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2013年8月 1日 (木)

ほんとうは怖い電力改革 その12 日本独自の停電予防システムとは

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電気における需要者の利益は、電気料金が安いこと、そして停電が少ないことのふたつです。

この二大条件がよりよくならねば、電力自由化した意味そのものが疑われます。「改革」した結果より悪くなりましたではなんのこっちゃですからね。

現状のわが国停電率については下図を御覧ください。(図「電力の各国比較」資源エネルギー庁)

Dsc_5180

電力改革先進国の米国など惨憺たるものです。特にカリフォニア州がひどいのですが、年中どこかで大停電をやらかしています。

しかし今や細分化された民営化のために、スマートグリッドでも導入して融通をつけるしかないような有り様です。

スマートグリッドがカッコイイなどと思わないで下さいよ。あれは電力自由化政策の失敗のツケなのですから。

ITネットとの一体化といわれても、今のよう電力逼迫期にやることではありませんし、ましてや再生可能エネルギー導入のためなら、なんで巨額な投資をしてまでこの不完全なエネルギー源に追加投資をせねばならないのか理解できません。

英国も自由化に取り組んだ国ですが、いっそうひどくなって、とうとう電力貧困層という電気代すら払えないで寒さに震える階層が大量に生まれて社会問題になっています。

ドイツは安定した供給体制がありましたが、今は脱原発と電力自由化の同時進行でガタガタになりかかってしまい、瞬間停電の頻発で工場ラインが打撃を受け、それを嫌った企業の国外脱出が止まりません。

フランスは原発太国ですから供給側の設備率は「他国に売るほどある」のですが、途中の送電網に問題があるようであまり芳しくない停電率となりました。

韓国はこの統計当時はよかったのですが、原子炉部品の性能証明書を偽造するという前代未聞の恥ずかしい事件が起きたために、全23基の原発のうち7基が停止中で、いまや夏のブラックアウトを心配せねばならない事態になっています。

さて、我が国ですが、主要国の中でもっとも低い停電率を誇っています。なぜでしょうか。

我が国は、これらの諸国と較べて、自然条件が日本だけが良くて、台風も大水もない、などということはまったくありません。

それどころかむしろ自慢ではありませんが、我が国は世界一の災害大国です。

南北2千キロ、東西2千キロにおよぶ島々からなる列島であり、その中央部には2千メートル級の脊梁山脈が伸び、平野部は狭く、山岳地域の地質は崩落しやすい風化岩であり、そして河川はそれに沿って急流で海まで下り落ちます。 

積雪地域は国土の60%に達し、いったん豪雪となると、たちまち交通機関が麻痺し、ときには今回の北海道のような大規模停電が引き起こされます。 

数多くある離島は、時化れば食料不足に陥ります。 急病人もヘリで搬送せねばなりません。 

そしてご丁寧にも、3つプレートが集合している所に国土があるために、世界の0.25%の地表面積しかないにもかかわらず、マグネチュード7以上の大地震の実に20%が我が国で発生しています。

こんな過酷ともいえる地形の中で、配電網が参観僻地、離党にいたるまでくまなくはりめぐらされているのは脅威ともいえるでしょう。

あの東日本大震災の時ですら、激甚災害にあった地方も1カ月で復旧してみせています。

下図の各国の停電状況修復までの時間を見ると、我が国では1時間ていどで再開していますが、米国は丸々1日以上かかってしまっています。

米国は毎年襲ってくる大型ハリケーンのたびに1カ月以上の大停電が定期的に起きています。公平に見ても、我が国の送電網のほうが遥に優秀だといえます。 

          ●最近の基幹送電設備故障による停電 (電力改革研究会)

Photo_3

このような停電率を見ずに、米国でスマートグリッド導入が盛んになれば、その理由を考えずに「米国の素晴らしいスマートグリッド!それ、すぐにマネせねば!」と騒ぐのはバカ丸出しというものです。

なぜなら、再三述べているように、米国が停電と復旧による社会的損失があまりに大きいからスマートグリッドを導入せねばならないだけです。

我が国の停電率の低さは、発電側が万が一停電しても早期に復旧させるリカバリー・システムが我が国にはあるからです。 

仮に送電線ルートが3本あるとして、そのうち一本が故障してダウンしたとします。 

ちなみに通常送電網はひとつにつき2回線が設定されており、同時に1ルート2回線がダウンしたと想定します。 

日本以外の国では、このような状況になった場合、生存した2ルートに3ルート分の電流が流れ込むために、せっかく生き残った2ルートも同時に過電流によってショートしてしまいます。前にみたイタリアの大停電のケースです。
(下図参照 電力改革研究会「停電と発送電分離を論じるための基礎知識」より)

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つまり送電ルートのドミノ倒し現象が起きてしまうわけです。これを防ぐために我が国の送電網は「系統安定化リレー」というシステム技術を持っています。 

日本では、このような非常事態が起きた場合、発電所側(G1)の出力を急速に絞ってしまいます。これがすごいのは、この発電の緊急制御を電流の速さである光速で実施してしまうことです。 

これにより、周波数は一時的に低下しますが、残存2ルートは持ちこたえることが出来ます。 

もし、一定範囲を越える周波数低下がある場合、ブレーカーを切るようにこの2ルートも閉鎖しますが、停電範囲は最小限に抑えられます。

送電現場では、夏場の雷雲の発生があって送電ルートが危険だと想定された場合、雷雲の通過地域は発電所側があらかじめ出力を低下させておくのだそうです。

そうすれば、実際に落雷で送電線に落雷しても、周波数の定価は最小限でくいとめられるというわけです。

では、この発電側と送電側のシステム・リレーが発送電分離した場合、うまく機能するかです。

今までは同一の電力会社が系統運用者を兼ねていましたから容易でしたが、発送電分離の状況下では、再生可能エネルギーの新電力まで含めて多くの発電側が、多くの送電事業者とともに、瞬時にそれを実施せねばなりません

単線のリレーから、何十何百の発送電会社と、受け手の何十何百の送電業者間のリレーをせねばならないのですから、果たしてうまくいくでしょうか

その上、多くの新規参入した新電力は、既存の電力会社のような重厚な技術の蓄積を持ちません。一朝一夕で系統運営技術などは蓄積できないからです。

多くの電力会社の技術者たちはそうとうに困難であると考えています。

ですから、私は発送電分離政策が打ち出されても、送電部門に新規参入は少ないだろうとみています。

というかはっきり言って、地味で太陽光のようにボロ設けもできない、メンテナンスの塊のような送電部門に新規参入が来るんでしょうか

太陽光発電を送電してくれたら、5倍の送電託送料を20年間固定で出しますなどという信じられないような愚かな制度を国が作れば、あるいは来るかもしれませんが。

新規参入がない場合は、いままで以上に送電部門の重要性が増して、それを握っている既存電力会社の預託料が安くなることはありえません。

いずれにせよ、泣いても笑っても発送電分離すれば、いままでフリーライド(ただ乗り)してきた送電網の管理コストも平等に新電力に課せられることになります。

発送電分離とは、一見すると再生可能エネルギーの福音のように思われていますが真逆で、実は再生可能エネルギーのただ乗り防止制度なのです。

私には能天気に「原発ゼロ!電力自由化!」と叫ぶ脱原発運動は、東電への制裁的感情の虜になって、全体を冷静に見る余裕をなくしているように思えてなりません。

「東電解体」と安直に言う人が多いのですが、「電力会社を解体した後」まで考えてからものを言って欲しいものです。

余談ですが、菅直人氏が「菅直人の自然エネルギー論」という本を出したそうですが、そのAmazonのコメントにこんなものがあったので、ゲッと後ろ30度くらいのけぞってしまいました。

いい加減な東電原子力村と闘える政治家として、自然エネルギーへの抵抗勢力との闘い、そして人とエネルギーのかかわりをかんがえている」。

これ菅さんの自画像である、「東電・原子力村=悪玉=抵抗勢力」vs「自然エネルギー=正義のヒーロー」という図式そのものですね。

菅さんの仮想敵を作って攻撃しまくるっていうパーフォーマンス政治を、カッコイイと思う人もいるんだねぇ。

それはともかく、こんな「善vs悪」、あるいは、「改革勢力vs抵抗勢力」、はたまた、「原子力vs自然」というようなしゃもない二元論では、「電力会社を解体した後」なにが起きるかなんか念頭にも浮かんでこないでしょうね。

こんなことでは、脱原発なんて夢のまた夢です。

■写真 アゲハチョウ(ナミアゲハ)です。彼女が飛ぶと、夏の盛りが来たという実感かわきます。

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