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2013年8月29日 (木)

「はだしのゲン」を読みましたか?

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昨日「はだしのゲン」事件などでメディアが騒ぐなと書きましたので、もう少し私の考えを書いておきます。

お聞きしたいのですが、中沢啓治氏のこの作品をお読みになりましたか

この問いかけは、まず閲覧制限をかけたといわれる松江市教育委員会に聞いてみたいものです。

私があの作品を読んだのは学生時代でした。私の年下の友人には、生理的に受け付けなかったという人がかなりいますから、あるていど大人になって読んだのもよかったのかもしれません。

私は、一種の呪術的な世界を感じて引き込まれました。絵柄が歌舞伎のような濃い隈取り。そして他県には乱暴にも聞こえる広島弁の絶叫。

まるで子供の時に神社の夏祭で見た、泥絵の具で描かれた地獄図絵でした。

原爆投下直後の、熱線により全身の皮膚が焼け落ちて市内を水を求めてさまよう人々、全身にガラスを突きたてられた人々、押しつぶされた家屋で生きながら焼き殺される一家。

そして、戦後、頭蓋骨の小山を口笛を吹きながらブルで押し潰す米兵たち。

ゲンの母親は死体の頭骸骨を砕いて煎じて飲むのです。「こうすればピカで死なぬ」と言いながら、結局黒い血を吐いて死にます。その黒い吐血をすすって叫びもだえるゲン。

いままで仲よかった親戚からも、「ピカの毒が染る」と言われて石もて追われる被爆者の子供。いまだ生きる放射能に対する根拠のない差別の原型がここにあります。

そして妹の友子も、被爆者で肉親を失った男たちから連れ去られ生き神様として崇められます。ピカが移ると差別された被爆者が、また被爆者の女児をさらい、被爆者同士で争い合うのです。

あのマンガの凄味は、このような原爆投下という極限的な生き地獄の中での人のありようの凄さを直視するところから出ています

そこには、病院ではかなげに死ぬ原爆症の少女も、助け合う被爆者もなく、あるのは頭蓋骨を煎じ、さらった女児を生き神様として崇めてまで生きようとする人々の暗い群れです。 希望も慰めもない世界なのです。

私はこの原作の前半部分までに関しては高い評価をします。おそらくここまで被爆の実態と、被爆地広島、被爆者の暗部と葛藤を突っ込んで描いた作品はなかったはずです。

読む年齢にもよりますが、子供にも読みたいなら読ませればいいと思います。恐怖に脅えて中断するなら、それも致し方ないでしょう。 さまよう亡霊のような被爆者にうなされるのも「勉強」です。

読書というのは、本質的にそういうものです。本には人格のようなものがありますから、相性が悪ければつき合うのを止めればいいだけです。

ですから私は、この本に閲覧制限をかけた教育委員会や、またその圧力をかけたと言われる右翼の人々には、馬鹿なことをしているとしか思いませんでした。

いままで書架の片隅で半ば忘れられかけていた「はだしのゲン」を復活させたのは、この右翼の人々です。

子供は読みたければ、教師や親の目を盗んでも読むし、嫌なら読まないだけです。

確かに一時的にショックは受けるでしょうが、それに対して大人がちゃんと答えてやればいいのです。

答えられないとすれば、それは教師と生徒、親と子の関係の問題であって、「本」には関係のないことです。(※1参照)

では一方、この騒動をあたかも反核運動に対する言論封殺のように報じて大キャンペーンを展開した朝日新聞やTBSを先頭とするマスメディア、あるいは反核・反原発派の人々の一部はどうだったでしょうか。 (※2参照)

私は同じ質問をすることにします。この本をちゃんと読みましたか?

この本の前半に描かれた広島の被爆者には、今回の原発事故の被曝者にも相通じる点が多数あります

ピカの毒が移る」という被爆者差別は、今回の福島避難民問題でも現れました。福島からの避難者に対してのいわれのなき受け入れ拒否や宿泊拒否が相次ぎました。

遊ばないといじめられた避難者の子供、いくら計測しても、ほんのわずかの「ピカの毒」があるからと入荷を拒否された福島農産物。

農家の中には、悲観のあまり「原発が憎い」と納屋に書き残して首を吊った人もいます。私にはかつての広島と福島での放射能差別の心理構造と酷似しているようにみえます。

皮肉にも、今「はだしのゲン」事件で松江市教育委員会を批判する脱原発運動家の中には、このような放射能差別を煽る言説を吐いた人たちがかなり含まれています。

「被曝地」の農業者としてこの事故に遭遇した私には、今回「ゲンを守れ」と叫んだ陣営に全身から血を流し 、蛆をたからせて苦しむ被爆者を「ピカ毒が染る」と納屋に放置した人々の面影を見るといったら失礼でしょうか。

あの時、「東日本は終わった」、「被災地の薪や瓦礫ですら放射能が移る」、「福島のものを食べたらガンになる」と大声で叫び、私たちを差別したのは今「ゲンを守れ」と叫ぶ人たちの中に多くいます

エセ学者武田邦彦のデマを口写しにするような人に、「ゲンを守れ」という資格はありません。

そもそも、ひとつの芸術作品を、自分たちの都合のいい言論が含まれているから支持するのも、逆に自分の思想に合わないから否定し、排斥するという行為も、実はメダルの表裏にすぎません。

芸術作品は政治宣伝の道具ではないのです。

確かに右翼の人たちの言うとおり、この作品の後半は日本共産党準機関誌「文化評論」に連載され、左翼イデオロギー色が濃厚になったのは事実です。

しかも、反核路線の相違を巡って共産党系から、社会党系日教組発行の「教育評論」に発表媒体を替えたあたりで、この作品はつまらないプロパガンダ・マンガに堕しました。

作品としても当初の生々しい緊張を失い、左翼思想テキストの挿絵のようにひからびていきました。右派から批判される素地はこの時期にできました。

後半部分だけ取り出して読むと、まるで、「侵略の報いで広島に原爆が投下された」といわんばかりです。(※)

これでは、ブルでしゃれこうべを片づけていた米兵の言い分と一緒ではありませんか。

彼らはこう言ったことでしょう。「オレたち米国は、ジャップのファシストにアトミック・ボムで懲罰を加えてやったんだ。反省?冗談じゃねぇ。反省するのはジャップのほうだ」と。

安住の地を求めて3回も掲載誌を替えたこの名作がたどり着いた結論が、米国の言い訳と一緒だとは!

初期の「はだしのゲン」が持つきれいごとを拒否した凄まじさを知る私は、そのあたりで読むのを止めてしまった記憶があります。まとめて読んだのは、はるか後のことです。

この「はだしのゲン」の掲載誌を巡っての流浪の旅は、被爆者の想いから離れた左翼党派の草刈り場となってしまった被爆者たちの「その後」を見るようです。

それは被爆体験や被爆者を生き神様のように祭り上げるだけで、原爆や放射能の真の意味を伝えてこなかったわが日本の戦後の姿そのものでもあります。

※1 この作品についての批判と問題視されている画像はこちらから
http://nippon-end.jugem.jp/?eid=3255

※2 支持派はこちらから(朝日新聞社説収録)
http://blog.livedoor.jp/ryoma307/archives/7278876.html

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-3194.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-eee0.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-40b9.html

■写真 鉾田の夏祭 獅子舞が闇の中に舞います。

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コメント

私は右翼でも左翼でもありませんが、たかが学校の図書館で「はだしのゲン」なんかで大騒ぎするなと。相変わらずマスコミが騒ぎすぎ。
「はだしのゲン」前半は、もう見るのも辛いほどにスーパーリアリズムを徹底追及しているのに、後半のプロパガンダ自虐史感はなんなんだ?と。

あれだったら、最近煩くなった酷いエログロ表現やロリコン漫画も良いのでは?
マスコミのおかげで増刷かかったそうで万々歳じゃないですか。
興味があるなら漫画くらい買って読めばいいだろ。


それでいながら、県や市立の公立図書館で戦記ものや当時のアサヒ・毎日グラフ、また高価で詳細を記載している戦史叢書すら置いていないことのほうが遥かに問題だと思います。

ちなみに私はたまたま古い蔵書の多い環境で育ったので、ゲンも坂井三郎一連の空戦記録も、山岡荘八の太平洋戦争も、小学生時に読破しております。

もう、ずいぶん昔、小学生の頃、読みました。
ただ、その頃ですら、作者のアメリカと日本軍に対する憎悪に、今で言うトコの「ドン引き」をしたのを覚えています。
今になって感じるのは‥憎悪を晒け出しても、平和には遠い。それだけです。

不愉快な絵に不愉快な思想。
はだしのゲンは大嫌いです・

嫌いな人は読まなければ良いだけでしょ。

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