公害大陸中国その8 環境規制も統計も信用できない国
1月29日に、中国を覆うスモッグは143万平方キロにも及び、中国国民の8億人までが影響を受けるまでになりました。
日本大使館では、在留邦人のお母さんたちからの不安を訴える電話が鳴りっぱなしだったそうです。
そこで2月6日、日本大使館は在北京邦人向け説明会を開き、医務官はこう説明したそうです。
「(この空気の中で生活し続けることは)壮大な人体実験のような状況です。」
もはや人が住めない状況だということを言外に言っているわけで、仕事でどうしようもない方以外のご家族は帰国したほうがいいですよ、というわけです。
このスモッグの原因は、中国科学院スモッグ原因追及・制御チームによれば、このようなことです。
「北京、天津、河北省地域で発生した深刻なスモッグの汚染物質の原因は、車の排気ガス、暖房用ボイラーの排気、飲食店厨房の排気、及び周辺地域の工場地帯・火力発電所などが出す汚染物質が原因である」。
まぁ、そりゃ改めてこのご大層な名前の機関に言われなくても、誰でもそう思いますよね。
でも、よく考えるとありゃという気がしてきました。どこがというと、「車の排気ガス」という部分です。
2008年の北京五輪の前に、中国政府はスモッグで選手がバタバタ倒れたりしたらメンツ丸潰れというので、大規模な空気清浄化方針を打ち出しました。
実際、各国選手団は直前まで日本などで練習していたほど警戒していましたし、冗談か本気か、マラソンはガスマスク装着だななどと言われていたものです。
北京の近郊の工場は操業停止を食らって、首都鉄鋼集団などは五輪前に地方に追いやられる始末でした。
車の燃料も「北京4」という「ユーロ4」に匹敵する排ガス規制を敷きました。この「北京4」規制になって、ガソリンは硫黄分が50ppm以下の「国4ガソリン」になりました。
ならばなぜ、今になってこんな「壮大な人体実験」のような状況になるのでしょうか。
それはこの「国4ガソリン」は、実は北京や上海などの一部としでしか使用されていないからです。
9割9分の地域ではあいもかわらず旧来の硫黄分たっぷりのガソリンを使っているのはいい方で、ひどい場合は殺虫剤原料のホルマールや、炭酸ジメチルなど安い原料を使ったニセガソリンがバッコしている始末だったのです。
その「いい方」のガソリンの硫黄分でさえ日本のガソリンのなんと15倍!
日本は当然のこととして「ユーロ4」基準ですが、東京、大阪だけで使用しているわけではないのは言うまでありません。
いくら国が広いからといって都市部だけのガソリンと、地方向けのガソリンが二通りあるとは!
ましてや大気汚染のかなりの原因であるディーゼル排気ガスについては、改善がされていませんでした。
大都市だけで排ガス規制しても、車は勝手に外部と出入りするのが習性です。というか、その為に作られたわけで、北京という大消費地には大量のトラックが入ってきます。
これをストップしたら、北京市民は飯が食えなくなります。
北京市長にかつての石原知事のような人がいれば、「入れない」と頑張ったのでしょうが、結局はザルもザル、大ザルだったのです。
ではなぜ、こんなハンパな規制をしたのでしょうか。それは国のエネルギー政策で石油価格を非常に安くしているからです。
中国は改革開放経済を軌道に乗せるために、通貨の為替相場を操作して極度に安くしたり、石油価格を抑制する政策を取りました。
このあたりはやはり輸出依存国の韓国もウォン安とエネルギー安という似た国家方針 を持っています。
それが出来るのも、石油企業が国営企業集団だったからです。石油精製製品は、わずか2つの企業集団によって握られている超寡占体制下に置かれています。
中国天然ガス集団(CNPC)と、中国石油化工集団(シノペック)のふたつです。
この巨大国営企業集団は、実は政府そのものでもあります。常に、中国政府には「石油閥」と呼ばれるこの2つの国営企業出身の政治家がいます。
昨年秋には党中央政治局常務委員というトップに、シノペック出身の張高麗氏が送り込まれています。序列は第7位です。
石油国営企業集団は、GDP世界第2位のエネルギー源を完全独占する権益の代わりに、安価な価格で石油精製品を売ってきたわけです。
ですから、「ユーロ4」に準拠する「国4ガソリン」なんてバカ高いコストがつくものを全国販売してたまるか、というわけです。おいおい、国民の健康はどうでもいいのか。
万事この調子で、火力発電所の排気ガスには2010年までに脱硫装置が義務づけられています、と中国政府は外国に説明してきました。
昨年秋のこと、5大発電企業集団はわれわれの脱硫装置は99%稼働していると鼻高々の発表をしました。
ところが後になってこの脱硫装置の4割が稼働していないことがわかったり、査察の時だけ回してみせるというギャグのようなことをしていたことがバレてしまいました。
そもそもこの地方政府の査察なるもの自体が事前から決まったお約束の日にするもので、仮に稼働していなくても地方政府は中央政府への水増し統計のために目こぼししていました。
もちろん中国社会のホルモン物質である賄賂がまかり通っているのは、今さら言うまでもありません。
このように、ガソリンには「ユーロ4」を使っていますよ、火力発電所には2年前までに脱硫装置が義務づけられました、99%稼働していると統計にも出ていますよ、という中国政府の言い分のことごとくがウソ、ないしは、限りなくウソだと言うことになります。
このことは中国国民は百も承知で、米国大使館が公表した北京市2011年12月4日午後7時のAQI(大気汚染指数)が最高値で500を超えたのをネットで見た瞬間、北京市民は幼児を抱えて病院に駆け込んだのです。
ちなみにその時点での北京市環境局の大気汚染指数は193で、「軽度の汚染」という発表でしたが、誰も信じちゃいなかったわけです。
これはPM2.5を計測せずにPM1.0のみを計っていたという杜撰さもあるにせよ、中国という国が骨がらみに持っている隠蔽体質が故の話です。
■写真 湖の夜明けの万華鏡。中国の河川も七色だそうですが、それとは違います。
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コメント
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中国政府はなにやらスマホ用注意喚起アプリをリリースしたようですが(実に日本的なキャラクター使ったパクり)、誰も信用してないようですね。
信用出来るのは、アメリカ大使館のデータ。
ヤフー(毎日jpリンク)の昨夜の「北京大学と環境NGOの実測データ記事」は、早々に削除、アクセス禁止になってます。
こんな国家、信用できますか?
一方、全人代が始まり、相変わらずの「経済解放」と「大幅軍拡」が、温家宝の最後の演説でした。
いったい何処と戦う軍備なんだよ…。
まあ、あそこの国なら内戦でも核を使いかねなそうなのが恐ろしいですが。
投稿: 山形 | 2013年3月 5日 (火) 13時22分
いくら国が広いからといって都市部だけのガソリンと、地方向けのガソリンが二通りあるとは!>>>>
日本では、ガソリン、軽油の質については、国内統一規格ですが、マフラーから出る、排気ガス規制のうち、特に、ディーゼルエンジン車については、関東圏、中京圏、関西圏については、ディーゼルエンジン排気ガス規制で、特別に、黒鉛類規制によって、規制区域では、車検も車庫証明もとれなくなってますし、関東圏にいたっては、地方からの乗り入れ走行ができないようになっています。
北京と違うところは、北京ナンバーだけが、規制対象であると想像していますので、ほとんどの大型ディーゼル車は、地方ナンバーなので、規制対象外になり、結局、省ごとの規制で、納まっていて、賄賂でOK。となれば、1,000万円近い、低公害ディーゼル車を購入する人は、居ないでしょうね。
自分も、わずか、5年ほど乗っただけの大型車5台を、一度に新車に変えることが、出来なくて、界面活性剤を、軽油とともに燃やす方式の改良をして、関東6都県の排出基準をクリヤーさせて、数年は、乗ってました。
今は、それらもなくなり、全部新車ですが、エンジンの排気量が、増えました(排気ガス規制を強化すると、トルクが、低下するので、エンジンを大きくしないと、クリアーしないからですが)
http://www.isuzu.co.jp/technology/d_databook/regulation/regulation_01.html
現在は、NOX、PM規制により、大都市圏での排気ガスのPMは、かなり減っているものと思われます。
ただし、田舎は、旧来どおりですが。。大都市圏は、ユーロ基準、US基準より、厳しい規制になっています。(世界一厳しくなったのではと思ってます)
日本でも、未だに、灯油と軽油を混ぜた、低質軽油を密造しています。これは、軽油税と言う、地方税の脱税が、目的のようですが。。後は、日本の大型トラックは、速度制限装置も付いているので、まあ、バンバン高速道を飛ばすことは、不可能ですね。(軽油は、急激に、ふかすとPMが、出やすくなるのですが、アクセルが、踏み込めなくなっていて、黒鉛を出すのが難しく改良してあります)
左ハンドルの日本製大型車が、輸出できれば、自動車の排気ガスによるPMは、減らせる可能性は、高いのですが。。
投稿: りぼん。 | 2013年3月 5日 (火) 17時06分