TPP会合始まる 米国の「俺様経済圏」はごめんだ
TPPの交渉会合が開始されました。今回は会合の初めからの交渉です。
おいおい、「年内妥結」だとしたら9回の裏での登板ですか(苦笑)。常総学院じゃなくてもこりゃ負けですよ(涙)。
交渉団はかなりの所まで交渉情報を得たと言っていますから、突貫作業で今までの議事録と論点整理は終わっていると信じたいですね。
わざわざUSTRの代表まで直前来日して、「年内妥結」などとネジを巻いていきましたが、100%無理なことは米国もわかっているのではないでしょうか。
英国「エコノミスト」のインタビューに答えて、米国のTPP交渉官は、「TPPは10年プロジェクトになる」と発言しています。
これは単に関税のことだけではなく、交渉にそれだけ時間がかかるということを示唆したと見られています。
実際、同じような多国間貿易交渉であったWTOは、現在形骸化しつつあることから考えても「年内妥結」などは夢のまた夢です。
ただし、あらゆる広域経済連携協定の国際法的根拠はWTOにありますので、なくなることはありませんが。
むしろわが国にとってはそれこそ思うつぼであって、長引けば長引くほど有利なのは言うまでもありません。
漏れ伝わるところだと、現在TPP交渉は、開けてビックリ、実はTPP交渉ではほとんどなにも決まっていないのが実態なようで、関税率ひとつとっても米国とAZ、オージーなどとの開きは大きいようです。
一方で、わが国はTPPより早い時期の2012年に、RCEP(東アジア広域経済連携協定・アールセップ)も同時進行させており、 ASEAN加盟国10ヵ国とそのFTAパートナー国6ヵ国が参加していました。
RCEPは、「貿易ルール作り」という表現で「基本方針では関税の撤廃を目指しながらも、「参加国の個別かつ多様な事情を認識しつつ」という文言を盛り込んでいることからわかるように、かなり柔軟な仕組みを目指しています。
この枠組みの中には東南アジア諸国とオセアニア諸国、中韓まで含まれていますから、TPPと完全にダブるわけで、いったいどうなっていくのでしょう。
よくTPP推進派が言っている「アジアの成長を取り込む」というならば、このRCEPだけで十分であるはずです。
既に日本の輸出額でみれば
・RCEP地域・・・46.8%
・それ以外の地域・・53.2%(うち米国15.3%、EU11..2%)
同じ広域経済連携といっても、TPPは米国のような攻撃的な貿易戦略を持つ国を入れたからおかしくなったのです。
当初のP4協定と呼ばれるオリジナルTPPは、シンガポール、ブルネイ、NZ、チリというメンツでしたが、その意図は貿易依存度高い中小規模の諸国が寄り集まって一国のような経済圏を作って交渉力を高めようという素朴なものでした。
これに、なんと米国がフリーライド(ただ乗り)してきたのです。これでTPPの性格はまるで違ってしまいました。
米国は、当時国内外で吹き荒れていたオキュパイド・ウォールストリート運動のようなグローバリズムと格差社会に反対する流れに対して危機感を持ち、逆に大きな経済圏を作ってその中を米国式ルールとすることを考えました。
要するに、TPPの本来の性格をねじ曲げて、「俺様経済圏」を作ってしまい、そこに日本も入れてしまおうというのがオバマ大統領の腹づもりだったのです。
元々あったRCEPを活用すれば、米国を除いた諸国でより柔軟な広域経済連携の枠組み作りは可能だったはずでした。
わが国もそんなにやりたいのなら、RCEPと日米FTAの枠組みのほうがナンボかスッキリします。
日本がまだEPA協定を結んでいないのはTPP加盟国中、米国、NZ 、オージー、カナダの4カ国にすぎず、これらはいずれも農業輸出国です。
これらの国々とは、利害が錯綜しているTPPの場で交渉するより個別2カ国間でするか、緩やかなRCEPでしたほうがよほどシンプルな解決が得られたはずでした。
それをなぜわざわざTPPのような関税ゼロ、農漁業補助金、労働市場、保険・医療・金融、労働市場、政府調達などまでを網羅したバトルロイヤルの戦場に頭を下げて入りたかったのか、いまでも私は理解できません。
よく推進派はTPPは対中国包囲網だ、などという俗論がありますが、ありえません。
砂糖関税を撤廃させれば、沖縄、奄美諸島の農業はほぼ壊滅します。その代替経済は現状では存在しません。
そうなった場合、人が住まない離島が急増し、日本の西南方面、言い換えれば尖閣諸島方面に巨大な空白ができてしまいます。それが望ましいことなのかどうなのか考えなくてもわかることでしょうに。
米国はTPPがあろうとどうしようと彼らの利害で動くのであって(米国があんな無人岩礁に軍事力を行使するわけがありませんが)、経済連携協定などとは本質的に無関係です。
TPP結んだから、尖閣でなにかあったら米軍出します、なんてゼェ~タイに米国は言いません。まったくバカか、と思います。
米国はたぶん この推進派連中より冷やかにわが国を見ているはずです。あまりのぼせて米国に過剰な期待をしないことです。
今の米国にはそんな力はないので、ないからこそTPPなどという「俺様経済圏」を作ろうとしているのですから。
■写真 隣町の鉾田の夏祭です。震災前に撮ったのですが、いまは震災による街の疲弊でこの規模の祭りを維持できなくなってきています。
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■TPP交渉会合始まる 年内妥結目指し協議
朝日新聞8月22日
【バンダルスリブガワン=池尻和生】日本が全日程に初めて参加する環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉会合が22日午前、ブルネイのバンダルスリブガワンで始まった。22、23両日に参加12カ国の閣僚会合があり、年内の交渉妥結に向け協議する見通しだ。
甘利明TPP相は22日午前、閣僚会合に先立ち記者団に対し、「レベルの高い広範なルールをできるだけ今年中に作り上げるという線に沿って協力したい」と述べ、交渉の年内妥結を目指す考えを強調した。
閣僚会合と並行して、この日から関税撤廃を話し合う「市場アクセス」や、著作権の保護期間などを議論する「知的財産」など、各国交渉官らによる分野別会合もスタートし、30日まで開かれる。先月のマレーシア交渉会合は途中参加だったため、日本が関税撤廃を話し合う会合に加わるのは初めて。
■自民TPP慎重派、嘆き 「情報なく議論できぬ」
産経2013.8.21
日本が交渉に参加した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で、交渉過程に関与できない自民党議員に無力感が漂っている。20日の慎重派議員の会合では、情報が不十分だとの不満が噴出。昨年の衆院選と先の参院選で主要農産品の関税維持などの「国益を守る」と訴えて当選した議員が多いだけに、有権者との板挟みの苦悩もあるようだ。
約50人が出席して20日に党本部で開かれた「TPP交渉における国益を守り抜く会」(森山裕会長)の会合。最大の焦点は、交渉内容の開示だった。交渉参加国は、交渉内容を明かさない秘密保持契約を結んでいる。日本も例外ではなく、「情報がない中で議論しろというのか。ガス抜きにもならない」(上杉光弘元自治相)などの怒りや嘆きの声が相次いだ。自民党は石破茂幹事長をTPP問題の「窓口役」として対応を一元化している。だが、会合では細田博之幹事長代行までもが「石破氏が一括して判断するといっても、簡単にはいかない」と発言。政府側は関税撤廃を求める品目リストなどについて「甘利明TPP担当相の指示を受けて作成している」と出席議員に理解を求めたが、「守るべき国益とは何か」との「そもそも論」まで飛び出し、迷走した。
自民党は衆院選で「聖域なき関税撤廃を前提にする交渉参加に反対」と訴え、参院選でも「守るべきものは守る」と公約に盛り込んだ。議員の不満の背景には「このままでは地元に説明がつかない」という事情も大きい。森山会長は「国益を確保できなければ脱退もあり得るとの自民党の決議をよく知ってほしい」と政府側にクギを刺したが、1時間40分に及ぶ長時間の議論が、堂々巡りに終わった印象は否めない。
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