« Roentgeniumさんにお答えして 民主党の「政治主導」の失敗としての福島事故 | トップページ | 菅直人氏、民主党から追放か? 自分が誰だかわからなくなった人の病理について »

ほんとうは怖い電力改革 その10 電力自由化で増加した停電率

293
先週からの続きで、電力自由化後の現実をみています。このシリーズは順調に進行しているなと思うと、菅氏のトンデモ訴訟があったりしていっかな進みません。

たぶん今週中にはTPP情報の輪郭程度はわかるでしょうから、果たしてどうなりますか。TPP守秘義務のサインをしてもう見ているはずです。ああ知りたい!

さて、日常に戻って電力自由化です(笑)。電力自由化が需要者にとって利益かどうかの指標は、ふたつあります。ひとつは前回みた電力料金、そして今日取り上げる停電率です。

各国の大停電は下図のようですが、いずれも電力自由化後に起きています。

もうひとつ下の図と見比べてくださると、自由化後に増加したのがお分かりになると思います。

             ●最近の基幹送電設備故障による停電 (電力改革研究会)

Photo_3
関西電力、中部電力の需要量が、共に今年最大になりました。と言いますか、北海道電力を除く電力会社は、この数週間、毎日「今年最大」を更新している有様です。

この夏、猛暑というよりもはや立派な熱波を受けて九州電力の電力供給力に対する需要率が93%に達しました。軒並み各電力会社は厳しい需給見込みを出しています。 

この2年間の真夏の電力需給を受けて、今年もまた電力会社同士での電力融通は当然盛んに行われますが、再稼働に対する審査結果が半年先以上に延ばされた以上、当分電力供給的にも、経営的にも、片肺飛行が続くのは避けられません。

つまり原発は2基を残して全停止、再生可能エネルギーはとうぶんものにならない、そして頼みの火力は原油高という三重苦です。

この綱渡り状況で停電がなんとかしのげそうなのは、4兆円の国富流出をしながら高価な天然ガス、原油を買い込むことのできる経済力が日本にあるということもありますが、基本は発電設備の設備率が需要より上回っているからです。

だいたい先進国は設備率が1.3から1.4前後です。(下図参照)

           主要国における自由化開始時の設備率と自由化開始年

Photo
図 電力改革研究会  出所 海外電気事業統計、米DOE/EIA、カリフォルニアエネルギー委員会、電気事業便覧
※設備率=電気事業者発電設備の銘板容量合計/最大電力
・テキサス州は、銘板容量の代わりに夏季供給力を使用(値は小さめになる)
・カリフォルニア州の設備率は、データの制約により2000年のデータ
 

米国には3ツの送電網ブロックがあって、カリフォルニアとテキサスでは0.37も違っています。このの低い発電設備率のカリフォルニア知事が、新自由主義(レーガノミックス)にかぶれて電力自由化を断行してしまったために大停電を頻発してしまいました。 

設備率が低い国や地域で、電力自由化をしてはいけないという米国の教訓ですね。

ヨーロッパ諸国はEU指令で電力自由化が断行された結果、上図の1.0%を上回る余剰電力を食いつぶしてしまっています。

れは何度も書いているように、火力に対する設備投資や更新のインセンティブ(やる気)が、太陽光を過剰に優遇したFIT制度のために急速になくなってしまい、発電部門が原油高も手伝って荒廃したためです。

またイタリアのように2003年の記録的大停電の原因は、スイス国境付近の送電線の過負荷です。我が国なら短時間で再送電できるのですが、欧米にはこの過負荷事故に対する備えがなく18時間の大停電になってしました。これについてはもう少し後の回でご説明します。

とまれ、送電網で過負荷対策をしないでいると、ちょっとしたことで大停電になるというのがイタリアの教訓のようです。

今やヨーロッパで電力の余裕があるのは、水力を持つスウェーデンなどのスカンジナビア諸国と原発大国フランスだけてあり、他の国々はヨーロッパ広域送電網によってやり繰りしながら凌いでいる状況のようです。

特に長く寒い冬が鬼門で、ドイツなどではメルケル政権の脱原発政策と電力自由化の同時実施で一挙に7基の原発が停止し、実に7ギガワットの電力が消滅してしまいました。

そこでドイツネットワーク庁(BNA※ドイツの送電網管理官庁)は2011年8月、冬を前にしてコールド・リザーブ(予備発電所)を用意しました。

これは今までCO2問題で稼働を止めていた老朽石炭火力発電所を8基稼働させることにし、なんとか厳しい冬を乗り切ろうとしたわけです。

原発が半数停止した中で毎日曇天が続き、おまけに風も吹かないという天気です。このような最悪シナリオを描かずに、原発をゼロにすることは自殺行為だからです。

まぁ、考えてみれば、熱波の夏の我が国はこの時のドイツに輪をかけた最悪シナリオですが(苦笑)。

それはさておき実はこの時、ドイツ北部では電気はやや余っており、おまけに強風で風車はブンブン回っていました。

しかし、かんじんのドイツ南部工業地帯への送電網の拡充が遅れていたために余っているのに需要地へ送れないという悲喜劇のようなことが起きたのです。

翌年2012年は記録的な大寒波がヨーロッパ全域を襲いました。まさにBNAが予想していた「最悪シナリオ」です。

寒波により電力需要は毎日ピークを更新する反面、太陽光パネルは曇天と雨でまったく電気を作らず、風車も回らないという事態が現実のものとなったのでした。

脱原発と再生可能エネルギーに電力供給を委ねた場合、このような「最悪シナリオ」が頻発するというのがドイツの教訓です。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-19d4.html

ところで、電力自由化前までは、再生可能エネルギー(新電力)はちやほやされた存在でした。 

晴れたり曇ったりする度に変化する再性可能エネルギーの発電量は、常に優しく火力がバックアップしていました。 

また送電網も、自由化前まではよほどの距離がない限り、既存電力会社(系統送電運用者)がケーブルを敷いてくれていました。 

それは電気事業法で制限つきながらも送電義務があって発電と送電が一貫していたからで、発送電分離して別会社になれば、発電事業者は単なる営利業者ですからそんな義理はありゃしません。

ですから、いったん自由化になったとたんそんな「ただ乗り」(フリーライド)は御法度になり、再生可能エネルギー発電所は一斉に受難の時期を迎えることになるでしょう。

つまり、自由化ということは、負担の平等化であり、コストの均等化を意味するのです

今まで、不安定という致命的欠陥がありながらも、「脱原発」という政治的色彩の強い電源として優遇されていた再生可能エネルギーが、ほんとうに実用エネルギーとして一人立ちできるのかが問われるのが電力自由化ということなのですから。

それをノーテンキにも、再生可能エネルギー推進側が、新自由主義者と一緒になって発送電分離を叫ぶとは・・・!

繰り返しますが、発送電分離していないほうが、再生可能エネルギーにとって断然有利なんですよ。

さらに脱原発を最終目標とするなら、ほんとうに再生可能エネルギーが必須条件なのか真剣に考えてみてください。

新自由主義体質の飯田哲也さんや、モノを考えないことで有名な菅直人さんの口車に乗って、「脱原発の代替は再生可能エネルギーだぁ。だから電力自由化だぁ!」などと単純に信じていては、ぜったいに原発はなくなりませんよ。

・・・残念ですが正直言って、菅氏の悪のり、山本太郎氏の当選などを見ると、脱原発運動はよく言えばピュアに、悪くいえば異論を許さない、狭い凝り固まった形に変容していっているようですので、絶望的な気もしますが。

しかし、私はあきらめないで、訴え続けることにします。

■写真 水戸千波湖のコクチョウさんとハクチョウさん。実に白黒仲が良いようで。

|

« Roentgeniumさんにお答えして 民主党の「政治主導」の失敗としての福島事故 | トップページ | 菅直人氏、民主党から追放か? 自分が誰だかわからなくなった人の病理について »

原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

>2012年は記録的な大寒波がヨーロッパ全域を襲いました。…寒波により電力需要は毎日ピークを更新する反面、太陽光パネルは曇天と雨でまったく電気を作らず、風車も回らないという事態が現実のものとなったのでした。脱原発と再生可能エネルギーに電力供給を委ねた場合、このような「最悪シナリオ」が頻発するというのがドイツの教訓です。

 再生可能エネルギーが如何にクズ電力であり、社会・経済システムを破壊するものであるか、百万言費やしても、分かろうとしない或いは儲けの元だと思っている人達には伝わりません。
 一番いいのは、事実として痛めつけられることです。無責任な言い方になりますが、ドイツその他でもっと「最悪シナリオ」が頻発する=停電が多発するといいのだと思います。停電が頻発する原因が再生可能エネルギーの過剰な導入ということがわかれば、さしもの飯田哲也も言い訳はできなくなるでしょう。ですから、ドイツでもっと大いなる社会実験を深化させて、崩壊してもらうと嬉しい限りです。バカは死ななきゃ治らない、です。

>繰り返しますが、発送電分離していないほうが、再生可能エネルギーにとって断然有利なんですよ。

 全くそのとおりで、発送電分離したら競争力のない再生可能エネルギーなぞ誰も買いやしません。しかし、それでも「脱原発の代替は再生可能エネルギーだぁ。だから電力自由化だぁ!」という飯田やマスコミは、再生可能エネルギーのみは電力自由化の対象外だと考えているのだと思います。新聞社が新聞だけは消費税増税の対象外を希望しているように。

 つまり、再生可能エネルギーは、脱原発と地球温暖化防止に役立つ、だから大切なので電力自由化の対象外だと。再生可能エネルギーの信仰にも似たクリーンイメージを打破しないといけないのではと思います。
 東北学で有名な赤坂憲雄氏さえ再生可能エネルギーに関して無知を晒しています。
赤坂憲雄・小熊英二編「「辺境」からはじまる 東京/東北論」の対談で、赤坂氏は
「ぼくはある種のイメージ作りとして、再生可能エネルギーというのは最先端のテクノロジーと風土が結婚することだという言い方をするわけです。自然エネルギーというと、すぐに反文明的なヒステリーでしかないといった批判をされる。そうではなくて、降り注ぐ太陽の光や熱をエネルギーに転換するというのはテクノロジーそのものであるわけで、いま我々がようやく手に入れつつある最先端の技術なしにはありえません。
…それにしても太陽だとか風だとか地熱だとかって、無尽蔵ですよね。日本がうまく再生エネルギーへの転換を果たしたときには、それゆえ資源大国になるわけです。そういう再生エネルギーのシステムが支配的になったら、石油をたくさか持っていることの意味がなくなるわけでしょう。すると世界の秩序ががらっと変わる。近代の戦争ってエネルギーの争奪戦みたいなところがあったわけでしょう。…」

 まるで小学生レベルの理解です。むかし「異人論序説」や「境界の発生」等の緻密な著作を発表していた赤坂憲雄がこの体たらくです。再生可能エネルギーは戦争をも無くすのだそうです。ドイツのことも再生可能エネルギーの不安定性も何も勉強していない。
「太陽だとか風だとか地熱だとかって、無尽蔵」には呆れてしまいます。今利根川水系の水不足となっていますが、赤坂憲雄に言わせれば「太平洋に水なんて無尽蔵にあるじゃないの」といっているようなもの。でもこの無邪気さが曲者、強いインパクトがでてくるんですね。

ありんくりんさんの「絶望的な気もしますが。しかし、私はあきらめないで、訴え続けることにします。」の言葉に大いに期待します。

投稿: 鏡の国 | 2013年7月24日 (水) 17時02分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« Roentgeniumさんにお答えして 民主党の「政治主導」の失敗としての福島事故 | トップページ | 菅直人氏、民主党から追放か? 自分が誰だかわからなくなった人の病理について »