中国新型インフルエンザ事件第9回 国外にまで感染拡大!なぜ中国政府はヒト・ヒト感染を認めないのか?
■日本の感染症研が明らかにしたこと
中国トリインフルは日本の国立感染症研究所で、遺伝子解析され様々な新事実が明らかになったことは一昨日お伝えしました。大ざっぱに言えば、3点です。
①ヒト・ヒト感染が限定的ではあるが起きている。
②ヒト感染ウイルスはトリウイルスと同系列ではあるが、ヒトの呼吸器で生存するに適した変異をしている。
③ヒトへの感染源はブタの可能性がある。(※ただし③は示唆に留まっています。)
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-53db.html
■なぜ日本で初めて明らかになったのか?今まで中国とWHOは何をしていたのか?
これについては日本国内でも反応が分かれました。
ある専門家は、「あの」中国がウイルス・サンプルを日本に渡したということ自体を称賛せんばかりで、これ以上中国を批判などして刺激するなと言わんばかりの人もいます。
まぁ、SARSがひどすぎましたからね(苦笑)。
とはいえ、今まで中国当局とWHOは2カ月近くなにをしていたのでしょうか、素朴に疑問です。
これでは中国はともかくとして、WHOもウイルスの遺伝子解析すらできない程度の国際機関だったということになってしまいます。
しかし未だWHO北京事務所代表オリアリー氏は、患者は家族であった為に遺伝子が似ていたので感染した限定的なものだろう、などと寝言を言ってヒト・ヒト感染をきちんと確定しない始末です。
それにしてもなぜ、ここまでヒト・ヒト感染が明確になっているのに関わらず、四の五の言って確定から逃げまわるのでしょうか?
■おそらく数百人の感染死亡者が既に出ているはずだ
ところで感染症は初動制圧がイロハのイです。発生と同時に、ウイルスの侵入経路と、拡大経路を突き止めて封じ込めねばなりません。
今回、この初期封じ込めは完全に破綻し、大規模な拡大をしてしまっています。
そしてこのH7N9型トリインフルは、゛鳥類には弱毒であっても、ヒトには数日で死をもたらす強毒性だということも明らかになっています。
ですからたぶん既に100名単位、あるいはそれ以上の感染死亡者が出ているはずです。
■感染患者は隔離病棟にすら入れない
というのは中国には、わが国のような貧しくとも、僻地に暮らしていようとも、均等な医療サービスが受けられる国民皆保険制度が存在しません。
医療の平等もないとは、恐れ入った「社会主義国」があったものですが、基本は患者の自己負担であり、H7N9型トリインフルにかかると隔離病棟に入れられてしまいます。
ところがこの隔離病棟は、1日1万元(約15万円)という超高額ですから、一カ月数万円で暮らさねばならない労働者の数カ月分の月給に等しい額です。
そのために家族の入院のために家や財産を売った、海外に出稼ぎに出たなどという話が絶えません。
中国メディアの報道では、感染が確認された南京の女性が発症後、治療費に10万元(約160万円)を費やしたと報じられて、「貧困層は発症しても病院に行けない、と感染者の治療費を免除するよう求める声が強まっています。(共同4月10日)
■新型インフルエンザの「水際作戦」は無意味だ
さて、わが国でも感染が警戒される状況になってきました。
東大医科学研准教授の上昌広氏はいわゆる「水際作戦」を批判してこのように書いています。ポイントを引用しておきます。
「新型インフルエンザの潜伏期間は長く見積もって約10日間ですが、空港利用者の大部分が短期間の旅行や出張から帰ってくる人でしょうから、ほとんどがこの期間中にあると予想できます。空港に着いた時に症状がなければ、どんなに検疫を強化しても発見できませんから、すり抜けて国内に入っていることになります」。
「厚労省は乗客の体温を検知するサーモグラフィーを大量に整備しました。しかしながら、サーモグラフィーでの有症者発見率は0.02%すなわち1000人に2人で、99.8%はすり抜けます」。
つまり、渡航者が感染して国内にウイルスを持ち込んでもそれを国境で防ぐのは極めて困難なために、職場や家庭で感染拡大してしまう可能性が大きいということです。
■台湾でも新型トリインフル発生
とうとう大陸以外で新型インフルが発生しました。中国への渡航者で、重体のようです。
「台湾の衛生当局は24日、中国から入境した53歳の台湾人男性が、鳥インフルエンザ(H7N9型)に感染したと発表した。(略)
衛生当局によると、男性は3月28日から仕事で中国江蘇省蘇州に滞在し、4月9日に上海経由で台湾に戻った。12日から発熱などの症状が出たため、16日に医療機関で診察を受けた。当局は、男性が中国滞在中に感染した可能性が高いとみている。ただ、蘇州では、市場で扱われる鶏などとの接触はなかったという。」(読売新聞4月25日)
やはり蘇州から上海に旅行した人です。ここがもっとも濃厚な汚染地帯だとわかります。
これもWHOがヒト・ヒト感染を認めてパンデミックフェーズ4を宣言しないからです。
WHOの責任は極めて重いと言えます。
■感染地域、特に上海にはGWに渡航するのは危険です!
(写真NHKnews web 4月15日より引用いたしました。)
そこで大型連休を前にお願いがあります。私たちにできる最大の予防方法は、感染地域に渡航しないことしかありません。
特に濃厚に、保菌していると思われる豚、犬、トリが混在して生活している上海地域はレッドゾーンだと思って下さい。
今回のトリインフルは、上昌先生が指摘するように、感染しても空港の検疫ラインをすり抜けてしまう可能性があります。
トリインフルの最大の運び屋は、渡り鳥ではなくヒトだということをご理解ください。
中国新型インフル問題は、多くの中国公害病と同じようにこのような中国社会の医療体制の不備、貧困層の増大、腐敗した社会体制などの社会問題も絡んでいます。
次回、この問題をもっと掘り下げてみます。
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コメント
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マズイなあ。
一番気になるのは、該当の台湾の男性が帰国してからすでに半月経っていることです。
日本の旅行客やビジネスマンが往き来し、また中国からの旅行客も東京にも地方にも沢山来てますし、むしろ地方自治体などは旅行客誘致に必死です。
もうすでに国内にウイルスが入っている前提で考えるべきだと思います。
さらに、よりによってGW前です。
昨夜のニュースでは中国への渡航者は20万人の予想だとも。
爆発的に拡がる恐れも考慮しないと。
中国人民解放軍の高官が先週「インフルエンザはアメリカのバイオテロだ」などと発言しておりましたが、世界中に拡散させようとしているのはお宅の国ではありませんか?と。
投稿: 山形 | 2013年4月25日 (木) 07時06分
台湾への飛び火は遅かれ早かれ予想できます。そして我が国への飛び火も予断はできません。
人・物が活発に行き来している状況では、侵入を防ぐことは不可能だし、中国自体が封じ込めについて、本気を見せない・・・本気で動かない限り、感染拡大を防ぐ手立ては無いのでは??
尖閣の問題でも靖国の問題でも、中国報道官の「したり顔」を見るにつけ、バイオテロ発言も頷けます。
そんなお国柄ですから・・・
投稿: 北海道 | 2013年4月25日 (木) 17時05分