公害大陸中国18 中国移民のカドミウム含有量が他の諸国より44%も多いわけ
私は何回か中国に旅したことがあります。鉄道やバスに揺られての長旅でしたが、いつのまにか機会があると駅の裏の畑の土をひと握りすくってみるのが習慣になっていました。
本格的な土壌分析器にかけてみなくても、土は握ってみればおおよその良し悪しの見当がつきます。
ほんとうに良い土は適度に柔らかく、握るとふわっと塊になり、すっとほぐれていきます。芳しい香りすらします。飯にふりかけてもいいかなと思うこともあります。
悪い土はバサついて握っても形になりません。干からびて死骸のようです。香りはなく、時にひどい悪臭がします。
中国の土は後者でした。長年人から見捨てられた土の残骸。愛されることをされなかった土。奪われるだけで与えられることをされなかった土の亡骸。
それはアルカリ化し、遠くない将来砂漠になって行くだろう土でした。そのような哀しい土を私は中国各地で見ました。
なぜ、こんな土にしてしまったのか、中国農民に問うてみたいとその時痛切に思ったものでした。
さて中国がとってきた過去約20年間の改革開放路線は、その「総設計師」の鄧小平がいみじくも述べたように「黒猫でも白猫でも、ねずみを捕るのがいい猫」式の手段を選ばないものでした。
そして鄧小平が提唱した「先富論」により我勝ちに富に向って14億の民が走り出したのだからたまりません。
「先富論」とは、読んで字の如し、社会主義的平等を捨てて「可能な者から豊かになり、貧しい者を引き上げよ」という政策でしたが、「先に豊かになる」という部分のみが実現してしまったわけです。
結果、短期間で収益を上げられる経済活動だけがいい経済だという歪んだ経済思想が跋扈するようになります。
社会全体の格差なき進歩、自然環境との調和、国際社会との協調というといった「大人の資本主義」ではなく、飢えた拝金亡者の思想に取りつかれた14億の民の驀進が始まります。
長い時間かけて手をかけて子孫のためにいい畑を伝えていくという農民の美徳は失せ、自分の時代にすべてを貪り尽くして恥じない収奪農法が始まりました。
しかも中国では土地の私有を認めず、都市の土地は国有、農村の土地は農民による集団所有と憲法で規定しています。(ただし、都市部では土地使用権という形で取引されている。)
つまり、中国では世界で言う意味の「農民」は存在しないということになります。
「社会主義中国」のシッポのようなものですが、農村では、農民同士で請負経営権を譲る以外は取引が厳しく制限されているために、農民は「自らの土」という意識が作られないままに、都市化と工業化の大波に呑み込まれていきます。
いずれにせよ、集団農業の軛から開放された14億の民の6割といわれる農民が、一斉に収奪農法に走ればどのようなことになるのか、考えてみるまでもありません。
時間をかけて堆肥を積み、緑肥をすき込み土壌を豊かにしていくという日本的「土作り」の代わりに、成長を早めるチッソ系化学肥料や、実なりをよく見せるリンサン系化学肥料が大量に使用されるようになりました。
そのほうがはるかに手間がかからず短期間で仕上がり、しかも職人的な農業技術を必要としなかったからです。
しかし、手間いらずのリン系化学肥料(過リンサン石灰)からはカドミウムが発生し、重金属は分解することなくそのまま土壌に長く残留し蓄積するようになります。
結果、我が国でもかつて経験したように「土が死ぬ」ことになります。土は団粒構造といって、土壌粒子が結合して集合体(団粒)となっています。
よい 団粒を作るには、土壌分子を結合させる役割の粘土成分や、微生物の住処や餌になる腐食物質(有機物)が必要です。
この団粒構造が良くないと、畑の排水性と保水性、通気性が悪くなり、作物の根の張りが悪くなって良い作物ができなくなります。
化学肥料はこの大事な土壌の団粒構造を破壊する性質を持っているのです。
適量の化学肥料ならば、土壌の性質の傾きを補正するのに役立つのですが、大量にそれだけに偏った農法をすると、たちまち土は空気の道と水の道を塞がれて干からびたようになっていきます。
そのためにそこを住処としていた土壌微生物がことごとく死滅し、地中は砂漠のような死の世界となっていきます。
すると、少しの大雨で最も滋養に富んだ表土層が流出するようになり、いっそうひどい状況になります。
そしてPHは、作物にとって好適な弱酸性からアルカリへと傾いていき、これが砂漠化の始まりです。
この死の世界で生き残るのは、皮肉なことにタフな有害虫だけです。有益な土中微生物は死に絶え、有害虫のみが生き残ってありとあらゆる病虫害が頻発するようになります。
やがてそれを防ぐために化学農薬をまるで麻薬中毒患者のように常用するようになります。
そして中国の場合、農薬規制の仕組みがないに等しいような杜撰さのために化学農薬汚染が大規模に発生しました。
結果、中国の大地と河川はどのようなことになったのでしょうか。
「2010年には武漢大学環境法研究所の王樹義教授の調査でも重金属類による土壌汚染は深刻で、また中国科学院生態環境研究センターの調査では、カドミウム、ヒ素、クロム、鉛など重金属汚染の影響を受けている面積は約2000万ヘクタールにおよび、中国の総耕地面積の約5分の1に及び、重金属類以外に農薬、抗生物質、病原菌などによる土壌汚染も進行している。」(レコードチャイナ2010年2月5日)
また、深刻な汚染を引き起しているのが有機水銀系農薬(DDT)です。これは我が国では水俣病の原因物質として知られ、半世紀前に禁止されているものですが、今でも中国では大量に散布されています。
「中国 衛生部弁公庁による2010年の食中毒調査では微生物性食中毒が4585人、化学性 食中毒が682人、有毒動植物食中毒が1151人であった。」(河原昌一郎「中国の食品安全制度-食品安全に関する中国の現状と取組-」2012年10月2日,農林水産政策研究所による)
また畑から流れだした汚染物質により河川の汚染も極限に近づいています。これに農業外の工場、鉱山などからの汚染の排出によるものも重なり、土壌、河川、空気の多重複合汚染を作り出してしまっています。
「中国での水質調査では中国の河川70%が工場廃水によって汚染されており、そのうち40%は基本的に使用できない状態であり、また都市部を流れる川の95%が重度の汚染状態にあると報告された。この汚染で中国全土で毎年1000万トン以上の穀物が減産になっている。」(同上)
「2006年度の中国における排水中の鉛の総量は333.1トンであり、その内訳は60%以上が非鉄鉱業起因で、金属関係産業全体では約90%の排出量を占めている。」(2010年大阪大学の調査による)
中国の公害病は日本のかつての公害病よりもはるかに深刻であるにもかかわらず、中国政府は2011年2月時点で公害病の存在を公式に認めていません。(北村豊氏による)
しかし、中国の人類史上最悪の公害が人体にどのような影響を与えているのか、政府が公式に公害を認めていない以上、資料は存在しませんでした。
それが思わぬところで明らかになりました。 それは米国における中国人移民の血液検査で、カドミウムが他のアジア諸国の移民よりはるかに多く検出されたのです。
「ニューヨーク健康と栄養測定調査」によると、中国大陸からの移民の血液中に含まれる鉛、カドミウム、水銀などの重金属の含有量は、他のアジア諸国からの移民よりも高く、なかでも鉛の含有量は44%も高いことが明らかになった。」(サーチナ2013年6月17日 )
カドミウムは一度体内に取り込むと排出されることがなく、放射性物質のように半減期もありませんから、ただひたすら蓄積され続けイタイタイ病などを引き起します。
中国が自らの手で国土を浄化することは、単に土壌汚染をなくすことではなく、その原因である化学肥料、化学農薬にのみ頼った農業を変えていくことが必要です。
しかし、それもこのような政府当局者の言葉を聞くと絶望的な気分になります。
「もともと中国製の食品は安全であったが、中国の食品が農薬や抗生物質を含むようになったのは、中国に持ち込み、中国で品質を無視して買い叩く日本人が原因である。日本は中国の食品安全問題に対して逃れようのない責任があり、日本人が悪いのになぜ日本人はあれこれ騒いでいるのだ。」(人民日報2008年8月27日)
すべて悪いのは日本ですか?呆れてものが言えない。
いいかげんにしたらどうですか。自分の生きている大地と水の極限まで来ている汚染の現状を見なさい!
中国人の血液中カドミウム含有量のケコはずれの多さを見なさい!
半世紀前、英国土壌協会は「50年間化学肥料と化学農薬を使用し続ければ不毛の土地となる」と言いました。
中国はそれよりはるかに速いペースで砂漠に向っているようです。
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■中国人の血液中の重金属含有量が高いのはなぜか?―独メディア
サーチナ2013年6月17日
2013年6月13日、独ドイチェ・ヴェレ中国語サイトは、米ニューヨークで行われた健康調査の結果、中国大陸からの移民は他のアジア諸国からの移民に比べて体内に高い濃度の重金属を含有していると伝えた。
「ニューヨーク健康と栄養測定調査」によると、中国大陸からの移民の血液中に含まれる鉛、カドミウム、水銀などの重金属の含有量は、他のアジア諸国からの移民よりも高く、なかでも鉛の含有量は44%も高いことが明らかになった。
この結果について、同調査報告は中国人の飲食習慣に原因があると指摘。カドミウムや鉛は人体に数十年間も残留するため、これらの重金属は中国大陸で摂取されたと考えられる。最近中国メディアが伝えている「カドミウム米」の流通や、早くから報道されていた中国近海の海洋汚染が問題になっていることから、今回の米国の調査報告は国民から多くの関心が寄せられている。
中国水稲研究所と農業部稲米および品質監督検査測定センターが10年に発表した報告によると、中国の耕地の5分の1が重金属に汚染されているという。とりわけカドミウム汚染は深刻で11省25地区にも及んでいる。さらに長江以南の地区においては、土壌中の重金属含有量がもともと高かったにもかかわらず、長期にわたる工場からの三つの公害源(廃ガス、廃水、廃棄物)排出により、土壌の重金属汚染はますます深刻化している。
12日付の新華社は、「カドミウム米」の背後には中国の土地汚染があると伝えた。中国国土資源部と中国地質調査局はこのほど、国内の重金属汚染を記した「人類汚染図」作成のための調査を実施していることを明らかにした。中国環境科学研究院の趙章元(ジャオ・ジャンユエン)氏は「中国の急速な発展の陰で、汚染物質の処理が置き去りにされてきた。長期にわたる汚染の結果が、ここ数年で現れている」と指摘。汚染に関するデーターを公開し、正確な汚染地図を作成することで有効な措置を取ることができると主張している。
■中国の土壌、40~70%が重金属と化学肥料に汚染されている―米誌
サーチナ2013年5月24日、
米月刊誌・アトランティックは、中国の土壌の40~70%が重金属と化学肥料に汚染されていると指摘した。南方都市報が伝えた。
同誌によると、中国で生産される米の1割が基準値を超えるカドミウムで汚染されている。しかし、いずれの監督部門もその責任を負おうとしない。中国国務院は今年の早い時点で土壌汚染防止監督管理システムの設立を2015年から2020年に先延ばしした。
湖南省地質研究所の童潜明(トン・チエンミン)教授は、カドミウムの基準値超えの最大原因について、大量のリン酸肥料の使用を挙げている。さらに、中国のリン酸肥料には平均で15.3mg/kgのカドミウムが含まれていると指摘した。また、中国では米のカドミウム含有量が極めて高く、国家基準の0.2mg/kgを大きく上回る1kgあたり1.13mgのカドミウムが含まれているが、長期にわたって摂取しない限り、人体への影響は少ないと説明した。
童教授が洞庭湖周辺で行った調査によると、収穫された米の41.67%から国家基準を上回るカドミウムが検出された。当局のデータによれば洞庭湖周辺の住民で足腰の痛みを訴える人は1%にも満たず、「これも一般疾病の正常な範囲内」だという。
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中国を擁護するつもりは、全くありません。
逆に、日本の輸入豚肉の6割を占めると思われる、北米のスミスフィールド社を、中国企業そうかい国際が、買収したことで、今後、日本で販売される輸入豚肉と、外食産業で、使われる輸入豚肉の安全度が、かなり下がると予想しています。
さらに、いわれのない中国側の日本悪人説に、対抗できないのは、日本の産業廃棄物処理や環境省関係の法令に、土壌や河川中の重金属含有率を、定期的に、測定する法令が、未だに存在しないと言う21世紀の現代に、あっていない法体系であるがゆえ、反論しにくいのです。
だから、日本のせいで、中国の土壌が、悪くなったと言い張るのです。
中国人は、自分達の大陸の土壌について、本当は、内容は、知っています。
すでに、西暦600年代に、その中国の土壌内容を日本に知らせ、土壌管理によって、生産性が、変わることを、遣隋使時代に伝えています。
中国は、概ね西安を中心に、青、黄、赤、白、黒と言う、5種の元土壌に分類されます。
その5種の土壌に、どういう手を加え、どういう作物を作るべきか、知っていて、その内容は、現在の日本の寺院における、5色幕や、仏旗と呼ばれる仏教を表す旗に示されていて、戦前は、日本国国旗と、1日、15日、に限って、山門の旗を、左右入れ替える作業を、全国の寺で、行われていたことなどで、伝わっていたのです。
私は、農家ではありませんから、管理人さんのように、それぞれの土壌に、どういう有機的環境を与えれば、適正な作物が、適正に、育てられるのかまでは、存じ上げてませんが、中国の農業系大学や国営研究所レベルであれば、もちろん承知しているはずです。
ただし、農民には、教えないのです。それは、肥沃な土地も沙漠も砂漠も、同じ補償金で、いつでも、召し上げるには、土地に、価値をつけては、政府が困るからです。
まずは、中国のことは、内政干渉と言われるのが、落ちですから、日本において、一般廃棄物処理場、産業廃棄物処理場において、最終処分場、中間処理保管場の排水、放流河川、場内土壌での、重金属含有率と、含有金属名を、たとえ、年数回であれ、きちんと測定する法体制くらい、作るべきと思ってます。
そういう基本的法整備が、ないから、福島第1での、汚水池のいい加減な防水層での設計が、コンサル会社が、設計でき、汚水漏れ放題の露天プールが、許可される事態になるのです。
決して、日本の環境省関連法規を違反した汚水保管プールでは、設計上は、無かったのですから。。
大体、素人でも、巨大汚水保管プールの耐圧を考えれば、ベントナイト層が、わずか5cmでは、耐えられないことは、解っていたはずで、設計者も、あくまで、一時的緊急避難的構造物として、設計してくれと言う上からの圧力での設計だったんでしょうね。
正直、全国の燃えるごみを燃やした後の焼却灰を埋める最終処分場での放流雨水は、防水層が、敗れていて、重金属が、漏れていることは、かなりの頻度で、あると思ってます。ただ、きちんとした測定データーを、採る必要がない法律ですので、中国から言いがかりをつけられても、反論できる科学的データーを持っていないので、言われっぱなしなんでしょうね。
投稿: りぼん。 | 2013年6月19日 (水) 08時31分
私は、何度も過激に不遇な扱いを受けながら復活したトウ小平氏はそれなりに尊敬しております。
しかし「先富論」による急激にすぎる国土破壊と貧富格差、そして「天安門事件」で晩節を汚してしまったのが大変残念です。
自身、苦難となった文革時期の経験を活かして、これは私が何度も書いてきている「隣の反面教師である日本の公害対策を見習え」と。
まだ共産党独占が効いていたあの大国こそ、しっかりとした農地を作って、地道にゆっくりとした経済成長を実現して欲しかった…。
人民日報?時の支配者と取り巻きがヨタ流すばかりですね。馬鹿馬鹿しい。今はとにかく何でも日本批判に繋げてるだけ。
だったらオタクの国のいつもの汚い手口で規制かけときゃ良かっただけだろうに、むしろ逆に共産党政府批判になっちゃってますね。
南の島さん、ありがとうございます。
しっかし、さすがサーチナ、記事自体が実にアグレッシブですね(苦笑)
投稿: 山形 | 2013年6月19日 (水) 08時43分
土壌汚染は全くありませんが、南西諸島のサトウキビ作は似たようなものです。土作りをしながらキビを作っている農家は少数です。堆肥を入れずに化学肥料・除草剤・殺虫剤だけで管理しています。
高齢者がリタイヤして担い手農家に農地が集約されればされるほど、その傾向が強くなっています。手際よく化学肥料や薬剤に頼って省力化しなければ、大規模化した農地を管理しきれないのです。また、得られる収入が多くないので、堆肥を購入する金銭的余裕もありません。
その結果、近年、メイチュウという蛾の幼虫が大発生しキビの芯を食い荒らし、反収が壊滅的に減っています。中国を笑えない状況です。
同じ?社会主義国ですが、キューバは有機農業の方向に進んでいますよね。政治体制だけで片付く問題ではないと思います。
投稿: 南の島 | 2013年6月19日 (水) 21時43分