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2013年4月29日 (月)

中国新型インフルエンザ事件第11回 台湾は中国「国内」? パンデミック前夜に中国の面子を立てている場合か!

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われながら、別のテーマに移りたいものですが、やはり今日はこの問題を書かないわけにはいかないでしょう。
中国新型トリインフルエンザのパンデミック・フェーズ格上げと台湾の問題です。
まず、予備知識としてパンデック・フェーズと、その対策については欄外に載せておきました。(※1、2参照)
ちなみにパンデミック・フェーズの和訳はいくつかありますが、「感染爆発の段階」ていどの意味です。
 

2カ国で感染拡大があったのは、フェーズ5の証明ではないのか?
現在WHOは、フェーズ3だとしています。
実にのどかだと思いますが、ウィルス株を中国から送られて遺伝子解析した国立感染症研究所では、既に「ヒト・ヒト感染が限定的にではあるが起きている」と述べ、それを追認するようにWHO自身もそれを認めています。
そして今回、大きな展開がありました。
江蘇省蘇州から上海を経て出張していた台湾の旅行者が、帰国後の24日にトリインフルエンザを発症し、いまだ重体です。鶏との接触はなかったそうです。
つまり、新型トリインフルエンザは、ヒト・ヒト感染によって「国外」に持ち出された可能性が高いのです。
これは明らかに、フェーズ5の「ヒト・ヒト感染が2カ国以上で感染拡大した」という要件を完全に満たしています。
なお、中国とWHOは「なぜ人々の間で感染したのかを示す証拠は不明で、家族クラスター(集団)のいくつかで発生している」というのが統一の公式見解です。(※3参照)

中国と日本では4月末から1週間の大量の人口移動が始まる
中国においても、日本のGWと同様の労働節休日が5月1日から1週間あるにもかかわらず、中国当局とWHOはフェーズ3の指針どおりの「検査・報告」に重点を置いた消極的な防疫対策に終始しています。
かつてSARSでは、中国の2月の春節と、4月末から1週間の労働節休日に感染爆発した経験があるにもかかわらず、今回は「ヒト・ヒト感染した証拠がない」の一点張りで有効な対策を打とうしていません。
それどころか、逆に
中国の衛生当局は、感染が拡大して社会的混乱が大きくなると、これまで毎日行っていた感染情報の発表を24日から週1回に変更するなどの情報隠蔽を強化する始末です。

WHOがパンデミック・フェーズを格上げしたならば時間的猶予を稼げる
もし、ここでWHOが、バンデミック・フェーズを上げて4、ないしは5にするならば、ガードも大きく上がることが可能です。
その場合、加盟各国は以下の対策を準備します。すなわち
「隔離をはじめとした物理的な封じ込め対策を積極的に導入し、ワクチンの開発と接種などの、事前に計画し、準備した感染症対策の実施に必要な時間的猶予を確保するために、最大限努める。」
現に、日本ではワクチン製造計画は開始されていますし、いち早く強制隔離ができる特別
措置法も成立しました。
これは、フェーズ5を想定した対策にほかなりません。感染患者を出した台湾や、かつてH5N1トリインフルで死者を出した経験を持つベトナムなどの燐国のガードも一斉に引き上げられています。
にもかかわらず、かんじんな世界の伝染病対策の司令塔たるWHOのみが低調な対応に留まったままです。

台湾は「中国国内」だから「2カ国以上」の感染ではないと言いたいらしい
感染は、先週に入り、東部の山東省や沿海部の福建省、内陸部の湖南省などにも拡大し、、死者23名、感染者は109名(24日現在)に登っています。

Photo                  (写真 NHKニュース4月27日より引用)

実際はケタがもうひとつふたつは多いはずだというのが、日本の医療・防疫関係者の偽らざる感想なようです。
たぶん10年前のSARSの時のように、労働節(メーデー)の人口大移動の後にさらに激増することでしょう。
にもかかわらず、WTOがここに至ってもパンデミック・フェーズを上げない理由は、もはやひとつしか考えられません。
その理由は医学的理由ではなく、台湾は「国」ではなく中国政府に言わせるとあくまで「中華人民共和国台湾省」という「国内」だからです。

台湾は「台湾省」だという中国の政治的虚構」
台湾回収」を狙う中国政府にとって、台湾が「国内」の一省にすぎないという政治的立場を護持することが絶対的国是です。
しかしこれが、民主的選挙で選ばれた政府と統治機構を有する台湾(中華民国)という実体を無視したフィクションにすぎないことは、常識の範疇です。
というか、私にはそのようなことはどうでもいい。伝染病が中国の「外」に出たという現実こそが重要なのです。
台湾が中国の「内」か「外」かなどという神学論争は、別の時にゆっくりやっていただきたい。
              

WHOマーガレット・チャンは、台湾は「中国台湾省」とする文書を加盟国に送っていた
ところがマーガレット・チャンWHO事務局長は、この中国政府の立場に従属して2010年9月に以下のような文書をWHO加盟国に送付していました。(※4参照)
「①WHOの文書はすべて台湾の名称を「中国台湾省」とする」
「②WHO事務局は台湾当局が中国に属さない印象を与える行為を避ける」
これには、さすがの対中融和路線をとる馬英九総統も「台湾の主権を軽視し、台湾人の感情を傷つけた」と反発しました。
なお、2009年にWHO総会ではオブザーバーとして招聘され、その時は、「中華台北(チャイニーズタイペイ)」という名称に変わりましたが、原則は「台湾は中国のひとつの省である」というのがWHOの立場です。(※5参照)
 

田村厚労相、台湾を「他国」としたことを撤回し、「他地域」に訂正
田村憲久厚生労働相は、25日の記者会見で「他国にまで感染者が出た」と述べたために批判を受けて、台湾を「他国」とした発言を撤回し、「他地域」に訂正しました。
田村大臣は間違ったことを言ったわけではないのに、中国に配慮したということのようです。

ことは国民の健康の問題だ。くだらない中国の面子を立てている場合か!
私は、大臣の対中国姿勢を問題にしたいのではありません。ことは外交的問題ではなく、国民の健康に直接関わる重大事だと言いたいのです。
ここで中国の主張どおり、台湾を「中国台湾省」としてしまえば、中国政府の思惑どおりウイルスの国外流出は「ない」ということになってしまいます。

■ウイルスが飛行機で国際間移動している実態が実証された
私は、台湾旅行者の発症を受けて、中国新型トリインフルは一線を超えた感染拡大をしたと考えています。
H7N9は、限定された地域内感染にとどまらず、航空機で国際間移動した実態か証明されたのです。
しかもこの上海、蘇州というコーズは、中国観光の定番です。このGWにも大量の日本人が旅行することでしょう。
そしてわが国にH7N9型インフル・ウイルスを大量に持ち込むことになります。
それが発症するのは、帰国してから3、4日あとのこと。H5N1型トリインフルエンザ流行時と違って水際作戦すらとっていないわが国は、丸裸同然です。
燐国のわが国は、WHOの判断とは関係なく警戒レベルを一段階引き上げるべきです。
 

感染症との戦いに中国の面子を持ち込むな!
中国は、本来人類として団結して戦うべき新型トリインフルに対して、政治問題を持ち込みました。
そしてWHOも中国におもねって、加盟国、中でも近隣国が「事前に計画し、準備した感染症対策の実施に必要な時間的猶予を確保する」パンデミック・フェーズ4(ないしは5)の警告をサボタージュしています。
伝染病には国境はありません。
パンデミックに備えるべき時期に、つまらない「政治」をもちこまないでほしいものです。

 

 上海市、江蘇省、安徽省、浙江省にGWに渡航するのは非常に危険です!
 できる限り渡航は自粛してください!

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※1 WHOの2005 年版分類
[フェーズ3]
 新しい亜型のインフルエンザウイルスが散発的又は限られた集団に感染し
ているが、コミュニティレベルでの継続的なヒト-ヒト感染は発生していない
[フェーズ4] コミュニティレベルでの発生を継続させる力がある新しい亜型のインフルエ
ンザウイルスが、ヒト-ヒト感染していることが確認された。
[フェーズ5] WHOの1つの地域に属する2か国以上で、そのインフルエンザウイルスに
よってコミュニティレベルの感染が継続している。
[フェーズ6] フェーズ5の条件に加え、WHOの別の地域の1か国以上において、そのイ
ンフルエンザウイルスによってコミュニティレベルの感染が継続している。
 

※2 フェーズ3と4以上の対策上の違い
フェーズ3の対策] 新型ウイルスを迅速に検査診断し、報告し、次の患者発生に備える。
フェーズ4~5の対策] 隔離をはじめとした物理的な封じ込め対策を積極的に導入し、ワクチンの開発と接種などの、事前に計画し、準備した感染症対策の実施に必要な時間的猶予を確保するために、最大限努める。
 

※3 新華社4月25日
http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/dr_okamoto/Forum2/H7N2/No%20proof%20of%20H7N9%20interpersonal%20transmission.htm
 

※4台湾の外交部(外務省)は9日、台湾が中国の一部であることを意味する「中国台湾省」を台湾の名称とすることを再確認する内部文書を世界保健機関(WHO)が作成したことに対し、厳重に抗議する声明を発表した。
同日付の台湾紙が報じた内部文書の存在を認めたもので、台湾独立志向の最大野党・民進党は馬英九政権批判を強めている。
台湾・自由時報によると香港出身のマーガレット・チャン氏が事務局長を務めるWHO事務局は昨年9月(1)WHOの文書はすべて台湾の名称を「中国台湾省」とする(2)事務局は台湾当局が中国に属さない印象を与える行為を避ける――などとする内部文書を加盟国に送付していた。(「チャイナネット」 2009年5月19日)
 

※5 台湾は2009年、中国との関係改善を進める馬英九政権の下でWHO年次総会へのオブザーバー参加を果たし、38年ぶりに総会に復帰した。WHO事務局は台湾の名称を五輪出場と同じ「中華台北」とした招請通知を出しており、馬政権は「主権は損なわれていない」と強調していた。(日経新聞2011年5月9日)

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コメント

飛行機に乗って移動した人間がウイルスキャリアになって、大陸の外に拡がったことがポイントだってのに…WHOは完全に中国共産党政府に牛耳られられてしまったようですね。
SARS隠蔽騒動を「悪い意味で学習」してしまったようで。

全く、あの国はメンツのためなら何でもありです。

以前、学研の中国製地球儀でも強制的に「台湾島」表記をさせられて問題になりましたが、今回のパンデミックは世界中の危機になりえるというのにこんなザマですから、もう呆れて物が言えません。

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