だから言っでしょう。FITなんかやったら大変なことになるって・・・!その1
■脱原発と再生可能エネルギーは別概念なのに
覚えていませんか、ちょっと前まで、再生可能エネルギーは脱原発の切り札、代替エネルギーの本命と目されていました。
それどころか、次世代を担う成長戦略のようにもてはやされていました。
私はこのブログで、脱原発と再生可能エネルギーは別次元の概念であって、切り離して考えるべきだと主張し続けてきました。
しかし、民主党菅内閣はこのふたつをムード的にゴッチャにして、再生可能エネルギーというあまり出来のよくないエネルギー源にゲタを履かせる政策を決定してしまいました。
私は、当時全盛だった「ドイツに学べ」の正反対に、「ドイツに学ぶな」と叫んできました。
だってドイツは、惨憺たるFIT(電力全量・固定買い取り制度)の失敗をしているんですから。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-9e98.html
■原発事故に乗じたショックドクトリン(火事場泥棒)
災害や戦争の後に、そのショックに乗じた「改革」が来る場合があります。
福島事故の後に、原子力に対する恐怖と反省が生まれたのは当然です。私も「被曝地」の住民のひとりとしてよく理解できます。
しかし、原子力とは本来なんの関係もないはずの再生可能エネルギーの全量買い取り制度をたいした国民議論もなしに決めたり、果ては電力自由化などに進むのは、大規模災害の利用主義です。
ましてそれを復興計画とは無縁に、被災地に持ってくるなどは意地汚さにもほどがあるというべきでしょう。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-d2f0.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-8f2d.html
■FIT(全量・固定買い取り制度)を開けてみたら、メガソーラーの8割は中国製
悪い予想に限って当たるもの。実際、再生可能エネルギー法の蓋を開けてみたら、案の定出てきたのはメイド・インチャイナのパネルばかり。
性能的にはたいした差がないので、価格的にかなわない国産勢はとうに放逐されて市場の隅でうずくまってしくしく泣いています。
社運を賭けたシャープなど倒産寸前です。
設置も既製品を鉄骨のフレームに載せるだけですから、設備屋もあまりに簡単な工事すぎて儲かりません。
「資源エネルギー庁新エネルギー対策課によると、国内で稼働するメガソーラーのうち、8割は中国・台湾などの海外製品」(欄外参照・産経新聞5月1日)だといいます。
■国内産業の競争力対策をしてから始めるべきだった
「国内メーカーの競争力底上げをなおざりにしたまま、急速に門戸を開いた国の施策に、東北大学大学院の桑山渉特任教授は『国内メーカーを中心とした仕組みを作らず、中途半端な施策を進める国のあり方には疑問。電力料金でまかなわれる買い取り制度は、国民の税金を投入しているようなもので、それが海外メーカーに吸い取られるのは問題だ』と指摘している。」(同)
■ソーラーパネルはたこ焼きのように出来てしまうローテク産業だった
しかし、太陽光に関してはこの競争力の底上げも難しいでしょう。なぜでしょうか。理由は簡単。
太陽電池は要するにシリコン製品です。このポリシリコン、メタルシリコンの世界的産地が中国で安価に入手できるのですから、輸入に頼るしかない他国はかなうはずもありません。
しかも製造工程はこれ以上ないくらいの簡単さ。ターンキーと呼ばれる一貫生産ラインを作ってしまえばジャカスカ出来ます。
太陽光発電装置は、一見ハイテクに見えますが、実はn型シリコン、p型シリコンに2ツの電極を付けただけの簡単な半導体デバイスです。バカデカイので、半導体と呼ぶのはちょっとというだけのシロモノです。
■大過剰生産で自滅する中国ソーラー業界
こうなったのも、今、世界の太陽光発電の需要は、セルベースで25ギガワットですが、供給能力はその倍の50ギガワット以上あると言われ、過剰生産となっているのが根本原因です。
なんのことはない、FITによって、我が国は巨額の税金で中国企業を儲けさせ、その中国企業も過剰生産で片っ端から潰れているのです。まことに非エコ的風景です。
■巨額の税金目当てに、砂糖に群がる蟻のような中国人バイヤーの群が押し寄せた
誰が儲かっているのかさっぱりわからないが、巨額の税金をつぎ込んでくれるというのだからなんとかなるだろうと、後から後から新規参入者が絶えないという奇怪な業界がひとつ誕生したわけです。
よりによってこの太陽光発電の大過剰生産・大不況時に、42円の世界一の超高額買い取り価格を設定したら、とんなことになるのか、国産保護もなしでそれをやったらわが国が好餌になるのは見えていました。
「岩手県では県内の未利用地50カ所を選定したリストを作成。県が把握する限り18カ所で契約締結、少なくとも4カ所の主体は海外資本という。」(同)
この再生エネ法を書いた役人は、まるで世界の太陽光市場のマーケティグをしなかったとみえます。
地道にいろいろな種類の再生可能エネルギー源を拡げ、それをつなげていくというオーメドックスな道を取らず、一挙に国単位でドカーンっとやった挙げ句、投機筋と中国製パネルとバイヤーに牛耳られるはめとなったのです。
こんなことはFITの先行事例のドイツを見れば、分かりきったことでした。
■地方はソーラー発電狂想曲
地方にはメガメーラーの空き地を求めて、バイヤーが徘徊し、高圧線の付近に空き地があれば吹っ飛んでくる風景がそここで見られるようになりました。
電気量販店は、大きな屋根をみると直ぐにセールスに押しかけ、農家の納屋の上にもソーラーが重そうに乗っているのが珍しくなくなりました。屋根貸し商法も大流行のようです。
なにせ、太陽光はドイツの2倍という法外な価格で20年間買い取るという、経済性を度外視したのがFITですから。
しかし、冷静に考えれば、150万くらい投資して、ほんとうに儲かるのは十何年先なんですがね。
■地方経済への貢献ゼロ
あれだけマスコミが持ち上げた「メガソーラー発電所」といっても雇用はまったく生まず、設備関係もたいした経済波及効果が期待できず、地域経済への貢献度はゼロ。
地元はただ土地を貸しているだけで 、それすらも目をつけられたのが耕作放棄地のように利用されていなかった土地や、被災でできた空き地ですから土地代は二束三文。
部品が地場調達されるわけでもなし、ギラギラ光るパネルが増殖するだけで、地元はまるでメリットがありません。
■被災地を食い物に
「海外資本の進出なんて、これまでなかった岩手県金ケ崎町の担当者の表情は複雑だ。同町では、国が太陽光発電の固定価格買い取り制度を開始した平成24年7月前後にメガソーラー事業が急増。民有地4カ所で事業契約が締結され、うち1件が大手中国企業の子会社だった。同町のケースは民有地への進出のため、細かな契約内容に町が介入できない。」(同)
■被災地の復興計画とは無縁、不採算になればさっさと撤収か
「契約満了後の土地利用も更新か撤退かで大きく変わり、まちづくりの長期ビジョンは不透明となる。「採算が合わずさっさと企業が撤退、ということも…。被災地が食い物になる」。地域に不安がくすぶる。」(同)
(続く)
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●東北メガソーラー、外資が触手 エネルギー安保に影
産経新聞 5月1日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130501-00000088-san-bus_all
【用語解説】再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度
太陽光や風力、地熱など再生可能エネルギーの電力を最長20年間、電力会社に買い取らせることで、再生可能エネルギーの利用促進をはかる。昨年7月1日から始まった。太陽光発電の価格は1キロワット時42円と、1990年代から同様の制度を取り入れているドイツの約2倍の高水準だったが、今年度は38円に引き下げられた。ドイツでは、ユーロ圏経済の停滞や電力料金高騰に対する批判などから、価格が段階的に引き下げられるなど制度見直しが進む。
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