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沖縄・地域資産としての基地その1 稲嶺「反戦市長」の悩み 

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「反戦市長」として名高い稲嶺進名護市長がまた軍用地の返還を拒否したそうです。

誤植ではありません。軍用地にすることを拒否したのではなく返還を拒否したのです。(欄外資料1参照)

彼は徹底した反基地の立場に立ち、辺野古移設に強硬に反対を叫んでいます。

稲嶺市長が当選時に叫んだ言葉は、「私は辺野古の海に基地を造らせない」でした。

さて2010年月市長選(2010年1月)において、移設反対を唱えた稲嶺現市長と、当時現職市長で移設容認派だった島袋吉和氏との差はわずか1588票でした。僅差といっていいでしょう。

当時の市長選をめぐる状況をおさらいしましょう。

当時政権党だった民主党は、この市長選を鳩山政権の外交安全保障政策の大きな柱だった「普天間県外移設」の天王山と位置づけ、国政選挙並の全力投入をしました。

この当時、今と大違いで、発足間もない鳩山氏率いる民主党は国民の高い支持率を得て、それこそ燦然と光り輝く時期でした。

今、国民から毛虫のように嫌われ相手にされない状況とは、隔日の観がありますね。

鳩山首相の掲げる「少なくとも県外移設」という方針も、それなりの現実的対案があるのだろうと私すら思っていました。

そして前原誠司国交相は、稲嶺候補への支援として従来は移設とワンセットになっていた北部振興予算を移設問題と切り離して与えると言い出しました。

これは地元にとって大きなインパクトで、移設反対をためらっていた中間的な市民を反対派に押しやる働きがありました。

一方、反対派候補だった稲嶺氏は、移設の条件付き賛成を進めた岸本市長の下で教育長だった人で、岸本氏の部下だった時には革新色とは無縁な人と評されていました。

実は稲嶺氏が立候補した時には、沖縄で大きな力を持つ共産党は独自候補を擁立しようとしており現職反対票の分散は避けられず、情勢は現職島袋氏に有利と思われていました。

そこで、稲嶺陣営は選挙公約で共産党の公約を丸呑みして、候補一本化してもらったといういきさつがあります。

このような政権党の物心両面の全面支援と、共産党公約の丸呑みがあって稲嶺氏は僅差で勝利することができたのです。

さて、稲嶺氏が、市長として真っ先に「移設反対」を主張したのはとうぜんとして、それに継いで言い出したのが、この辺野古基地一部返還拒否でした。

これが一度目の返還拒否事件です。この時も、市の内外からは現行不一致を批判されました。

米軍は、海兵隊基地であるキャンプ・ハンセンの用地162ヘクタールを11年末にかねてからの予定通り返還したい、と申し出ました。

これに対して、稲嶺市長とその与党が多数を占める名護市議会は「返さないでくれ」と言い出しました。

11年10月12日、稲嶺市長は、当時の沖縄防衛局長だった田中聡氏と面談し、継続使用を申し出ていますが、「返さない理由はない」と逆に断られています。

今回2度目も、小野寺防衛大臣に、「常日ごろ(米軍基地の)面積がこれぐらい沖縄に集中しているという話をいただく。 少しでも返還にできるように努力していきたい」(沖縄タイムス9月5日)といわれてしまっています。

この返す、返さないでくれというやりとりで、未だこの162ヘクタールの米軍用地返還は宙に浮いた形になっています。

この返還用定地は、これまで3回に渡って米軍が「返す」と申し出ており、その都度、継続要請を受けて延び延びになった土地でした。

それが継続許可になったのは、ひとえに普天間の移設容認の見返りという交換条件があったからです。

あからさまにいえば、普天間基地の移設のご褒美として返還延期をしていていたとのが、稲嶺市長となって反故になったわけですから、国としては早く返させてほしいということになったわけです。

ではなぜ、「反戦市長」が米軍基地を返さないでくれ、と言っているのでしょうか?それはこの土地が現況山林だからです。

沖縄の軍用地は、本土の人が思い描くように本島の大部分を覆っているわけではなく、下図にあるように面積的にもっとも多いのは北部の山林です。

沖縄米軍基地マップ

よく沖縄県は、「全国の米軍占有施設のうち7割(73・9%)が沖縄に集中する」と主張しますが、それは正確ではありません。

佐世保や三沢、岩国など自衛隊との共有施設を含めた米軍施設・区域は全国比で22・6%(2011年3月末現在)です。(資料3参照)

といっても、第1位の北海道と違って狭い島中央の平坦部を米軍基地が占有している事実には変わりありませんから、その負担か大きいことには確かです。(欄外参照)

そしてその大部分の面積は嘉手納基地以北の「跡地利用の困難」な山岳地帯が占めています。

北部訓練場(国頭村等)、キャンプ・シュワブ(名護市)、キャンプ・ハンセン(金武町等)の3施設だけで県内全基地の約3分の2を占めています。

このあたりが本土の人に理解しにくい部分なのでしょうが、空港のあるいわば玄関口の南部にはまったく牧港補給地区(一部返還)以外には米軍基地はありません。

ですから、よく那覇の国際通りあたりで本土のテレビが通行人に米軍人犯罪が起きるたびにインタビューしていますが、那覇市民に米軍の実感はないはずです。

那覇市民にとって米軍とは、空高く飛ぶ米軍機と、たまに見かける私服の米兵ていどなはずです。

また普天間飛行場のある宜野湾は、今や那覇の副都心を目指して繁栄しており、米軍施設にさっさとどいてもらうほうが利益になります。

それに較べて北部は面積も大きく、米軍の訓練用地(北部トレーニングエリア)として「使っていただいている」というのが実感にちかいのではないでしょうか。

2006年の仲井真氏と糸数氏との知事選は、米軍基地を争点とした今どき珍しい保守対革新の一騎討ちとして全国の注目を集めました。

その選挙の集計結果と、米軍基地収入の自治体財政に占める割合、そして基地面積を一覧した表をご覧ください。 (資料2参照)

当時、普天間の辺野古移設容認を掲げていた仲井真氏の得票率が50%を超える市町村は以下です。

国頭村・・・仲井真得票率70%  基地占有率23%
伊江村・・・         68%         35%
金部町・・・         65%         59%
東村 ・・・         63%         42%  
嘉手納町・・・       57%         83%
名護市・・・         56%         11%
恩納村・・・         55%         29%
沖縄市・・・         54%         36%
宜野湾市・・・       52%          33%

以上の得票率を見ると、基地現状維持派が5割を超えるのは、いずれも基地のある北部から中部にかけての自治体だと分かります。

一方、基地占有率がゼロ、つまり基地がない市町村での仲井真氏の得票率は以下です。

・久米島・・・34%
・大宜味・・・39%
・座間味・・・43%
・西原町・・・46%
・豊見城・・・46%
・南風原・・・49%
・今帰仁・・・50%

これを見る限り、基地がない自治体ほど糸数候補の反戦・反基地の主張に共鳴していることがわかります。

単純な反戦・反基地か、基地依存かという表層ではわからない、「地域資産としての米軍基地」の存在がお分かりになるでしょうか。

この稿続けます。

※すいません。フォントがなぜか大小ばらついていて修正がききません。なぜなのかなぁ。

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■資料1 名護市長が土地の返還延期要請
NHK9月6日

日米両政府がアメリカ軍のキャンプハンセンの一部を名護市に返還することで合意したことについて、これまで返還の延期を求めてきた名護市の稲嶺市長が沖縄防衛局を訪れ、改めて返還を延期するよう要請しました。

日米両政府が、5日、名護市に返還することで合意したキャンプ・ハンセンの一部は、土地の大半を所有する名護市が、▼借地料が支払われなくなる一方で、▼山の斜面にあり、返還されても跡地利用が難しいなどとして、返還の延期を要請し、これまで3回にわたって返還が延期されていました。

名護市の稲嶺進市長は、6日沖縄防衛局を訪れ、武田博史局長に対し、返還を延期するよう、あらためて要請しました。

これに対し、武田局長は、「日米地位協定では『アメリカ軍が使用する施設や区域は、必要でなくなったときには、日本に返還しなければならない』と定められている。

これまで名護市側の要請を考慮して返還が延期されてきたが、今回、合意に至った」と述べ、要請には応じられない考えを示しました。要請のあと、稲嶺市長は、「市としても、返還されなくていいとは思っていないが、今回の返還の方法や内容には問題があると考え延期を要請した。借地料の急激な減少などの影響を考慮し2段階で返還するとの説明だったが、借地料を受け取っている地元の3つの区の間で混乱を招くおそれがある」と話していました。

■資料2 (図 日経新聞那覇支局長 大久保潤氏による)Photo_2

■資料3

米軍専用・共用施設・一時利用施設をあわせた規模(2008年1月1日現在)[占める割合  
北海道 344,601 33.55%
沖縄県 232,933 22.68%
静岡県 89,160 8.68%
大分県 56,350 5.49%
山梨県 45,969 4.48%
宮城県 45,699 4.45%
青森県 32,069 3.12%
熊本県 27,025 2.63%
滋賀県 24,090 2.35%
岩手県 23,264 2.27%
神奈川県 20,895 2.03%
岡山県 18,822 1.83%
東京都 15,787 1.54%
新潟県 14,080 1.37%
山口県 6,630 0.65%

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コメント

地権者もバラバラだろうし、いったいどうしたいんでしょうね。

「返還拒否」なら国に上納でもしてもらわないとおかしいですよね。
米軍じゃなきゃ問題ないのか?
自衛隊や中国人民解放軍進駐、はたまた沖縄独立義勇軍(仮)なら納得するんでしょうか。あちらのマスコミは明らかに異質ですし。

とにかく魑魅魍魎というか、鳩山内閣の大盤振る舞いでカネだけが目当てなのか…(あんな無駄遣い止めてしまえ!)

政治的駆け引きと、沖縄の勢力争いは、私にはなんとも理解できません。
いつまでも「賠償しろ!とかカネよこせ!」では、近隣の一部外国とかわりませんな。
観光と基地経済で成り立っているというのに。

私は沖縄が嫌いじゃないですし、結構憧れてるんですが、これは酷いと思います。

また「米軍基地の面積の7割」は、よくマスコミで言われますが、日本全国47都道府県で自衛隊もしくは米軍の何らかの施設が無いところはありません。

普天間・オスプレイ?
厚木や横田のほうが遥かに危険だし喧しいですよ。

投稿: 山形 | 2013年9月23日 (月) 07時23分

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