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2013年7月 3日 (水)

ほんとうは怖い電力自由化 その2 問題児・再生可能エネルギーを支えるためにかえっておかしくなった電力の世界

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私が奇妙なことに思えるのは、新自由主義政党である維新の会とみんなの党が、こぞって「脱原発」を唱えていることです。

私も脱原発は基本的に支持していますから悪いとはいいませんが、その方法論がまったく通俗的脱原発論の域を抜けていないのはどうしたことでしょうか。

セットメニューよろしく、必ず「脱原発」の添え物には再生可能エネルギーと電力自由化がくっつくことです。

なんなんでしょうね、この常識のように語られている脱原発=再生可能エネルギー=電力自由化という三点セットの図式は・・・。

飯田氏によれば、送電まで電力会社が占有しているから、再生可能エネルギーなどのPPSが不当に差別されて高い託送料を吹っ掛けられてケシランので、ならば発電と送電を分離してしまえ、そうすれば再生可能エネルギーも拡大して、電気料金が安くなる、という論理です

発送電分離して電力会社を解体すれば脱原発だぁ、参ったかぁということのようです。

困った人たちだ。東電に復讐したい気分と、エネルギー問題をごっちゃにしています。

この三つにはなんの関連もありません論理の前提になっている脱原発の代替エネルギーが再生可能エネルギーだという迷信からいいかげん醒めたほうがいいし、電力自由化はかえって脱原発の首を締めるだけものです。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-8f2d.html

再生可能エネルギーは、はまる所を得れば素晴らしいエネルギーですが、それはたとえば風力の強い北海道で出来た電力を短い送電網で消費出来るならば、という条件があってのことです。

それを津軽海峡を越えて大消費地の関東まで運ぼうなどと思うと、海峡を渡る送電ケーブルの大増強をしたり、長大な距離の送電網を延ばさねばならなかったりしてバカバカしい限りです。

私には発送電分離した場合、再生可能エネルギーの電気のためだけに、そんな送電網を敷いてくれる奇特な送電業者が現れるとは思えません

ですから、FIT(全量固定価格買い取り制度)の甘い言葉に釣られて再生可能エネルギーに参入した発電業者は、泣く泣く送電網コストを一部負担したり、計画全体の見直しを迫られている始末です

あのFITの生みの親のひとりである孫さんのSBエナジーも、北海道にメガソーラーをつくったのはいいですが、引っ張れなくて苦境のようです。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-1170.html

そして、仮に厖大な建設コストを使って送電網が敷いたとしても、これだけで問題は終わったわけではありません。

再生可能エネルギーを、自由競争という新自由主義者が大好きな市場原理で運用すれば問題は少ないのですが、FITという世にも稀なる馬鹿げた制度を作ってしまったために、問題が複雑化してしまいました。

FITとは、要するに、「電力需給や原料需給とはまったく関係なく、市場価格より高く買うことを義務づける」というおおよそ自由主義経済の国とは思えない制度です。

初年度は42円という驚天動地の世界最高値がついたので(※)、砂糖にむらがる蟻のように海外からさえメガソーラーに集まってきました。 ※現在のドイツFIT買い入れ価格22円

さすがに25年度は見直して37.8円にまで落とすようですが、それでもなんと風力の2倍です。

これで一気に再生可能エネルギーを普及させようということのようですが、先行事例のドイツでは大変な社会問題を引き起してしまいました。

ひとつには、再生可能エネルギー発電所のバックアップが足りなくなってしまったのです。

中学生にも気がつくことを、ドイツ人は忘れていたのです。太陽光は夜には発電しないし、曇りや雨となればただの箱です。風力は風がなければただの巨大ウチワにすぎません。

そうなると、発電しなくなっている時は、一体だれが発電しているのでしょうか?はい、そのとおり。火力や水力、原子力などの既成の電源です。

たとえば、午前中は風がなくてゼンゼン発電してかったものが、午後晴れたらブンブン発電するようになるとすると、今度は電気が余ってしまいますね。

しかし気をつけよう、風車は急に止まらないのです。再生可能エネルギーは発電を抑制できないために、送電会社は全量買電することを義務づけられています

となると、いままで一生懸命止まっていた風力発電の穴を埋めていた既成発電所は、その瞬間にお役御免になってしまいます。

そしてまた止まると、発電しろと指令がきます。一日何回もの稼働開始、停止を繰り返すのは日常的なことのようです。やってられませんね。

この調子で自然条件で発電したり、停止したりする掟破りの電源に合わせて、買い取り価格が半値以下の既成発電所は動いたり、止まったりしているのですから切ないもんです。

というわけで、ドイツの電力業界では再生可能エネルギーは鼻つまみ者になりました。というか、ならばもう火力なんかは止めてもっと条件のいい再生可能エネルギーに乗り換えようという動きが始まってしまったのです。

まして今のような円安、原油高の相場で火力なんかを動かしているのがバカバカしくならないほうがおかしいですよね。

今は電気事業法で電力会社は需要を満たす発電を義務づけられているので(その代償として、総括原価方式や地域独占があるわけですが)発電義務を果たしていますが、電力自由化となれば話は別です。

となると、火力発電に対する投資インセンティブ(※)は、一気に冷え込んでいきます。皮肉にもその結果、再生可能エネルギーはバックアップ電源が不安定化するということになってしまいました。

そこでドイツではバックアップ電源専用の「容量市場」という新規の電力市場を作って割高な価格で買い取って火力離れをくい止めるということになってしまいました。

なんかヘンな話ですよね。今まで安定していた電力供給を、再生可能エネルギーを大量に導入しようとした瞬間からガタガタになり始め、それを修正しようとしてバックアップ電源専用市場まで作って二重に修正をかけるなんて、まさにバカ丸出しです。

屋上のプレハブ小屋の上にもうひとつプレハブ小屋がちょこんと乗っているという世にも不思議な光景が、現在のドイツ電力業界なのです。

賢いはずのドイツ人が、21世紀の理想として打ち出したはずの脱原発は、かくしてわけのわからないケイオス状態に頭から突っ込んでしまったのです。

こんなものを「理想」としてまねする国があったのは驚きです。

※インセンティブ・ やる気を起こさせるような刺激

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原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

昨夜のマスコミ報道では、NHKは柏崎刈羽がトップ。
いかにも取り上げそうな報道ステーションでは、柏崎は3番目の扱いで、
トップは破綻した村営ゴルフ場を潰して「メガソーラー」建設した村の特集でした。
設備投資はソフトバンクですが、村への買電分配は3%。97%はソフトバンクの取り分です。
FITの胡散臭さと、菅政権のバカぶりばかりが際立つ内容にもかかわらず、「太陽に愛される村」の称賛ばかり。
北海道でのメガソーラーもそうですが、東北でもいわゆるメガソーラー計画が青森県だけで4箇所も再考を迫られています。
無難に進んでいるのは、火力発電所敷地内ばかり。

みなさんお分かりかと思いますが、送電の問題です。
今のままで発送電分離なんて、ちゃんちゃらおかしい。
そして、私たち庶民は高い電気代を払わされるわけです。

念のために言いますが、私も原子力発電廃止には基本的に賛成です。あれほどの惨事を体験したのですから。
しかし、代替にならない自然エネルギー偏重の急速な流れには納得できません。

追記
柏崎刈羽には何度か行ったことがありますが、泉田新潟県知事の言うことは正論だとは思ってます。
しかし、このままでは地元自治体が持ちませんよ。
「再稼働ありき」は絶対に容認できませんが、私はこれまでも言って来たように「漸減作戦」が懸命で、代替電力をその間に確立するのが国家的急務だと考えます。

原発事故直後の「脱原発・再生可能エネルギー」運動、自民党に嫌気がさし民主党へのシフト、維新の風、その前は郵政改革の風・・・・マスコミもこぞって風を吹かせた・・・結果が、その後に冷静になり一つ一つ検証したら、とんでもない決断をしたことに気が付く。

風に乗る・・事の恐ろしさをつくづく実感させられたのが、ここ数年の動きです。

管理人様の様に冷静に判断することが出来るようになりたいものです。
60歳を目の前にして改めて感じさせられています。

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