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2013年4月 8日 (月)

中国新型インフルエンザ第1回  失敗した初動制圧 拡がる一方の感染地域、始まった情報統制

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中国トリインフル拡大止まらず
中国上海という2400万を越える巨大都市で発生したヒト感染型トリインフルエンザH7N9型は、先週末から拡大しつづけています。
当初中国当局は、死亡した患者が既にインフルエンザに罹っていた上に重複感染して悪化したのだろう、ていどに認識していたようです。
たしかに、
元来このH7N9型トリインフルは、欧州から北米にかけて発生していた低病原性のもので、ヒトへの感染はこの中国での事件以前にはありませんでした。

中国当局が犯した初動のみくびり
感染力が弱い低病原性、しかも弱毒だというみくびりもあって、中国当局は今回はSARSでの悪評を返上すべく、国際ルールに則ってスマートにやろうと思ったようです。
それが初期の「積極的」情報公開方針です。これは西側マスメディアにおおむね好評でした。
しかしこの根拠なき中国当局の楽観をあざ笑うかのように、新型インフルエンサ・ウイルスは上海を飛び出して、華南地域一帯にヒト感染を拡げてしまいました。
ヒト-ヒト感染が出ていないのだけが唯一の気休めといった有り様です。

死者は6名に。上海市南部に集中発生
感染は拡大の一途をたどっています。

「中国農業省は5日夜、上海市から取り寄せた738件のサンプル検体のうち、感染者が 働いていた上海市閔行(びんこう)区の市場など3カ所から集めた19件の検体にウイルスの陽性反応があったと発表した。」 
「各地の衛生当局によると、感染者は5日夜の時点で計16人、うち死者は6人。江蘇省では2人の疑い例が出ている。」(同) 
ウイルスの陽性反応があった19件の検体は、ほぼ上海南部に集中しています。またこの松江(しょうこう)区ではウイルス感染した鳩が見つかっています。

感染死亡者には年齢、性別の区別はない。高熱と咳、重い肺炎と呼吸困難症状
 
死亡した人は、閔行区の農産品卸売市場(27歳)で働く労働者と87歳の老人です。重体で現在治療中の女性は35歳で、上海の西側に位置する安徽(あんき)省在住者このことで、年齢性別に関係なく感染していると思われます。
27歳、35歳という年齢からも、体力弱者というわけでもなさそうです。
死亡患者は同様の初期症状が見られ、高熱とせきが続き、その後、重い肺炎や呼吸困難を起こしています。
 

発生状況。1市3省に拡大(4月5日金曜日午後現在)
・上海・・・6例
・浙江省・・・4例
・江蘇省・・・4例
・安徽省・・・1例
・計  ・・・14例

Dscn0028        (図 NTVバンキシャより引用させていただきました。ありがとうございます。)
これを見ると明らかに感染は華南全域に拡がりつつあります。

H5N9インフルの検査試薬がなかった
新華社によれば、H7N9型の検査試薬が北京の疾病コントロール予防センターに届いたのが4月2日であり、初動制圧に完全に出遅れているのが分かります。
検査試薬はたぶん新型だったために、検体の入手と解析が遅れたのでしょう。
しかしそれにしても、1例目は2月19日に発症し、3月4日に死亡しているのですから、それから一月たっての検査試薬とは、論外の遅さです。
あの「空白の20日間」における初動の遅れが、すべてを決してしまっているようです。2010年の宮崎口蹄疫事件も、3月中旬には疑われる症状が出ていたにもかかわらす、確定は4月26日と遅れに遅れました。
この空白期間が、後の防疫体制構築の失敗にダイレクトにつながっていきます。

OIEへの報告書とWHOの対応
一方中国からOIE(世界獣疫事務局※防疫の世界組織)へ送られた報告しい(4月5日付け)は、鹿児島大学岡本嘉六教授のサイトでみることができます。
また、WHOは
黄浦江の病死豚との関連は否定しています。
ただし、現在のWHOの事務局長は陳馮富珍(マーガレット・チャン)氏で、香港出身です。氏はSARS野感染封じ込めに失敗したとの批判を香港で受けて喚問された経歴があります。
失礼ながら、彼女のスタンスは香港の置かれた位置に似て中国との距離は微妙だということを念頭に置いたほうがいいでしょう。

上海市 市内全域の卸売市場や販売店約460カ所を閉鎖、2万羽が殺処分に
上海市は市内3カ所の家禽市場を閉鎖し、市内へのトリ、アヒルなどの流入を停止させました。
また新華社によると、上海市は約2万羽のトリ、ガチョウ、ハト、アヒルなどの家禽類の殺処分をしたと発表しました。

中国家禽市場は、生きたまま売り買いする濃厚接触型
中国の家禽市場は、私も何回か行っているのですが、わが国の家畜市場とはまったく異なっています。
まず、最大の違いは生きたままのニワトリ、アヒル、ハトなどが売られていることです。
檻に入れられて、売り子と買手が相対で交渉し、決まればその場で殺して渡してくれます。
ですから、日本の家畜市場と違ってパックに入れられて売られていることなどなく、生きた家禽と濃厚な接触をしているのが中国の市場です。
この形の家禽市場では、日本と違ってはるかに速い速度で感染が拡大していきます。
私が、当局の公表した患者数より桁違いに感染が既に進行していると見るのはそのためです。

殺処分がたった2万羽なのは解せない 
さて今回の中国当局の措置で理解に苦しむのは、殺処分数がわずか2万羽であることです。一般の方には多いと思われるかもしれませんが、2万羽などは養鶏業では小規模に属します。

大規模養鶏場では一カ所で数十万から100万羽単位というところもザラにあり、この2万羽というのは死亡者が6名も出ている防疫措置にしてはハンパな印象で、あえて言うならアリバイ作り的印象すら免れません。

OIEへの報告書では殺処分ゼロ 実態は藪の中
一方、この2万羽殺処分を報じた新華社電とは異なり、OIE報告書では罹患羽数20536羽、死亡数0、殺処分数ゼロとあります。
つまり2万羽は罹患数であって、殺処分していないということです。
殺処分という防疫作戦でもっとも有効な手段を使っていないとなると、もっと問題ではありますが。
http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/dr_okamoto/Forum2/Event2010/China%20NAI.htm
実態は藪の中ですが、常識的に言えばOIEへの報告書が正しいのでしょうね。
ヒト感染しているのにOIE報告では対策として、スクリーニング、消毒、移動制限、地区割りなどをあげています。
中国はトリインフルのワクチン使用国ですが、今のところワクチンは使用していないようです。

ハト2羽、トリ2羽、新たにウズラからもH7N9の感染確認
今わかっているかぎりでは、4月5日付のOIEへの報告書では、ハト(食用)に継いで初めてトリ2羽にH7N9の感染が確認されています。
6日には浙江省杭州市の露店街でウズラ(羽数不明)からウイルスが検出されました。
普通は死亡鶏が大量に出てトリインフルに気がつくのですが、このH7N9d h死亡鶏が出ないか、非常に少ないので、農場管理者の発見は困難になるでしょう。

ウィルス封じ込めの国際常識
疫学の国際常識では、感染したハトが発見された上海市閔行区や松江区を中心にして、この初発地点でウイルスを封じ込めてしまわねばなりません。
これを初動制圧といいます。

そのために、わが国では発生源をつきとめるための発生動向調査をします。
日本の家畜伝染予防法では、半径5キロから30キロの範囲(※その時の状況で柔軟に設定)で家禽類と製品の移動制限区域を設定します。
そして家畜業者と流通の聞き取りと家禽類の抗体検査をしてスクリーニングしていき、感染ルートと感染時期を絞りこんでいく「遡行調査」を実施します。
これをしないと防疫作戦が建てられません。

家禽類の移動制限があまりに遅い 
上海の場合、この中途半端な殺処分数から見て、おそらくは感染ルートが突き止められていないと思われます。
発生動向調査をするためには、現状凍結をしなければできませんから、発生から数時間を争って移動制限をかけてしまいます。
ところがこの上海の場合、家禽市場で発生した1例目2月19日から実に40日以上たって移動制限しています。
家禽市場でトリインフルが出ているのですから無条件に家禽類が発生源だと疑うべきで、その移動を直ちに停止するのが常識です。
まずは30~50キロという大きな半径で移動制限をかけて、その中を徹底して発生動向調査します。
たぶん中国当局は、感染を甘く見ていたために移動制限をかけず、発生動向調査もおざなりにしたために、感染が深く広く浸透していってしまいました。
完全な初動対応のミスです。

ぜ、既に流通しているトリ肉や豚肉を販売停止にしないのか?
となると、この感染事件が発覚する2月中旬以前、そしてそこから移動制限がかかる4月初旬まで、既に多くの感染した家禽類が存在していたと考える方が自然です。
それらの症状は業者の目にとまらなかっただけで、保菌していた思われます。
そしてこの家禽類は、新型インフルを保菌したままで既に市中に出回っているでしょう。
ならば、4月初旬の時点で新たな上海への家禽類の流入を停止するだけでは不十分です。
きっと、感染性が低いので、市民生活の影響を配慮してそこまでしないのでしょうが、
既に出回っているものも含めて完全に回収して廃棄するべきです。

南京へも感染飛び火か?ツイッターが暴露。当局渋々4名感染を公表
今回、中国当局は米国紙などで情報公開が進んでいると評価される一方、あいもかわらず伝統芸の情報隠蔽をしていることが暴露されました。
微博(中国版ツイッター)で自称、南京市鼓楼区鼓楼医院の管理職が、新型インフルに感染した女性の診断書を写真で撮影し、微博に投稿しました。
その診断書には、南京市江寧区の市場で家禽業を営む45歳の女性が、3月30日に新 型インフルの感染者と認められ、隔離されていると記されています。
言うまでもなくこれは守秘義務違反ですが、どうも事実なようで、当局は素早く削除しましたが、あっという間に広まってしまいました。

結局、実際にツイッターの告発どおり4名が感染していたことが、後に公表されました。

中国当局、一転して情報統制強化に走る。 独自取材を許さず。封じ込められる真相
中国当局が、5日上海のメディアに対し、「市民の不安を招くような独自報道を控えるように」との通達を出したことが分かりました。(※資料8-2)
中国当局は、表面的には各機関や地方政府に対して情報公開を勧めるような素振りを見せながら、かなりの数の患者の発生を隠匿しているようです。

ツイッター上では、当局が発表した感染例以外の感染情報が盛んに流されています。
3日午後には、「うちの病院の救急患者がたった今、鳥インフルで亡くなった。私は同済大学同済病院にいる」などという投稿も出ています。
この投稿も間もなく削除されました。

高まる市民の怒り。中国民主化へ進むか?
このようなモグラ叩きのような状況に中国市民は怒りを募らせており、「上海の医者が自分の病院での鳥インフルの死者情報を流しただけなのに、なぜ削除されたんだ?何を隠そうとしているんだ?SARSの痛い教訓は生かされていないのか」と言う声も出はじめています。
 
私はマーガレット・チャンWHO事務局長と違って、黄浦江に流された1万数千の病死豚がなんらかの関わりをもっていると思っています。
多くの中国国民も私と同様の疑惑をもっているようです。(※参照)
今週また感染の拡大がみられるはずです。
かつてのSARSとは違って、いまは中国社会はツイッターが全盛です。中国政府は、国民の健康と安全よりも、みずからの政治体制の護持を優先させてきました。
経済が右肩上がりだった時はいいのですが、バブルがはじけ失速局面になった今、ありとあらゆる公害のツケが一斉に回ってきています。
どこまで当局が隠しおおせるか、中国の民主化とも絡んでくる事態に発展しそうです。

※[追記] この病死豚との関連は時系列とウイルス解析で否定されました。ただし、この病死肉が食用に回っており、一部はトリの飼料にまわったようです。またこの豚を投棄したのが嘉興の業者であることもわかっています。

※お断り 資料が冗長だとのお指摘をいただき、アップした後に最小限にカットいたしました。(4月10日)

 

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 

※ 中国トリインフル 上海南部の検体に陽性反応
毎日新聞4月6日
 

【上海・隅俊之】中国でH7N9型の鳥インフルエンザの感染が相次いでいる問題で、中国農業省は5日夜、上海市から取り寄せた738件のサンプル検体のうち、感染者が働いていた上海市閔行(びんこう)区の市場など3カ所から集めた19件の検体にウイルスの陽性反応があったと発表した。遺伝子を解析した結果、いずれも感染者のウイルスと起源がほぼ同じとみられることが分かった。3カ所はいずれも上海市の南部に位置し、この地域でウイルスがまん延している実態が明らかになった。

 ウイルスの陽性反応があった19件の検体は▽ウイルスに感染したハトが見つかった松江(しょうこう)区の農産品卸売市場▽27歳の感染者(死亡)が働いていた閔行区の市場▽そこから数百メートル離れた別の市場--の計3カ所から集められたもの。鳥類に感染が広がっていることも裏付けられた。

 このため、上海市は6日から、ハトやニワトリなど生きた鳥を扱う市内全域の卸売市場や販売店約460カ所を閉鎖し、取引を停止することを決めた。

 各地の衛生当局によると、感染者は5日夜の時点で計16人、うち死者は6人。江蘇省では2人の疑い例が出ている。一方、上海市は5日、3日に死亡した52歳の感染女性と接触し、治療を受けていた患者は、H7N9型に感染していなかったと明らかにした。

※ <中国・鳥インフル>当局が、独自報道を控えるよう通達
毎日新聞 4月6日(土)  

 【上海・隅俊之】中国でH7N9型の鳥インフルエンザの感染が相次いでいる問題で、死者4人が出ている上海の一部メディアに対し、中国当局が市民の不安を招くような独自報道を控えるよう通達していることが分かった。複数の中国メディア関係者が5日、明らかにした。

 関係者によると、メディアを管轄する宣伝部門の担当者が当局の発表内容を報道するようメディアの幹部に要請。鳥の殺処分を現場で取材した独自記事の掲載などが認められなかった。5日付の上海紙は市内でウイルスに感染したハトが見つかったことや感染者の増加を大きく伝えているが、ほとんどが当局の発表をまとめたものや国営新華社通信の配信記事になっている。

 感染が発覚して以降、中国当局は情報の「透明性」を強調している。中国国家衛生・計画出産委員会は3日、感染に関する情報の公開を徹底するよう地方政府に通達。上海市政府は感染が確定する前から疑い例もインターネット上で公表し、記者会見でも質問に詳細な説明をしている。

 中国では03年に新型肺炎「SARS」が大流行した際、当局による情報の隠蔽(いんぺい)で感染拡大を招いた経緯があり、国民の不信感は今も根強い。情報公開の背景には、そうした不信感を払拭(ふっしょく)したい狙いがあるとみられる。

 一方で、市民からは「対応が遅いのでは」という指摘も出ており、メディアの報道が過熱することで政府に批判が向かうことを警戒しているとみられる。
 


 

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