中国新型インフルエンザ事件第12回 WHO疑惑の事務局長・マーガレット・チャン氏
■国際機関の中立性を揺るがすWHO
今や中国政府のおかしな新型トリインフル対策と一体化してしまっているのが、WHOです。
国際防疫機関として、発生国と緊密な連携をとらねばならないのはわかりますが、今回のWOはそれを越えてある種の濃密な「共犯関係」に入ったようにすら見えます。
そして昨日書いたように、2008年にWHOは台湾を「中国台湾省」とする文書を加盟各国に送付し、事実上、台湾を中国のひとつ省(=県)として扱っています。(※1参照)
そのために、今回の台湾での発生はウイルス「国外」への感染拡大ではない、という中国政府の主張を後押しする結果になっています。
その理由を解くためには、このWHOからの「台湾追放」を決定した事務局長であり、今回のパンデミック・フェーズの最終判断をする権限を持つマーガレット・チャンこと、陳馮富珍氏の経歴を知らねばなりません。
■出身地香港で消せないWHO事務局長マーガレット・チャン氏の汚名
彼女がWHOの事務局長に選出された時、香港で起きたのは拍手でも応援でもなく、大きなブーイングでした。
香港患者権益協会は、彼女が2003年の香港SARS禍の際の衛生局長(衛生署署長)であったにもかかわらず、「職務怠慢で、逃れられない重責を負っていた当事者である」とし、「中国当局の金銭外交が政治権益の獲得に功を奏した」と批判しています
一体なにがあったのでしょうか?
■香港におけるSARS制圧失敗の張本人と名指しされる
香港患者権益協会はSARSの感染被害者によって設立されたNGOですが、彼らは香港の流行時に、チャン氏が局長を勤める衛生局が、中国に同調して感染情報を隠蔽したとしています。
また、「感染源の追跡調査には非常に鈍感だった」と指摘しています。まさに今の新型トリインフルの余りに鈍く、方向違いすら指摘されている感染ルート・サーベイランス(調査)を彷彿とさせます。
特に、濃厚な感染が見られた淘大花園団地や、プリンス・オブ・ウェールズ病院の封鎖が遅れたために、感染を大きく拡大させてしまいました。
これも、今の上海での感染封じ込めに完全に失敗し、長江流域に拡大させ、ついには北京、内陸部にまで飛び火させた失態に重なります。
また、SARSの対策条例を修正することが後手にまわったために、有効な対策に失敗しました。
これなども、まさに今、チャン氏が事務局長職権として握っているパンデミック・フェーズ3からの引き上げの遅れとも二重写しになります。
■香港議会が非難動議。そして失職。逃げるようにWHOへ
2003年7月、チャン氏はこのようなSARS対応の失敗により、香港議会(立法会)から職務怠慢を理由に非難動議が提出され、8月には失職しています。
このまま在職していたら懲罰措置をとられるところを、たくみにWHOへ転出で逃げきりました。
氏は患者遺族団体からの「killer」とまで言われる強い批判に対して、未だ謝罪のひとこともないにようです。(※2参照)
■露骨な中国の集票活動
このWHO事務局長に選出される2006年の選挙戦の間、中国の集票活動は赤面するほどあからさまだったと言われています。
まず中国にとって、重要な国際機関のトップを推薦すること自体が最初のことでした。
中国は胡錦濤国家主席が先頭に立ってアジア・アフリカ諸国の集票に動きました。
11月4日に北京で開催された中国アフリカ協力フォーラム・サミット会議時には、援助と引き換えにチャン氏の支持を公然と呼びかけ、WHO執行委員会のメンバー8カ国のアフリカ票を総なめにしました。
この舞台裏で、アフリカ諸国の100億ドルの借款を免除するだけてはなく、巨額のダーティ・マネーが動いたことは公然の秘密だと言われています。
そしてこのようなダーティな金は、アフリカ諸国の場合、国民に行くのではなく一握りの政権一族の懐に転がり込むというのもまた常識です。
■中国のチャン氏推薦理由は、「大局に気を配ってくれた」
言うまでもありませんが、一国二制度という美名も元に、民主主義と自治権を剥奪されている香港の大物官僚が、中国政府の大々的後押しで国際機関の長におさまるということの意図は見え透いています。
チャン氏は、地元香港では猛烈な批判にさらされていましたが、中国衛生部の黄傑夫副部長にはたいそう評判がよく、「(中国の)大局に気を配ってくれた」と評価しました。黄氏の言う「大局」とやらは、何か考えるまでもありません。
中国がチャン氏をWHOの事務局長に押し込んだ政治的動機は、彼女がSARSのような事件が再び起きた場合に、つまり現在のような状況のことですが、「北京の代理人」として利用できると考えたからです。
■伝染病対応の失敗した人物が、世界の伝染病制御のトップになるとは皮肉だ
香港SARS患者NGOの彭鴻昌氏はこう述べています。
「地域での伝染病感染の対応が、現地政府と社会から強く非難されていたのに、現在全世界を率いて、伝染病の制御や疾病予防を主管する国際重要組織の事務局長に選ばれること、我々は非常に皮肉なことである感じている」。
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※1 台湾・自由時報によると香港出身のマーガレット・チャン氏が事務局長を務めるWHO事務局は昨年9月(1)WHOの文書はすべて台湾の名称を「中国台湾省」とする(2)事務局は台湾当局が中国に属さない印象を与える行為を避ける――などとする内部文書を加盟国に送付していた。(「チャイナネット」 2009年5月19日)
※2 [香港Yahoo!の掲示板での香港人のコメント]
陳馮富x + "Dr. Killer Yeung " had taken away so many HK people's life during SARS period !
Now, "Dr.Killer Yeung " went back to Malaysia .......why 陳馮富x still can do the important position in WHO??
●上海市、江蘇省、安徽省、浙江省にGWに渡航するのは非常に危険です!できる限り渡航は自粛してください!
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