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2013年9月

2013年9月30日 (月)

消費増税待った!まだデフレま最中だ!決断の日は明日!

064
消費税増税決定が明日に迫りました。 

いまだに三党合意を守れとか言う増税派がいますが、その合意内容をもう一回確認しておきます。 

消費税法には、弾力条項が付帯しています。 この部分こそが三党合意において民主党案に自民党が追加修正を加えた部分で、ある意味消費税法のキモの部分です。

「消費税法等の一部を改正する等の法律案」附則18条
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%85%9A%E5%90%88%E6%84%8F 

「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律
附 則
(消費税率の引上げに当たっての措置)
第18条  消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。」
 

ここには明確に「物価が持続的に落下する状況」、つまりデフレから、経済成長率2%~3%になることが、増税の条件だと規定してあります。

れが安倍首相がなんどとなく言ってきた「デフレ脱却がされないかぎり増税はしない」ということの法的根拠です。

この消費税弾力条項を、なぜか財務省とその下回りの増税派の連中は都合よくコロリと忘れていましたが、最近反対派の追究て渋々認めるようになってきています。

そこで、今の経済状況がどうなっているか見てみましょう。消費税法が掲げる「名目経済成長率3%、実質経済成長率2%」になったでしょうか。 

先日8月の消費者物価指数(CPI)が発表になりました。朝日新聞は「 消費者物価指数0.8%上昇 8月 3カ月連続プラス」という見出しでこれを報じています。

「8月の全国の消費者物価指数が、前年同月と比べ0・8%上がった。上昇は3カ月連続。パソコンなど「教養娯楽用耐久財」も同0・1%増となり、バブル崩壊後の1992年1月以来、21年7カ月ぶりにプラスに転じた。円安で輸入燃料や食料価格のほか、部品価格も値上がりしているためだ。
 総務省が27日発表した8月の全国の消費者物価指数は、価格変動が大きい生鮮食品をのぞく総合指数(2010年=100)が100・4と、前年同月と比べ0・8%上がった。」
(朝日新聞9月27日)
 

あいかわらず増税派の朝日新聞はわかりにくい書き方をしていますね。これでは「消費者物価指数がプラス0.8%に上昇した、よかったねぇ、さぁこれで増税の条件が整った。首相増税のご決断を」で終わりです。

誤報ではないが、正しくはありません。少なくとも見出しにするのは印象操作です。 この0.8%という数値は、あくまでも「総合」消費物価指数にすぎないからです。 

ほんとうの消費物価向の実態を知るには、ここから天候による生鮮食品の価格変動分やエネルギー価格の変動分を差し引かねばなりません

だって、そうでしょう。この修正をかけないと、円安や原油高といった短期間の変動をそのまま反映して、誤った物価変動の数値を出してしまいますもんね。

この生鮮品とエネルギー価格を差し引いた数値が「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合」と呼びますが、長ったらしいので「コアコアCPI」と呼んでいます。 

なんかユルキャラのネーミングみたいな言い方で、初め私も聞いた時に吹いてしまいましたが正式の呼称です。

世界の財務当局は、わが財務省を除いてすべてこれで統一されています。 

わが国家官僚は、中国と違って統計数値を操作するようなケチなまねはしませんが、農産物自給率を世界のどこの国も使わないカロリーベースにしてみたり、消費者物資指数を総合で見たりという都合のいい手練手管を使うからご注意下さい。 

そこで、総務省統計局発表のコアコアCPIを見ます。(クリックすると大きくなります)http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm

003
8月(対前年同月比)
・総合(CPI)・・・0.9%
・生鮮食品を除く総合(コアCPI)・・・0.8%
・ 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)・・・マイナス0.1%
 

マイナス0.1%です。ほんとうにデフレ脱却したのなら、このコアコアCPIも上昇し、国内需要が回復した結果として緩やかに物価全体が上昇していかねばなりません。 

これが「いい物価上昇」というやつで、これが続けば経済は自律的に回復し、次に賃金上昇を促し、消費か増えさらに需要を大きくし、それに対応して供給力を伸ばすために設備投資が活発になっていきます。

これが自律的景気回復軌道というものです。これでめでたくデフレ脱却というわけです。

ここに持って行ければしめたものですが、まだいわばローギアの財政政策と金融緩和の段階です。株価が上昇したのは期待値にすぎません。

ある意味、まだなにも変わっていないのです。残念ながら、現在もなおコアコアCPI数値が物語るようにデフレ状況がなお続いているのです。これか真実です。 

しかし単に不景気(デフレ)の中で天候不順や原油高で物価があがるのは、「悪い物価上昇」、あるいは「インチキの物価上昇」なので、こんなものいくら上がっても国民は苦しくなる一方です。 

このコアコアCPIがいまだデフレに貼りついているという認識は政府にもあるようで、なんとあの増税派だと思っていた甘利経済再生担当相がこんなことを定例記者会見で述べています。 

「甘利氏は食品やエネルギーを除くと下落が続いているとも指摘。「(これが)プラスに転じ、大きなショックでもない限り元に戻らないという環境が整備されたときに、脱却と言える」(産経新聞9月27日) 

まったくそのとおりです。「これがプラスに転じない限り(デフレ脱却)とはいえない」のです。パチパチ。 

しかし、唯一変化したものがあります。それは「」です。今までのうつむき加減で、閉塞感に満ち溢れた社会がなんとなくほのかに明るくなったかな、そういう変化は確かにあります。

景気とは文字どおり「気」なのです。

これがしっかりとした景気回復軌道に乗れば、さらに社会の「気」は明るくなります。その腰を折るのがまさにこの消費増税なのです。

しかし、自民党内増税派、公明党、性悪狸に率いられた経団連、マスコミ増税派は、なんとか消費増税をさせるべく安倍首相に迫って包囲網を敷きました。 

ちょっと前まで敗色濃厚だった増税反対派がどうにか50対50のイーブンに持ち込み、9回同点のまま9回裏に突入といった状況です。

このまま「ナントカ経済対策をとって増税に突入」すれば、確実に経済は失速、支持率急落、安倍内閣の命運には暗雲が垂れ込めることになります。 

ここに最高裁の衆議院選違憲判決によるやり直し判決が出た場合、再び日本は先か見えなくなります。 

自民党はこれで増税派と反対派に分裂し、諸野党は再び合従連衡を始めます。民主党も朝日の望みどおりふたたび「受け皿」になるべく野合工作を開始するでしょう。 

安倍首相は国民に対しての公約である「デフレ脱却まで増税はしない」という約束を守らねばなりません。おそらく今の首相の強いリーダーシップなら可能なはずです。 

その決断の日は明日です! 

 
 

2013年9月28日 (土)

週末写真館 ネコの日常

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ウ~ン、猫写真というのは飽きませんなぁ。
もういっそう、猫写真ブログに変えちゃおうかなどと考えたりして。



2013年9月27日 (金)

まだ決まっていないぞ、消費増税!増税最終局面に!

014
本日は、緊急で予定稿を差し替えます。

10月1日とされる首相の増税「決断」を前に、増税攻防のほんとうの瀬戸際に差しかかっています。

ご承知のようにいま、ほぼすべてのマスコミが「安倍首相増税決断」という大見出しで報道しています。

社論としても増税に反対しているのは、今や産経と読売だけとなってしまいました。

まるで増税を首相が既に「決断」して、あとはその事後対策だけが残っているような空気が作られつつあります。

これは印象操作です。現時点ではなにも決まっていません。これは単なる自民党内増税派と財務省による狡猾な世論操作のための意図的リークです。

騙されてはいけません。ただし、与党内は太局を見ずに、やれ三党合意を守れだとか、国際公約だとか、財務省にシッポを振るバカがいます。

それにより確かに与党内は「1対9」的雰囲気が生まれました。しかしその都度、菅官房長官が再三火消しに回っています。

この「1」とは他ならぬ安倍首相だったからです。安倍首相こそが、もっとも頑固な増税反対派なのです。

現在の安倍首相は、おそらく、かつての小泉純一郎首相と並ぶか、あるいはそれを凌ぐパワーを持ちつつあります。

この首相の権力の源泉はアベノミックスであり、それが腰折れする可能性のある増税に対して極めて慎重なのはとうぜんです。

そもそも、なぜ消費税を上げるのでしょうか?あらためて増税派の人たちにお聞きしたい。

社会保障安定化?財政健全化?なにを言っているんですか。そんな財務省のプロパガンダはとうに破綻していますよ。

今や、増税賛成派、反対派問わず共通の認識はこうです。

消費税増税が景気を腰折れさせる
増税した結果、かえって税の減収になる

その証拠にいまや法人税減税をしろ(経団連案)とか、いや貧困層に手当てを支給しろ(公明案)とか事後対策に喧々諤々となっています。

もし「腰折れ」しないのならそんな対策は不要なはずです。腰折れするとわかっていて議論しているこの馬鹿馬鹿しさ!

そんな単年度の補正予算を組んだとしても、消費税は今後ずっと続くのですから無意味です。

社会保障安定化とか、財政健全化は消費税増税の理由にするなら、日本の業病であるデフレから脱却すれば自動的に増収になるのですから自ずと解決する問題です。

ならば、くだらない単年度の補正予算など組むより、すっきりと今の増税をやめればいいだけの話です。

復興増税の法人税増税をやめるとか、新聞だけは増税しないでくれなどといったどうでもいい論議ではなく、スパっと「いまはその時期ではない」と首相が決断すればいいのです。

肝心なデフレ脱却しましたか?読売新聞(9月10日)はこう書きます。

「原材料の輸入価格高で、食品などにも値上げの動きが広がっている。堅調だった個人消費はここにきて息切れ気味といえる。
 コスト高が主因の「悪い物価上昇」に消費増税が重なれば、家計への打撃は大きい。物価上昇にあわせて家計の収入も増える「好循環」を生み出すことが大事だ。
 労働者の平均賃金は上昇に転じたものの、ボーナスや残業代の増加が中心で、基本給は14か月連続で減少している。本格的な賃金改善を急がねばならない。」

たしかにアベノミクスの効果により、物価は上昇の傾向にあります。しかし上がったのはなんでしょうか。円安とエネルギー高に押された物価にすぎません。

また、もうひとつの景気指標である直近の失業率は3.8%です。先進諸国ではましなほうですが、まだ高い水準です。

せめて3%を切らねば、人手不足感が高まって人件費への上昇圧力とはなりません。ブラック企業も、建設業の人手不足もこの失業率と連動しているからです。

わが国はデフレ脱却の糸口についたもののまだ内需も設備投資も弱く、賃金はしこり、失業率は厳しい状況なのです。

今、物価指数が上がっているのは、単に円安とかガソリン高によるもので、アベノミックスが意図した国内の投資が増え、景気が自律的に回復したことを示していません。

つまり、いまだわが国はデフレなのです。こんな時に増税してどうします。

首相はこのくだらない増税をめぐる国内政局から身を離すように国連総会に旅立ちました。賢明です。

国内にかえって、醒めた目て見てください。いまが増税できる条件にあるのかどうか。

せっかくできあがった好循環がここで潰れるのは目に見えています。

安倍首相、よく考えて下さい。まだデフレは終わっていないのです!国民はまだアベノミックスの果実をなにも食べていないのです。

増税されたのなら、また元の地獄に逆戻りです。産経編集委員の田村秀男氏の優れた論考を転載いたします。ぜひご一読ください。

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■菅官房長官の記者会見

「菅義偉官房長官は20日午後の記者会見で、2014年4月からの消費税率引き上げを安倍晋三首相が決断した、との報道について「正直なところ、総理は私は決断してないと思う」と述べた。

首相自身、増税した場合の影響などを総合的に勘案して自ら判断する考えをかねて述べている。菅氏は「総理ご自身がもう決断したということは私はまったく聞いていない」と語った。そのうえで「10月になって日銀企業短期経済観測調査(短観)等の数字をみたうえで、総理自身その対策を含めたうえで判断する」との見解を改めて示した。

復興特別法人税の終了を1年前倒しすることが取り沙汰されている点に関連し「復興財源25兆円を削ることはあり得ない」とも述べた。」(日経新聞9月20日)

浜田内閣官房参与、消費増税先送りを提案
日テレ8月12日

内閣府が12日朝に発表した4~6月のGDP(=国内総生産)が3期連続のプラスで、年率プラス2.6%となったことを受け、安倍首相は「安倍政権発足以来、順調に景気は上がってきている。今後も経済政策に万全を期していきたい。秋にもさらなる成長戦略の実行等、しっかり景気・経済に力を入れていきたい」と話した。しかし、消費税率の引き上げ判断への影響については言及しなかった。

 一方、安倍首相の経済政策のブレーンの一人、浜田宏一内閣官房参与は、「実質(成長率)が3.9%とか4%という形で出てくれば、他の政策手段、特に金融政策も使えるわけだから、少し苦い薬を国民とともにのむという判断もあったかと思うが、とてもそういう状況にない」と述べた上で、来年4月に予定されている消費税率の引き上げを1年程度先送りすることを安倍首相に提案していることを明らかにした。

「現金支払機」の増税デフレ 中川元財務相の「遺言」に思う  編集委員・田村秀男
産経新聞2013.9.22

18日昼、安倍晋三首相が苦悩の末、消費税増税を決断したと聞いたとき、ふと、「9月は日本にとって因縁の月か」と思った。

「平成バブル」へと日本を導いたプラザ合意(昭和60年)、米中が裏で示し合わせてアジア通貨危機対策での日本の主導権を葬り去った国際通貨基金(IMF)・世界銀行香港総会(平成9年)、そして日本のデフレ不況を加速させたリーマン・ショック(20年)も9月の出来事である。日本はそのつど、国運を狂わせた。

 リーマン・ショック直後に財務相に就任したのは故中川昭一氏で、20年10月10、11の両日にはワシントンで先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議などを精力的にこなした。

 以下は氏から直接聞いた秘話のメモである。

 10日、ポールソン米財務相、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長らに対して公的資金投入による金融危機対策を厳しく迫った。11日にはブッシュ大統領主催のホワイトハウスでの歓迎パーティーに出席。そこに飛び込んできたのは、北朝鮮に対する米国の「テロ国家指定解除」という重大ニュースだった。

中川さんはそれを耳にするや、前日にも会って面識のあるブッシュ大統領に走り寄った。「大統領、どうしてですか。日本人などの拉致問題をどうするのか」と詰め寄る。大統領は「あそこにいるコンディ(コンドリーザ・ライス国務長官)に聞いてくれ」と逃げ出した。

中川さんは帰国後、訪ねてきた米共和党の要人に向かって、口頭でホワイトハウスへの伝言を託した(筆者はこの場に居合わせた)。内容は、「いくら世界のためだ、黙ってカネを出せと言われても、日本はキャッシュ・ディスペンサー(CD、現金自動支払機)になるつもりはない」。遺言だな、と今思う。

 筆者が知る限り、国際金融の舞台での致命的とも言える日本の弱さにいらだちを強く感じ、激しく行動した政治家は、中川さんしかいない。

 消費税増税問題を国際金融の次元でとらえ直すと、日本は増税によって米欧のための「キャッシュ・ディスペンサー」の役割を確約したといえるかもしれない。

 日本は世界最大の外国向け資金の提供国であり、その基本的な担い手は家計である。家計金融資産の多くは銀行など金融機関に預け入れられる。金融機関は資金の多くを日本国債や外国証券に投資して運用する。財務省は外国為替資金特別会計を通じて金融機関から円資金を調達して米国債を購入、運用する。

 家計は10年以来の「15年デフレ」の間、消費を抑えてひたすら金融資産を増やし続けてきた。今年6月末、名目国内総生産(GDP)は9年末比で44兆円減だが、家計金融資産は305兆円、対外金融資産は398兆円増えた。

リーマン後の増減が本グラフである。名目GDPはマイナスが続くのに、金融資産増に加速がかかっている。しかもその増分相当がそっくり海外での金融資産に充当されている。ドル換算すると、対外金融資産総額は今年6月末時点で約1兆7千億ドル増えた。

このカネは米連邦準備制度理事会(FRB)が増刷したドル資金約1兆5千億ドルをしのぐ。FRBマネーは紙切れでいくらでも刷れるが、しょせんはあぶく銭だ。日本が出すのは本物のカネであり、国民の勤勉な労働の産物である。

 FRBが量的緩和政策の縮小に動く中で、動揺する米欧の株式や債券市場にとって、これほど頼りになるカネはない。

日本はデフレで国内資金需要がないから、余剰資金は海外に流れ出る。デフレ圧力を一層高める大型消費税増税に日本が踏み切ることは米欧の投資ファンドにとって死活的な利害といえよう。

米欧の国際金融マフィアが牛耳る国際通貨基金(IMF)は2年以上前から日本の消費税増税をせき立ててきた。G7、G20(新興国を含む20カ国)もそうだ。

 英フィナンシャル・タイムズ紙(FT、アジア版)は13日付の社説で、消費税増税を「挑戦するに値するギャンブル」、「さいは投げられた」として安倍首相の増税決断を先回りして褒めたたえた。ウォール街など国際金融市場の利害を反映する他の金融中心の米欧メディアも同様だ。

 今の日本には中川さんのような「国士」が見当たらない。それどころか、得体のしれない「国際世論」を重視し、国内世論を無視し、増税を「国際公約」同然とうそぶいて恥じない風潮が言論界や政界に蔓延(まんえん)している。中川さんがもし健在なら、首相にどう助言するだろうか。

(太字引用者)

2013年9月26日 (木)

沖縄・地域資産としての基地その4 中国の属国になるな、沖縄!

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沖縄から中国大陸に向けて二等辺三角形を作ると、その底辺の両端が福建と上海にあたります。

 

見事にほぼ等距離で、かつて沖縄が琉球王国時代に朝貢貿易で栄えた地理的理由が分かります。

 

これが沖縄の中国と日本に両属するという特殊性を生み出しています。

 

中国側から見れば、朝貢関係をもった国はすべて属国、旧版図ですから、日本人にはおいおいですが、沖縄は「奪われた領土」ということになります。

 

琉球王府のあった首里の「守礼の門」に掲げてある扁額にはこのような文字が刻んであります。
守禮之邦
これは観光客の皆さんに、いらっしゃ~いと言っているわけではありません。「中華皇帝に対して臣従のっている国()」という意味です。

 

これが「琉球事大主義」(※)と呼ばれるものです。

 

琉球国王とその家臣は首里城で冊封使を迎えて、三度うずくまって9回頭を地べたに擦りつけるという三跪九叩頭の礼をしました。

 

 

上の写真は清の皇帝・皇太極に三跪九叩頭する朝鮮王・仁祖の銅板レリーフですが、琉球王もこのようなことをやったと思われます。(写真ウイキペディア)

 

私も試しにやったことがありますが、やってみるとわかりますが、けっこうこのスタイル、屈辱的ですよ。まぁやってる当人たちは屈辱どころか案外喜びに打ち震えているのかもしれませんが。

 

守礼の門の類似の存在には、韓国の迎恩門があります。東アジアでの中華帝国に対する位置が同じせいか、沖縄と韓国にはどこか似た歴史とメンタリティがあるようです。

 

さて、事大主義は過去のものではなく現代も生きています。中国共産党準機関誌「環球時報」(2010年9月19日)は、このように主張し始めています。

 

「琉球(沖縄県)は明治政府が19世紀末に清国から奪い取ったもので、日本政府は今も沖縄住民の独立要求を抑え込んでいる」。

 

さらにぶっ飛んで、「中国政府は尖閣で日本と協議に入ってはならない」、と続けます。

 

なぜならそれは引き換えに「境界線外にある琉球の主権が日本にあると認めることになる。こうなれば日本の琉球占領は合法的な根拠を得て、琉球民衆の独立要求は鎮圧されることになる」というものです。
http://kinbricksnow.com/archives/51481894.html

 

つまり「環球時報」・中国共産党対日強硬派は、尖閣で交渉すること自体ナンセンスで、交渉などすれば沖縄の日本の領有権を認めてしまうと言いたいようてす。

 

はっきり言えば、尖閣と沖縄は力ずくで奪えと物騒なことを言いたいようです。

 

さすがこの部分は習近平の意向と違ったのか、いまは削除されてしまいましたが、まぁ、中国のある種の本音が思わずペロっと出たというところでしょうか。

 

今後も、日中関係が緊張すれば、もっと過激な「琉球独立支援論」が中国から飛び出すことでしょう。

 

話を戻しましょう。

 

さてこの福建は、琉球王国時代に中国への朝貢使節が最初に入港する港として、沖縄にとって中国の扉に当たる都市でした。

 

そのため、福建には旧琉球館跡や琉球人墓などの歴史遺跡が残っています。

 

久米三十六姓(南三十六姓)もこの福建から渡ってきたテクノクラート集団で、明の洪武帝から琉球王に下賜された人々として首里の近くの久米村に住み、琉球王国の支配階級の一角に君臨してきました。

 

まぁ、そうは言っても昨日今日ではなく、はるか昔の琉球王朝時代の話ですから、今はたわいもない家系伝説のようなものですが、いまだ沖縄県内では久米三十六姓を貴種とする風潮も一部にあるようです。

 

実際、沖縄政財界には久米三十六姓出身という人が多くいて、現知事の仲井真氏(蔡)は沖縄電力会長、その前任知事の稲嶺氏(毛)は琉球石油社長出身ですから、いまだに隠然としたパワーを持っているのかもしれません。

 

といっても私の沖縄時代の友人にもいましたが、いたってビンボー庶民でしたが(笑)。

 

この久米三十六姓の出身地福建省と沖縄県は、2000年に沖縄県・福建省友好協定を締結していることはあまり知られていません。

 

そしてこの時、福建省側にいたのが習近平(当時共産党省副書記・省長)氏、沖縄側は太田昌秀知事です。

 

ですから習氏は、沖縄の政財界や労働界の内情には、今の中国指導部の中で飛び抜けて熟知しているはずです。

 

太田知事は、中国側から接待漬けでおだて上げられて2億8450万 円を沖縄県が負担して「沖縄福建友好会館」を作りましたが、沖縄側の入居者が3社しかなく、結局福建側のものとなってしまいました。

 

貧乏県としては痛い出費だったはずなのに、まだ懲りず次の稲嶺知事は中国西北航空の上海-那覇直行便に夢を託し、またもや平成12年9月に1億3800万円の赤字補填を観光対策誘致事業費の名目でするはめになっています。

 

本土政府から県独自財政の3倍もの振興予算を貰っておきながら、まるでどぶに捨てたようなものです。

 

そしてこの中国大陸と沖縄を直結するという夢は、稲嶺氏の次の仲井真氏にもバトンタッチされています。

 

仲井真知事の中国出張の多さは有名です。知事が中国要人に見せるこぼれるような笑顔は、彼の渋面しか知らない私たち日本人にはやや複雑な心境です。

 

念のために申し添えますが、私は仲井知事の大昔の先祖が中国人であることは意味がないと思っています。

 

むしろ両属性を持つ沖縄が、今後誤った方向に舵を切ることを心配しています。

 

というのは、大きな眼で見た場合のアジア情勢は、米国の退潮が明らかになりました。

 

数十年のスパン、あるいはもっと短い期間で、米国はアジアから完全撤退する可能性も否定できなくなりました。

 

それと反比例するように、中国は国内的混乱を体外強硬政策で糊塗するために、外洋進出を図るでしょう。

 

まさに覇権主義そのものですが、その中国の外洋進出のルート上にあるのが沖縄諸島なのです。

 

この退潮する米国、弱まる本土との絆、繁栄して膨張を続けるように見える中国という構図を、沖縄が韓国のパククネ政権のように見誤らないでほしいと思います。

 

沖縄のDNAの中に、ふと「琉球事大主義」を感じる時があります。

 

那覇空港からタクシーに乗る時、運チャンになにげなく「最近中国人多いね」と尋ねると、「ああ、これからは中国の時代さぁ」いう答えが帰って来たことがあります。

 

大和世(ヤマトゥユ)からアメリカ世、そしてまた大和世・・・、次はチャイナ世なのでしょうか。

 

強い国に支配され、強い国に着いていくことで゛複雑な東アジアを生き抜いてきたウクナーという邦に涙します。わが愛するウチナーという「邦」よ、健やかにあれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※後半部分はアップした後、自分でもこりゃ長いと思いましたので、明日に分割しました。

 

 

 

 

 

事大主義(じだいしゅぎ)は、大に事(つか)えるという考えと行動を表す語。外交政策の1 つでもある。
漢代以降、中国で儒教が国教化されると
華夷思想に基づく世界観が定着し、またその具現化として冊封体制、周辺諸国にとっての事大朝貢体制が築かれることになる。
東アジア歴史に於いて中国への事大主義と小中華思想は複雑な緊張・影響関係を保った。(Wikipedia)

 

 

2013年9月25日 (水)

沖縄・地域資産としての基地その3 日本最強の仲井真知事

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かねがね私は、仲井真沖縄県知事こそ、日本最強の知事だと思ってきました。  

いちおう自公に推された保守系知事だったはずの仲井真知事は、元々は保守系に押されたということで移設容認派でしたが、民主党政権で登った梯子をはずされたとして移設反対派になってしまいました。

これがかつての太田元知事や、前回争った糸数氏のような革新系知事であったのならば、本土政府は陰で次の保守系候補を物色し始めたことでしょう。 

残念ながら仲井真は、「保守」であったが故に、本土政府にとってかえって手ごわい相手になりえたのです。

仲井真知事にとっては、元々移設容認派だったのが本土民主党政府が自らの不手際でダメにしたのですから、移設する義理は消滅しました。

まさに「義理」で、知事にとってはいったん本土政府の「県外」を信じて県内をまとめたのですから、なにを途中でグラつくのですかという筋は立っています。

というわけで現状のままでは、知事は本土政府が移設を強行すれば公水面認可を知事決済しないでしょう。 

この姿勢を堅持することで、知事は一挙に自公のみならず、いまや共産、社民、社会大衆にもウイングを延ばした「オール与党」態勢を作ってしまいました。

また、尖閣の緊張状況も仲井真知事に追い風になりました。この国際環境では、日米安保の喉に刺さった棘である普天間移設問題で、なんとか知事の協力を本土政府が「すがる」立場になってしまったからです。

参院選前に来沖した石破幹事長が、卑屈なまでに県連に譲歩したのはこのためです。 

仲井真知事は、手元の交渉カードを蒐集することにも熱心で、「県外移設」と同じ文脈でオスプレイ配備にも強硬に反対しています。 

オスプレイの安全性論議は、技術的にはほとんど意味のないものです。米国では要人輸送にも使われているほどで、米軍が簡単にポカポカ落ちる機体を使うはずがありません。 

オスプレイ配備を「県民の恐怖」(大部分がマスコミの過剰報道によるものですが)を背景に渋れば、本土政府もなんらかの追加的譲歩をせざるをえなくなります。 

この結果、意図したわけではないかもしれませんが、彼の手には、「オール与党」、「保守系」、「県外移設」、「尖閣」、「オスプレイ」という実に5枚ものカードが握られていて、まるでストレートフラッシュのようです。

ですから、表敬訪問に来た安倍首相に対して、移設は自公政権に戻っても無理」としながら、悪びれる事もなく振興予算3000億を要求しています。 

仲井真知事にとって、本土政府が米国との約束に挟まれて苦しめば苦しむほど自分の要求相場を吊り上げられるわけです。

太田元知事と違って、激するわけでもなく、怒鳴ることもなく、いかにも技術者上がりの(昔、通産省の技官でしたが)淡々とした渋紙色の顔色も変えず、なんとも喰えないタフネゴシエーターです。 

沖縄には、基地をカタにとって、振興予算、米軍再編交付金、あるいは移設調査費として巨額の補助を受け取り、それを財界や労働界、地域が享受していくという、美的表現を使えば「共生」の仕組みがありました。

その意味で、誤解を恐れずに言えば、沖縄の保守勢力と革新勢力はイデオロギー的には敵対する関係にありながらも、補完し合うツンデレ関係にあるといえる部分があります。 

この微妙な政治力学の上に乗って危ういバランスをとりながら本土政府と渡り合える人物こそ、沖縄県知事・仲井真弘多(ひろかず)その人です。

思えば、復帰後の沖縄県知事にはその時代の沖縄の鏡のようなところがあります。

復帰闘争を指導しつつも、理想と違う復帰を受容せざるを得なかった屋良朝苗

復帰に慎重でありながら公共事業を積極導入し、結局は「ヤマトンチュになりたくて、なり切れない心」と語った西銘順治

鉄血勤皇隊の生き残りであり、反戦・反基地闘争の酒豪の鬼であった太田昌秀

そして本土政府を手玉に取る渋紙色の現実主義者、仲井真弘多

今後、この歴代知事でもっとも指導者臭くない仲井真は、沖縄をどこに引き連れていくのでしょうか。

2013年9月24日 (火)

沖縄・地域資産としての基地その2 鍋の蓋返還反対論に隠れたもの

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名護市稲嶺市長が返還反対を申し出ている返還予定地の所有権は名護市にあり、現況山林にもかかわらず年間1億3千万円もの借地料が市に入ります。 

この基地使用料は一部が、地元の幸喜、許田、喜瀬の辺野古三地域に分配金という名目で支払われています。  

市所有地の基地使用料をこのように分配するのはあくまでも慣習であって、法的根拠はないそうです。  

しかし、その額がもっとも多い喜瀬地区などは年間3200万円にも登りますから名護市や地元地域も困るわけです。 

言うまでもありませんが、貧しい山間地にとって3200万円の労せずしての収益は巨大な既得権です。 

しかもややっこしいことには、この辺野古3区は移設賛成派で、反市長派と言われていますので、地元では選挙目前の反市長派への懐柔だという意地悪な見方もあります。 

その上、名護市は財政状況が恒常的にピンチです。その大きな理由は、稲嶺市長の就任とともに名護市に支払われていた年間約6億円の米軍再編交付金がなくなったこともあります。 

これは07年から09年度まで約18億円支払われており、これが一挙になくなったことは市財政にとって大きなダメージでした。 

稲嶺市長は「新たな財源確保を努力する」といっていますが、北部は発展する中部、南部とは異なり基幹となる地場産業が少ない地域ですので、代替財源が確保できたという話はついぞ聞きません。 

名護市は、この返還予定地がもともと利用するのが困難な山林であることから、それを返還反対の理由にしています。 

作家の目取真俊氏はでこう書きます。少し長いですが、返還反対と反戦・反基地という矛盾を融合させた論理の一例として引用します。 

「米軍基地に反対しているのに、返還しようとすると今度は反対する。沖縄の反対派はおかしい。細切れに返還を利用してそのような声が出ることを防衛省・沖縄防衛局は狙っている。」 

「特に国道や県道に沿った自治体にとって利用しやすい優良地は、地主、自治体にとっても第1に返還を望むところである。そういう場所は返還せずに、山の傾斜地や再利用しにくい場所を細切れに返還する。沖縄県民への嫌がらせに等しいやり方に反発が出るのは当然である。」(「海鳴りの底から」11年10月23日) 

「それが基地建設と絡めて行われる時、政府・防衛庁の悪質さはさらに増す。」 

これが私が名付けた「鍋の蓋返還反対論」です。「鍋を返せと言っているのに鍋の蓋くらいしか返さないんだから、嫌がらせだろう。なら鍋全体を返すまで蓋もいらないや」というわけです。

しかしそれを「政府・防衛庁の悪質な嫌がらせ」とまで言うとなると目取真さん、ちょっと考えすぎだと思うぞ。

だって1回目の時は、移設容認派の島袋市長時で、同じ土地だったじゃないですか。政府は島袋さんにも「いやがらせ」したってことになっちゃいますよね。

それと「沖縄県民」とベタで言ってますが、軍用地主も一緒なんでしょうか。この名護市の土地は市有地だから違いますが、多くの軍用地は私有地で年間約900億円もの地代が支払われています。

この軍用地が有利な物件として売買の対象になっているのは目取真さんもご存じなはずです。http://www.daikyo-p.jp/marutoku/marutoku7/marutoku7.html

普天間移設問題でもっとも大きなボトルネックは、反戦・反基地勢力ではなく、普天間の軍用地主会の反対だとすら言われています。

軍用地主以外にも、基地雇用者は約9千人おり、基地関連だけでその倍に登るでしょう。

これらの人の多くは、基地利権を辺野古に持っていかれてたまるもんか」と思っていてもなんの不思議ではないわけです。

沖縄において、基地の移設というのはそれほどまでに大きな利害関係のシフトを伴うものなので、これを反戦思想という表層だけで理解しては理解できなくなります

もし県民総意ならばなおのこと稲嶺市長は「鍋全体」、つまり名護市の基地すべてを返還しろと主張せねばなりません。 

稲嶺市長がそう主張したことがあったでしょうか。あんがい内輪の集会ではあったかもしれませんが、公的にはないはずです。 

稲嶺市長が本気で、キャンプ・ハンセン、辺野古弾薬庫、キャンプ・シュアブ、八重岳通信所などが返ってくると考えていたら、そんな夢想家では行政官は務まりません。

元宜野湾市長の伊波洋一氏あたりなら、政治オンチだともっぱらの評判の稲嶺市長と違って学生時代からの根っからの左翼運動家ですので、そんなスローガンも年中叫んでいたかもしれません。

しかし、市の行政マン一本槍で教育長まで務めた稲嶺氏が、「鍋全体」の返還などあり得ぬことだと分かっているはずです。 

そんな「鍋全体」一気に返ってきたら、真っ先に名護市の財政が完全破綻して稲嶺市政も一緒に吹っ飛んでしまいます 

もともと利用価値がないならば、経済的価値は限りなくゼロであり、収入はゼロだったのが、米軍が利用することで年間1億3千万の収益を生み出したわけです。

利用価値ゼロの土地が、再びゼロに戻るだけにすぎません。 

実績も開発プランもなく、ただ山の斜面だから困るというのでは、行政としておかしいのではありませんか。これじゃあ自分の無能を理由にしているようなもんです。 

もし、反戦・反基地で突っ走りたいなら、名護市にあるすべての米軍基地の返還を主張した上で、現実に返還したいと言ってきているこの土地も細切れだろうとなんであろうと貪欲に返還してもらえばいいのです。 

しかも、ここを強調したいのですが、この借地料は国民の税金です。本来必要のない税金を、国民は無駄に支払っていることになります。 

それを知った上で沖縄を見ると、基地反対論と容認論だけだけではないもうひとつの顔、すなわち「地域資産としての基地」が見えてきます。  

このあたりの反戦・反基地イデオロギーとゼニカネの隠微な癒着が、沖縄をどれだけ長期間蝕んできたことか、長年沖縄を心の「ふるさと」としてきた私にはため息が出る思いです。 

稲嶺市長は移設反対を唱え、防衛省とは辺野古移設に対して拒否しています。対話まで拒否しておきながら、金だけはほしいということのようです。 

一切、政府や米軍に協力はしない、と断言しているのですから、その筋を通されたらいかがでしょうか。 

来年1月の市長選には、このままいけば共産党、社大党、社民党、民主党、そしてなんと自民党沖縄県連までが相乗りしての鉄板の翼賛選挙になると思われます。 

これらの政党は、特に自民党は政権与党ですから、とうぜんハトさんがやった「県外移設」が物理的に絶対不可能だということを熟知しているはずです。 

にもかかわらず、あくまでもそれを旗印に掲げる以上、目的はひとつしかありません。 

この自民沖縄県連、民主両党が狙うのは、普天間飛行場の永久固定化です。 

「県外移設・辺野古反対」という無理難題を本土政府につきつけることで、逆に基地という「資産」を手放さない、そしてそれをカードにして本土政府からより大きな譲歩としてのゼニをむしり取る、ただそれだけです。 

来年1月の市長選で稲嶺市長が島袋氏に破れるようなことになれば、県-名護市-辺野古現地のうちふたつまでもが容認になるわけですから、自民党県連もあるいは方針転換する可能性がなきにしもあらずかもしれません。

それまでこの奇妙な自共相乗りの「島ぐるみ闘争」は続くと思われます。 

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2013年9月23日 (月)

沖縄・地域資産としての基地その1 稲嶺「反戦市長」の悩み 

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「反戦市長」として名高い稲嶺進名護市長がまた軍用地の返還を拒否したそうです。

誤植ではありません。軍用地にすることを拒否したのではなく返還を拒否したのです。(欄外資料1参照)

彼は徹底した反基地の立場に立ち、辺野古移設に強硬に反対を叫んでいます。

稲嶺市長が当選時に叫んだ言葉は、「私は辺野古の海に基地を造らせない」でした。

さて2010年月市長選(2010年1月)において、移設反対を唱えた稲嶺現市長と、当時現職市長で移設容認派だった島袋吉和氏との差はわずか1588票でした。僅差といっていいでしょう。

当時の市長選をめぐる状況をおさらいしましょう。

当時政権党だった民主党は、この市長選を鳩山政権の外交安全保障政策の大きな柱だった「普天間県外移設」の天王山と位置づけ、国政選挙並の全力投入をしました。

この当時、今と大違いで、発足間もない鳩山氏率いる民主党は国民の高い支持率を得て、それこそ燦然と光り輝く時期でした。

今、国民から毛虫のように嫌われ相手にされない状況とは、隔日の観がありますね。

鳩山首相の掲げる「少なくとも県外移設」という方針も、それなりの現実的対案があるのだろうと私すら思っていました。

そして前原誠司国交相は、稲嶺候補への支援として従来は移設とワンセットになっていた北部振興予算を移設問題と切り離して与えると言い出しました。

これは地元にとって大きなインパクトで、移設反対をためらっていた中間的な市民を反対派に押しやる働きがありました。

一方、反対派候補だった稲嶺氏は、移設の条件付き賛成を進めた岸本市長の下で教育長だった人で、岸本氏の部下だった時には革新色とは無縁な人と評されていました。

実は稲嶺氏が立候補した時には、沖縄で大きな力を持つ共産党は独自候補を擁立しようとしており現職反対票の分散は避けられず、情勢は現職島袋氏に有利と思われていました。

そこで、稲嶺陣営は選挙公約で共産党の公約を丸呑みして、候補一本化してもらったといういきさつがあります。

このような政権党の物心両面の全面支援と、共産党公約の丸呑みがあって稲嶺氏は僅差で勝利することができたのです。

さて、稲嶺氏が、市長として真っ先に「移設反対」を主張したのはとうぜんとして、それに継いで言い出したのが、この辺野古基地一部返還拒否でした。

これが一度目の返還拒否事件です。この時も、市の内外からは現行不一致を批判されました。

米軍は、海兵隊基地であるキャンプ・ハンセンの用地162ヘクタールを11年末にかねてからの予定通り返還したい、と申し出ました。

これに対して、稲嶺市長とその与党が多数を占める名護市議会は「返さないでくれ」と言い出しました。

11年10月12日、稲嶺市長は、当時の沖縄防衛局長だった田中聡氏と面談し、継続使用を申し出ていますが、「返さない理由はない」と逆に断られています。

今回2度目も、小野寺防衛大臣に、「常日ごろ(米軍基地の)面積がこれぐらい沖縄に集中しているという話をいただく。 少しでも返還にできるように努力していきたい」(沖縄タイムス9月5日)といわれてしまっています。

この返す、返さないでくれというやりとりで、未だこの162ヘクタールの米軍用地返還は宙に浮いた形になっています。

この返還用定地は、これまで3回に渡って米軍が「返す」と申し出ており、その都度、継続要請を受けて延び延びになった土地でした。

それが継続許可になったのは、ひとえに普天間の移設容認の見返りという交換条件があったからです。

あからさまにいえば、普天間基地の移設のご褒美として返還延期をしていていたとのが、稲嶺市長となって反故になったわけですから、国としては早く返させてほしいということになったわけです。

ではなぜ、「反戦市長」が米軍基地を返さないでくれ、と言っているのでしょうか?それはこの土地が現況山林だからです。

沖縄の軍用地は、本土の人が思い描くように本島の大部分を覆っているわけではなく、下図にあるように面積的にもっとも多いのは北部の山林です。

沖縄米軍基地マップ

よく沖縄県は、「全国の米軍占有施設のうち7割(73・9%)が沖縄に集中する」と主張しますが、それは正確ではありません。

佐世保や三沢、岩国など自衛隊との共有施設を含めた米軍施設・区域は全国比で22・6%(2011年3月末現在)です。(資料3参照)

といっても、第1位の北海道と違って狭い島中央の平坦部を米軍基地が占有している事実には変わりありませんから、その負担か大きいことには確かです。(欄外参照)

そしてその大部分の面積は嘉手納基地以北の「跡地利用の困難」な山岳地帯が占めています。

北部訓練場(国頭村等)、キャンプ・シュワブ(名護市)、キャンプ・ハンセン(金武町等)の3施設だけで県内全基地の約3分の2を占めています。

このあたりが本土の人に理解しにくい部分なのでしょうが、空港のあるいわば玄関口の南部にはまったく牧港補給地区(一部返還)以外には米軍基地はありません。

ですから、よく那覇の国際通りあたりで本土のテレビが通行人に米軍人犯罪が起きるたびにインタビューしていますが、那覇市民に米軍の実感はないはずです。

那覇市民にとって米軍とは、空高く飛ぶ米軍機と、たまに見かける私服の米兵ていどなはずです。

また普天間飛行場のある宜野湾は、今や那覇の副都心を目指して繁栄しており、米軍施設にさっさとどいてもらうほうが利益になります。

それに較べて北部は面積も大きく、米軍の訓練用地(北部トレーニングエリア)として「使っていただいている」というのが実感にちかいのではないでしょうか。

2006年の仲井真氏と糸数氏との知事選は、米軍基地を争点とした今どき珍しい保守対革新の一騎討ちとして全国の注目を集めました。

その選挙の集計結果と、米軍基地収入の自治体財政に占める割合、そして基地面積を一覧した表をご覧ください。 (資料2参照)

当時、普天間の辺野古移設容認を掲げていた仲井真氏の得票率が50%を超える市町村は以下です。

国頭村・・・仲井真得票率70%  基地占有率23%
伊江村・・・         68%         35%
金部町・・・         65%         59%
東村 ・・・         63%         42%  
嘉手納町・・・       57%         83%
名護市・・・         56%         11%
恩納村・・・         55%         29%
沖縄市・・・         54%         36%
宜野湾市・・・       52%          33%

以上の得票率を見ると、基地現状維持派が5割を超えるのは、いずれも基地のある北部から中部にかけての自治体だと分かります。

一方、基地占有率がゼロ、つまり基地がない市町村での仲井真氏の得票率は以下です。

・久米島・・・34%
・大宜味・・・39%
・座間味・・・43%
・西原町・・・46%
・豊見城・・・46%
・南風原・・・49%
・今帰仁・・・50%

これを見る限り、基地がない自治体ほど糸数候補の反戦・反基地の主張に共鳴していることがわかります。

単純な反戦・反基地か、基地依存かという表層ではわからない、「地域資産としての米軍基地」の存在がお分かりになるでしょうか。

この稿続けます。

※すいません。フォントがなぜか大小ばらついていて修正がききません。なぜなのかなぁ。

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■資料1 名護市長が土地の返還延期要請
NHK9月6日

日米両政府がアメリカ軍のキャンプハンセンの一部を名護市に返還することで合意したことについて、これまで返還の延期を求めてきた名護市の稲嶺市長が沖縄防衛局を訪れ、改めて返還を延期するよう要請しました。

日米両政府が、5日、名護市に返還することで合意したキャンプ・ハンセンの一部は、土地の大半を所有する名護市が、▼借地料が支払われなくなる一方で、▼山の斜面にあり、返還されても跡地利用が難しいなどとして、返還の延期を要請し、これまで3回にわたって返還が延期されていました。

名護市の稲嶺進市長は、6日沖縄防衛局を訪れ、武田博史局長に対し、返還を延期するよう、あらためて要請しました。

これに対し、武田局長は、「日米地位協定では『アメリカ軍が使用する施設や区域は、必要でなくなったときには、日本に返還しなければならない』と定められている。

これまで名護市側の要請を考慮して返還が延期されてきたが、今回、合意に至った」と述べ、要請には応じられない考えを示しました。要請のあと、稲嶺市長は、「市としても、返還されなくていいとは思っていないが、今回の返還の方法や内容には問題があると考え延期を要請した。借地料の急激な減少などの影響を考慮し2段階で返還するとの説明だったが、借地料を受け取っている地元の3つの区の間で混乱を招くおそれがある」と話していました。

■資料2 (図 日経新聞那覇支局長 大久保潤氏による)Photo_2

■資料3

米軍専用・共用施設・一時利用施設をあわせた規模(2008年1月1日現在)[占める割合  
北海道 344,601 33.55%
沖縄県 232,933 22.68%
静岡県 89,160 8.68%
大分県 56,350 5.49%
山梨県 45,969 4.48%
宮城県 45,699 4.45%
青森県 32,069 3.12%
熊本県 27,025 2.63%
滋賀県 24,090 2.35%
岩手県 23,264 2.27%
神奈川県 20,895 2.03%
岡山県 18,822 1.83%
東京都 15,787 1.54%
新潟県 14,080 1.37%
山口県 6,630 0.65%

2013年9月21日 (土)

週末写真館 ふてぶてしくも隙だらけ

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いつも気がつけば同じ二匹。あんたとは相性いいね。

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何かご用?わたしからは用はないけど。

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なぜか直進したい朝。倒木も乗り越える。

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ノシノシと縄張りを行く。こるらぁ、おかしな奴はいないな。

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なんだ?俺を撮ってんのかよ。つまんねぇぞ。

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ん?なに?あんた無害?それとも敵?
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図々しくも可愛らしい
可愛らしくもふてぶてしい
ふてぶてしくも隙だらけ
隙を見せてもすぐ逃げる
逃げるくせに寄って来る
寄って来るから撮ってやる

というわけで、猫の写真は止められない

2013年9月20日 (金)

福島米 コメ作付け、解除されても再開わずか1割

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早朝、福島で震度5強の地震がありました。当地茨城南部も5弱でした。ちょっと怖いですよね。皆様の被害がないことをお祈りします。

さて、この地震のようにいまだ福島農業は立ち直っていません。特に浜通りの稲作は深刻です。

今年、事故以来作付け禁止か出ていた地域で、作付けが解禁されました。

これは農林水産省が2012年、福島県内15市町村の計7300ヘクタールを「作付制限区域」としたことを、100ベクレルの規制値をこえるものが極小だったために規制解除したものです。

この過酷な福島県全域の米の放射性セシウム濃度を調べる「全袋検査」にを実施した福島県農業者のご苦労に感謝します。

しかし、作付けの回復歩みは遅く、わずか1割ていどに落ち込んでいます。

「福島県で、東京電力福島第一原発事故後の作付け禁止が今年解除された水田約2000ヘクタールのうち、実際に作付けされたのは1割弱の185ヘクタールで、3月時点での見込みの4割にとどまる」(読売新聞9月15日)

また、約3年間無人に近い環境であったために環境が野生化しています。塩害もまだ除去仕切れていません。

「放射能との闘いとは別に、人が減った里でイノシシなどが増え、田畑を荒らす新たな課題が浮かび上がってきた。津波被災地では、塩害も依然として大きな傷痕を残している。農業再生に向けた道のりは、まだ厳しく長い。」(福島民友新聞9月13日)

3年たつと、一般には田の底が抜けてけてしまいます。また雑草や,時には草木が生い茂り原野化していきます。

回復するには木となった草木の抜根から始めねばなりません。この作業は私も経験がありますが大変な労働です。

また、島の規制区域ではイノシシが跋扈しているようです。彼らは原野かした田畑に巣を作ります。今、規制解除区域はイノシシとの戦いになっているようです。

いったん人間をなめたイノシシは空き家にすら棲みつきます。イノシシはきれいに手入れされた場所には警戒して近づくのも慎重ですが、いったん人気がなくなった廃村では真っ昼間から我が物顔でのし歩きます。

彼らには人の営為こそが最大の防御なのです。人が人の労働と生活を続けることが、最大のイノシシ防御です。

放射能との戦いが、結局は「耕すこと」であったように、イノシシとの戦いもまた耕し続けることしかないのです。

心が痛みます。なんとかして作付けを回復しないと、このまま永遠に失われていくかもしれません。

来年こそ、単に解除ではなく、国が本腰を入れて支援するべきです。ガンバレ、福島農業!

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■コメ作付け、解除されても再開わずか1割…福島

読売新聞 9月15日
福島県で、東京電力福島第一原発事故後の作付け禁止が今年解除された水田約2000ヘクタールのうち、実際に作付けされたのは1割弱の185ヘクタールで、3月時点での見込みの4割にとどまることが、関係自治体への取材でわかった。
 風評被害の心配や、用水設備の復旧の遅れが、営農意欲をしぼませているとみられる。

 農林水産省は2012年、福島県内15市町村の計7300ヘクタールを作付けできない「作付制限区域」とした。その後、避難指示区域の再編が進んで立ち入りできる場所が広がり、県産米の放射性セシウム濃度を調べる「全袋検査」で規制値(1キロ・グラム当たり100ベクレル)を超えるコメがほとんどなかったため、今年は制限区域を5300ヘクタールに縮小させた。

■東日本大震災2年6カ月特集 農業再生
福島民友新聞 9月13日

放射線量、塩害“消えぬ課題” 有害鳥獣、農地荒廃に拍車

 東日本大震災の発生、東京電力福島第1原発の事故は、本県農業に大きな打撃を与えた。農業を再開するため、原発事故による避難区域などの一部では今年、懸命の除染に続いて水稲の作付けが始まったが、放射能との闘いとは別に、人が減った里でイノシシなどが増え、田畑を荒らす新たな課題が浮かび上がってきた。津波被災地では、塩害も依然として大きな傷痕を残している。農業再生に向けた道のりは、まだ厳しく長い。


環境保全、回復が喫緊の課題
 
 東京電力福島第1原発事故の避難区域では、2年以上にわたり放置された農地の荒廃が目立つ。避難先から帰還して作付け再開を目指す生産者が営農意欲を保つためにも農地の環境保全、回復は喫緊の課題だ。特にイノシシなど有害鳥獣が山間部から里山、さらに居住地近くにまで出没するようになっている。避難が長期化すればするほど、農地の荒廃に拍車を掛けるとして地元生産者の懸念が強まっている。

 国と県による営農再開支援事業は、生産者の避難で農産物の作付けが中断されるのを余儀なくされた避難区域などについて、約4年後の2017(平成29)年度末までに農地面積の6割で営農再開を図ることを目標に掲げ、3段階に分けて施策を進めていく総合的な政策を打ち出した。イノシシなど有害鳥獣による被害防止に向けた緊急対策は第1段階の施策に盛り込まれた。原発事故後、これまで行われてきた捕獲や狩猟が中断、イノシシなどは個体数が増加したとみられるからだ。

 イノシシが農地に現れると、作付けした農作物に対する食害をはじめ、田んぼや畑、あぜ道などの農業用設備が荒らされる恐れがあり、生産活動を軌道に乗せるための障害となりかねない。具体的な被害防止策として、一斉捕獲活動の展開や大規模な侵入防止柵の設置が必要であり、積み立てた基金から市町村を財政支援する。

今年、本格的にコメの作付けを再開した田村市都路地区、広野町、川内村などでは同事業を活用してイノシシ対策に乗り出している。ただ、市町村がイノシシなどの一斉捕獲活動に踏み切るためには、鳥獣捕獲の技術を持った担い手の確保が課題となるが、高齢化や原発事故による住民の避難から担い手不足が現実化している。大規模な侵入防止柵を取り付けても、イノシシの農地への侵入や被害を完全に食い止めることができるかは未知数だ。

2013年9月19日 (木)

福島第1原発汚染水問題のおさらいその4 トリチウムは醤油ほど危なくない

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福島事故当時、経済産業相だった海江田氏が、2011年6月に、東電が汚染水遮蔽壁の先送りを求めていたことを容認していたことを認めました。 

理由は、「東電に責任をとらせろ」という世論に負けたんだそうです。東電だけじゃないでしょう。当時のあなたの上司だった大の東電嫌いのカン氏にも負けたからでしょう。 

いずれにせよ、原発事故処理にも失敗、汚染水対策にも失敗したあなたに発言権はないことだけはよく分かりました。

以後、民主党はこの問題では黙っていなさい。なにが集中審理だ。妨害だけしか能がないのか。 

それにしてもあの時、国が関与して遮蔽壁を作っておけば、今こんなことには・・・。 

ああ、そんなこと言えば、あの時カン-カイエダ-マダラメという史上最弱トリオが官邸に座ってさえいなけりゃそもそも・・・とほほ(号泣)。
http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/yomiuri-20130918-00653/1.htm 

さて気を取り直して、トリチウムシリーズ最終回、行くぞ! 

こう言うとお叱りを受けそうですが、しょせんトリチウムなどは言ってみれば、「遅れてきた放射能野郎」なのです。 

こんな汚染水事件でもなければ誰もなんとも言われず、スポットライトなんか絶対に浴びない放射性物質にすぎません。

放射線エネルギーは弱く、缶ビールの缶すら透過できないので外部被曝はないし、仮に飲んでも直ぐにオシッコで出てきてきちゃいますし、特定部位にたまる根性もないので内部被曝で悪さすることもない。 

ウランやコバルト、ストロンチウムなどの強面の放射性同位体一族の中ではまことに温和な奴なのです。 

ALPS除去設備が除去できなかったのは、凶悪だからではな、あくまでも要するに「水」だったからにすぎません。「水の中の水」は除去できませんから。 

なんでこんなもんを怖がるのかのかなぁ。ストロンチウムならまだ分かるが。 

リスク論の代表的なものはこのようなものです。色々な放射性物質の後障害とゴッチャになっていますね。頭が混乱しているんだろうな。 

最後に脚光を浴びたからって、全部トリチウムのせいにすんなよ。まぁいいか。 

①一般のγ線測定器では測れない
②トリチウムが水や水蒸気の形で人体に入ると99%吸収され、 皮膚を経て摂取量の2%はDNAに取り込まれる。(遺伝子障害の可能性
③動物実験で特に造血組織を中心に障害(白血病等)が生じる可能性
④飲料水などとして大量に(体重に対して数十%以上) 摂取すると生体内反応に失調をきたし、30%を越えると死に至る。(東日本を中心に日本全国で相次いだ「魚の大量死」の原因か)
⑤カナダではダウン症の子供が増えた
⑥英国セラフィールドで小児白血病が増えた

①の「γ線測定器で計れない」というのは理由にもなりません。 

よく危険な放射能の筆頭に挙げられているストロンチウムは、β線測定器でしか計れないので、横浜で発見されて大騒ぎになった時には、専門の測定会社ですら計れる器械がありませんでした。(このストロンチウムは福島事故とはまったく関係なし) 

計れないなら、計れる液体シンチエーション測定器で測ればいいでしょうというだけです。買い込んだ自分の器械が使えないから危険だということですかね。 

次に②の遺伝子障害ですが、このいわゆる奇形ほどいやな風聞はありません。最近もオリンピックがらみで、韓国とフランスが3本足や6つ目をやってくれました。被爆者の苦しみを笑うゲス野郎め。 

このことについては、はっきりとまったくそのような事実はないとお答えしておきます。逆に福島県で奇形の実例の発生例があったら教えて下さい。 

岩上安身氏は「お待たせしました。福島で奇形が出ました」と大誤報をして、ジャーナリスト生命を縮めました。彼にとって奇形が出るというのは待ちに待った状況のようですな。 

最近でも、「ある女子アナが東日本の野菜を食べて応援したために白血病になった」などという悪質極まるなデマがネットで流布されましたね。
(※下卑たネットの情報はこちらから現物をご覧ください。彼らの脳味噌の汚染状況がよくわかります。http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1379437378/

これについてもわが隣県のことなので、明確かつ実証的に完全否定できます。被曝の恐怖に脅えたこともないニンゲンが、放射能をおもちゃにするんじゃねぇ! 

百歩譲って「奇形が出る可能性」という仮説の「意見」が証明されるためには、因果関係が立証されねばなりません。リスク論者にその用意はありますか? 

トリチウム・リスク論者は、今ことさらトリチウムを上げていますが、通常白血病や奇形の原因とされるのはストロンチウムのほうです。 

ストロンチウムを大量に浴びると、遺伝子障害を起こすことはよく知られています。 

ストロンチウムを取り込むと、赤血球や白血球の元になる骨髄の造血細胞がガン化してしまい白血病を発病してしまうからです。 

白血病は被曝後2年から3年で増え始めると言われています。ちょうど今頃の時期です。 

ですから、もし福島事故で後障害がでるのならば、今まさにこの時期に、福島で有意な白血病増加が見られなければなりません 

福島事故後多くの人々の後障害検査と治療に携わってきた南相馬市立総合病院の坪倉医師は、NHKラジオ(8月27日)でこう述べています。 

99.9%の子供たちからは12年4月,以降いっさい異常は検出されていない」※http://toyokeizai.net/articles/-/13925 

これが被曝現場の事実です。数百キロ彼方の安全圏からネットで「危険だ、危険だ」と騒ぐより、ひとつの事実を知りに現地に来なさい。 

今後まったくないとは思いませので、監視(サーベイランス)は必要でしょうが、健康に対する後障害の危機は少ないと見るのが妥当です。 

このような状況を受けて、国連科学委員会はこう述べています。 

日本での住民の被ばく量は低い、もしくは「非常に」低いものであった。そのために日本の住民の健康リスクは低いものになっている。」(国連科学委員会福島事故最終報告書)※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-9a31.html 

④の、「東日本の魚の大量死」は都市伝説に毛が生えたような話にすぎません。前にどこかでもっともらしく流布していた気もしますが、事故から丸2年半たってまた蒸し返されるとは思いませんでした。 

「東日本の魚の大量死」は因果関係はおろか、果たして大量死そのものがあったのかどうかすらわかりません。 

私なら、魚が大量死したらなにかの農薬か工場からの毒物流出をまず疑いますね。 

もし、トリチウムとの関連を主張したいのなら、「東日本の魚大量死」が出たという海域の放射線濃度、特にトリチウム濃度、死亡個体数、日時、魚種のデータが最低限必須です。 

最後に「トリチウムが入った水を体重の30%飲むと死に至る」というに至っては、すいませんが爆笑してしまいました。 

体重平均60㎏として約20リットルですから、2リットルペットボトルにして10本!どう飲むつうの。 

飲みたくても飲めませんから、そうとうに無理な想定というか、2リットルペットボトル10本も飲めば、なにを飲もうとも病院行きです(笑)。

ただの水道水でも 過剰に摂取すれば、細胞がナトリウム不足になって、体内で形成された毒素の排出ができずに「水中毒」になります。

20リットルのトリチウム原液を飲めば、そりゃおかしくなりますって!それは放射能がどうというより、ナトリウムバランスの問題ですね。 

トリチウムは、薬理学上いわゆる低毒性(low toxicity)に分類されます。低毒性というのは、それが積極的に危険を放出しているわけではなく、常識を超えた摂取をすると危ないぞ、ていどの意味です。 

そう言えば、もうひとつ非常に危険な物質があります。それは醤油です。醤油は20リットルも飲まないでも充分に重体になれます。

さきほどの水中毒の逆で、ナトリウム過多になるからです。

ですから、醤油瓶の裏には注意書きで、「醤油を体重の30%以上飲まないで下さい」と小さく書いてあるはずです(うそ)。 

ひょっとして一万人にひとりくらい飲む奴がいるから醤油にリスクがある」と書いたらバッカじゃねぇかと言われますね。 

そうあたりまえですが、摂取するのが微量だからです。トリチウムも一緒です。 

ですから、トリチウムは一般の水よりは消極的意味で「危険」ですが、醤油ほど「危険」ではありません 

海水に拡散・希釈して混ざりますから(放出以前に希釈してありますが)おそらくほとんど計測不能レベルになるはずですので、トリチウム原液を飲むのとはまったく違います。 

醤油の中で生活する人がいないように、トリチウムの中で暮らす人もありえないのです。 

ありえない仮定を考えて、「突然死する」とか、「白血病になる」とか脅されてもなんだかなぁというかんじです。 

リスク論者の皆さん、このような常識はずれの極端なことばかり言っていると、いっそう信頼されなくなりますよ。 

⑤⑥のカナダのダウン症や英国での白血病も、同じように肯定論否定論いずれも存在します。 

といっても、私がトリチウムの危険性を完全否定しない理由は、今後の疫学調査でトリチウムと突然死、あるいは白内障との関連が証明される可能性がまったくゼロではないからです。 

しかし現時点ではそれを立証する疫学データは存在しない以上、私はトリチウムの危険性について、「可能性はゼロではないが、醤油よりリスクは少ないと思われる」とします。 

放射線の専門家の平均的認識はほぼ一般的に以下です。

(海洋生物環境研究所の御園生淳氏、富山大学水素同位体科学研究センター長松山政夫教授・週刊文春における発言)
①水として摂取しても10日くらいで半量が排泄されてしまうので内部被曝の可能性は低い。
②トリチウムの出す放射線量のエネルギーが低いので、外部被曝はありえない。
③毎日100ベクレル/㎏のトリチウムを含む食物を1年間食べた場合の摂取量は、0.0015ミリシーベルトで、,セシウム137の約千分の1ていどで比較にならない。
④トリチウムは何かに濃縮することがないために生物濃縮は考えられない。

このトリチウムに対する認識から汚染水の排出は、このようなルールを作って行われます。 

トリチウム濃度としては、400万ベクレル/リットル含まれます。

これは原子力施設の濃度限界(告示濃度限界)とされる6万ベクレル/リットルを大幅に越えていますから,これを告示濃度限界の6万ベクレルまで希釈して70分の1ちかくにまで下げて、海に放出します。 

これは国際ルールに完全に則っていますから、文句を言ってくる国は韓国以外にないでしょう。 

あの国はとうとう頭に血が登って、日本全国の海産物を禁輸するようです。栃木、群馬も驚きでしたが、とうとう「全国」ですか。http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130919/frn1309191528003-n1.htm

呆れてものが言えん。もはや神経症の領域ですな。国ぐるみでヘイトスピーチやってるんだからどうにもなりません。

まともに水産庁が説明などしても聞く耳をそもそも持っていないのですから、毅然とWTOに訴えるしかないですね。

それはさておき、韓国以外の外国の専門家は、現状のわが国の汚染水対策に同意しています。

訪日したスリーマイル島事故を経験したNRC元専門家も、「直ちに地下水を汲み上げを再開して、海へ放出すべきだ」と助言しています。(欄外参照)

政府は国内外の叡知を結集すると言っていますから、さらに良い方法も登場するかもしれまん。 

いずれにせよ、完全廃炉になり、使用済み燃料棒の処分が終了する時まで、冷却水は止められませんから汚染水は出続けます。それまでの数十年先までの長距離マラソンなのです。 

何度も繰り返しますが、この汚染水問題は、原発推進も反対もまったく関係のないことです。そのような立場にとらわれて見ないことです。 

原発反対だから、汚染水処理を止めろと言っているようにすら聞こえます。 

トリチウム・リスク論者は、このままタンクが溜まるだけ溜まって処理不能になり、炉の冷却水の循環もできなくなって再びメルトダウンすることが望みなのでしょうか。 

                                (このシリーズやっと終わり)

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福島第1原発の汚染水処理問題、放出準備に着手すべき=米専門家
ロイター2013年 09月 14日  

バレット氏は米原子力規制委員会の元幹部で、1979年に起こったスリーマイル島原発事故の処理を担当した経験を持つ。

同氏は、原子炉に届く前に地下水をくみ上げる作業を始めるべきだとし、地下水とともに、放射性物質を取り除いた汚染水は海に放出する必要があるとの考えを示した。

「来年初めには水は除染され、放出の準備が整う」としている。

同氏は、汚染水の除染が計画通りに進めば、福島第1原発近海で取れた魚を孫にも安心して食べさせると述べ、安全性に自信を示した。だが東電は信頼性を失っているため国民の懸念を払しょくできないとし、東電が安全性を強調するだけでは不十分との考えを示した。

また合意形成を重視する日本の意思決定スタイルは、現実的な措置を先送りするリスクをはらむと指摘。「東電は国民や地元の漁業関係者などへの負担を懸念して貯蔵タンクを増やし続けているが、これは問題を先送りしているにすぎない」とし、「今が問題に取り組むべき時」と主張した。

東電の広瀬直己社長に対しては「海外専門家の技能を日本のシステムに融合させることを提言した」とし、問題解決にあたり海外専門家により協力を求めるべきとの考えを示した。

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2013年9月18日 (水)

福島第1原発汚染水問題のおさらいその3 小出裕章氏「セシウムより相対的に危険度が低い」

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小出裕章氏は、「少しでも人体に影響がある」ということを前提として、「(セシウムと較べれば)トリチウムは他の放射性物質と比較して相対的には危険度は低い」としています。(ラジオ番組「たね蒔きジャーナル」2月2日) 

余人ならぬ小出氏の言うことですから、一部にある「世界最凶放射能トリチウム」などといったことは煽りだと思ってかまわないと思います。

また、小出氏は別な所で、「海に放出されたトリチウムは、雨として降ってきて地球を放射能汚染する」ということを書いています。 

しかし、放射能が「降る」といっても50年代、60年代の核実験由来のものより多くなるわけはなく、当時の放射能雨によってガン、白血病が急増したという事実はありません。
(下図 日本人のガン白血病患者数の推移)

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上図は50年から続けられた厚労省人口動態調査による日本人のガンと白血病の増加動態を示したグラフです。 

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これと上のセシウム降下量推移グラフを合わせてご覧くださることで、セシウム137と白血病・ガンとの相関関係を知ることができます。見事に反比例していますね。 

上図をみれば、緑と赤の大気圏内の放射線量を表すドットは、62年をピークにして右肩下がりに減少しているのがわかります。 

一方、白血病とガン患者数は等曲線で一貫して右肩上がりの線を描いています。 

もし放射性物質降下とガン患者数が相関関係にあるのなら、70年代を境にして白血病は減少傾向を辿るはずでなければおかしいことになります。 

放射性ヨウ素による甲状腺ガンは、チェルノブイリでは事故後4年の1990年頃から増加しました。白血病・ガンはやや遅れて8年や10年後と言われています。 

ならば、日本の白血病・ガン患者は70年代中期から激増していかねばなりません。折れ線グラフで描けば急上昇トレンドの線を描かねばなりません。 

しかし、白血病・ガン患者数は70年代から80年代にかけてたしかに増えてはいるもののこれは高齢化やほかの原因とも考えられます。 

そしてもう一点注意していただきたいのは、突然セシウム降下量が増加した1986年、、つまりチェルノブイリ事故とその後です。 

放射性物質が蓄積して発症するまでの時間差が仮に10年内外だとして、1996年前後に特出した患者の急増がみられるでしょうか 

このふたつの図を見比べる限りありません。白血病・ガン患者数動態図は淡々と等曲線増加を示しているだけです。 

むしろセシウム降下量は核実験が停止されるに従って右肩下がりになり、一方白血病・ガン患者数は右肩上がりになるという反比例関係が読み取れます。 

もし、セシウム137の放射性降下と白血病・ガン発生が因果関係があるのならこのふたつの曲線は完全に同調していなければおかしいのではないでしょうか。 

ここにはトリチウム危険説の人々が主張する突然死のデータはありませんが、小出氏すら「セシウムより相対的に危険度が低い」というトリチウムが人体に大きな影響を与えたとはにわかに考えにくいのも確かです。 

このようなことから、私は頭からトリチウムの危険性を否定するつもりはありませんが、公平に見て、トリチウム危険説は物証や科学的証明に欠けている部分が多くあり、憶測の域に止まっている気がします。 

ああ、終わらない。もう一回。

2013年9月16日 (月)

福島第1原発汚染水問題のおさらいその1 浄化装置しか解決方法はないが

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大飯4号機が点検停止し、現在日本は原発ゼロになりました。今後あいついで電気料金の値上げが続くと思われます。

さて民主党は、そんな直面するエネルギー問題になどには目もくれず、東電山下和彦フェローを査問よろしく集団で「尋問」したあげく、「今の状態はコントロールできていないと考えている」という言葉をもぎ取り、得意満面で安倍政権の「ウソ」を徹底追及するとのことです。呑気でいいですな。

この鬼の首でも取ったように嬉しげにはしゃいでいる人物が、事故時の経済産業相だった海江田氏で、おまけに事故後2年間も汚染水問題を放置し続けたのも彼らだときていますから、二重にゲンナリします。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-dc66.html

そしてこの山下和彦という東電幹部には当事者意識があるのでしょうか。これでは東電が二枚舌だと自分で言っているようなものです。

こういう過酷な現場のモチベーションなど考えもしない幹部がいる東電など、さっさと潰して完全に国有化するしかないのかもしれません。

ところで、福島第1原発湾外の汚染水問題で、いったん消えかかった放射能への恐怖が再燃してしまいました。 

経過をおさらいしましょう。東電は事故後3カ月後の11年7月頃から、原子炉を冷却水を循環させる装置を作りました。 

とうぜん使用済みの放射性物質が含まれた水が毎日大量に廃棄されるわけです。そこで、それを放射性物質除去装置を通してセシウムなどを取り除いてタンクに貯めてきました。 

その総量たるや、実に13年8月末で33万立方メートルというのですからハンパではありません。

これは全量溜め込んであり、約1000個のタンク群に納まっています。

しかしこのタンク設置に甘かった箇所がありました。

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タンクの密封ができる溶接型ステンレス・タンクではなく、鋼板をボルトで留めたフランジ型が約3割あったために、ポタポタと汚染水が垂れ出たタンク(G6-1no.6)が発見されたのです。(上図参照 東電HPより)

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東電は報告書で、「染みだした」という表現を使っているところからみて、流出量は限られているのかもしれません。

ですから、流出量は300トンと言われていますが、正確にはよくわかりません。水位計がついていなかったり、元々300リットル満タンだったどうかよく分からないので、規制委から怒られています。

このあたりは東電の処理作業の運営の甘さが問われてもしかたがないでしょう。

次に、いわゆる「汚染水」で括られてしまいますが、その大部分はタンク漏洩とは別の地下水です。

汚染水の大部分は阿武隈山系から豊富に湧きだしてくる地下水で、日量なんと1000トンもあるそうです。

この地下水がいまだ高濃度の放射能が残る原子炉建屋にぶつかるか、 そこからの汚染水と混ざり合って汚染水を増やすことになりました。

そこで、東電は地下水を施設建屋に侵入するのを防ぐために、施設建屋の手前に12本の井戸を掘って汲み出そうとしています。

日量バイパスさせる量は100トンから150トンといったところで、これがバイパス水といわれるものです。

これなら汚染された原発建屋をくぐらないきれいな水だということで、漁業者も納得して作業が始まったばかりでした。

しかし運悪くタンクの漏洩による汚染水問題がオリンピック招致と重なって国際問題化してしまい、この汲み出し作業は停止したままになっています。

次なる手段は、施設建屋を凍土壁といわれる壁で囲ってしまうことです。(下図東電資料)

写真1-s

この工法は最新のもので、いままでトンネルの湧水対策などに利用されてきた実績かあります。

逆に言えば、最新なるが故に、これほど大規模な工事の経験が少ないというのも実態のようで、そこが不安視されていますす。

写真2-s

これは削孔といって杭を打ってそこに凍結管を差し込み、特殊冷却剤をしみ出させて、地中に凍土壁を作る工法です。(上図参照 同)

この工法だと地中に原発施設のパイプや岩盤などがあっても、それに沿って冷却剤を充填できるという強みがあります。

問題は、時間がかかるという点です。なにせ総延長約4kmで、施設建屋を内陸と海側から包囲せねばならないからです。(図青線部分)

現在この工事には2年かかると見積もられています。う~ん、2年というのは致命的に痛いですね。

そこで、かねてから東芝が米国エナジー・ソリューション社のライセンスを得て製造したALPS多核種除去装置が登場することになります。

これは、現在福島第1で稼働している東芝のサリー(SARRY)除去装置を進化させたものです。

サリーはセシウム除去に特化したもので、当初導入した仏アレバなどの外国製品が故障続きだったのに対して、構造が単純で優れた性能をもっていました。

今タンク群に入っている汚染水はこのサリーを通したセシウム除去済みのものです。

さて、このALPSは多核種除去装置というだけあって、セシウム、ストロンチウム、コバルトなど62種類の核種を除去することができます。

セシウム134と137は、サリーでそうとうに除去されていますが、処理前の濃度があまりにも高いために残留していました。

それがこのALPSではセシウム137で0.3ベクレル/リットル以下まで下がり、現状の海水と同じ濃度にまで下げることができています。

現在既に福島第1には3系統か設置されており、完全稼働すれば一日500トンの汚染水を処理することが可能です。

ただし、やや脱力することにはこのALPSは2つのタンクのピンホールから微量の汚染水が漏れだしており、現在検査修理中です。

このピンホールからの漏水は量的にはわずかですが、セシウム、コバルトなとが含まれているために慎重を期しているようです。

今、問題とされているのは、トリチウムです。これが東電も認めるように、400万ベクレル/リットル含まれます。

これは告示濃度限界(※)とされる6万ベクレル/リットルを大幅に越えています。

このトリチウム問題は明日に続けます。

告示濃度限度. 0447. 実用発電用原子炉の設置、運転などに関する規則(昭和53年  通商産業省令第77号)の第9条と第15条を受けて、経済産業大臣が告示で定めた  放射性物質の濃度限度。

2013年9月14日 (土)

週末写真館 初秋の朝日

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もう秋色です。なぜか、空まで秋の真紅。

2013年9月13日 (金)

田中原子力規制委員長 「汚染水は心配するような状況ではない」 付録・南相馬市とソウルの空間線量比較

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事実」といっても、法律学ではいくつか種類があるそうです。 

ひとつは、これこれこういうことが起きましたという「発生事実」というそうです。私たちがよくいう証拠に裏打ちされた客観的事実です。 

それに対して、「自己の主張し又は要望するところをもって現実に存在するものの如く考え、それを根拠として理説を立てる」(津田左右吉)のを、「決定事実」と呼ぶそうです。 

この「決定事実」がやっかいなのは、その人や集団が、「これこそが事実である」と宣言すれば、もう反論することすら許されない「事実」となってしまい、これに反することは全部けしからん嘘つきにしてしまうことです。 

この決定事実の信奉者が、放射能問題には多くて困ります。

まったくおいおいですが、福島第1原発事故処理の過程で発生した汚染水問題も、ちょっとこれに似たところがあります。 

安倍首相のIOC総会での「完全にブロックされています」という発言に、またもやゼロベクレル主義者たちが騒いでいます。 

あの福島瑞穂女史は、こんなことをツイートしています。この人にかかると安倍首相はもちろん、規制委員会の田中委員長すらも「うそつき」にされてしまいます。

「総理の『完全にブロック』発言について、原子力規制委員長が『非科学的とは思わない』と擁護したとの記事。完全にブロックなどされていない。非科学的。原子力規制委員会は、原発は安全と言う委員会になってしまったのか!政権から独立していなくてはならないのに、大問題。」 

ちなみに共産党の志位さんも、「状況がコントロールされているなどという首相発言に怒りを覚える」そうです。

福島女史が噛みついているのは、原子力規制委員会の田中俊一委員長のこの9月11日の発言です。 

心配しなければいけないような状況でないことは、私もそう思っている」、「田中委員長は根拠として、第1原発の港湾外では海水に含まれる放射性物質濃度が低いと強調した。ただ、港湾外にも放射性物質は出ており、濃度が低いのは海水で薄められたためとみられる」(時事通信9月11日) 

福島さん、具体的にどれだけの量の汚染水が港湾外に出て、どれだけ放射線量を上げたのでしょうか。 福島さんは、湾外の放射線量の数値を具体的数値を、「表層水のセシウムが0.021ベクレル/リットルだ」と書いています。

すいません、私の誤記ではありませんよ、コンマ021です。食品基準でも10ベクレル/リットルなんで、飲料にしても大丈夫です。

これはなにも日本独特の基準値ではなく、チェルノブイリの被爆地ベラルーシは13年かけて達成した数値がこの10ベクレル/リットルなのです。

ご覧になって分るように、ベラルーシのほうがわが国より緩い基準値です。(欄外参照)

確かに規制委はINES(国際原子力事象評価尺度)「レベル3」と認定しました。しかし、下図をご覧下さい。(Wikipediaによる) 

規制委は、原子力施設の外に流出した可能性を認めているから「レベル3」にしたのであって、それが「レベル4」、すなわち「事業所外への大きなリスクを伴なわない事態」以下だと評価していることを注目してください。 

第一、福島女史のように0.021ベクレルという超微量を根拠に「嘘だ」と決めつけたら、もはやゼロしかありませんね。そんなことはありえません。こういう態度をプロパガンダとか、煽りとか呼ぶのです。

そして正直言って、その流出量すらもよく分からない」のです。田中委員長は、「300トン漏れたという(東電の推定に)証拠はない」という表現をしています。

規制委は、「漏水の発覚時に満水より300トン少なかったが、タンクに水位計がなく、もともと満水だったかどうかも不明」((読売新聞8月29日)のために、はっきりしたことは現時点では分からないと言っているのです。

つまり、「メディアもあまりピリピリしないで、よく見ていてほしい」(田中委員長)とメディアに異例の注文をつけたていどの飲水基準値にもはるかに及ばない極微量放射線量の「漏れ」だったということです。

その理由は、田中委員長が言うように、海水で希釈されたからです。この問題は、ALPS浄化装置による浄化後の排出水に含まれるトリチウム問題でもまた出てきますので、ここでは議論しません。

落ち着いて下さい。今、パニくって何になります。それとも、ゼロベクレル主義者が騒ぎたいのは、永遠に福島事故が解決しないほうがいいからですか。

この人たちのこのような、「自己の主張し又は要望するところをもって現実に存在するものの如く考え、それを根拠として理説を立てる」が如きスタイルは、毎度のことですが、解決を遅らせ、新たな風評被害を作る事以外何の役にもたちません。

韓国では既に群馬、栃木の海産物(大爆笑)も含めて、招致決定総会直前に東北各県の海産物の禁輸もしています。ほんとに反日小児病そのものだなぁ。

楽しい韓国製東京五輪ポスターはこちらから。http://www.ilbe.com/1948256422
あの国のレベルがよくわかります。特になかほどの「強者バイオ人」は六眼です。

フランスの週刊誌カナール・アンシェネ(11日)は、このような悪質極まる差別的マンガも掲載している有り様です。

もしこれらが被曝者差別でなかったら、もう世の中差別なんてものは存在しませんね。

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ついでに五輪招致委の竹田理事長が、ブエノスアイレスの4日の記者会見で、「東京は水、食物、空気についても非常に安全なレベル」といったこともいたくご不満なようです。

ではご要望どおり、東京と東アジア主要都市の放射線量を比較します。

東京 ・・・0.03マイクロシーベルト/時  ※http://fukushima-radioactivity.jp/
・ソウル・・・0.14    ※http://fukushima-radioactivity.jp/world-mapsearch.php
・北京 ・・・0.09     ※同上(以下同じ)
香港 ・・・0.23

ご参考までに福島県の空間放射線量は以下です。※http://fukushima-radioactivity.jp/
・南相馬市・・・0.14              
双葉町  ・・・0.24
いわき市 ・・・0.11
・二本松市 ・・0.16

(※なお、相双地域には未だ5マイクロシーベルト前後の土地も多く存在しています。また同地域でも地形、当日の風向きによって変化が生じています。)

東京五輪で眼が6ツになると騒いでいる韓国の皆さん、諸君らの首都ソウルは南相馬と一緒の空間線量ですぜ(笑)。

ひょっとして韓国のケンチャナヨ原発が、また秘かに事故りました?
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-f602-1.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-93d6.html
       http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-bf68.html

福島さんや志位さんといった左翼運動家は、このことを政府批判の材料に使いたいのでしょうが、そんな政治的利用主義はやめてもらえませんか。

何度か書いてきていますが、この汚染水問題は、原発推進、反対とは何の関係もありません。具体的、技術的に対応すべき事柄なのです。

今やらねばならないのは、この汚染水問題で中断しているバイパス井戸12本を早急に再稼働させて、施設建屋に流入する地下水を減らすことです。

そしてALPS浄化装置を稼働させ、中期的には施設建屋を囲む3㎞に及ぶ凍土壁を作り、フランジ型タンク約350基をステンレス溶接型タンクに立て替えねばなりません。

その時に、タンク群の地盤測定も国がやり直したほうがいいでしょう。私はあの速成地盤は危ない可能性があると思っています。ついでに水位計もつけてね。

もちろん、今政府が考えているように国内外の叡知を集めねばならないでしょう。国が真っ正面から関与して様々な方法を試したらいいのです。

それに協力するべきであって、「嘘つき」呼ばわりしても意味がありません。そのためにも、「ピリピリせずに」(田中規制委員長)冷静に対応せねばなりません。

                         .。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。. 

■規制委員長「心配ない」=「ピリピリせずに」汚染水問題   

時事通信 9月11日(水)16時38分配信

 東京電力福島第1原発の放射能汚染水が海に流出している問題で、原子力規制委員会の田中俊一委員長は11日の定例会見で、安倍晋三首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会で「状況はコントロールされている」などと発言したことに関連し、「心配しなければいけないような状況でないことは、私もそう思っている」と述べた。
 田中委員長は根拠として、第1原発の港湾外では海水に含まれる放射性物質濃度が低いと強調した。ただ、港湾外にも放射性物質は出ており、濃度が低いのは海水で薄められたためとみられる。
 

 また田中委員長は、規制委のこれまでの対応について「非常に良くやっていると思う」と自賛する一方、「メディアもあまりピリピリしないで、よく見ていてほしい」と述べ、報道が不安をあおっていると主張した。 ■原子力規制委員会の田中委員長、「300トン漏れたという(東電の推定に)証拠はない」と、東電の調査のずさんさを厳しく批判。 

汚染水漏水量なお疑問…規制委員長、厳しく批判

 東京電力福島第一原子力発電所の貯蔵タンクからの汚染水漏れについて、原子力規制委員会は28日、国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)に基づく暫定評価を、レベル1(規定の運転状態からの逸脱)からレベル3(重大な異常事象)に2段階引き上げた。

 しかし、田中俊一委員長は28日の記者会見で「300トン漏れたという(東電の推定に)証拠はない」と、東電の調査のずさんさを厳しく批判。「今後、漏水量が変われば(再び)評価を変えざるを得ない」と話した。

 レベル3は、INESの8段階の深刻度で上から5番目にあたる。漏れた水に含まれる放射性物質の総量などから判断された。

 しかし、300トンもの水がどこへ流出したのか分かっていない。漏水の発覚時に満水より300トン少なかったが、タンクに水位計がなく、もともと満水だったかどうかも不明。「300トン」という漏水量が疑われているのは、このためだ。レベルの修正を検討した規制委の定例会合では、委員から「拙速な評価は混乱を招く恐れがある」などの指摘が相次いだ。

(2013年8月29日07時36分 読売新聞)

ベラルーシにおける食品規制値の推移(抜粋)
単位ベクレル/㎏

      86年     88年   92年   96年  99年

水    370   18.5   18.5  18.5   10
・野菜  3700    740    185   100     40
・果物          同上                  70
・牛肉  3700    2960   600   600    500 
・パン  -        370   370   100     60
・豚肉・鶏肉 7400  1850  185    185     40
・きのこ(生) -      -   370    370    370
・きのこ(乾燥) -  11100 3700   3700   2500
・牛乳   370     370   111    111    100
幼児食品  -      1850                37

2013年9月12日 (木)

安倍の外交的リアリズムとオバマの敗北

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この記事は1週間ほど前に書いたものですが、汚染水問題やオリンピック招致決定などがあってアップしそこねていました。賞味期限切れぽいですが、もったいないので加筆してアップしておきます(笑)。

さて、ロシアのシリア化学兵器国際管理案で米国もまとまりそうです。喜ばしいことです。

シリアが化学兵器をもっていることは公然の事実(※1欄外参照)ですが、それと軍事介入とは別次元だと私はかんがえています。

挙げたコブシを降ろせなくなっていたオバマはロシアに救われることとなってしまい、もはやズタボロです。

そのオバマは、日本など俗に言う「下駄の雪」、蹴られても踏まれてもついてくる国、と思っていはずです。はっきり言って、そう言う国を従属国と呼びます。 

なにを言ってもイエスと言い、無理無体を言っても着いてくる自尊心が欠落した奴ら、こんなイメージがたぶん米国政府に歴代受け継がれてきた日本観なはずです。 

ですから、去年訪米した安倍首相に対して、「もっとも重要な同盟国」と言いながら国賓待遇にもせず、晩餐会はおろか共同記者会見ですら冷笑的な表情でソッポを向いていたのが、このオバマという男です。 

一方訪米した習近平とは別荘に呼んで長時間の二人だけの首脳会談を設定し、パク・クネに至ってはもはや恋人のようなスイートさを演じてみせて、彼女を有頂天にさせました。

このように外交的待遇で差をつけてみせるというのは外交の常道ですから、オバマは大変に分かりやすい男のようです。

ところで、オバマが選んだ国務長官のジョン・ケリーは、反戦米兵運動をして勲章を投げ返したことで有名になったようなバリバリのリベラリスト。とうぜん有名な親中派。

ついでに国防長官のチャック・ヘーゲルも外国への軍事介入を嫌う保守的自由主義者(リバタリアン※2参照)で、今回よくシリア介入に賛成したものです。

まぁ、よくもこういうメンツで米国政府を作れたもので、いわば学生活動家出身者が枢要を占めた民主党ハトカン内閣の米国版とでもいったところでしょうか。

このようなオバマは、今回のシリア攻撃についても日本は当然のこととしてすぐさまシッポを振って恭順の意を示すとタカをくくっていたはずです。 

そこで3日に、軽い念押しの電話の一本を安倍にかけてきました。「プライムミニスター・アベ、シリア攻撃の支持はいいよな」。 

ところが、安倍から返ってきた返事はオバマを凍りつかせました。 

「ミスター・プレジデント、安保理決議を得る努力をしていただきたい」。 

初めこの部分のニュアンスを私は、単なる「支持」と勘違いしていましたですから、ずいぶんと早い支持表明だなとがっかりしたものです。

しかし安倍はそれほど人のいい男ではなかったようです。安倍という政治家は、毀誉褒貶あるようですが、今の段階ではリアリズム政治家と評していいのではないでしょうか。

もちろん、安倍が言ったことは無理難題の類です。安保理で決議を得るにはロシアと中国が賛成にまわらねばなりません。 

シリアと深い政治的・経済的・軍事的利権を持つロシアは、天地がひっくり返ってもウンというはずがありません。

まして、今は例のスノーデン事件が両国間にトゲとして突き刺さっていますから、米露首脳の直接のパイプすら吹っ飛んでしまった状態です。 

皮肉なことに、今プーチンが揉み手している相手は、ロシアがサハリンLNGの最大の顧客と見込んだ日本なのです。 

オバマは、英国にはハシゴをはずされ、フランスもグラグラ、独伊には反対されてEUは総反対、露中反対、国内世論も反対と、もはや四面楚歌に陥っています。

これで主要国の日本までが英国と同じように反対にまわったら、みごとなまでの米国包囲網が完成してしまいます。

そうすれば、それを押してまで米国議会がイエスというはずがありません。つまり、新たな任期1年目でオバマは完全な死に体となってしまうわけです。

議会が共和党で占められている以上、このシリア問題で赤っ恥をかいたらもはやオバマに浮上の目はありません。生きながらにして「過去の人」となってしまいます。

安倍はそのオバマの苦境を読み切った上で、「国連決議をもって来てください」と軽く突き放したのです。

オバマは手の平を返したように5日、サンクトペテルブルクでいままでの日本軽視姿勢を改めて、米国から安倍に会談を申し込んできました。

いままで、安倍が再三外交ルートで首脳会談を申し入れても色好い返事をしたためしがなかったオバマの方から、居並ぶG20首脳のトップとして1時間も割いた会談をしたのですから、このゲンキンぶりを笑っていいんでしょうね。

特に緊急の懸案はなかったはずです。TPPで年内妥結」が議題だったとニュースは報じていますが、オバマの頭には今TPPなど影も形もありませんよ。

シリアは言うに及ばず、北朝鮮、日中関係、TPP、集団的自衛権など幅広く話し合ったとのことですが、要は日本にシリア攻撃支持を手を合わせて言外で頼んだのです。

もちろん、言葉では「頼む。支持してくれ」などと言うはずがありませんから、「天下の米国大統領様がここまでへり下っているんだから察しろよ」ということです。

それに対して安倍はここでも、「(化学兵器を使用したシリア政府に)責任がある」という微妙な言い回しをしています。

そして米国には、「非人道的行為を食い止める米国の強い責任感に敬意を表する」という表現でストップをかけています。

安倍が「支持する」という言い方は慎重に避けているのがわかります「理解」はするが、軍事行動そのものまでを「賛成」したわけじゃないよ、というニュアンスです。

国際社会では、微妙ながら「支持」と取られるが、全部を肯定したわけではないというところが巧みなところです。

「オバマさん、お困りのようだからお力添えはしますが、貸しですから」ということです。

貸しの回収は、オバマの来日だということですから、これはオリンピックと並んで強力な中韓に対する牽制になるでしょう。

ちなみに、中国は、少なくとも2020年まで尖閣や台湾に対して挑発は継続するでしょうが、軍事手段を行使することは不可能となりました。

オリンピッック開催国に対して、軍事手段を用いるなど国際的孤立をもたらす以外ありえないからです。

韓国も自らの冬季五輪も含めて、いやでもわが国とのデタント(緊張緩和)を選択するしかありません。

まさにオリンピックとは、リアルポリティクスの上でも、「平和の祭典」なのです。

ところで、G20会談後大統領副補佐官のベン・ローズは、日米首脳会談について、「化学兵器に関する国際的な規範を守らせるために我々がやろうとしていることについて、安倍首相から広い意味での支持の表明があったと考えている」と安堵のコメントを出しています。

G20ではオバマは集中砲火をあびたようですから、これで日本が反対にまわったらどうなっていたことか。 

私は政治、特に外交において左右の理想主義は信じません。有害であるとさえ思っています。

それは鳩山が行った左翼的「友愛外交」の無残な結果をみれば分かるでしょう。彼の友愛とは調和ではなく、破壊と混乱の代名詞でした。 

今や鳩山は元前首相という肩書を持つ「中国の代理人」にまで堕っしてしまい、国内での影響力は限りなくゼロです。

逆にもし、安倍が復古的タカ派外交路線を考えているなら100%失敗します。外交とはそのような自己陶酔的観念の入る隙間のないパワーポリティクスだからです。

しかし、就任から約10カ月、安倍はその心配を無用にしているように見えます。安倍を第1期のような単純なタカ派・右翼政治家と捉えると、見誤ることになると思います。

※1 シリアの化学兵器情報
化学兵器禁止条約(CWC)未加盟のシリアが保有する化学兵器についての公式情報は存在しないが、アメリカ中央情報局(CIA)の分析によると、シリアはマスタードガス、サリン、VXガスといった化学兵器物質を貯蔵している。それらの化学兵器物質の保有量は1000トン以上であり、シリア国内各地の50カ所以上の施設に貯蔵されている。
IAの分析によると、シリア軍は航空機、弾道ミサイルならびにロケット砲によって化学戦攻撃を敢行する能力を保有している。ちなみにアメリカ軍当局によると、シリアは化学兵器に加えて生物兵器も保有している6カ国(中国、ロシア、北朝鮮、イラン、イスラエル、シリア)の1つと考えられている。(北村淳氏による)

※2 リバタリアニズムlibertarianism)とは、個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する、自由主義上の政治思想。リバタリアニズムは、他者の権利を侵害しない限り各人は自由であり、政府が干渉すべきでなく、最大限尊重すべきであるとする。(Wikipediaによる)

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■TPPの年内妥結で一致、シリア情勢では連携=日米首脳会談
ロイター2013年 09月 6日

[サンクトぺテルブルク 5日 ロイター] - 安倍晋三首相は20カ国・地域(G20)首脳会合が行われているロシアのサンクトペテルブルクで5日、オバマ米大統領と会談し、安倍政権の最重要課題は経済再生であり、力強い日本経済の成長が力強い日米関係につながると表明。 

環太平洋連携協定(TPP)について、年内妥結を目指す考えを示した。両首脳はTPPについシリア問題に関して、安倍首相は「シリアで化学兵器が使われた可能性は極めて高く懸念している。 

シリア情勢悪化の責任は人道状況悪化を顧みないアサド政権にあるのは明らかで、一昨日の電話会談での(オバマ)大統領の考えは十分理解している」と述べた。また「今回のG20サミットでは可能な限り国際社会が一致団結していることを示すべきだ」とし、米大統領と協力していく考えを示した。て、年内に妥結しないといけないとの認識で一致した。 

ただ、オバマ大統領から軍事介入についての発言はなかったという。 

さらに、安倍首相は地域と国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に取り組んでいく決意を表明し、「国家安全保障会議(NSC)の設置や防衛大綱の見直し、情報の保全、集団的自衛権の見直しに取り組んでいく」考えを示し、「日米同盟の抑止力を高めるため、在日米軍再編を着実に推進していく必要がある。普天間問題をめぐる難局も打開していきたい」と述べた。オバマ大統領も会談の冒頭で、日米同盟は日米安保の礎だけでなく、世界の多くの国にとっても礎になると述べた。

安倍首相はまた、オバマ大統領の訪日を招請。大統領は是非調整したいと述べた。 

日中関係に関して安倍首相は、日米の協力が重要であると指摘したうえで、「日中関係は日本にとって重要な二国間関係の一つであり、今後も大局的な観点から戦略的互恵関係の原点に戻ってしっかり進める。我が国の中国側との対話のドアは常にオープンである」と述べ、オバマ大統領も賛意を示した。

2013年9月11日 (水)

汚染水対策は冷静に技術的にすすめねばならない

028
今回の汚染水処分は初めから東電の荷に余ることは見えていました。なにせ福島第1原発は阿武隈山系の湧水が豊富に流れ込む位置にあるのです。

せめて原子炉建屋を崖の上に設置すればよかったものを、わざわざ15メートル削り込んで低くしたために、津波を被って予備電源がブラックアウトするは、湧水がジャンジャン湧いて汚染水の洪水を引き起こすはとろくなことはありません。

1日について流れ込む地下水が約1千トンというのですからハンパではない。まるで洪水です。

それがいまだ高い放射線量のある原子炉建屋やタービン建屋にドドっと1日400トン流入するというのですから、天を仰ぎたくなります。

1000トン入るタンクもこれでは3日と持ちません。現在のタンク群の総容量は約39万トンですから遠からず満杯になります。現在すでに8割が一杯な状況のようです。

東電は2016年までに約60万トンにまで増設する予定のようですが、解決策にならないのは目に見えています。
(図 団藤保晴氏による。ありがとうございました。引用させていただいて申し訳ありませんが、氏の意見と私は異なります))

画像

要は、原子炉建屋に侵入する前に地下水を汲み上げてしまえば汚染されなくなるわけです。

これが実現すれば、流入する1000トン/日のうち100トン~150トン減少させることができるとの見込みがありました。

実はこの方法について、既に東電と福島県漁連との間で検討が進行していました。

「東電側から、去年の8月から建屋山側に揚水井戸を掘り、そこから汲み上げたみずは、水質検査のうえで、配管を通じて海洋に放出させて下さいという申し出があった。」(県魚連野崎哲氏 週刊文春)

つまり、原発手前で地下水をパイパスさせて、海に流すということです。この問題点は、このパイパス水が安全であるという実証が必要なことてす。

これについて東電は法的基準より一段厳しい独自基準で対応するということで、福島県漁連は「今年2月頃より各漁業者の同意を得る努力をしていた」(同)そうです。

しかし、「これが今回の汚染水漏れの話が出てきて、今はストップしている」(同」ということです。

政府が数百億円規模の資金を投入しようとしている、もうひとつの案である建屋の周辺の凍土壁以上に現実的であるだけに惜しいことてす。(欄外参照)

マスメディアの一部は、この凍土壁案だけを取り出して、「結果が実証されていない」などとネガティブ・キャンペーンを張っていますが、そもそもバイパス放流を今止めてしまっている原因の一部には、なにがなんでも「危険」と書かねば気が済まないマスメディアの体質にもあるのです。

マスメディアは、なにか事が起きるたびに放射能の恐怖を煽り立てていますが、それが現実の対処を遅らせてしまっていることにいいかげん気がついたほうがいい。

三番目の方法として、おそらくこれがメーンになると思われますが、東芝製ALPS浄化装置です。

これについては稿を分けます。

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■凍土壁、浄化設備増設に国費を投入 政府、対策決定
産経 2013.9.3

東京電力福島第1原発の地上タンクから汚染水が漏洩(ろうえい)した問題で、政府が取りまとめる基本方針と総合的対策案の概要が2日、分かった。地下水が原子炉建屋へ流入するのを防ぐ「凍土遮水壁」の設置や汚染水の浄化設備の増設に国費を投入することが柱。汚染水の海洋流出を防ぐため、タンクの補強などの緊急対策にも乗り出す。

 3日に安倍晋三首相と全閣僚で構成される原子力災害対策本部会議を開き、正式決定する。茂木敏充経済産業相は2日夜、凍土遮水壁や浄化設備関連で「総事業費が数百億円になる」とし、遮水壁は「国が全額負担する」と述べた。財源には平成25年度予算の予備費を活用する。

 対策案は、関係閣僚会議や現地事務所の設置も盛り込み、東電が主体となっている汚染水管理体制を見直し、政府の関与を強める方向性を明確にした。

 また廃炉に向けた作業や汚染水の保管計画について、さらなる漏洩などトラブルが生じないかを点検。放射性物質のモニタリングや国際的な広報体制も強化し、海外に安全性を訴える。

 首相は2日の政府・与党連絡会議で、汚染水対策について「今後は国が前面に出て必要な対策を実行する。解決に向けた基本方針をまとめる」と述べ、国が主導して対策を進める意向を表明。茂木経産相は、汚染水から放射性物質を取り除く「多核種除去装置(アルプス)」を拡充する考えも示した。

2013年9月10日 (火)

原子力委員会の原発処理の重要な提言とは

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オリンピック招致の前夜、朝日新聞はこんなトンデモ社説を書いています。

安倍政権は、アベノミックスや汚染水漏れなどで行き詰っている。そんな時に政権交代の受け皿となる勢力がないと日本の政党政治は機能不全に陥ってしまう。有権者にとってその受け皿が民主党である必要はないが、現状でその可能性がもっとも大きいのも民主党だ。」(9月6日朝日新聞社説)

熱がありませんか、朝日の論説委員殿。なにか悪いものでも食べましたか?このところズッと朝日新聞、まともじゃありませんね。

いくら、「安倍の葬式はうちが出す」という若宮啓文論説主筆(当時)が極道ばりの台詞を吐いた朝日新聞社でもこれはひどい。

民主党に反自民の受け皿で返り咲いてほしいとは!

もしや、朝日新聞は出涸らしの番茶みたいな、「反自民」というスローガンで野党がまとまるとでも?(すいませんが失笑)

他の野党すべてが民主党と組むことは300%ありえません。民主党と組んだら最後、「ブラック政党」になるとわかりきっているからです。

民主党のどこに再度の政権担当能力があるとでも言うんですか。

自分の党内もまとまらない連中に、どうして野党再編ができるというのです。笑っちゃいます。

維新とみんなという似通った新自由主義者同士ですら内ゲバ破談なのに、冗談も休み休み言ってほしいものです。

さて、汚染水問題で機能不全」?なんのことです。事実に即して下さい。

安倍政権は問題が露呈した8月19日から1カ月たたずに、国の関与と資金の投入を決定しています。

れも財務省を通すと時間がかかかるので、それを通さずに資金投入をおこなっています。

オリンピック招致があろうがなかろうが、驚くべきスピードといってよいのではありませんか。招致がなくて遅かったほうがよかったのですか。

不十分?とうぜんです。発覚から1カ月以内の緊急的な政策対応ですから。今後、状況に応じて追加されるでしょう。

ひるがえって、事故後2年間という十分すぎるほどの議論の時間があったはずの民主党政権はいったいなにをしていたのでしょうか。?

ただの醜悪極まる内部権力抗争に明け暮れていただけです。

特に、事故の「A級戦犯」である菅氏がせねばならなかったのは、いつでもいい、どうでもいい、やらないほうがなおいいような再生可能エネルギー法の成立などではなく、原発事故後の処理と廃炉に向けて国の責任のあり方をしっかりと作ることでした。

国のトップに座っていて、それをしないで今さら「脱原発」もないもんです。カン氏のそれは単なる責任逃避にすぎません。

さて、この原子力委員会の「東京電力福島第一原発に関する中長期的措置に関する検討結果について」は、専門部会(部会長・山名元京大原子炉実験所教授)が事故後9カ月後にまとめたもので、11年12月13日付で政府に提出されています。

菅政権時代に作られ、野田政権の初めに出されたわけです。

内容的には(毎日新聞9月7日)
①複数の原子炉が損傷した福島第1原発事故では、汚染水発生量がTMI(スリーマイル島)の20倍程度にのぼる可能性があると想定。

②米政府が事故処理を電力会社任せにせず、エネルギー省や原子力規制委員会(NRC)などに責任を分担させる体制を作ったことが、汚染水を含む放射性廃棄物の長期かつ安全な管理・処理につながったと評価。

③費用面では、米政府が電力会社を主体にしつつ、「国益」を理由に汚染水対策も含む廃炉の技術・装置開発などに国費を投じた。福島第1原発でも「国が責任を認識し、関与することが重要」と強調。 

④汚染水対策では、カメラや線量測定だけで漏えい場所を特定できないことを懸念。長期・安全な保管・処理方法も決まっていないとして、汚染水増量を防ぐ遮水壁整備などとともに、技術や装置開発に国内外の英知を結集するように求めている。

⑤地元や国民の不安解消のため、国が第三者機関を設けて東電の作業を監視するとともに、公聴会などを開いて地元の意見を聞き、対策に反映させるべきだ。

この提言書はまるで予言のように、今回の汚染水問題を先取りしています。

なぜこの通りにしなかったのか、これを葬り去った当時の民主党政権の愚かさに歯ぎしりしたいような気持ちになります。 

故吉田昌郎所長は、生前なんどとなく、「今後問題は汚染水対策になる」と言い続けてきたそうです。

この吉田さんの遺言に、耳を貸さなかった当時の民主党政権と東電とは一体なんだったのでしょうか

私は自民党に対して、TPPや消費税で徹底的に批判せねばならない時期が残念ながら遠からず来ると思っています。

だからこそ、朝日のような「安倍」と名がつけばなんにでも安易に噛みつくような愚かなことをしたくありません。

しっかりしなさい、朝日新聞。こんなことを繰り返していると、ほんとうに批判せねばならない時に誰もあなた方を信じなくなりますよ。

■追記 民主党政権はオリンピック招致に「時代錯誤的だ」(by鳩山由紀夫)といって反対だったそうです。国の財務支援も拒否。総会出席も拒否。
もうなんつうかかんつうか。すごいですね。(笑)

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■<汚染水>「国の関与」提言放置 原子力委が民主政権に提出
毎日新聞 9月7日 

東京電力福島第1原発の放射性汚染水対策について、内閣府の原子力委員会(近藤駿介委員長)の専門部会が2011年12月に漏えい防止や安全な保管・処理のために国の主体的関与を求める提言をしながら、政府に事実上放置されていたことが6日分かった。国が第三者機関を設け、東電の事故対策を監視、地元との対話に努めるようにも提言したが、実現していない。

 原子力委幹部は「原子力を推進し厳しく批判されていたが、我々も福島原発の安全な廃炉に責任があると考えて提言をまとめた」と話す。しかし、当時の民主党政権関係者は「事故処理は東電が主体だった」「政府が提言通りしなければならない理由はない」と重視しなかったことを認める。

 事故9カ月後に出された原子力委の提言に政府がもっと耳を傾けていれば、汚染水問題がこれほど深刻化しなかった可能性がある。自民党の安倍晋三政権は事故から約2年半後の今月3日、汚染水対策への国費投入や東電の作業に対する監視体制強化などの「基本方針」を打ち出したが、党内には「国の関与があいまい」と指摘する声も根強い。

 提言は「東京電力福島第一原発に関する中長期的措置に関する検討結果について」と題され、原子力委の専門部会(部会長・山名元京大原子炉実験所教授)が11年12月13日付で策定、政府に提出した。

 1979年3月に起きた米スリーマイル島原発(TMI)事故の対応を分析し、複数の原子炉が損傷した福島第1原発事故では、汚染水発生量がTMIの20倍程度にのぼる可能性があると想定。米政府が事故処理を電力会社任せにせず、エネルギー省や原子力規制委員会(NRC)などに責任を分担させる体制を作ったことを挙げ、汚染水を含む放射性廃棄物の長期かつ安全な管理・処理につながったと評価している。

費用面でも、米政府が電力会社を主体にしつつ、「国益」を理由に汚染水対策も含む廃炉の技術・装置開発などに国費を投じたと紹介。福島第1原発でも「国が責任を認識し、関与することが重要」と強調している。

 汚染水対策では、カメラや線量測定だけで漏えい場所を特定できないことを懸念。長期・安全な保管・処理方法も決まっていないとして、汚染水増量を防ぐ遮水壁整備などとともに、技術や装置開発に国内外の英知を結集するように求めている。

 また、地元や国民の不安解消のため、国が第三者機関を設けて東電の作業を監視するとともに、公聴会などを開いて地元の意見を聞き、対策に反映させるべきだとしている。

2013年9月 9日 (月)

汚染水処理の国関与を拒否したのは民主党政権だ

131
福島第1原発の汚染水問題が大きく取り上げられていますが、マスコミ報道を見ているとげんなりして書く気力が起きませんでした。 

オリンピック招致とからめてまでの汚染水キャンペーンには心底うんざりしました。

守る招致委員会側も鈴木大地氏のように、「東京は福島から220キロ離れている」という馬鹿な言い訳をするには閉口しました。

鈴木さん、それじゃあ「復興五輪」にはならんぞ(苦笑)。

これは、「シチューエーション・イズ・アンダー・コントロール」という定量的な首相のIOC総会最終プレゼンテーションの答えが正しいのです。

実際、首相の言うとおりで、現状は大きな問題を抱えていますが、11年3月から5月までのようなコントロールがきかなくなっている状況とはまったく次元が違います。

さて、ある放送局の報道番組では、前政権での責任者のひとり馬淵澄夫氏まで登場させて、「出来上がっていた遮蔽プランが葬り去られた」というような伝え方をしています。

まるで民主党政権が立派な処理プランを作ったのに、「闇の手」によって葬られたというようなことな言い方です。 なにを言ってんだか。(笑

この2年間、本来さっさと国が前面に出て収拾作業をせねばならないのに、東電という私企業にやらせていたからこんなことになったんじゃないですか。 

まず問題は、東電のあいも変わらない臭いものに蓋的体質です。 

「すでに高い線量が確認されていた2カ所のうち最大毎時1800ミリシーベルトを確認したタンクは8月22日の点検作業の際、線量は毎時100ミリシーベルトと発表。
当時の線量測定機器の計測値の上限は100ミリシーベルトだったが、今回の点検では上限1万ミリシーベルトの機器で測定したところ、数値が18倍に跳ね上がった。
前回調査時にも毎時1800ミリシーベルト前後だった可能性があり、東電の管理体制の在り方があらためて問われる状況だ。」(2013年9月1日 福島民友ニュース)
 

この地元紙の報道によれば、東電の計測体制そのものがダメだったということです。1800ミリシーベルトもの漏洩を管理できないのですから、もはやこんな企業に処理作業を任せるべきではありません。(下図東電HP)

001_2
これはタンクの汚染水処理問題以前の管理体制問題です。もはや東電は廃炉に向けた当事者能力を失っているとみるべきです。

ただし、高放射線量ではあるものの、核種はセシウムなどの透過力の強いガンマ線を除去した後のストロンチウムなどのベータ線です。

セシウムなどと違って重いために、拡散する可能性が低く、厚さ数ミリの金属板で遮蔽できてしまいます。

鉛などの遮蔽版が必要なセシウムより防御しやすいとは言えます。まぁだから、ただの金属タンクに東電は汚染水を入れていたわけです。

なお、ストロンチウムは、今稼働しようとしているALPS除染機で除去することが可能ですので、大ゲサに「福島は終わった」などと騒がないでくださいね。

結果論に聞こえるかもしれませんが、これは大いに予測し得たことでした。 

8月19日に高濃度の汚染水を300トンも流出させて大騒ぎになった4号機の山側にあるH4エリアにあるタンクの作りはフランジ型タンクです。
(※東電G6エリアタンク(鋼製円筒型タンク)フランジ部 からの漏えいについて

002

これは設置が簡単ないわば間に合わせのタイプで、鋼板をボルトで止めただけのしろものです。 

継ぎ目はゴムパッキングひとつですから、耐久性に乏しいのはわかりきったことでした。とうぜんここはステンレス製の溶接タイプのタンクにするべきです。 

しかしこの簡易型フランジタイプが、実に約1千基あるタンク群のうち3割以上の350基あるというのですからげんなります。 

私企業に原発事故のような国家的危険を招きかねない処理作業を丸投げしてはダメです。

私企業は、こんなまったく利潤を生まない作業には、コストの切り下げと設置の簡便さに意識が向いてしまう可能性があります。

こういう時に、東電解体論や東電懲罰論、果ては電力自由化論まで持ち出すこと自体がおかしいのであって、巨大事故の処理が私企業に可能かという論点で煮詰めれば、答えは自ずと明らかだったはずです。

ユニバーサル・サービス一般にいえることですが、道路などのそれ自体儲からない分野は、だからこそ国や自治体が税金を投じてやっているのであって、安易な企業丸投げをすれば見えない手抜きをすることになります。

この危険性について原子力委員会は既に、「2011年12月に漏えい防止や安全な保管・処理のために国の主体的関与を求める提言をしていた」(毎日新聞9月7日)ことがわかっています。

提言は、「米政府が事故処理を電力会社任せにせず、エネルギー省や原子力規制委員会(NRC)などに責任を分担させる体制を作ったこと」を高く評価しています。

これをおそらくは民主党脱原発派は、彼ら特有の、「東電の罪は東電に償わせろ」的懲罰論と、「原子力村の山名なんかの言うことは信じられるか」という感情論で、国の関与まで全否定してまったのではないでしょうか。

当時の民主党政権関係者は『事故処理は東電が主体だった』『政府が提言通りしなければならない理由はない』(同)と葬り去ってしまいました。

あの人たちの愚かさは深い海のよう、高い山のようです。あんな低レベル廃棄物は、東電の前にさっさと解体処理してほしいものです。

くマスコミも、「ここまで放置し続けてきた政府の責任は重い」というような言い方をしますが、その「政府」とは民主党政権のことなのです。

■本稿はアップした後に、こりゃ自分でも長いわと思いましたので、後半をカットして明日にまわしたことをお断りします。

2013年9月 8日 (日)

速報 2020年オリンピック東京に決定!

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2020年オリンピック東京に決定! 

うれしいの一語につきます。汚染水でもうだめかと思いました。 

いいオリンピックをしよう! 

いい国をみせよう!

2013年9月 7日 (土)

週末写真館 夏の終わり

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2013年9月 6日 (金)

オバマ中東戦略の蹉跌その2 パックス・アメリカーナの終り

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オバマ大統領はにでたようですね。

ロシアと中国が反対するのは想定内だったでしょうが、よもや英国がコケ、シリアの旧宗主国・フランスまでもが危ないという最悪の事態は彼に衝撃を与えたと思われます。

そこで、オバマは議会の承認という正面突破の奇策に打って出ました。このあたりのしぶとさはたいしたものです。いきなりふられた共和党議会は仰天したのではないでしょうか。

米国政界は昨年までのわが国のように大統領と議会がねじれていますから、議会は大統領に抵抗し続けてきました。

連邦政府債務の限度額の引き上げ、赤字額の削減方法などで真っ正面から対立を繰り返してきたのにかかわらず、この賭に出たのはオバマに勝算があったからでしょう。

そもそもこのシリア攻撃は、リベラル国際協調路線のオバマが共和党のお株を奪ったものなのですから。

といっても、シリア政府による毒ガス使用の決定的物証を示さない限り、国際社会はウンといわないはずです。

というわけで、オバマの苦境は少しも変わらないということになります。

さてオバマ大統領は、わが国の「あの」鳩山由紀夫にやや似ています。もちろん、あそこまで異次元ではありませんが、その自画像と現実は一光年の開きがあります。

お互いにあまりにもデビューが鮮烈だったために、オバマ自身舞い上がってしまい、万能感をもってしまったようです。

まぁ、考えてみれば、就任当初は初の黒人大統領という胸に輝く金の星をぶら下げて、ベルリンに行けば若者を中心とした万余の聴衆が熱く彼の演説を聞きに押し寄せ、さしたるアテもなく唱えた核軍縮では、小指一本動かさないうちにノーベル平和賞を貰えるというもてはやされブリでした。

すっかりメッキがはがれて、陰気になった今のオバマとは別人のようです。もう100年前のようですね。彼はこの初期の思わぬ大成功に、自らをリンカーンの再来と思ってしまったようです。

スピルバークに、2期目のオバマは「次回作はオバマで決まりだ。なぜなら彼は既に死んでいるから」と皮肉を込めて笑い飛ばされる始末です。

ハリウッド・リベラルの熱狂的ですらあった支持は今や影も形もありません。彼が2期目を得たのは、共和党候補があまりにもトンマだったからです。

オバマは、イラク・アフガンのドツボにはまったブッシュ型を否定して、リベラルな民主党型中東政策をしたかったようです。(下マンガ ニューズウィーク9.10)

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ですから就任して直ぐにしたことは、イスラエルへの入植地の凍結要請でしたが、イスラエルは提案を一蹴しました。

イスラエルは、東エルサレムとガザ地区に建国の予定のパレスチナ国家とのバファゾーン(緩衝地帯)が必須だと思っており、それを凍結する気などさらさらなかったからです。

このために和平会議は停滞し、中東情勢はかえって混沌としてしまいました。

また、中東イスラム世界という迷宮に無知だったにもかかわらず、彼が支持を与えたのはイスラム原理主義穏健派でした。

彼の目論見は、「アラブの春」で誕生したエジプトのムハマンド・モルシ大統領と、既にいち早く民主化(イスラム俗化)をなし遂げていたトルコのエルドアン首相を支持し、イスラム原理主義穏健派によって中東秩序を安定させることでした。

またオバマは、アルジャジーラ放送を擁するカタールにも肩入れしました。アルジャジーラは、中東随一の国際放送局であり、その発信力は群を抜いていたからです。アルジャジーラこそが、「アラブの春」の演出者でした。

しかし、このオバマの新中東政策は、イスラム教聖地の護持者・サウジアラビアを激怒させました。

サウジは、穏健派まで含めてイスラム原理主義を毛虫のように嫌っており、また中東の外交のイニシャチブをカタールごときニューウェーブに奪われるのは許しがたいことでした。

また、オスマン帝国の再興を企むトルコのエルドアン首相に対しても、サウジは警戒感を隠しませんでした。

そしてアルジャジーラが「アラブの春」とエジプト、トルコを支援し、それをあたかもアラブ世界の声のように外部に報道したことも、伝統的守旧派であるサウジの勘にさわったようです。

かくしてオバマは、従来の米国の既定方針だった、イスラエル-エジプト-サウジというラインからはずれて、エジプト-トルコ-カタールというはなはだ危うい馬券で勝負をかけることになったわけです。

そしてご承知のように、エジプトでは一年もたたずにモルシは無能がゆえに転覆され、しかもクーデターで転覆したのは、いままで米国自身が最精鋭のM1戦車を大量に与えて育成してきたエジプト軍だというのですから、泣くに泣けません。

トルコも同様に民主化を訴える市民デモで市街戦となり、エルドアン首相はエジプト政変を見て原理主義の地金丸出しで、「イスラエルが裏にいる」と叫ぶ始末です。

この裏では、サウジはエジプト軍と手を組み、同胞団-トルコと対峠しました。

かくして中東世界にはイスラム原理主義(穏健派も含む)vsサウジ-エジプト軍-イスラエル枢軸とでもいうべき勢力図ができあがったことになります。

オバマは、鳩山氏と同じように、空想でこれら原理主義穏健派を理解していたようです。

残念ながら、現実の彼らはオバマの思いとはまったく別物だったのです。まるで、オバマにルーピーと言われた鳩山のように。

                                               (続く)

昨日に続いて、ウォールストリート・ジャーナルのミード氏の論考を転載致します。改行、太字は引用者です。

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失敗に終わった米国の中東大戦略(中)    ウォルター ミード
ウォール・ストリート・ジャーナル8月26日

イスラエルとの断絶は早々にやってきた。オバマ大統領が新たなリンカーンやルースベルトとしてメディアに歓迎されていた忘れがたき初期の時代に、ホワイトハウスはパレスチナとの交渉を再開させるためにイスラエルに入植の完全凍結を宣言させることができると信じていた。

結果は、オバマ大統領の外交政策上の最初の大失敗となった。この失敗は最後のものとはならなかった(過去数年間、政権はイスラエルとの関係修復に努めてきた。その1つの結果として、米国が優れた手腕を発揮していれば2009年に始まっていたはずの和平協議が現在、進行中である)。

 サウジアラビアと不和になったのはその後のことである。これにもホワイトハウスは驚いたようだ。ホワイトハウスはトルコやモルシ大統領が統治するエジプトと手を結ぶことで、サウジの中東政策を台無しにし、サウジから外交の主導権を奪おうとするカタールの企てを支持した。

多くの米国人はサウジが同胞団やトルコのイスラム主義者をどれほど嫌っているかを理解していない。イスラム主義者全員が一致しているわけではない。サウジは長い間、ムスリム同胞団をスンニ派の世界の中での危険なライバルとみなしてきた。

スンニ派の中心がイスタンブールにあった輝かしいオスマン帝国時代を復活させたいと願うエルドアン首相のあからさまな熱望はサウジの優位性を直接の脅かすものである。

カタールとカタール政府が経営するメディア「アルジャジーラ」が資金や外交、広報活動でトルコやエジプトを熱心に支援したことがさらにサウジを怒らせた。

米国がこれらの国を支援する一方で、イランやシリアについてのサウジの警告に注意を払わずにいたため、サウジ政府は米国の外交を支援するよりはむしろ損なわせたいと考えた。

弱体化するモルシ政権と対峙(たいじ)するエジプト軍と手を組むことは、サウジにとってカタール、同胞団、トルコ、そして米国を驚かせる魅力的な機会だった。

 

※ミード氏はバード大学の外交・人文分野のジェイムズ・クラーク・チェイス教授で、「アメリカン・インタレスト」誌の編集委員。

2013年9月 5日 (木)

オバマ中東戦略の蹉跌その1 実はオバマの面子作戦?

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オバマ大統領は孤立を深めつつあります。

英国からすら見放され、ドイツには明確な拒否、フランスもぐらついており、このままでは米国議会からすら拒否を食う可能性が出てきました。
(※米上院外交委員会は4日、シリアへの軍事行動を認める決議案を10対7で可決した。)

現在、ケリー国務長官とへーゲル国防長官がそろって、議会で協力を呼びかけており、行方は見えません。

国議会の議員はアメリカが攻撃される危険のない限り大統領が攻撃命令を下すことは違憲であると批判しており、議会を説得できるか非常に危ういところです。

オバマはシリア政府軍が化学兵器を使ったこと(※未確認情報では1400人以上の死者と400名の未成年者の犠牲者)で逆上し、いっそう状況悪化の選択をしようとしています。

化学兵器の使用はもちろん許されないものですが、だからといって全能の神の如く「懲罰」を与える権利が米国に与えられたわけではありません

キリスト教白人国家が、アラブ世界に対していかなる理由であれ攻撃することの意味をオバマは理解していないようです。(下マンガ ニューズウィーク 9.10))

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今、オバマとケリーを駆り立てているのは、愚かな話ですが単なる「面子」です。

オバマは、いままで彼が思い描いてきた中東戦略が完全に破綻し、しかもシリアでは独裁政権が生き残る可能性がたかまったことに怒り狂っています。

相棒のケリーは、数代前の白人系ユダヤ移民(アシュケナージュ)であり、国務長官就任当初からイスラエルとその準同盟国であるエジプトに大いに肩入れしてきました。

その半面アジア情勢には疎く、オバマと並んで露骨な親中路線をとってきた経緯があります。しかし、その構想は全面的に破局に瀕し、今や収拾不能な事態に陥っています。

オバマが望むようにシリア攻撃がなされた場合、彼の言う「限定的攻撃」により米国がアサド政権を転覆する意志がないことかむしろ明らかになります。

この限定的攻撃は、いかにもリベラルを気取るオバマらしい嫌らしさで、手は汚したくないが威信はキープしたいという中途半端なものです。

別に肯定するわけてはありませんが(というか私は反対ですが)、地上軍の投入なき介入は軍事的に無意味です。そんなことはいちばん米国がわかっているでしょうに。

仮に転覆したとしても、その結果できる新政府は、反米イスラム教原理主義の諸グループです。その中には米国の不倶戴天の敵であるはずのアル・カイーダすら加わっています。

それが故に、この米国の攻撃は、オバマのカンシャク玉の炸裂でしかないことは、中東世界で既に見抜かれているようです。

ここまで舐められた米国大統領は始めてではないでしょうか。

仮に名付けるとすれば「砂漠のメンツ
作戦」とでも呼ぶべきこの軍事行動は、何の効果も期待できないし、内戦が続けばよりいっそう国民は悲惨な状況から這い出すことすら不可能になります。

この失敗は、ブッシュ以降の、いやそれ以前も含めて米国型の中東政策がいまや完全に破綻しつつあることを教えています。

さて、ウォールストリート・ジャーナルは米国のクォリティペーパーのひとつですが、日本の朝日新聞などと違って、イデオロギーによる裁断ではなく、冷徹に米国の外交戦略の失敗を分析しているのはさすがです。

ウォルター・ミードのこの外交評論は、明確に米国オバマ政権の中東戦略の失敗が、いまにはじまったわけではないことを分析しています。

長くなりましたので続きは明日に。 

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[WSJ記事の要約]
(1)中東情勢は全面的な秩序崩壊と深い混沌状況にある
・イラクの崩壊
・シリアの内戦激化
・エジプトの内乱の危機

(2)米国の外交の大戦略の破綻
・オバマは、中東の穏健派であるエジプトムスリム同砲団やトルコの公正発展党といったイスラム原理主義穏健派と組むことを考えていた。

(3)その意図
・イスラム世界の中間層=穏健派と組む
・イスラム過激派を孤立させる
・中東・イスラム世界を米国型民主主義に導く

米国民主党の外交戦略の成功モデルとする

(4)失敗原因
・オバマが支持するイスラム主義集団の政治的成熟度と能力を見誤った
・米国にとって最も重要な2つの中東の同盟国(イスラエルとサウジアラビア)との関係に戦略が与える影響を見誤ったこと
・シリアに介入しないコストを過少評価

(5)米国の読みの破綻
・オバマがもっとも信頼したトルコ首相エルドアンは、トルコのイスラム原理主義穏健派は穏健で現実的政権運営をするかに見えたが、現在は混迷し、強権的、反イスラエルにシフトした
・エジプトのイスラム同砲団政権のモルシは、政権運営能力が欠如しており、エジプト軍にクーデターを起されて、内乱に陥ろうとしている。

 

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失敗に終わった米国の中東大戦略 (上)   ウォルター ミード
ウォール・ストリート・ジャーナル8月26日

ヘブライ語聖書によると、この世の始まりは「tohu wabohu(トーフー・ワボーフー)」、つまり混沌(こんとん)と混乱だったという。

中東は今月、その原始の状態に逆戻りしているようだ。イラクの崩壊は止まらず、シリアでは内戦が続く。暴力はレバノンに広がり、先週はシリアで化学兵器が使用されたとの疑惑が生じた。

エジプトは内戦の危機にひんしている。将軍たちはムスリム同胞団を弾圧し、街頭の暴徒は教会に放火した。かつてオバマ大統領の中東地域の最良の友として称賛されたトルコの首相はエジプトの暴力をユダヤ人のせいにしている。しかし、その他の誰もが責任は米国にあると非難する。

 オバマ政権は中東についてのグランドストラテジー(大戦略)を策定していた。それは意図が明確で、慎重に練られ、一貫して遂行された。

 残念ながら、その大戦略は失敗に終わった。

 計画はシンプルではあったが、洗練されていた。米国はトルコの公正発展党(AKP)やエジプトのムスリム同胞団といった穏健派のイスラム主義集団と手を組み、中東の民主化を進めたいと考えていた

そうすれば一石三鳥が狙える。まず、オバマ政権はこれらの政党と連携することでイスラム世界の中の「穏健な中間層」と米国との隔たりを縮める。

その次に、平和的で穏健な政党であれば有益な成果を手に入れることができるということをイスラム世界に示すことで、テロリストや過激派を孤立させ、イスラム世界の中でテロリストらの非主流化を進める。

そして、最後に、米国に支持された集団がさらに多くの中東諸国に民主主義をもたらすかもしれず、そうなれば経済・社会情勢が改善され、人々を狂信的で暴力主義的な集団に追いやった苦しみや不満は徐々に取り除かれる。

 オバマ大統領(私は2008年の大統領選でオバマ氏に投票した)と政権幹部は、この新たな大戦略が成功すれば民主党リベラル派が米国の外交政策の有能な担い手であることをはっきりと証明することになると期待していた。

リンドン・ジョンソン大統領とジミー・カーター大統領の任期中の嫌な記憶をやっと忘れることができる。国民はジョージ・W・ブッシュの外交政策の混乱を今でも不満に思っているから、民主党は波乱の時代に国のかじ取り役を務めるべく有権者から最も信頼された政党として長期的に優位に立てるだろう

 オバマ政権の外交政策に歴史がどのような審判を下すかを予想するのはあまりにも早すぎる。大統領の任期はまだ41カ月残っている。中東情勢が再び激変するのに十分すぎる時間だ。にもかかわらず、大統領はさらによい結果を手にするためには、アプローチを変更しなければならない。

 振り返ってみれば、ホワイトハウスは中東に関して5つの大きな見込み違いをしていたようだ。ホワイトハウスが支持するイスラム主義集団の政治的成熟度と能力を見誤ったこと。
エジプトの政治情勢を見誤ったこと。米国にとって最も重要な2つの中東の同盟国(イスラエルとサウジアラビア)との関係に戦略が与える影響を見誤ったこと
ホワイトハウスは中東のテロ活動の新たな力学を把握することができなかったこと。
そして、最後に、シリアに介入しないコストを過少評価していたことだ。

 ここ数年の米国の中東政策は、中東の比較的穏健なイスラム主義の政治運動には賢明かつ巧みに政権を運営するだけの政治的成熟度と管理能力があるという見方に依存していた。

トルコのAKPの場合はそれが半分だけ正しかったことがわかった。つい最近まで、レジェップ・タイイップ・エルドアン首相はどんな過ちを犯したとしても、適度に効果的かつ適度に民主的な方法でトルコを統治しているように見えた。

しかし、時間とともに、そうした見方は受け入れられなくなった。エルドアン政権は記者を逮捕し、政敵に対する怪しげな起訴を支持した。敵対的なメディアを脅したり、露骨にデモを取り締まったりしている。

党幹部の主なメンバーは、トルコが問題を抱えているのはユダヤ人や念力など神秘的な力のせいだなどと主張し、ますます動揺しているようだ。

 事態は困ったことになってきている。つまり、オバマ大統領がかつて世界の首脳の中で最良の友5人のうちの1人として名前を挙げ、「さまざまな問題に関して極めて優れたパートナーであり極めて優れた友人である」とたたえた人物は今、米国政府から非難されている。非難の理由は、その人物がエジプトのモハメド・モルシ前大統領失脚の黒幕はイスラエルだという「攻撃的な」反ユダヤの主張を展開しているためだ。

 しかし、モルシ氏と比べて、エルドアン氏は効率的な統治と賢明な政策を行う宰相ビスマルクのような存在だ。

モルシ氏とムスリム同胞団はただ単に、政権を預かる準備ができていなかっただけだ。彼らは与えられた権限の範囲を理解せず、崩壊しつつある経済を何もできないままいじくり回した。何千万人ものエジプト国民が流血のクーデターに声援を送るほど、彼らの統治は不適切で不安定だった。

 米国の大戦略の基盤が弱いのは陰謀論者や無能で不器用な人々のせいである。米国はほぼどのような事情があってもトルコやエジプトの指導者と実施すべきことは実施していただろう。しかし、こうした運動と手を結んだことは結局、賢明ではなかった。

 ホワイトハウスは米国の外交政策に関わるその他の大半の関係者とともに、中東に関してもう一つ重要な過ちを犯した。それはエジプトの政治的混乱の本質を根本的に見誤ったことである。トーマス・ジェファーソンがフランス革命をアメリカ独立革命のような自由民主主義的な運動と誤解したのと全く同じように、米国政府はエジプトで起きている出来事を「民主主義への移行」だと考えた。そのようなことは全くあり得なかった。

 エジプトで何が起きたかと言えば、高齢になったホスニ・ムバラク元大統領が息子に跡を継がせてエジプトを軍事的な共和国から王国に変更するように画策していると軍が考えるようになったということだ。

将軍たちは反撃した。混乱が広がると、軍は身を引いて、ムバラク政権を崩壊させた。しゃべり続ける自由主義者や失敗ばかりしている同胞団とは比べ物にならないくらい強大な力を持つ軍はこの期に及んで、エジプトが1950年代以降維持してきた体制を復活させようと行動を起こしたところだ。

自由主義者のほとんどは自分たちをイスラム主義者から守れるのは軍だけだということを理解しているようだ。イスラム主義者たちは軍が今でも仕切り役であることを学んでいる。こうした出来事が起きている間に、米国と欧州は存在しない民主主義への移行を推進しようといつまでも忙しく動き回り、夢中になっていた。

 次の問題はオバマ政権が自らが選んだ戦略がイスラエルやサウジアラビアとの関係に与える影響を見誤っていたことだ。そして、この2つの国が腹を立てれば、中東で米国をどれほど悲惨な立場に追い込むことができるかを過小評価していたということである。

                                               (続く)

※改行と太字表示は、引用者がいたしました。また分割表示の上中下も引用者によるもので、原文にはありません。

2013年9月 4日 (水)

情報戒厳令下のTPP交渉 

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悪い予想というのは、えてして当たってしまうものですか、TPP交渉はその「悪い形」が現実になりつつあります。

TPP交渉の最大の問題と目されていたのが、交渉経過の隠匿、それもハンパではない戒厳令的情報隠匿という問題でした。

というのはご承知のとおり、TPPは単なる交渉一般ではなく、「条約締結交渉」なのです。ですから、政府の情報隠匿は合法的です。だから困る。

大変にまずいことには、条約の交渉過程を国民に公開しないことは法的に保証されています。オープンにしないのは、別に法律違反でも何でもありません。

条約の締結は内閣の専権事項(日本国憲法第73条)であって、「三   条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする」という文言を楯にして、情報提供を拒否できてしまいます。

憲法が要求しているのは、「事前あるいは事後に国会承認を経る」という点だけです。

これが外交的案件であって、相手国の秘密の暴露にもつながることならともかく、TPPはまさにわが国の関税、医療・保険制度など多岐に渡る内政上の問題を多く含んでいます。

というか、TPPとはそのような、「内政を外交問題として変更していく」という奇形的な「黒い条約」なわけです。

たとえば、TPPに国防上の案件かあるというならわからないでもありません。在日米軍の部隊配置、移動などの交渉をやっているなら、「まぁ仕方がないだろう、途中で バラされたら相手国も迷惑だろうしな」と思えます。

しかしこれが、医療制度、農業などといった国民すべてが利害関係者である「内政問題」が、国内法を超越して改悪されようとしているのに、なにひとつ情報が出てこないというのは、あまりに異様です。

それが、国民はおろか、関係団体、与党国会議員まで秘匿されているのはどうしたことでしょうか。

これでは、安倍首相がTPP参加について国民に約束したはずの、「今後状況の進展に応じて、丁寧に情報提供していく」という公約に反していると考えざるをえなくなります。

つまり、TPP情報の開示は、いっさいの交渉を終了し、妥結した後の事後報告と国会承認時まで隠蔽し続けるという悪夢です。

かつて米韓FTAで、韓国政府はこのテを使いました。交渉がすべて終わった後に、「国会議員の皆さん。こんなことが決まったんで批准してください」とやったわけです。

当然、与党まで含んだ大騒動になりました。現代版不平等条約である米韓FTAdのですから、あたりまえです。 

もし、同じことを安倍政権が考えているなら、私たちは断固これを拒否せねばなりません。

最悪、この国会批准という選択肢ががぜん現実化しそうなイヤーな雰囲気です。

欄外にTPP反対派(与党でも反対派が多数ですが)の中心である山田としお氏のメルツガを転載しました。

この中で山田氏は、「交渉関係者の発言として、「95%も維持は難しいと予防線を張っていると報道しています。これでは、党と国会が決議している重要品目を守れない」と述べています。

また、「党のTPP対策委員会の幹部が、これも現地で動きを見守っている団体の関係者に対して、「重要5品目に踏み込まざるを得ない、覚悟してくれ。」というような判断を伝えている」という情報も伝えています。

そしてこのようなことが起きるのは、「ひとえに、交渉参加に当たって、または、交渉が一定程度進んだこの段階においても、内閣としての取り組みの基本方針や、情報開示の在り方や、その工夫の実行がなされていない」ことだと山田議員は指摘しています。

私たちは、今の段階では繰り返し交渉内容の開示を求めていかねばなりません。    

 

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自民党衆議院議員山田としお 氏のメールマガジン No.316(2013年9月2日)から転載いたします。 

全く納得がいかないTPPへの対処

 ところで、TPP問題の進め方は納得がいきません。きちんと情報が与えられない、自分が論議に参画できない、どこかで議論は進んでいるらしいことは新聞等で見ることはできますが、その情報を与えているらしい政府や党の関係者にもそれらのことを委任しているわけではありません。
 

要は疎外されているということです。これは頭にきます。

 私はまだ議員だから近くにいます。しかし、大与党になりました。
それを選挙戦で作り上げた各地の多くの関係者はもっと頭にくるでしょう。自分だって、前政権の民主党の菅総理や野田総理には、予算委員会でどれほど毒突いたか。その時以上の我慢ならないことが与党の内閣で進んでいるわけで、徹底して追求したいことが一杯あります。

【「反対派は静まりつつある」とは一体なんなんだ】
 一つは、共同通信の記事で、甘利大臣が、マレーシアの大臣に「(TPPに対する日本の)反対派は徐々に静まりつつある。(状況は)半年前ほど深刻ではない。」と発言しているといいます。
 

甘利大臣は「そんなことは言っていない。」と否定しているとも書いていますが、マレーシアの政府関係者は、「発言はあった。」と確認しており、「日本側は、とても熱心だ、交渉に深く入り込んでいる。」と驚きを示したと報道しています。 

こういうことは多々あるのだろうとは思いますが、しかし、許せません。与党にすら情報開
示する工夫も行わず、自分の気分だけで発言し、事態を混乱させる。
内閣不信につながりかねない問題です。

【進む、妥協への動き】
 二つは、これも与党議員にも何ら知らせないまま、自由化率80%の提示をしたらしいのですが、90%も出す、否、すでに出してしまった、ということらしい。
 

そして、新聞は、交渉関係者の発言として、「95%も維持は難しい」と予防線を張っていると報道しています。これでは、党と国会が決議している重要品目を守れないことになります。こんな進め方があるものか。

【党内の議論をしっかりやろう】
 三つは、ブルネイの現地に赴いている党のTPP対策委員会の幹部が、これも現地で動きを見守っている団体の関係者に対して、「重要5品目に踏み込まざるを得ない、覚悟してくれ。」というような判断を伝えていると聞こえてきました。
 

私は、情報交換を行うことまで否定しません。しかし、党の決議にもとる判断を示しておられるということになると、我々はそこまで委任していないし、論議もしていません。どこで、どんな判断で、どんな権限でなされたものなのか。

 ともかく、TPP対策委員会の幹部が、内閣が行うべきことを背負わされる形で損な役回りを担っている、この異常さは納得がいきません。


【問題は、政府が、基本方針の策定をしていないことにある】
 四つは、こうしたことが生ずる原因は、ひとえに、交渉参加に当たって、または、交渉が一定程度進んだこの段階においても、内閣としての取り組みの基本方針や、情報開示の在り方や、その工夫の実行がなされていないからです。

 今からでも遅くはありません。このことをきちんと行ってもらわなければなりません。

 私は与党の議員です。だから与党の政権の大臣や、そして仲間でもあり先輩でもあり、その立場で頑張っておいでの党幹部の先生方にいたずらに挑戦するものではありません。
 

節度はあります。与党の議員はみんなそうした気持ちで我慢しています。しかし、我が国
の農林漁業を、ひいては日本国を壊しかねない重大事です。将来大きな禍根を残しますし、ゆくゆくは国会承認の場で大きな混乱を生じさせるでしょう。

 内閣も、党の幹部ももっと緊張して、真摯に対処すべきです。私はそのことを発言もし、動くこともしていきたい。
 

自民TPP慎重派、嘆き 「情報なく議論できぬ」
産経 2013.8.21
 

日本が交渉に参加した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で、交渉過程に関与できない自民党議員に無力感が漂っている。20日の慎重派議員の会合では、情報が不十分だとの不満が噴出。昨年の衆院選と先の参院選で主要農産品の関税維持などの「国益を守る」と訴えて当選した議員が多いだけに、有権者との板挟みの苦悩もあるようだ。           

  約50人が出席して20日に党本部で開かれた「TPP交渉における国益を守り抜く会」(森山裕会長)の会合。最大の焦点は、交渉内容の開示だった。交渉参加国は、交渉内容を明かさない秘密保持契約を結んでいる。日本も例外ではなく、「情報がない中で議論しろというのか。ガス抜きにもならない」(上杉光弘元自治相)などの怒りや嘆きの声が相次いだ。  

 自民党は石破茂幹事長をTPP問題の「窓口役」として対応を一元化している。だが、会合では細田博之幹事長代行までもが「石破氏が一括して判断するといっても、簡単にはいかない」と発言。政府側は関税撤廃を求める品目リストなどについて「甘利明TPP担当相の指示を受けて作成している」と出席議員に理解を求めたが、「守るべき国益とは何か」との「そもそも論」まで飛び出し、迷走した。  

 自民党は衆院選で「聖域なき関税撤廃を前提にする交渉参加に反対」と訴え、参院選でも「守るべきものは守る」と公約に盛り込んだ。議員の不満の背景には「このままでは地元に説明がつかない」という事情も大きい。森山会長は「国益を確保できなければ脱退もあり得るとの自民党の決議をよく知ってほしい」と政府側にクギを刺したが、1時間40分に及ぶ長時間の議論が、堂々巡りに終わった印象は否めない。 

2013年9月 3日 (火)

世界食糧戦争その2 米国農業の秘密兵器・輸出補助金

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米国農産物の安さの理由にはワケがあります。輸出補助金を十重二十重につけていることです。

建前では、農作物に特有の天候異変で市場価格が上がったり下がったりすることで農業収益が低下することを防ぐということを掲げていますが、本音は安定して安値で輸出攻勢をかけることです。

これには5種類の補助金枠があります。

直接支払制度(Direct Payments)・・・土地の価値を評価に対して農業者に直接支払らわれるタイプの補助金。年間約50億ドル。

CCP(Counter Cyclical Payments) ・・・うまい訳語が見当たりませんが、市場価格の低下による差損を補填するタイプの支払い。差損を補填することで、安価な農産物を輸出し続けることができるために、WTOで禁止されている輸出補助金に相当するとして国外からの強い批判を浴び続けている。

マーケティング・ローンの提供・・・農産物の販売のための農業ローンを提供しLDP(ローン不足払い)になった場合に差額を政府が補てんする仕組み。

ACRE(Average Crop Revenue  Election Program)  ・・・08年に登場した補助金枠で、価格、低収量収入の最低保証をする補助金。トウモロコシ、大豆生産者の全部が加盟していると言われる。

作物保険 作物保険加入にあたっての政府補助金 ・・・農業共済加入に対して与えられる補助金枠。

至れり尽くせりですな。補助金漬けと揶揄されている日本の農業補助金など可愛らしいものです。

おそらくTPP交渉では間違いなく日本が言わずともオーストラリアやNZあたりからの猛攻撃に合っており、表面上は修正をかけています。 (※米国輸出補助金の修正とその隠蔽については後日ふれます)

特に②のCCPはひどい。もしこれが日本のコメならば、天候不順で収量が低下したり、品質が悪いために市場価格が下がったら、その差損を政府が埋めてくれるということになります。

日本のコメは有名な700%超の高関税があってバッシングの対象になりやすいのに対して、さすがは自由貿易の旗手、やることがまことに卑怯というか、シブイ。

実は米国の穀物は、熱波や洪水で年がら年中作柄が変化しています。こうまでよくやられるのを見ていると、オガララ帯水層の危険レベルの水位低下などに現れるように米国農地や灌水システムは相当にダメになっているなぁ、というのが私の感想です。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-cccb.html

化学肥料と農薬一本で突っ走ってきた世界の穀倉は、間違いなく疲弊しきっているように見えます。これによる作柄変動に税金をぶっ込んでやっとのことで安定した輸出を続けているというのが米国農業の実態ではないでしょうか。

ですから今や、外すに外せない竹馬と化してしまっているのが輸出補助金制度なのです。

しかも受給者が大規模アグリビジネスに偏っていることが、米国内部でも問題となっています。

たとえば受給者第3位のDnrc Trust Land Managemenだけで、09年に政府から受け取った補助金がな~んと290万ドル(約2億3千万円)。おそらく日本の農家でこれだけ一年でもらってしまっては国会喚問ものです。もはやギネス級といえましょう。

輸出補助金第2位の綿花の場合、1999年から2005年の6年間に投入された補助金が実に180億ドル(1.4兆円!)と、綿花だけでわが国の農家戸別補償の総枠丸ごとが注ぎ込まれているわけです。

ここまで巨額な補助金はもはや農家支援という次元ではなく、市場価格の86%までもが補助金だという凄まじさです。

私たち日本人は、米国の納税者の金を食卓に乗せていたわけですね(苦笑)。新自由主義者に煽動されて、わが国農業が補助金漬けだという人が絶えませんが、米国を見てから言っておくれ、と言いたいですね。

このような9割までもが補助金での市場価格支持政策となると、他の輸出国も黙っているはずがなく、ブラジルが綿花でWTOに提訴し勝訴しています。

また、この受給者は先に述べたように上位1割に偏っており、この上位だけで補助金の74%を独占しています。

家族経営者の8割の平均受給額は、たったの579ドル(4万6千円)というのですからよその国のことながら、バカにするのもいいかげんにせぇよ、と言いたくなります。

まさに富んだ者は更に富み、貧しい者はいっそう貧しくなるという格差社会。ウォールストリートを占拠したくなる気持ちが大いに分かります。

この上位受給者は、農家というよりアグリビシネスであり、オーナー一族は土に触ったことなどない億万長者であるわけですが、それに対してのみに集中した農業補助金という仕組みのあり方は、国際競争力を強化する反面、建国以来の伝統的な家族経営層を切り捨てていっているようです。

このように見てくると、米国の農業界は輸出補助金という竹馬を外されれば、即座に世界最大の食料輸出国から転落しかねない危うい構造を持っています。

仮にTPP体制となった場合日本は、例のISD条項を使って米国の輸出補助金を徹底的に禁止させるべきでしょう。

2013年9月 2日 (月)

米国のシリア軍事介入は、「平和と安定」を阻害する

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ブッシュ・ジュニアの大失敗の尻拭いをするという触れ込みで大統領の地位を得たオバマ大統領の置かれた立場は、10年前に酷似しているように見えます。 

「現在のシリア危機と2003年当時のイラク戦争に向けた流れとの類似点は怖いくらいだ。お馴染みの要素がすべて揃っているように見える。
大量破壊兵器、国連の武器査察官、諜報機関とその調査資料(怪しいものかどうかは別にして)、国連決議を巡る苦悩、残虐なバース党の独裁者、そして米国が軍事介入の余波をきちんと計画していないのではないかという不安――。人々が神経質になるのも無理はない。」(フィナンシャル・タイムズ8月30日)
 

2003年のイラク戦争前夜、米国のブッシュ・ジュニアと英国のトニー・ブレアは、対イラク戦争にゴーサインを与える情報のみを取捨選択して聞いていたことが批判されています。 

この米英首脳の「聞きたい情報」の圧力の前に、両国の情報機関は客観的証拠なき憶測情報を与えてしまいました。 

これがイラク戦争とアフガンの泥沼、そしてそれによる権威失墜、中国の台頭の流れにつながっていきます。 

一方、ブッシュ・ジュニアのイラク戦争を批判してきたオバマは大統領となった今、シリアへの軍事介入を回避したいと思っていたはずです。 

シリア政府は、2011年の「アラブの春」に影響された抗議デモに対して、苛烈きわまる弾圧を加えてきました。 

この強力な軍事力と、それを躊躇なく自国民に振う冷酷さが、このアサド独裁政権が世界の予想を裏切って実に2年間も延命し得た理由でした。 

大統領の近親者によって固められた正規軍(大統領の実弟マーヒル・アサドは精鋭第四機甲師団長)、大統領直轄の共和国防衛隊は、しょせん政府軍からの逃亡将兵と訓練されていない市民兵の烏合の衆にすぎない反政府軍を各地で蹴散らしていきました。

地方の戦略要衝の拠点だったクサィルがこの6月に政府軍に奪還され、一時はダマスカスまで侵攻した反政府軍側は、今や内部の海外組と国内組、サラフィ主義者、そしてクルド族まで絡んだ内部分裂の様相を呈しています。 

その上に政府側に対しては「アラブの大義」を掲げてレバノンのヒズブッラー(ヒズボラ)も加担しており、はっきり言って欧米各国がなにかできる時期はとうに過ぎ去ってしまっています

この2年間に、オバマ大統領はたぶん複数回にわたって政府側が化学兵器を小規模に使ったという報告を受けたはずですが、それは介入のきっかけには到りませんでした。 

この2年間もの躊躇は、内政だけで手一杯というオバマ個人の問題もあって、このまま非介入で一貫するかと思われていました。 

私は、アラブの春の惨めな結末であるエジプト内戦を見ると、今の中東に必要なものは、欧米型民主主義ではなく、「安定」であり、「平和」であると思っていますので、オバマらしい「決断しない決断」を秘かに支持していました。 

化学兵器が使用されたことが真実であったとしても、双方が使用した可能性も否定できません。 

国連調査団報告書も後日出るようですが、内容的には化学兵器の使用は裏付けられたというだけのものになるでしょう。

国連は事務総長以下徹底的に無能無力無気力で、なんの存在価値もないようです。

このような国連の報告書は、誰が」という問題に答えるものではなく、いっそうダメさをさらけ出すでしょう。 

それはさておき、米国の攻撃は、シリア軍の中東屈指の防空網が健在である以上、空爆ではなく、巡行ミサイルによる攻撃となると考えられています。
(図 BBC 8月27日 
ttp://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-23847839

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その攻撃対象は化学兵器工場・貯蔵施設と、シリア空軍基地や指揮・統制施設などの50カ所程度と見られています。 

しかし、このていどではかえって米国がアサド政権打倒をめざしていないというシグナルを出してしまっているようなもので、かえってシリア内戦を活発にし、アサド政権側は反政府軍の最終的掃討に向うことでしょう

内戦勃発から2年を経過して、軍事介入も、国連決議も不可能な状況で、主要国ができることはもはや人道的支援しかないと思われます。

今また空爆に脅えて急増する100万人を越える難民問題を解決するのが先であり、そのためにはいかなる形であれ「平和と安定」が必須なのです。

繰り返しますが、ここまで悪化してしまったシリア内戦は、もはや中途半端な外部からの軍事介入でどうなる段階を過ぎています

10年前のブシュ政権は、それでも国連決議を無視して「有志連合」をでっちあげるだけのパワーがありました。

今のオバマ・ケリーコンビは初めっから泣きっ面の暗いインテリ少年のようで、これで状況がよくなるはずがありません。

安倍さん、悪いことは言わないから彼らに巻き込まれないように。

■写真 ティランジア・キアネカ(パイナップルの親戚) 筑波植物園にて 

※参考文献 末近浩太、シリア「内戦」の見取り図

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