原発と免震 その2 重要免震棟は半数以下しか設置されていなかった
福島第1原発で、吉田昌郎所長以下の「フクシマ・フィフティ」(実際は69名)が、最後の砦としたのが重要免震棟でした。
1号機が爆発した3月12日には、建物内部でも放射線量が上昇し始めていて、福島のオフサイトセンターには、放射性物質が内部に入るのを防ぐ設備が十分でないために、事故後5日目からは現地対策の拠点がおよそ60キロ離れた福島県庁に移されることになりました。
ですから、重要免震棟から撤退した場合、吉田所長以下の職員も福島県庁にまで下がるしかなかったと思われます。
その場合いうまでもなく、原子炉はコントロール不能になります。
福島第1原発では、事故発生8カ月前に完成した免震棟に対策本部が置かれ、吉田所長以下、最大600から500人が昼夜をたがわず詰めました。
その時のことを吉田所長は訪問した米国NRC(原子力規制委員会)の幹部に対してこう言っています。
「私たちの失敗で福島の人々は大変な思いをしている。私たちは不眠不休でここで戦う。」
原子炉建屋の爆発が相次ぎ、放射性物質が漏れ出す中、原子炉の冷却にあたる最前線でした。「仮に免震棟がなければ事故の対応は継続不可能だった」(東電)
現在、原発事故が起きた際の「最後の砦」であるこの重要免震棟について、全国17カ所の原発のうち設置されているのは半数に満たない8カ所にすぎません。(欄外図参照)
●東電・・・福島第1、第2、柏崎刈羽の3原発で設置済み
●東北電力・・・女川(宮城県女川町)・設置済み
●中部電力・・・浜岡(静岡県御前崎市)・設置済み
●四国電力・・・伊方(愛媛県伊方町)・設置済み
●日本原子力発電東海第2(茨城県東海村)、敦賀(福井県敦賀市)・設置済み
●関西電力・・・大飯(おおい町)、美浜(美浜町)、高浜(高浜町)いずれでもなし
・設置予定・・・大飯3、4号機では2016年3月末まで完成予定
・ ・・・美浜、高浜は17年3月末までに完成予定
・それまでの対応策・・・完成まで地下にある緊急時対策所で対応する
●九州電力・・・玄海(佐賀県玄海町)、川内(鹿児島県薩摩川内市)いずれもなし
・設置予定・・・具体化せず
●北海道電力・・・泊(北海道泊村)、東北電力東通(青森県東通村)、中国電力島根(松江市)の各原発は15年3月末~17年3月末までの完成を目指す
●北陸電力・・・志賀(石川県志賀町)は来年3月末までに完成予定
1995年阪神・淡路大震災以降、100kine(cm/s)以上、1,000gal(1G)以上の地震動が多数観測されています。最大は、4,022gal(4G)です。
わが日本列島は地震静穏期から明らかに地震活動期に突入したと地震学者は見ています。
しかし、この「原子炉施設耐震基準」は、阪神淡路大震災以前の地震静穏期に作成されたため、地震活動期の知見が活かされていません。
現状では、原子炉施設の事故は国家存亡に直結することが国民共通の理解になっていながら、上級のSクラスでも一戸建て住宅免震の耐震性よりも低いといったねじれを放置しています。
現在進められている与党の国土強靱化対策の中で、それらの見直しが進むことを要望します。
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