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菅直人氏、安倍総理提訴事件その2 民間事故調による菅氏の事故マネージメント評価

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昨日からの続きです。
※その1http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-707b.html

菅直人氏が安倍首相を名誉毀損で提訴するという前代未聞の事件が起きています。菅氏は「注水を命じたのが嘘だ」という安倍首相の2年数カ月前の言説を、今頃になって裁判沙汰にするという珍しいことをしています。

歴史的選挙を控えて、その真意はなんなのか、各方面から不信がられています。

思えば、菅直人氏こそ在任中にはTPP参加消費税増税の尖兵となり、福島事故対応には失敗し、そして発送電分離を主張し、FITを導入したのもすべて菅氏なのですから、彼なりに3年3カ月の民主党政権の総括を国民に問いたかったのかもしれませんね。

けっこうです。大いに問うてあげましょう(笑)。

●[独立事故調報告書による事故対応に対する指摘

さて昨日の「塩水注水事件」の資料にさせていただいた「カウントダウン メルトダウン」の著者・船橋洋一氏は、福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の調査報告書のプロデューサーとして同事故調査報告書を作成しています。

この報告書が特徴的なのは、政府事故調報告書(中間報告)では事故原因の核心部分である政府中枢の危機管理対応にふれないで、技術的な失敗のみ列挙するという政治的圧力すら感じるような内容だったことに対して、事故対応が的確であったのかという事故マネージメントという視点があったことです。

当時、政権与党にいて最高実力者だった菅前首相に配慮して、臭いものに蓋の最終報告書を作りあげたのなら、この巨大原発事故の真相は公式には永遠に葬られてしまうという危機感があったと船橋氏は語っています。

「カウントダウン メルトダウン」は、国際的観点も取り入れてより立体的に書かれた独立事故調報告書の続編のような存在です。

さてこの事故調報告書で、どのように菅氏の事故対応は評されているでしょうか。

3月12日以降の国家的非常事態において、官邸が「パニックと極度の情報不足」(報告書)に陥り、「テンパッた状態」(同)になったことが描かれています。

「今回の福島事故直後の官邸の初動対応は、危機の連続であった。制度的な想定を離れた展開の中で、専門知識・経験を欠いた少数の政治家が中心となり、次々と展開する危機に場当たり的な対応を続けた。決して洗練されたものではなく、むしろ、稚拙で泥縄的な危機管理であった。」(報告書)

この極度の混乱状況の中で、菅首相は理性が吹っ飛んだ半狂乱状態になっていたことも報告書に記されています。

菅氏は、一切の助言に対して「言い出したら聞かない」(報告書)状態となり、過剰な政治介入とスタンドプレーのみに奔走しました。

たとえば、12日ベント準備に全力を尽くしていた事故現場に突如「陣頭指揮」に行くと言い出し、官邸内部でも枝野官房長官など多くのスタッフが反対をしたにもかかわらず、首相は聞く耳をもたず強行しました。

当時現場は、原子炉に海水注入をしようにも炉内が空焚きのための高気圧により、通常のポンプでは注水できない状態になっていました。

だからこそ、圧力を逃がすために早急のベントが必要だったわけですが、しかしこれも停電のために、高線量下の1号機原子炉建屋内に突入して手動ベントを決行するしかない状況でした。

そのために既に50代以上の「決死隊」6名の編成が完了していました。彼らは癌になることを覚悟のうえで、それが発症しても高齢になっているために進行が遅い年代が志願しました。

彼らの名前は公表されていませんが、ご無事であることをお祈りします。

一方菅氏は「なにをグズグズしているんだ」と激怒し、「陣頭指揮」(首相の国会答弁時の表現)に向かったのです。

この一分一秒でも惜しい事故現場の修羅場に首相自らが乗り込み、最前線指揮官を小一時間拘束しに来るという前代未聞のアホーマンスを知った吉田所長はこう言ったそうです。

私が総理の対応をしてどうするんですか。」(報告書)

事故現場にヘリで乗り付けた首相は、居合わせた武藤副社長をどなりつけ、わめき散らし、吉田所長の「決死隊を作ってでもやります」というひとことを聞いてやっとお引き取り願えたそうです。

局、この決死隊の突入のかいなく、手動ベントは失敗に終わり、高圧コンプレッサーでの高圧注水することとなったのですが、このことについて、報告書はこう述べています。

官邸の決定や経済産業相の命令、首相の要請がベントの早期実現に役立ったと認められる点はなかった。」(同)

また、冷却機能喪失、炉心融解に直接結びついた電源喪失に対して、官邸は東電の頭越しに40数台の電源車を送りましたが、GE製の特殊なコネクターのために使用ができないという信じられない大ポカを引き起しました。

これを報告書はこう述べています。

「官邸では福山副長官がその手配を中心に担当し、どの道路が閉鎖されているのかわからないので、各方面から40数台の電源車を手配した。しかし、これらの電源車は事故対策にほとんど貢献しなかった。」(同)

そもそもこんなことは専門家がやるべきことで、それこそ「専門知識・経験を欠いた一部の政治家」がするべきことではありません。

そういえば、菅氏はポンプのバッテリーの寸法まで口出ししていたとの記録もあり、近代的危機管理を知らない瑣末主義と評されています。

この報告書には書かれていないようですが、菅氏の思いついたヘリからの冷却水投下は、パイロットたちを危険におとしめただけでなんの効果も上がりませんでした。

これをテレビでみていた米国大使館内の「トモダチ作戦」本部は、「これが先進国のやることなのか」と唖然としたそうです。(ケビン・メア「決断できない日本」)

ちなみにあのヘリからの海水投下という思いつきも、彼が学生活動家の時に見た安田講堂攻防戦からヒントを得たもののようで、ため息がでてきます。

また官僚組織は菅首相の強圧的、恫喝的とも言える指揮に恐怖し、まともな判断力を失って、ひたすら保身と責任転嫁のみに走ったことも分かりました。

たとえば、官僚はSPEEDIによる放射性物質の拡散状況を知りながら、それを官邸に形式的にFAXしたのみで、その情報の重要性は官邸の誰もが知らないという驚くべき状況だったようです。

私はこれを組織的隠匿だと考えていましたが、事態はもっと幼稚で、単に官僚をこの危機においても使いこなせなかっただけの話だったようです。 

専門家として指揮を担うべき原子力安全委員会の斑目春樹委員長もまた、菅首相に振り回されるような状態に陥りました。

「(菅首相の)強く自身の意見を主張する傾向が、斑目委員長や閣僚に反論を躊躇させた。」(同)

12日午後3時36分1号機建屋が水素爆発をしましたが、それに対しても斑目委員長は、「あー」と答えたきり頭を抱えて判断不能に陥る状態でした。

この斑目委員長は官邸にいたただふたりの原子力専門家だったにかかわらず、事態の深刻さと首相による強ストレスのために判断停止状態でした。

この腰が抜けたようになった専門家を見て菅氏はいっそう逆上し、周囲を「おまえ」呼ばわりで罵り散らし、まったく耳を貸そうとしない様も描かれています。

後に菅氏は保安院、安全委員会、東電に対して極度の不信に陥り、官邸から携帯で昔の学生運動仲間を招集し、勝手に内閣参与に任命して危機対応に当たらせましたが、その多くは原子炉事故はおろか原子力に対してすらまったくの素人にすぎませんでした。

その後のドライベントの避難地域の設定に対しても、菅氏は既定の3キロでは足りず、はるかに大きな避難地域を設定せねばならないにもかかわらず、それを失念し、場当たり的に拡大して避難を妨げました。

というか、彼の念頭には最高指揮官として避難まで含めたトータルな事故対応を指示すぐ立場にありながら、原子炉にのみ集中している状況だったようです。

これは元来、独善的でわがままな彼の性格が、この極限状況でさらに加速されてしまい極度の視界狭窄に陥ってしまったからです。

また今回、菅氏が提訴した「海水注入」については、12日5時55分に海水注入作業を進めていた事故現場に対して、突如その夜になって「塩水だぞ。影響を考えたのか!」と叫びました。

狭い意味では、なるほど確かに菅氏が主張するように「海水注水を命令したのは嘘というのは虚偽」は、事実の半面では正しいとも言えます。

つまり彼は「塩水だぞ。影響を考えたのか!」と怒号しただけといえば「だけ」で、注水停止を命じたわけではありません。

この暴走する首相の「もっと検討しろ!」という怒号に対して、斑目委員長や武黒フェローなどの専門家がそれを制止できず、それどころか彼の強権的態度にひれ伏してしまい「意をくみ取る」ことのみに汲々としていたからです。

いみじくも斑目委員長は報告書の中でこう情けないことをこぼしています。

「私としてはもっといろいろなことを伝えたかった。」、「菅首相の前で大きな声で元気よく言える人は、相当な心臓の持ち主だ」。

議事録を作らなかったのは、「首相に録音の許可をもらうことが怖くて言い出せなかった」との官僚の声もあります。(産経新聞3月1日)

この危機対応会議の議事録がなにひとつないというのが、今回の福島事故総括を遅らせた大きな原因となりました。

当時官邸にいた「専門的知識・経験のない一部政治家たち」は、議事録がないことを幸いに、口止めをしたり、口裏合わせすらして全貌解明を妨げました。

たまに出てくる情報は「一部政治家たち」からのマスコミリークであり、「東電が原子炉に塩水をいれると痛むから嫌がっていて注水ができないでいる」などという事実ではない憶測も多く含まれていました。

「痛むから東電が注水を渋っている」ではなく、技術的に高圧の炉内に注入できずに苦闘していただけです。

さて菅氏の「(注水を)検討しろ!」という怒号に、武黒フェロー(東電の連絡担当者)が震え上がり、吉田所長に直に携帯電話し、さらに頑として停止に応じない吉田氏を屈伏させるために東電社長まで引っ張りだして「業務命令」の形にしたわけです。

このような状況下で、菅氏が「検討しろ!」と怒号すれば、それが「停止しろ」だと解釈して当然ですが、それにしてもくどうしようもない東電の腰抜けぶりです。

とはいえ、これをしてしゃらっと菅氏は、こう書くのですから鉄面皮なのか、物忘れがひどいのか、まぁ常人ではないことだけは確かです。

「事故発生日の翌日の夕刻、東電上層部からの海水注水停止の指示に対し、吉田所長は現場の責任者として、また技術者の立場から注水の継続が必要と判断し、上層部の意向に反して独断で注水を継続した。英断だ。」(2013年7月12日菅直人ブログ)

なるほど狭い意味で、菅氏が言うように吉田所長に注水停止を「命じた」のは武黒フェローであり、彼からの「吉田は頑として言うことを聞かず注水を継続している」という報告に動転した東電本社でした

だからといって最高指揮官の狂態が許されて言いわけではありません。菅氏は確かに「中断」も命じなかったし、注水命令も(既に現場が独自に実施していましたが)とりあえず5時56分に命じてはいます。

この意味で菅氏の主張は半分正しいともいえます。ただし御覧になったように、彼にとってのみの都合のいい「半分」にすぎません。

最高責任者という存在は、現場指揮をすべきではありません。それは専門知識と経験を持つ者がすればいいのです。最高指揮官は、その者を任命し、起きた「結果」に対して責任を負えばいいのです。

しかし、菅氏は、現場指揮にまでいらぬ介入を繰り返し、混乱を拡大した挙げ句、結果に対しては「オレは悪くない。悪いのは○○だ」と責任逃れを繰り返しました。

この○○は、ある時は東電であり、ある時は安全委員会であり、ある時は原発そのものでした。

東電撤退を止めたのはオレだ」というのが菅氏の自慢のようですが、あれは事故現場から吉田所長が関連会社の社員を撤収させ、東電社員だけで対応しようとしたことが、猜疑心に満ちた菅氏の脳内フィルターで転換されて「東電撤収」に変じただけです。

そして猜疑心に凝り固まって東電本社にまでに突撃をかけたのですから、なんともすごい。

そういえば民主党大反省会」とやらで彼は、反省どころか「悪いのは小沢と自民党」と言い放って失笑を買っていましたね。そういう品性の人間なのです。

そして今回は「悪いのは安倍だ」と言いたいようです。まったく最高指揮官としてのプリンシパルを逸脱しています。

菅氏はブログの中で「安倍首相から反論が来ない」ことをあげて勝利宣言を出しているようですが、馬鹿か。

歴史的選挙の前夜に安倍首相がこんなどうでもいい提訴に「反論」などするわけがないでしょう。

このような菅氏の極度に幼児的な自己中心的体質が事故をあれだけ深刻にしてしまった原因のひとつなのです。

これについて報告書はこのように結論づけています。

官邸の議論は結果的に影響を及ぼさなかったが、官邸の中断要請にしたがっていれば、作業か遅延していた可能性がある危険な状況であった。」(同)

この部分で、かなりはっきりと菅氏の「オレは注水中止など言っていない。言ったのは東電だ」という主張を退けています

このように菅直人という異常な精神形質を持つ人間が、事故対応の指揮権のすべてを強引に掌握したために、本来行われるべき的確な権限委譲がなされずに、事故リスクをかえって拡大してしまいました。

いわば、悪天候の中でエンジンが炎上した旅客機のコクピットを「専門知識も経験もない」素人が占拠して、思いつきでそこら中のスイッチを押しまくっていたようなものでした。よく墜落しなかったものです。

報告書はこう結論づけています。

少なくとも15日の対策統合本部設置までの間は、官邸による現場マネージメントが事故対応として有効だった事例は少なく、ほとんどの場合、まったく影響を与えていないか、無用の混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていたものと考える。」(同)

                     ~~~~~~~~

結局、このパニックの中でただひとり冷静さを失わなかった吉田所長が、官邸と東電本店の命令系統を無視して独自に海水注入作業を続行していたために最悪の事態は避けられました。

吉田氏の最大の敵は、原子炉ではなく、東電本社と官邸だったようです

吉田氏は、津波の過小評価やICの忘却などいくつかの失敗をしていますが、もし現場責任者が斑目氏や武黒氏、あるいは清水社長のようであったなら、我が国は最悪シナリオに突入していたことは間違いありません。

菅氏が注水事件でいちゃもんつけのような提訴に踏み切ったことを歓迎します。

法廷で様々な事故対応資料や証人が集められ、菅氏が犯した歴史的過誤が白日の下にさらされるでしょう。

関連記事 船橋洋一「カウントダウン メルトダウン」を読む(第1回~第4回)は以下でご覧ください。
      http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-2.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-15e5.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-a56d.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-a96e.html

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原子力事故」カテゴリの記事

コメント

とても悪意に満ちた文章ですね。菅氏が自分の都合のいい事実の「半分」だけを取り上げているのだとしたら、その残りの「半分」をご自分の都合のいいように取り上げていらっしゃるのが、こちらのブログだと感じました。
これまでの事故調査報告を全面的に信じるのはいかがなものでしょう。いまだに東電はテレビ会議の記録を全面開示していません。事故原因も明らかになっていません。原発事故を起こしてしまった日本の、国民の一人として、“真実”に近づくためにも意義ある提訴だと、私は思います。

投稿: | 2013年7月19日 (金) 20時31分

名無さん。そのとおりです。意義ある提訴です。あなたとは結論部分において異なるかもしれませんが、この「注水事件」に関して新資料が出ればほんとうにいいと思います。

ただ、3ツある事故調の報告書に関して、その「注水事件」に関してほとんど一致していることをお考えください。
情報が複数あってそれが一致した場合、それは妥当な「真実」なのです。東電といわれますが、それは新資料が出た場合、また再議論するしかないのです。

「悪意」と言われますが、私はできる限り菅氏の言動を忠実にトレースしたつもりでおります。どの部分が「悪意」で歪められたのでしょうか。

投稿: 管理人 | 2013年7月19日 (金) 22時53分

まず、「意義ある提訴」だとお思いになるのなら、「どうでもいい提訴」「いちゃもんつけのような提訴」とは書かないほうがよろしかったかと思います。
提訴の時期について、「今頃になって」と書かれていましたが、菅氏は吉田所長の回復を待っていたのだと思います。ことの真相を知るために、吉田所長にぜひきいてみたいことがあったのだと。しかしそれは叶わず。安倍総理には再三ブログで問いかけをしたにもかかわらず、いつまで待っても謝罪も訂正も反論もなく。ちょうどネット選挙が始まったこともあり、その在り方を問う問題提起として「いま」だと思われたのではないでしょうか。
「SPEEDI」の試算データについては、3月12日の事故当日から、福島県に送信されていたことがのちに明らかになっています。それが地域住民の避難に活用されなかったのは、官邸がというより福島県に問題があったといえるのではないでしょうか。
菅氏が招集した人のなかには、小出教授のような方もいらっしゃいました。原発の素人ばかりと断じるのはいかがなものかと。
また、「海水を入れると痛む」については、東電が開示したテレビ会議映像のなかでも職員がそのようなことを発していました。普通に考えて、東電がそれを危惧していなかったはずはない、と思われます。
さらに、吉田所長の英断とされる海水注入によって、かえって爆発が誘発されたとの説もあるようです。となると、菅氏が海水注入のリスクにこだわったことに正当性が出てきてしまいます。何が正しかったのか。まだ決めつけることはできないのです。
最後に、民主党の大反省会での発言について。菅氏は「悪いのは小沢と自民党」などとは言っていませんでした。小沢氏について正直どう思うかなどと司会者に質問され、決して誉めてはいなかっただけで。あとから「悪いのは」という枕詞をくっ付けたのは、マスメディアです。
このように、菅氏が絶対的な「悪」という前提で原発事故をとらえること自体、もう一度、立ち止まってみる必要があるのではないかと感じます。私もすべての情報を把握しているわけではありません。ただ、あまり決めつけず、鵜呑みにせず、“真実”を追求していきたいと考えています。

投稿: | 2013年7月20日 (土) 01時13分

まずハンドルネームを書いてから投稿ください。それがルールです。

公平に見て菅氏の「いっちゃもんつけ」です。なぜなら2年以上たって、しかも歴史的選挙の終盤で首相経験者が選挙戦を戦っている現職首相を訴えるのですから、誰が見ても常識的なことではあるはずがありません。

もし安倍氏の言説を批判したいのなら、選挙前にいくらでも時間はあったはずで、ネット選挙になるのも半年前からわかっていたでしょうに。

なぜ「いま」なんです?それは選挙応援にも呼ばれない、身内の民主党からさえあからさまに迷惑がられているから目立ちたかったとしかおもえません。普通、大人はこんなことをしませんが、彼ならばやるということです。

ただし裁判の過程で彼の所業が白日に照らしだされるという意味では「意義ある裁判」です。

福島にSPEEDIが送信されていた、だからなんなのです。送ったからもう福島県の責任ですか。「送った」だからお終いですか?国の責任がそれで終わるならけっこうです。ならば国なんぞいらない。そこを問うています。

菅氏がSPEEDIを「知らなかった」というのは官邸の証言にもあります。菅氏に教えなかったのは官邸に居た官僚の責任でしょうね。なぜ、そうなったのか、そこが問題なので、「福島には送っておきました」、「官邸にはFAXが着いていました」、ではなんの答えにもなりません。

つまりあの巨額な税金で作った避難誘導に決定的な役割を果たすべきものが、まったく役立たなかったたわけです。それを役立てるべき立場にいた国の責任を私は問うています。

海水を入れるリスク?その科学的根拠を示してください。ではあのまま海水注入をやめて、空焚きを続行していればよかったのですね。冗談も休み休みおっしゃって下さい。

東電本社の社員が「痛む」と言った?もう一回言います。だからなんなんです。私は東電なんかこれっぽっちも肯定していませんよ。私は書いたように吉田所長の現場判断を称賛しているのだけです。

吉田氏の「敵」は東電本社と官邸でした。これはあの事故を総括するほとんどの人が言う定説です。

私は菅氏を「絶対悪」だなどと思っていませんよ。座るべき椅子を間違えて日本を破滅寸前にまで追いやった愚かな人だと思っているだけです。

「首相の器」ではなかった人が、いかなる巡り合わせか最高権力者になってしまい、それが不運にも100年に一度の大災厄の時の最高責任者にめぐり合わせた、その我が国の不幸を言っているのです。

なにもない平時なら菅氏はただのイラチな、「懇願してやっと会えた」中国首相に顔も上げられないような無害無能な首相にすぎませんでした。
しかしあの重大事に官邸の主だったことは彼にとっても、私たち国民ににとっても悲劇以外なにものでもありません。

阪神・淡路大震災時の村山首相も無能でしたが、しかし対応を丸投げしただけましでした。菅氏は現場の瑣末なことまて口出しし、ありえない指揮系統逸脱をして大混乱させたから始末が悪いのです。

事故調報告書が言うように、「少なくとも15日の統合本部設置までの間は、官邸による現場マネージメントが事故対応として有効だった事例は少なく、ほとんどの場合、まったく影響を与えていないか、無用の混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていたものと考える」べき人なのです。

あなたも最低「カウントダウン メルトダウン」や各種事故調報告書を読まれることをお勧めします。私がこれらを読み込んで書いていることは、私の過去記事を検索なさればわかるでしょう。


投稿: 管理人 | 2013年7月20日 (土) 07時12分

名無しさん。

深夜の長文コメントご苦労様です。
ですが、前半部分はそれこそ菅直人擁護を前提とした憶測の文章にしか思えないですね。

んで海水注入の問題?
判断の是非はともかく自動車のバッテリーを集めてポンプで注水しようとはしましたが、ECCSに回すべきだった?
後からなら何とでも言えます。
また、スリーマイル最大の教訓はECCSどうこうではなく、電源のいらない「ICは絶対に止めるな」です。
ここで吉田所長が決定的なミスをしたとも言えますが、実際にはICの取り回しが悪くて手動バルブに手が届かなかったとか、狭くて作業が困難だったとかという話は、ディーゼル発電機や配電盤の配置同様にプラントそのものの問題であって、所長の責任ではありません。ベント弁操作も同様です。あの極限の状態でのことです。

あなたこそ、先入観の塊ですね。官邸の制止を振り切ってヘリで乗り込んで貴重な時間を浪費させたのは誰なのか、誰でも知っていることです。

ICが津波の前から壊れていた可能性も指摘されていますが、当分検証には時間がかかることでしょう。それでもそこに飛び込んで行った作業員がいるんですよ。

投稿: 山形 | 2013年7月20日 (土) 07時41分

連投失礼します。

総理大臣ってのは、震災全体の被災対策の責任者のトップです。

「オレは原発に詳しいんだ」などと出ばっていかずに、特に青森~茨城(あえて被災3県などというマスコミ擁護は使いません)の大津波や内陸部の広大な震災被害まで全体を俯瞰して指示をださなければいけません。
原発は部下や専門家に全面委任しなければならないはずで、あの行動は論外です。

どれだけ自己満足で無責任な行動だったか、猛省を促したいところですが…なにしろ性格そのものに問題があったとしかおもえませんね。
民主党にすら疎まれる昨今の行動を見るにつけ、あくまで市民運動家の1人に過ぎず、組織のトップに相応しい人間でなかったことは明らかですね。
そんな男を首相にしてしまった国民一人一人にも責任があります。

安倍総理に非があったとすれば、第1次政権時代の「原子力発電所は十分な安全対策が取られており、事故は起こり得ない」としたことです。
もし、津波の危険性を受け入れていたとしても、おそらく対策工事は間に合わなかったかとおもいますが。

投稿: 山形 | 2013年7月20日 (土) 08時03分

名無しさん。

この記事では「菅氏に都合の良い話題」を取り上げているわけですが、何が不満なんでしょうか?
何故か勝手に菅氏に不都合なことばかりとされてますが、正反対でしょう。日本語分かりますか?

つまり、あなたのおっしゃるようなことこそ菅直人への爆弾投下そのものなんですよ。

投稿: 山形 | 2013年7月20日 (土) 11時57分

管理人さま

名無しです。
ハンドルネームの件、大変失礼いたしました。

提訴の時期についてですが。菅氏は少なくとも半年ほど前から何度か安倍総理に謝罪・訂正を求め、反論があればおききするとブログに書いていたかと。それを無視し続けてきた安倍総理に不誠実を感じるのは、私だけではないと思います。また、よりによって「いま」なのは、ネット選挙が解禁されたからこそ、ではないでしょうか。事実に反する記載をネット上に放置し、それが選挙期間中にまで及んだことを問題視しているのだと。安倍総理はこれまで、ネットでの発言を積極的にされてきたのですから、謝罪の必要無しとお考えだったとしても、事実関係の訂正だけは選挙期間前までにしておく必要があったのでは。安倍総理がもっと早く応じていれば、提訴はなかったかと思います。

投稿: 名無し | 2013年7月20日 (土) 23時12分

管理人さま
山形さま

これ以上は水掛け論になるだけなので、もうひとつだけ。あのとき、菅氏が現場介入せず、東電と官僚と原子力ムラの学者に任せていれば、被害はもっと小さくて済んだ、というのは、果たしてそうでしょうか。事故後の会見や報道などを見る限りでは、彼らに、一任されるに足る能力があったかどうか、甚だ疑わしく思われてなりません。トップが「部下と専門家」に一任してもいいのは、その「部下と専門家」が信頼に足る力を備えていると、トップが判断した場合に限られるのではないかと。そして、菅氏は吉田所長に会って初めて、「この人になら任せられる」と判断したのではなかったかと。まあ、何を言っても、菅氏を擁護していると言われるだけでしょうから、「いちゃもん提訴」が事故検証に新たな動きをもたらすことを祈りつつ、無駄な行為はここまでとさせていただきます。

投稿: 名無し | 2013年7月20日 (土) 23時18分

名無しさん。これで互いにブレークということにしましょう。おそらく、あなたは原子力に頼らない社会を望んでおられると思いますし、私もまったく同様です。
私の場合、が故にあのような人に広告塔になられては困ると思っていました。

もし菅氏が望むように脱原発運動の先頭にたちたいのなら、批判を真っ正面から受け止めた事故対応の真摯な総括が必要です。それが彼には望めない以上、退場願うしかない人なのです。

さて、「東電と官僚と原子力ムラの学者に任せていれば、被害はもっと小さくて済んだ、というのは、果たしてそうでしょうか」と書かれています

15日に統合本部ができて、事務局長だった細野氏が真っ先にやったのは、専門家を中心とする実行部隊のブレーンチームを作ることで、近藤駿介原子力委員会委員長にリーダーを依頼したことです。

近藤氏は、原子炉の確率論的安全評価の第一人者であり、この時期、海を隔てて同じく福島事故の分析と対応に苦慮していた米国側原子力機関トップとも人的ネットワークを持っていました。

近藤氏は、当時原子力委員会委員長という「推進側」にたまたまいたために、斑目安全委員長の領分を荒らさなかっただけでした。「最悪シナリオ」を書いたのは彼です。結局、彼の指導の的確さもあって押さえ込みに成功します。

また、いま非常にいい仕事をしている田中俊一原子力規制委員会委員長もまた原子力委員会委員長代理でした。

この二人とも「原子力村」です。しかしこのお二方がいなければ、事故収束も出来なかったし、原発再稼働審査も出来なかったのは事実なのです。

近藤氏、田中氏に共通するのは、優れた専門知識だけにとどまらず、原子力の危険性を熟知していることです。

諸外国の原子力行政のトップは米国NRCにしてもフランスANCにしても皆出身は、「原子力村」です。
問題は出身がどこかではなく、その人の見識ではないでしょうか。

また確かに東電は首脳部は腐り切っていましたが、あの福島第1原発に吉田氏と共に残る決意をした67名もまた東電社員だったことをお忘れなく。

人は所属や出身ではないのですよ。同じ「原子力村」でも、斑目氏のような人もいれば、近藤氏のような人もおり、東電社員でも武黒氏や清水氏のような人もいれば、吉田氏と無名の決死隊に志願した所員も大勢いたということです。

菅氏はその有為な指導者を見つけて据えることであり、据えた後は、己が責任を被る決意をする事だけです。

名無しさん、福島事故については100本を越える記事を書いていますから、カテゴリー「原子力事故」から入って御覧ください。
では。

投稿: 管理人 | 2013年7月21日 (日) 06時09分

時々ですが、記事を読ませていただいています。

海水注入の件については、現職総理(産業競争力会議の議長でもあり、ムサシの大株主でもある)・安倍晋三自らが風評の発信源となっていることが、問題視されるべきなのではないでしょうか。

この件の経緯など詳細については、カレイドスコープさんの2011年5月22日記事及び2013年7月15日記事に詳しく書かれています。

http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-558.html

http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-2233.html

また関連記事についてですが、船橋洋一氏がどういう立場の人間も慎重に考慮に入れる必要があるように思います。親米派であること以上に、ジェラルド・カーティス氏と共にCIA情報提供者という指摘もあります。

①船橋洋一(1944-)の略歴:北京生まれ。1968年東京大学教養学科を卒業し、朝日新聞社入社。1975~76年ハーバード大学のニーメンフェロー・プログラムを受ける。

1984年朝日新聞社ワシントン支局員となり特派員をした後、87年米国際経済研究所(IIE)客員研究員として、円、ドル、ドイツマルクの通貨調整の力学を1年近く研究。所長はフレッド・バーグステン C. Fred Bergsten(1941-)で、カーター政権時代、財務次官補を務めた政策プロである。

1993~97年朝日新聞社アメリカ総局長を務め、97年から1年間安倍フェローとして研究。この間、1996年にニューズ・コーポレーション News Corporation Ltd(米)とソフトバンクがテレビ朝日に対し敵対的買収を仕掛けるという騒動があった。

1999年朝日新聞社コラムニスト・特別編集委員となり、2000年には朝日新聞社役員待遇を受ける。2003年2~4月米国コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー、2005年8月~、米国ブルッキングス研究所に特別招請スカラーとして滞在。

2005年朝日新聞社社長に就任した秋山耿太郎(1945-)による改革路線の下、2007年に同社主筆となる(同職は、同新聞社の4本社編集局長と論説主幹の上位に位置するもので、広岡知男(1907-2002)以来30年間空席となっていた)。

2010年12月15日付で朝日新聞社を退職。2011年、一般財団法人日本再建イニシアティブを設立し、理事長に就任。一般財団法人日本再建イニシアティブの下に、福島原発事故独立検証委員会を設立し、プログラムディレクターに就任。

②船橋洋一の妻・木下玲子(1964-)の略歴:米国ハーバード大学ビジネススクール卒(MBA)。1987年日本興業銀行に入行し、13年間在籍。企業の財務リストラクチャリング、リスク管理等を経験。

2000年4月リーマン・ブラザーズ証券会社のヴァイス・プレジデントに就任、不良債権バルクセールや投資金融アドバイザリー業務に従事。2002年11月東京スター銀行のシニア・ヴァイス・プレジデントに就任、DIPファイナンス、再生ファイナンス、バイアウトメザニンビジネスを立ち上げ、日本のDIPファイナンス市場を開拓。

2004年8月エスビーアイ・キャピタル株式会社(現・SBIキャピタル株式会社)入社。同年11月同社常務取締役となる。2005年7月同社取締役執行役員常務。

2006年1月SBI債権回収サービス株式会社代表取締役執行役員COOに就任。同年6月SBIキャピタルソリューションズ株式会社代表取締役COO及びSBIホールディングス株式会社(SBIは2006年ソフトバンクから独立)取締役に就任。米国日本証券アナリスト協会検定会員。

投稿: Roentgenium | 2013年7月22日 (月) 16時19分

菅氏擁護の論調として、脱原発に突き進む政権を弱体化させるための陰謀だと呟かれているのですが、現実には菅氏の主導した脱原発政策も脱原発を最も妨げている一つになっていると思います。

メガソーラーは原発の代替にはなり得ず、電力会社の負担をいたずらに増やしているだけです。原発の負担の上に更に重荷を載せています。電気代値上げにより、震災復興の負担や所得減に苦しむ市民や企業が脱原発よりも経済優先を選択することを後押ししています。

TPPを突然に言い出したり、メガソーラーによるミスリードした菅氏を擁護のする気には、全くなりません。結果だけをみたら、菅氏こそCIAとか国際金融機関やグローバル企業と繋がって策動していたと、私は言いたい気分です。

投稿: 南の島 | 2013年7月22日 (月) 19時10分

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