Roentgeniumさんにお答えして 民主党の「政治主導」の失敗としての福島事故
Roentgeniumさん、コメントありがとうございます。長々と船橋洋一氏の経歴を貼り付けていただきましたが(ご勘弁ください。ここは掲示板ではありませんので)、船橋氏が親米だろうと反米だろうと、はたまたCIAの「情報提供者」だろうと、私にはどうでもいいことです。
もしCIAの「情報提供者」だったなら、船橋氏が主筆をしていた朝日新聞もまたCIAのお抱えメディアになってしまいますね(笑)。
ではその朝日新聞が進める脱原発社論は、CIAの指示なんでしょうか。すいません、書いていて笑いが止まらなくなりました。
福島第1の事故経過は闇に包まれた部分がありました。ですから、民間、政府、国会事故調と、その後に出た何冊かの本によって多面的にチェックするしかありません。事実経過のクロスチェックが大事なのです。
親米だろうとなんであろうと、あの事故において在日米軍、米国NRCが重要な役割を果たしたことは紛れもないことです。
東京のすぐそばには、横須賀という米海軍の世界拠点があるのですからあたりまえです。だから米国は自国利害と同盟国支援という二重の意志をもって、日本政府に協力を申し出たのです。
それは事故初期に最初の放射能飛散状況を調査した無人偵察機グローバルホークや米海軍の東日本の各地の車両による線量測定だったり、あるいは米国の当該部局のNRCの技術的サジェスチョンでした。
投入こそされませんでしたが、米軍の原子炉事故対処部隊も来日しています。ただし、米側から提供されたグローバルホークの貴重な飛散測定図を、菅氏はまったく見ていないか、知りさえしていないようですが。
これらの事実は他の事故調には載っていないもので、船橋氏の著書が最初です。
私は船橋氏の本で、この事故が世界情勢の中で進行しており、それに気がついていないのは当時の「テンパっていた」(民間事故調)日本政府だけなのを知り愕然となりました。
また、お勧めの「カレイドスコープ」とやらの記事も読んでみましたが、私と交わるところがまったくありませんでした。
私はあのての誰それがどこそこの株主だから、その利益のためにどうしたこうした、という類の週刊誌のような訳知りのインサイドストリーは一切無視することにしています。
なぜなら、そのような陰謀論は解釈ひとつで、どのようにでも解釈できるからです。
たとえば、小沢一郎氏は原発を潰して地元ダムに有利にとりはからうために、あえて事故の間なんの力も貸さずに事故を巨大化させたのだとか。
いやいや、外国人献金で断崖絶壁にいた菅氏が延命のためにあえて注水停止を命じて事故を大きくしたのだとか、いくらでも言いようがあります。
もちろん全部デタラメですが、陰謀論など事実の積み重ねの中ではただのジャンク情報のひとつにすぎません。
ところで「注水中止と菅氏が言ったことは安倍氏のデマ」だとのことですが、事実関係としてどこかどう「デマ」なのでしょうか?
私は時系列で追っていますので、時系列で菅氏が「注水中断しろ」ととられることを一切言っていないとおっしゃるなら、それを証明なさって下さい。
ちなみに私は、記事中でも「菅氏の主張の半分は正しい」と公平に書いているつもりです。
それは正確には、彼が「(注水を)やめろ」と言った直接的発言は記録にないからです。
あくまで菅氏が言ったのは、「塩水だぞ。影響は考えたのか!」というと恫喝的空気を作った上で、「(注水作業を)もっと検討しろ!もっと詰めろ!」という怒号だったのです。
ここで「恫喝的」とか「怒号」といった穏やかでない表現を私は使っていますが、これは当時官邸に居合わせた人たちの証言によります。 事故調報告書にもこの表現が散見されます。
この恫喝的言辞で相手をひれ伏させ、自らの意志に服従させる暴君的態度は菅氏が得意とするもので、福島第1現地に視察した際にも、出迎えた東電副社長に対して出会い頭に「オレの質問だけに答えろ!」という台詞を叩きつけています。
ま、常識的に考えても、最高権力者からこんなピリピリした空気の中で「塩水だぞ」、「もっと検討しろ!」と怒鳴られたら「首相が中止を命じた」ととられてもなんの不思議はありませんね。
この菅氏の態度は、私がまだ学生時代には大勢いた学生活動家のスタイルそのままで、あの時代で彼の成長が止まってしまっているのがよく分かります。
それを今になって、「吉田氏は東電の注水停止命令に抗した。えらい。悪いのはみんな東電だ。オレは吉田クンの親友だ」みたいに菅氏に書かれると、私は嘘コケぇと思うわけであります。
このことは、民主党政権が当初からもっていた「官僚は政治家に命令されたことだけやれ。余計なことはするな」という「政治主導」の流れの中で理解されるべきだと考えます。
震災の時も、この「政治主導」とやらのために多くの官僚が判断に迷い、震災の対処が遅れました。
SPEEDIなどは、官僚は一刻を争う判断なのにかかわらず、とりあえず官邸に情報をFAXすれば任務終了とばかりにその先に、どのようにこの貴重な資料を避難誘導に使うかなどは考えもしませんでした。
もし余計なことをすれば、民主党の政治家から、「なにをやっているんだ。聞かれた事だけハイハイとやっていればいいんだ」という叱責が飛んできたからです。
ですから、官僚は「とりあえず福島県にFAXしました」という弁解の証拠だけを残して、それ以上の仕事をしなかったのです。
このように、「言われたことだけしろ」と命令されると官僚は、余計なことをすると叱られると思い、ヒラメばかりになってしまいます。
今回の武黒フェローのように(彼は官僚ではありませんが)「官邸がグジグジ言っているから(とりあえず)ヤメロ」みたいな「とりあえず主義」の空気が醸成されてしまうのです。
政治家なんか、原子炉や、ましてや原子力事故に対しては今までまったく勉強してこなかったのですから、「政治主導してやる」なんてご大層なことを思わず、早期に専門家に指揮権を委譲するべきだったのです。
このように、この「注水中断命令事件」、いや、原子力事故対応全体の失敗は、民主党政権の過てる「政治主導」がやるべくしてやってしまった必然的失敗だったと私は思います。
■写真ファビュラスという白薔薇です。つくば実験植物園にて。
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コメント
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>ではその朝日新聞が進める脱原発社論は、CIAの指示なんでしょうか。すいません、書いていて笑いが止まらなくなりました。
何がおかしくて笑いが止まらなくなったのは分かりませんが・・・・、個人的な見解として、朝日が真剣に脱原発を取り上げているとは全く思っていません。実際、今になっても2009年のクライメートゲート事件のことすら取り上げず、未だに二酸化炭素温暖化説の上に、嘘の上塗りを続けています。
あと、何も先のコメントで菅元総理を擁護したわけではありません。ただ、安倍政権の性格や本質を見る上で、問題視すべきではないですかと指摘しただけです。
既に御存知かと思いますが、TPPの問題、その内情・正体については、アジア太平洋資料センター事務局長を務めておられる内田聖子氏のブログが詳しいです。
http://uchidashoko.blogspot.jp/
大マスコミは「バスに乗り遅れた」と一様に表現していますが、裏を返せば、米国多国籍企業群にとっては最大の利益を引き出す、タイミングだったわけです。最初からこのタイミングでの交渉参加という、タイムスケジュールだったのかなと思います。民主党政権内部での権力の移行もあり野田政権の時には、新自由主義路線は復活しておりました。
これ以上長々と書いても、ご迷惑かも知れないと思いますので、コメントを寄せるのはこれで最後にします。レスありがとうございました。また、時折記事を読ませていただきます。それでは。
投稿: Roentgenium | 2013年7月25日 (木) 18時29分
Roentgeniumさん。わかりました。これでブレークとします。
いちおう「笑いがとまらくなった」理由を言っておけば、朝日は一貫して反米路線を社是としてきた会社で、CIAの影響下にあるならば、米国政府はせっせと反米勢力を育てている馬鹿者ということになりますから。
クライムゲート事件については、私はわが国でたぶんかなり初期に取り上げています。たしか6,7回書いています。他に地球温暖化疑惑にもかなり記事を書いています。お暇なら読んで下さい。
※関連記事クライメイトゲート事件シリーズ
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-146d.html
それはともかく、私は安倍政権の「本質」は2面あると思っています。ひとつは棚田を慈しむような伝統主義者の部分と、競争力会議やTPPを進めてしまう新自由主義的側面です。
この傾向は、特に安倍氏がどこの株主だろうと、今の社会に現存する現実の反映で、それは野党にも維新やみんなの党という形で反映されているし、自民党の中にもしっかりふたつの潮流があるということにすぎません。
一見関係なさそうな脱原発運動の中にも、飯田哲也氏が持ちこんだ電力改革などという新自由主義政策が忍び込んでいます。(飯田氏はかなりはっきりとした新自由主義者ですが)
私は、このブログで一貫して新自由主義=構造改革を批判してきました。とうぜんTPPには反対です。
ただ、今のところ安倍-石破自民党は、明確にTPP5品目6原則路線を掲げていますし、競争力会議の提言は各論で「骨抜き」にされてしまうことも多いようです。電力自由化などは、気持ちよく骨抜きになりました(笑)。
ですから、この部分はあなたと一緒なのですが、新自由主義とはどこかで徹底的に対決する時期が来るだろうと思っています。そのため、ひとつひとつ相手の論拠をつぶしていく是々非々が必要なのであり、安直に「安倍はどこから金を得ているか」といった週刊誌ネタには関心がないのです。
今後1強時代に3年間突入するわけです。野党はもはやかぎりなく「ない」に等しい状況となります。その中で、私たち国民は「反自民」などと空疎なことを言っていてもなんにもなりません。自民党に対して、しっかりともの申していかねばならない時代になったのだと自覚しましょう。
投稿: 管理人 | 2013年7月26日 (金) 05時11分