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2013年4月23日 (火)

中国新型インフルエンザ第8回 あらぬ方向を調査している中国当局とWHO

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WHO北京事務所代表オリアリー氏、「珍しい病気が流行っているにすぎない」
中国駐在WHO代表のマイケル・オリアリー氏はたいそうのどかな人であるようです。彼はこのようにのたまっています。
「今のところ珍しい病気が散発的に発生しているにすぎない。恐らく今後もそうだろう。」(エコノミスト4月18日)
WHOは封じ込めに失敗したにもかかわらず、危機意識はゼロのようです。

ちなみに、中国国家衛生計画出産委員会と、北京駐在WHO代表オリアリー氏はたびたび仲良く共同で記者会見をしています。(下写真参照)
彼は中国政府の「情報隠蔽はしていない」というプロパガンダに利用されていることに、まるで無頓着なようです。
本来、10年前にSARSで歴史的隠蔽をしでかした中国に対しては、国際機関として一定の距離を持ってしかるべきです。
と言っても、オリアリー氏のボスが中国人ではいたしかたないのでしょうが。
このようなWHOの無能が、今回のトリインフルの封じ込め失敗の原因のひとつです。

Photo_2                 (写真NHKnews web 4月15日より引用いたしました。) 

拡がる一方の感染 100名感染、20名死亡
この奇妙なWHOの楽観的姿勢をあざ笑うかのように、22日現在、浙江省の死者1名を加えて感染者102名、死亡20名に達しました。
これが日本ならば、新型インフルで1名死亡者が出ただけで間違いなく非常事態宣言です。

Photo             (図NHKnews web 4月15日より引用いたしました。)

さすがのWHOも、「限定的にヒト-ヒト感染が出ている」と認める
ところが19日、いままで家族内の複数の感染が確認されたことに対して、ついにオリアリー代表は、「家族内で限定的なヒト感染が起きている可能性も否定できない」と初めてヒト-ヒト感染を公式に認めました。
ただし、「別々に感染したことも考えられる」と、それこそ家族3名同時に「偶然に」感染したという考えられないような言い訳つきですが。

WHO「患者の50%は家禽に接触していなかった」
そしてその後、
WHOは、こんな驚くべきことをさりげなく発表しています。
「感染した患者の50%以上は家禽に接触していなかった」(朝日新聞4月21日)
 

ならばどうして感染拡大するのだろうか?トリのウイルスはヒトに直接感染しない
つまりWHOは、感染患者の半分が家禽以外から感染を受けたと言っているわけです。
私たちは大雑把に、「トリインフルエンザ」と呼んでいますが、大槻公一・鳥インフル研センター長は、トリからヒトに感染することはないと断言します。
トリはウイルスのキャリアー(運び屋)であっても、そのウイスルがヒトに直接感染した事例はないからです。
今まで人類は20世紀から3回の世界的なパイデミックを経験しましたが、それらはいずれもトリの直接感染ではなく、豚を媒介にした間接感染からヒト-ヒト感染に拡大したものです。
 

感染症研、「ヒト-ヒト感染は起きている」
4月19日、国立感染症研究所は、「中国における鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応」と題するリスク評価を公表しました。
そこには疫学的所見としてこうあります。
「ヒト―ヒト感染の可能性については、3月下旬に同一家族内での複数の有症者が発生した事例があることなどから限定的なヒト―ヒト感染が起こっている可能性も否定できない。」(本文※1参照)
 

感染症研、トリからではなく「別の何者」からの感染を示唆
また、この感染症研のレポートにはウイルス学的所見としてこのような記述もあります。(本文※2)
上海市鳥市場のハト、ニワトリおよび環境からの分離ウイルス3株と、患者のウイルス株を比較したとろ同系列であることはたしかだが、「しかし、両者の間には、明らかに異なる塩基配列もあり、今回報告された鳥分離ウイルスが、今回報告された患者に直接に感染したものであるとは考えにくい。」
これを素直に読めば、上海の死亡患者のウイルスは、トリからではなく家禽類と同系列の「別の何者か」のウイルスからの感染だと示唆していることになります。
 

ヒトの器官温度34度にウイルス至適温度を下げた「別のなにか」とは?
続いて同じくこのウイルス学的所見は、こう述べています。(本文※3)
ヒト分離ウイルス4株全て遺伝子は、「ヒト型のレセプターへの結合能を上昇させる変異」をしていました。
それは、遺伝子の「至適温度が鳥の体温(41℃)から哺乳類の上気道温度(34℃)に低下させる変異」があったことで分かります。
この変異によって、ウイルスは「ヒトの上気道に感染しやすく、また増殖しやすいように変化している」としています。
つまり今回のウイルスは、ヒトに適応するために7度も適温を低下させている株に変異していたのです。
このウイルス変異を起こさせたのは、ヒトと同じ34度という呼吸器の温度をもっている哺乳類だということです。
すなわち、それは豚以外に考えられません。

■感染拡大の原因は豚である可能性が高い
それを示唆する記述が、この報告書にはあります。(本文※4参照)
このウイルスはトリには低病原性であり、家禽に感染しても死亡することは少ないとされています。
ただし、トリやブタには低毒性であっても、ヒトにはわずか3~4日で死ぬ例もでる強毒性です。
そして、豚は静かに感染して発病もせずに、ヒトへウイルスを感染させているので気づかれなかっただけなのです。
 

ブタの調査は屠殺場以外されていない
ではなぜ、豚が感染源であると疑われなかったのでしょうか?
その理由は簡単です。単に調べなかったからです。中国当局は8万サンプルを集めたと豪語しますが、豚の調査は屠殺場があるていどで、農場レベルはまったく調査はしていません。
中国農業省の17日集計によれば、ウイルス調査されたのは以下です。(いずれも全国)
・生きた家禽を売る市場・・・473
・家禽処理場・・・32
・養鶏場・・・896
・野生鳥類棲息地・・・79
・豚屠殺場・・・36
・環境ポイント・・・137
・ウイルス検出・・・家禽市場9カ所・野生ハト39
一見してお分かりのように、養豚場はまったく調査されていないのです。
 

中国当局とWHOが「感染経路がわからない」のは当然
このように見てくると、中国当局とWHOが「感染経路がわからない」のは当然だと言えます。
トリばかり調べていて、間接感染源の豚をノーマークだったからです。
あらかじめ、トリからの直接感染ばかりを重点的に調査しているために、トリインフルといえば豚からの間接感染をまず疑うべきなのに、それを怠ったのです。

早く封じ込めないと世界規模のパンデミックになる
鳥取大学農学部の伊藤壽啓教授は、こう警鐘を鳴らします。
「H7N9型のウイルスは鳥でどこまで感染が広がっているか分かりづらいという難しさがある。仮に、ウイルスがヒトからヒトへ感染するものに変異すれば、あっという間に世界中に広がると考えられるので、そうなる前に感染源を特定し、封じ込めることが必要だ」。(
NHKnews web4月15日)
GWを控えて、上の発生地域には渡航なさらないように強くお勧めします。
もし、わが国に上陸したら一説100万人を越える死者が出るのですから。

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※[シリーズ・タイトル「中国新型インフルエンザ」という標題について
「新型インフルエンザ」は、狭義では大規模なヒト-ヒト感染に至った状況を指します。WHOパンデミック・フェーズ6のレベルのことですが、現時点では3から4に差しかかった段階です。私はあえてこれを標題とすることで、それに至らないようにとの警告の意味を込めて使用しております。

「中国における鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/flua-h7n9/2276-a-h7n9-niid/3477-riskassess-130418.html

※1 ヒト―ヒト感染の可能性については、3月下旬に同一家族内での複数の有症者が発生した事例があることなどから限定的なヒト―ヒト感染が起こっている可能性も否定できない。ただし確定例に対する接触者調査からはヒト-ヒト感染は確認されていない。 

※2 上海市鳥市場のハト、ニワトリおよび環境からの分離ウイルス3株:A/pigeon/Shanghai/S1069/2013, A/chicken/Shanghai/S1053/2013, A/environment/Shanghai/S1088/2013)は、遺伝子系統樹解析の結果からは、上記ヒト分離ウイルスのうちの3株(A/Shanghai/2/2013,A/Anhui/1/2013, A/Hangzhou/1/2013)と類似性が高く、同系統のウイルスと考えられる。しかし、両者の間には、明らかに異なる塩基配列もあり、今回報告された鳥分離ウイルスが、今回報告された患者に直接に感染したものであるとは考えにくい。 

※3ヒト分離ウイルス4株全てのHA遺伝子は、ヒト型のレセプターへの結合能を上昇させる変異を有していた。またヒト分離株全てのPB2遺伝子には、RNAポリメラーゼの至適温度を鳥の体温(41℃)から哺乳類の上気道温度(34℃)に低下させる変異が観察された。これらの株については、ヒト上気道に感染しやすく、また増殖しやすいように変化している可能性が強く示唆された。 

※4 今回の4症例、鳥、環境から検出されたウイルスの遺伝子解析の結果からは、これらのウイルスは鳥に対して低病原性であり、家禽、野鳥に感染しても症状を出さないと考えられる。また一般的に、H7亜型のインフルエンザウイルスはブタにおいても不顕性感染であることが知られている。従って、この系統のウイルスがこれらの哺乳動物の間で症状を示さずに伝播され、ヒトへの感染源になっている可能性がある。

■写真 筑波山麓の田んぼも田起が始まりました。

 

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