヒカリ1俵(60㎏)1万2000~1万4000円。他の品種だと約1万円ていどです。 これに減反協力で2000円程度上乗せされます。

生産原価は9000円から1万円弱といったところでしょうから、10アール作って3万から5万円ていどの利益といったところです。減反協力金が出なければ、ガソリン代も機械代も鼻血も出ないでしょう。

だからハッキリ言って、兼業農家はコメなど今でもやめたいのが本心です。しかし止められないのは、稲作という農業は歴史的に共同体で維持してきたものが故に、個人の判断だけでどうなるものでもない部分が今でもあるからです。

たとえば自分の田んぼか農地改良区に入ってしまえば、その負担金を含めて替わってくれる農業者の資格を持つ人にしか田んぼを売れません。

こんな人は滅多にいるもんじゃありませんから、自分は街に勤めていても、泣く泣くゴールデンウィークに家族に謝りながら田植えをすることになります。

一方、専業農家は、ブランド化に努力したり、大規模化したりしてスケールメリットを得ることができます。

また生産原価も集約化して15から20ヘクタールに拡大すれば、10アールあたり6500円ていどまで落とすことができます。

コメは集約化か可能な技術が進んでいます。私の友人にも20ヘクタール以上やっている男がいますが、労働力は彼と奥さんだけです。人経営ならばその十数倍は簡単でしょう。ただし減反さえなければですが。

減反は兼業専業の区別なく頭割りで30~40%を削減することを命じてきます。一般の人は想像できますか?作りたいのに作らせない。頑張りたいのに頑張らせない。頑張ったら罰則が来る。それが減反政策です。

この国はことコメだけは社会主義計画経済をやっているのです。

つまり、兼業農家は止めたいのに止められない、専業農家は増やしたいと思ってもできない、こんな行き詰まった状況のなかでTPPは持ち上がったのです。

さてTPPで関税が撤廃された場合、輸入米が市場に参入するでしょう。 もっとも参入の可能性が高いのは、カリフォルニア米です。(欄外※2参照)

ではTPPでコメの関税はどのようになるのかですが、私はフィフティ・フィフティではないかと思っています。

政治的理由で関税が守られるかもしれないし、他の6条件・5品目条件のための捨て石になる可能性もないとはいえません。

問題は、むしろTPP、関税とは関係なく、国内産のコメ作りをどうやって守るのか、なのです。

現在のように778%の高関税のい壁を作って毎年77万トンのMA米(ミニマム・アクセス)を国家輸入し、それの保管に百数十億円かけ、さらに減反のために6千億円の税金を費やし、早くやめたい兼業農家を守り続け、もっと頑張りたい専業農家の足を引っ張る減反を続けるつもりなのでしょうか

こんな形が続くはずがない。そもそもこんな兼業農家頼みにしてしまった農政自体が誤っていました。とうに専業農家がそれを担っていなければならなかったはずでした。

その決断が遅れたために、とうとう東京湾の沖で、TPPという黒船に大砲を撃たれてパニくって、関税という土塁の陰に身を潜めている始末です。

もはやこのような馬鹿げて高いコメ関税が諸外国に受け入れられないことは農水省自身もよくわかっているはずです。

TPPでコメ関税を死守しようとすれば、ウルグアイラウンドの比ではない譲歩をせねばならないことは必至で、国内世論はそれを許さないでしょう。

となるとTPPでコメの関税ブロックが消えたならば、減反維持のためにこそ高関税をしているのですから、関税と減反は同時消滅します。

ここで初めて今のコメの国家管理が崩壊し、コメの自由相場制が誕生します。減反という足かせから自由になった専業農家は、撤退する兼業農家の水田を借り受けて生産に励むことでしょう。

結果、需給バランスが崩れ、おそらく3分の2程度まで一気に米価は下がり、コシヒカリで1万円前後、一般米ならカリフォルニア米の9000円とほぼ同一水準に並びます。十分に経団連がいう国際競争力が可能な水準です。

このテーマ、 次回に続けます。

■写真 菜の花が村中に咲き乱れています。春爛漫。北海道にも早く春が来るといいですね。

           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

※1
農家数の比率
・コメの農家数     ・・・24.9%
・野菜の農家数    ・・・22.5%

農家数が占める比率は一緒です。ただし、コメと野菜を作る農家が重なっている場合があることはお含みおきください。 

②国産比率
・コメの自給率   ・・・95%(ただしミニマム・アクセス米77万トン)
・野菜の自給率  ・・・80%
 

ここもほぼ同一です。

生産額(22年度農林水産統計による)
・コメの生産額   ・・・1兆5517億円
・野菜の生産額  ・・・2兆2485億円
 

ここで大きく差が出ました。野菜はコメよりはるかに大きな経済規模だと分かります。 

関税率
・コメ  ・・・778%
・野菜 ・・・  3%
 

野菜はまったくノーガードだといっていいと思います。野菜分野は熾烈な中国野菜との戦いを経験してきた結果、産地強化されてしまいました。今や質が悪く、まずくて危険な中国野菜ごときはまったく敵ではありません。

※2  
米国産のジャポニカ米は市場でわずか4%しか流通していないので、どこまで今後生産を拡大できるのかわかりません。

 これについては意見が分かれており、カリフォルニアは水に制限があるから難しいとする人と、いやまだまだ生産余力は大きいという人に分かれます。

また東南アジアでは世界屈指のコメ輸出国のベトナムが控えています。日本商社が開発生産方式でコシヒカリを作る可能性は十分ありえます。 

ニュージーランドも、現在まったくジャポニカ米を作っていませんが、水量も多く、高い農業技術を持つので生産に乗り出す可能性は捨てきれません。 

日本の参加承認、早くても4月下旬=「7月会合」は困難に-TPP交渉

【ワシントン時事】日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題で、米国やニュージーランドなど全11カ国の政府が日本の参加を承認するのは、最速でも4月下旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に合わせて開かれるTPP閣僚会合時にずれ込む見通しであることが、21日分かった。

ニュージーランドが、同会合で日本の参加問題を協議する意向を示しているほか、米政府と議会の調整難航などが理由だ。

 日本のTPP交渉参加問題をめぐる事前協議で、これまでに日本の参加を承認していないと明言しているのは、米国と豪州、ニュージーランドの3カ国。このうち、ニュージーランドは、「(4月下旬のTPP閣僚会合で)日本の交渉参加をめぐる次のステップについて協議したい」との意向を表明している。

 一方、米通商代表部(USTR)のマランティス代表代行は20日の記者会見で、日本の交渉参加を承認するかどうかの判断は「11カ国の総意で決定する」と言明。米国が単独で日本の参加を承認することはないとの見解を示した。
 TPP交渉に詳しい業界関係者によると、日本の交渉参加をめぐる米政府と議会の調整も難航しているもよう。今週に入り、USTRは、対日協議を担当するカトラー代表補らが出席して、米業界団体などへのTPP交渉に関する非公式の説明会を開催したが、その席でも具体的な参加承認の表明時期への言及はなかったという。

 日本がTPP交渉国会合に正式参加できるのは、米政府が議会に通知してから90日後となる。このため日本が交渉国会合に参加できるのは8月以降となる公算が大きく、11カ国が開催を検討している7月の交渉国会合に日本が正式参加するのは困難な情勢だ。

11カ国は10月の大筋合意を目指しており、日本がルールづくりに参加できる余地が一段と狭まる可能性がある。(2013/03/22-13:30)

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コメント

稲作とは違いますが、北海道の酪農も同じ様な感じでした。
平成4~5年(と言うより平成一桁時代かな)までは、酪農と畑作複合経営がほとんどで、20~30頭の搾乳と15~20㌶の畑作(主に小豆・澱粉原料用ジャガイモ・甜菜・その他小豆以外の豆類など)の両方で経営をしていましたが、徐々に規模拡大が進み酪農専業農家となっています。
家族労働では限界が来た事と、規模拡大で経営が回るように・・・と言う事です。
おかげで、酪農家戸数は半減しましたが生産量は倍増しました。水田の「水がめ」効果と酪農では自然災害に対する貢献は違いますが、それぞれに生き残る為に形を変えて経営が為されています。
「耕作放棄地」と「耕作不適地」とは、地域によって様々と思いますが、概ね一致するのではないでしょうか?少なくとも、北海道では耕作不適地が耕作放棄地になっていると思っています。

投稿: 北海道 | 2013年3月25日 (月) 19時25分

個人的に、TPP参加云々以前の問題として、国策で、八郎潟干拓事業をして、大規模米農家を募集し、生産に、入ったら、数年後には、この大規模米農家に、減反命令を出し、強制執行までして、自殺者を出したと言う、日本の農林水産省の、実態を見て、TPPと言う国際ルールに、参加できる能力が、農水官僚や政府に、あるのか?
と言う事です。

今でも、大規模集約農業にして、食糧を輸出産業にしましょう。と、農水も政治家も、言いますが、その話を、聞くたび、八郎潟干拓に、入村し、条件として、今までの、自宅など、自己資産を全部処分して、生涯八郎潟で、米作をするこっと、と、入村条件に、書きながら、数年で、減反命令を出し、自殺者を出したのは、今の日本政府と農水であり、彼らは、未だ、誰ひとり、責任を取らないと言う、世界的な前代未聞の強制収用をした国が、日本です。
これでは、中国、北朝鮮を非難できません。

兼業農家も、一定面積、30年間農業をしないと、宅地並み課税のA農地は、固定資産税が、払えないので、相続税申告のとき、嫌でも、自分の代から、30年田んぼをやりますと言わないといけないと言う都市近郊農家の相続国税現金支払い問題もありますし。。

日本の農業政策は、ほとんど中身も、長期戦略も、何も、ありませんから、信じられないと言うのが、私個人の気持ちですね。
ある意味、TPPと言う国際ルールに、参加することで、
八郎潟事件のような悲劇が、起きなくなるなら、参加の意味が、あるかもしれないなんて、思ったりします。
ISD条項は、金で賠償させられると言うのですが、国策大規模米農業の日本の象徴である大規模干拓事業は、農家に、自殺させると言う、追い込みをしてしまった。今でも、忘れられない事件でしたね。

豚肉の差額関税問題などは、TPPを批准すると、どうなるんでしょうかねえ?

ミニマムアクセス米なんかは、実際、何年も、冷蔵倉庫に入れていて、最期は、事故米で、廃棄するなんてことも、結構ありまして、北朝鮮に、人道的援助として、渡さなくなってからは、カルフォルニア短粒米などの比率が、増えましたね。

正直、農水官僚は、一体、何をどうしたいのか、全く理解不能な行動を、ずっと、過去、行ってきた実績を持ってますので、国民も、TPP=農業と言う図式に、陥るのは、やむを得ないと思ってます。

つまり、農家さんが悪いと言うより、農林畜産水産林業を、どういう風にしたいのかのビジョンが、少なくとも、私には、理解できておりません。

ぜひ、管理人さまに、教えていただきたいところでも、あります。

大規模集約とかで、国内農業は、救われないことは、この事件で、実証されているではありませんか?

学校パン食化は、米国から小麦輸入を押し付けられたからです。今は、ごはん給食を食育として、導入しなさいとのことですが。

また、牛乳とごはんというのは、食べにくい組み合わせでありますが、毎日、牛乳をつけないと、完全給食ではなく、補食給食と言う分類になるのですが、レストランや高級会席料理とか、3つ星レストランのコースメニューに、牛乳1本、付いて来たレストランを、存じておりませんが、文部省は、これら、超高級コース料理は、完全給食には、当らず、補食給食なので、正しい給食ではないと言う文部省の言い分も、理解不能です。

大規模米農家を潰したのは、TPPのような国際ルールでなく、日本政府なんですね。

投稿: りぼん。 | 2013年3月25日 (月) 19時48分

管理人様、いつも興味深く記事を読ませて貰っていますが、本件については異論が多々・・・というか、同意出来る部分が殆どありません。
まるで兼業稲作農家を寄生虫の様に書かれていますが、しっかり調査はされたのでしょうか?
「自民党は票田を確保するため減反制度で兼業農家を囲って高い米価を維持している」などと言う話をよく聞きますが、私は、世間が農業をよく知らない事を良い事に、自民を批判したい者達の作った稚拙なプロパガンダの類だと考えています。(私自身は絶対的な自民支持者という訳ではありませんが)

(あまりインターネット上で自身の情報を述べたくは無いのですが)私は静岡県で40ha余の経営をする稲作農家です。経営耕地面積の内、約15ha程度が転作の「補助金農家」です。
また一方、乾燥機十数代からなるライスセンターを経営し、稲刈り時期には自身の米以外にも、近隣のいわゆる零細稲作農家から乾燥調製作業を請け負っており、彼等の経営もよく把握しています。
複数の稲作関連勉強会に所属し、100haを超える経営をされている方を含め、数多くの専業農業者とも交流を持っています。
この様な立場である私の知る範囲に限っては、今回の記事の内容に当てはまる事例は全くありません。

「減反」という言葉は、一昔前の「水田を保有し、全く何も作らなくとも勝手に金が入ってくる制度」を連想させますが、少なくとも私が知る限り、現在はその様「作らなければお金が貰える」制度は残っていません。(ですから、私は「減反」という言葉を簡単に使う事自体嫌いです)
現在のそれにあたるのは、生産調整の奨励品目(転作作物)を作る等する事によって、面積あたり一定額の補助が受けられる制度です。
この生産調整制度についても、内容が頻繁に変わるため、一概に良し悪しを語る事は出来ません。以前には、とりあえず水田として登録されている土地に麦や大豆といった奨励品種を作付け、ろくに除草もせずに作り捨てて補助金をせしめる「補助金詐欺」などが可能な制度内容である時期もありましたが、現在は是正されています。
特に2009年頃、麻生内閣時代に石破茂が作った品目横断は、作り捨てなどせず、転作作物にもしっかり手をかけた農業者が助成される、比較的良い制度だった様に思います。また、現在の制度は戸別所得補償の名を借りてはいますが、基本的には同様の生産調整制度です。水田あるいは畑に、奨励品種あるいはその他作物を作付する事により、面積当たり一定額の助成を受けられます。(確か、この転作率が一定割合を満たしていなければ、利益が生産費を下回ってしまった場合の「所得補償」が受けられないという要素もあったと思いますが、余程酷い条件が揃わない限り、所得補償が問題になる事は無いため、さほど重要ではありません。)
転作率(減反率)を満たさない事によるデメリットは、転作による助成と、所得補償が受けられない事だけですから、それこそ記事にある様な「最大限にスケールメリットを生かしてブランド化で利益を得られる大規模専業農家」には、転作率を守らない事に何らデメリットはありません。
即ち「専業農家が減反制度のために作りたくても作れない」などというのは、いつの時代の話だ?というレベルの話なのです。

(続きます)

投稿: 三等兵 | 2013年3月25日 (月) 20時58分

個別の部分について指摘させていただきます。

「兼業農家は米を止めたいが周囲との関係で止められない」「農地を売れないから云々」「泣く泣くゴールデンウィークに農業」
そういう事例もある、という程度で、事実に当たりません。
静岡県西部に於ける大規模専業稲作農業者は、私の知る限り、全て大規模借地農で、条件不利地でなければ農地を借り受けられる余力を持っています。
農地を売りたいけど誰も買ってくれなくて困っている農家はそこらじゅうに居ますが、受け手が居なくて泣く泣く農業を続けているという農家はあまり聞きません。担い手となる大規模農家が居ない地区もありますが、耕作放棄地になるか、集落営農によって維持されるかです。サラリーマンなどをしながら農作業をする人も居ますが、基本的に手を貸せる家族が居る家だけが農繁期に作業に参加する程度で、中心に立って作業しているのは高齢者です。
そして、こうした零細農家は後継者を持たず、徐々に離農して我々大規模専業農家に農地を預ける傾向にあります。統計上は、零細稲作農家の戸数はまだまだ多いですが、少なくとも私の地域では殆どが離農予備軍で、黙っていても大規模専業農家に農地を預ける事になる家ばかりです。

「集約化して15haから20haにすれば原価を6500円程に」
事実に当たりません。
そもそも近隣地域に於いて、15haは専業経営が出来るギリギリの規模です。
私の地域では、経営に雇用を組み入れる場合に、経営規模20haあたり成人男性労働力一人程度の経営規模を目安、と言われる程です。たかだか15ha程度の経営規模で、スケールメリットも何もありません。
以前、稲作関連の勉強会で「最大限経営を効率化した場合、今の燃料・肥料・薬剤の価格でも、理想論で7500円程度までは下げられる」という論説の紹介を受けた事があります。それですら、内容は机上の空論レベルでした。

「減反は兼業専業の区別なく頭割りで30~40%を削減することを命じてきます」
上記の通り、全く事実に当たりません。強制もされていません。
私の近隣地域でも、条件が良い地区の経営者は、戸別所得補償制度で転作作物に飼料用米が加わるまで、全量作付でした。少なくとも私の知る限りでは、むしろビジネスライクな経営者程転作に非協力的です。
2009年の衆議院選挙で戸別所得補償制度がアピールされた事により、まるで「補助金農家」が昔の談合ゼネコンか何かの様に悪く語られていましたが、全くの誤解だと断言します。

「専業農家は増やしたいと思ってもできない」
地域によりますが基本的に当たりません。生産調整制度も関係はありません。
東北圏などは農地の需要が高く、静岡県の様な低地代の大規模借地農化は困難だと聞いた事がありますが、少なくとも私の近隣では「好条件の土地は満員。条件不利地を含めると若干の担い手不足」という程度です。

「減反という足かせから自由になった専業農家は、撤退する兼業農家の水田を借り受けて生産に励むことでしょう」
上記の通り足枷ではありません。そして、制度を撤廃する事で“淘汰される”のは「農業者」だけではなく「農地」も含まれます。米価が2/3になれば、その米価に見合う条件の良い水田だけが残り、それ以外の条件不利地は耕作放棄地になるだけです。

私の知識の範囲、あるいは経験則では、転作・生産調整には、耕作放棄地を減らすという重要な役割があると認識しています。
まず、日本全体の水田の供給能力は、現在の日本人の米の総消費量を大幅に上回っています。その上、水田として登録されていながら、既に水田として用を成さない耕地も多々あります。一方、麦大豆等の転作作物は、基本的に米の繁忙期と作業時期をずらして作業出来、地域単位で共用の汎用コンバイン(スレッシャー)が何台かあれば、専業稲作農業者なら大した投資をせず作る事が可能です。

この状況下にあって、生産調整に類する制度が一切撤廃されたらどうなるでしょうか?確かに米価が下がり、兼業農家が離農する事で条件に優れた耕地が専業農家に回り、専業農業者の経営が改善される側面も、僅かばかりあるでしょう。しかし、それと同時に2段階のプロセスで膨大な耕作放棄地を出す事になると考えます。

1:まず、生産調整により、転作作物を作付する事で耕地として維持されていた膨大な農地が放棄されます。
2:次に、米の作付面積が激増し、米価が急落します。
例えば数年前、静岡県で餅米が平年に比べて1~2割程度生産過多になった事がありました。このとき、我が社からの餅米の卸値は9000円(キロ150円)程度まで下がりました。同年の我が社に於ける米選機下の価格がキロ140円程度ですから、コスト割れどころの騒ぎでない事が解ると思います。
3:次に、急落した米価に耐えられない農家が多数離農します。また、生産効率の悪い変形田や湿田、中山間地の水田は軒並み放棄されます。
4:最後に作付面積が激減する事により、概ね米価が適正価格に安定します。

実に素晴らしい市場経済至上主義的な、需給の収束ですね。
こうして、日本国内の米需要を最低限満たす程度の、条件に優れた耕地以外を概ね耕作放棄地にし、市場競争に生き残れる稲作農業者だけを残す、これが稲作の健全化だと思われるのであれば、私は全く当たらないと考えます。
我が社でも、水田とされていながら水田として経営困難で、転作として利用せざるを得ない土地。湿田・変形田などの条件不利地が合計で10ha近くあります。
「農家は農地を遊ばせるべからず」という理念から、赤字が出ない限り要求がある農地は借り受け、そのために使える制度は活用する、という経営方針でやってきた我が社ですが、さすがに生産調整が無くなり、米価が2/3なりに下がるなどという事が起きたら、そうした土地は軒並み放棄するしかありません。
何処も借地ですから、地主は泣くでしょうが、まぁソーラーパネルでも並べて頑張って貰いましょう。

また、国産大豆の80%は生産調整制度の副産物ですから、仮に制度が撤廃されれば、恐らくその大部分は作られなくなるでしょう(全国の大豆生産の耕地を調べると、8割以上が水田になっています)。麦についても、地域によりますが、卸値はキロ10円前後です。助成が撤廃されれば、少なくとも本州で作る意味は無くなります。
日用品がMADEinCHINAでも違和感が無い様に、国産が幻になり、輸入農作物を口にする事への抵抗感をなくすのに、一役買うかも知れませんね。

「ブランド化は正しいのか?」
記事の中に「ブランド化」というくだりが見られます。私も就農直後は、自社の米のブランド化などを提唱しましたし、米所の視察でも、自社ブランドで単価と需要を維持している経営者程成功しています。しかし社長である父曰く
『米は嗜好品ではなく生活必需品だ。ブランド化した高い米を買うのは一部の人間。そればかりを目指しては、普通の人が安全でおいしい米が食えなくなる』
と言われました。今ではその通りだと考えます。

こうした「転作無くせば専業農家が良くなって米が易く作れる様になって腐った兼業が無くなって稲作が良くなる!」なんて言う奴は、インターネットを検索するとウジャウジャ居ますが、見る度に虫唾が走ります。
正直「じゃあそうなったら俺稲作辞めるからお前が代わりにやれ。土地も機械もくれてやる。その代り首吊って死ぬまで辞めるなよ?無理だと思うけどなw」とでも言ってやりたくなります。

投稿: 三等兵 | 2013年3月25日 (月) 21時20分

一つ、最も重要な事を書き忘れました。
ある程度情報を持つ人にも確認しましたが、私の知る限り、私の近隣の地域で、中小規模の稲作農家が生産調整を行い、助成を受けているという話はありません。大規模農業者が中小規模農家から水田を借りて転作作物を作付け、地代として助成金の一部を支払うという事例は多少ありますが、地区単位でのそれなりの協力関係が無ければ困難で、あまり多い事例ではありません。
ですからそもそも、「減反政策なり、それに類する制度で兼業農家が残されている」だの「兼業農家にも減反が強制されて云々」という事は、私の地域では完全に事実に反します。

投稿: 三等兵 | 2013年3月25日 (月) 21時32分

管理人さんの知人の20haのコメ農家さん、そして三等兵さん、おそらく並々ならぬ日々の努力で農業経営をされていると私は思います。ちょっと努力すればできるようなものではなく、稀有な存在だと思います。

私は「集約化して15haから20haにすれば原価を6500円程に」を実現できる人材及びそういう有利な条件で営農している人は、そういないと思います。
日本各地のぽつぽついるかも知れませんが、彼らだけでは、到底、日本の水田を担いきれないのが現実じゃないでしょうか?

私の島には稲作はほとんどありませんが、サトウキビに置き換えれば想像出来ます。
儲けを度外視できる高齢者や兼業農家は強いです。
意欲を持ちサトウキビの大規模専業経営を目指した若者や建設業者のほとんどが挫折しています。もちろん、行政の強力なバックアップもあってのことです。
専業でキビ(コメ)を作り家族・子供を養うのは、兼業や高齢者がキビ(コメ)作を営む以上に大変なことだと、私は思います。

投稿: 南の島 | 2013年3月26日 (火) 00時40分

はじめまして。高二女子です。

TPP、特に米の関税撤廃について勉強中です。

よければ参考にした書籍などを教えていただきたいです。

投稿: あぴちゅん | 2013年7月22日 (月) 18時59分

あびちゅん様。米の関税だけにしぼった本はあまりないのですが、反対の立場からは
「TPPを考える―「開国」は日本農業と地域社会を壊滅させる」
「 TPPが日本を壊す 」
「TPP亡国論」
など多数あります。

賛成している人だちで、私も手強いと思っているのは(笑)
「TPPで日本は世界一の農業大国になる」
「農協の陰謀~「TPP反対」に隠された巨大組織の思惑 」
などです。

これらを読むと、真っ正面伊からすれ違っていますから、頭がグルグルするかもしれません。また、わからなくなったらお聞きください。


投稿: 管理人 | 2013年7月23日 (火) 07時14分

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