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2013年5月21日 (火)

公害大陸中国その14 中国・公害病患者の裁判受理数わずか255分の1!

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とうとう中国政府の環境保護部が「がん村(癌症村)」の存在を公式に認めました。このこと自体は、いままでの中国を知る者にとってはそれだけで大変な前進です。

「ガン村」は、 100カ所以上、あるきはさらに200カ所以上とも報道されています。

非公式報告を含めると全中国で459カ所、河北省から湖南省までの東側ベルト地帯だけで396カ所と東部に集中しながら内陸に進んでいくのがわかります。

下図はセントラル・ミズーリ大学のリー・リウ(Lee Liu)氏作成の2010年論文「Made in China: Cancer Villages」「メイド・イン・チャイナ・ガン村」にある地図です。

Photo

Figure 1. The cancer-village phenomenon by province, China, 2009.(ガン村現象省)

「ガン村」のひとつで、典型的なイタイイタイ病発生地である「遼寧省葫蘆島市(※下図)に住む劉鳳霞さんは今年2月2日、夫を亡くした。46歳だった。劉さんは「日本で(原発事故による)核汚染が発生したとのニュースを聞いた時、だれも恐ろしいとは思わなかった。ここの汚染は、日本よりよほどひどい」と述べた」。(サーチナ2011年10月14日)

この遼寧省葫蘆島市は上の「ガン村」発生図でみると、やはり多発している地域に入っています。

Photo_2                        Google Earth

「認めた」のはけっこうなことですが、問題はこれらの絶望の淵にいる公害被害者を、司法などが救済をしている数です。

日本の科学研究費で中国人研究者呂忠梅、張忠民、熊暁青の各氏が行った研究中国環境司法の現状に関する考察~裁判文書を中心に~(PDF)によって、その救済状況が次第に明らかになっています。  

このレポートは中国公害をと数量的に捉えたもので極めて貴重なものですが、この中で、で、中国政府による「2006年全国環境統計公報」から推定した公害事件数は以下です。  

①環境紛争総数                 ・・・61万6122件
②行政手続受付済の事案数・・・・9万1616件
③司法手続受付済の事案数      ・・・2418件
※①÷②=約7
※①÷③=約255
 

なんと、中国においては環境紛争は表沙汰になっただけで約61万6千件あり、それを地方政府が受理すると7分の1になり、さらに司法が受理するともっと減ってわずか255分の1にまで急減したことがわかります。  

このようなことを世の中でなんと言うのか中国政府に教えて上げたい。それは「棄民」と呼ぶのです。

おそらく、私は紛争で浮かび上がった61万6千件という数自体が、現実の数百分の1程度にすぎないと思っています。数千万件の単位でもおかしくはない。  

日本においても初期の公害である有機水銀系農薬による健康被害は、「日本農夫病」という奇病扱いにされた過去があります。  

熊本水俣病ですから、風土病だと思われていました。中国人記者のルポの中に出てくるイタイイタイ病患者は、自分を脚気だと考えていたことが伝えられています。
※関連記事 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-7319.html
        

特権階級の豪華な病院を尻目に、農村部では無医村が果てしなく続く現状であり、適切な診療はおろか、その前段の保険制度の不備や集団検診すらなされていない現状です。

このような中で、自ら症状を申し出た人は貴重であり、実態はそれを数百倍してもなお足りないと考えるべきでしょう。

参考までに、我が国の4大公害病患者数は以下のとおりです。
熊本水俣病(1956年・水質汚染 有機水銀)
新潟水俣病(1964年・水質汚染 有機水銀〕
●①+② 公害患者数 最低5万人以上

(うち、認定患者約3000人 ①2,200人 ②700人)
四日市ぜんそく(1960年~1972年 大気汚染 亜硫酸ガス)
●公害患者数 数千人 うち認定患者1,700人)
イタイイタイ病(1910年代~1970年代前半 水質汚染 カドミウム)
●公害患者数約500人~数千人(うち認定患者196人)

我が国の4大公害病だけで、軽く6万人を突破してしまいます。これ以外に多くの公害病があったわけですし、人口比からみても中国の規模はこの十数倍の100万人を越えると推測されます。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-5d1f.html
 

しかし、中国は対外的な近代国家の外観だけ整える為に、建前上は日本と同じ「公害無過失責任追及」(※1欄外参照)という司法概念を採用しています。  

これは、我が国が長年の公害病患者の戦いの中で1972年に勝ち得た重要な司法概念で、公害病裁判のゴールドスタンダード(黄金律)とまで呼ばれているものです。  

一般の司法事件では、「過失があるから責任が生じる」という考え方をして、それを無理やり公害事件に適用すると、企業側は「それは当時の技術水準では予見できなかった。故に無罪である」という論理が成立してしまいがちでした。

それは、被害者側に加害者企業の違法性の挙証責任(※2)があると考えられていたからです。 

これでは、企業が内部情報を社内的に隠蔽してしまうことにもつながって過失立証が困難になる上に、裁判の長期化によって被害者側は生活がたちゆかなくなるるケースが頻発しました。 

この転機となったのが、改正前年の1971年の新潟水俣病地裁判決です。その主文でこのように述べられています。  

「化学企業が製造工程から生ずる排水を一般の河川等に放出して処理しようとする場合においては、最高の分析検知の技術を用い、排水中の有害物質の有無、その性質、程度等を調査し、これが結果に基づいて、いやしくもこれがため、生物、人体に危害を加えることのないよう万全の措置をとるべきである」。 

最高技術の設備をもってしてもなお人の生命、身体に危害が及ぶおそれがあるような場合には、企業の操業短縮はもちろん操業停止までが要請されることもあると解する」。 

ここで判決文が言っているのは、仮に企業が当時の技術的水準で予見し得ないとしても、それが生物、人体に危害がおよはないように万全の備えをするべきで、それが冒された場合は企業の操業短縮や停止や操業停止まで命じることが出来るという画期的なものでした。  

中国は改革開放路線による公害病の多発を受けて、この「公害無過失責任追及」という司法概念を受け入れたと公称していました。  

しかし、その実態たるや、わずか255分の1しか司法裁判に受理されないというとんだザルぶりが明らかになったのです。   

 

※1公害無過失責任  
故意、過失の有無に関わらず、損害が発生すればその賠償責任を負うことをいい、無過失責任ともいいます。汚染原因者としての企業責任について、大気汚染と水質汚濁に係る健康被害に関しては企業の無過失賠償責任が法制的に確立しています。
かつて、公害の被害者が加害者に対し損害賠償を請求するには、不法行為の成立要件を充足させることが必要でした。しかし、公害の特殊性を考えたとき、違法性や故意又は過失を立証し、因果関係を確定することが非常に困難であり、被害者が公害発生者の責任を追及することは、決して容易なことではありません。
このため1972年に整備された「公害関係法」においては、伝統的な不法行為理論を修正し、無過失賠償責任論に基づく原則が採用されました。                                        (環境用語集)

※2挙証責任
裁判基礎となる事実存否についてすべての証拠資料によっても決めかねる場合でも,裁判所は裁判をしなければならない。そこで,いかなる事実は当事者のいずれが立証すべきかを定めておき,その立証ができないときは,その者に不利益に裁判をすることにしている。                                          (マイペディア)

 

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コメント

2008北京オリンピック直前でしたかね、北京の「陳情村」(村というより大量の路上生活者状態)が報道されたの。
何ヵ月も放置された挙げ句警察に蹴散らされてました。

それから5年経つ訳ですが、実際は悪化の一途なんでしょうねえ…。

中国と現在の日本では、公害被害についてのレベルが、あまりにも、違いますが、では、日本が、安全であるかと言うと、法律的には、そうでもないと、思います。

自治体に、課せられた、生活一般廃棄物の焼却灰等を、埋め立てる最終処分場からの放流雨水について、連続的に、化学処理等をして、指定放流河川に流す際には、水質検査においては、法的には、現状でも、重金属、放射性物質などの検査については、努力義務であり、現状は、垂れ流しですね。

国内で、水銀血圧計が、使用禁止になった途端、東京23区の一般廃棄物焼却場の大気放出フイルターが、1台あたり、3万から5万円の医療用廃棄物水銀処理料を、けちったため、3基は、停止して、修理代が、数億円かかったはずですし、今でも、中間処理場と言う名の危険重金属が、放置された土地が、全国、至るところにあります。

ある意味、農地法、河川法など、厳しい状態での、縦割り行政の中で、表に出てこない有害廃棄物が、日本中、そこら辺(近所)に存在するのが、現状ですね。

もう、中国沿岸部も、ベトナムも、電子基盤やペットボトルなどの石油精製品廃棄物を、無条件で、受け入れることは、減りましたので、都市鉱山リサイクルとして、日本国内で、処理できるような設備を、早急に作る必要が、あると思います。

管理人さまのおっしゃる司法解釈をもってしても、
四日市公害裁判や硫化水素公害裁判、新幹線騒音振動裁判など、名古屋地裁で、扱った裁判でも、半世紀かかったというのが、日本の実情です。

環境省所管の法令だけで、被害者が、救われない現状も、多いですね。
人体における被害実態が、特定の公害企業との因果関係を、証明するのは、非常に、難しいですから。。

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