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沖縄・地域資産としての基地その2 鍋の蓋返還反対論に隠れたもの

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名護市稲嶺市長が返還反対を申し出ている返還予定地の所有権は名護市にあり、現況山林にもかかわらず年間1億3千万円もの借地料が市に入ります。 

この基地使用料は一部が、地元の幸喜、許田、喜瀬の辺野古三地域に分配金という名目で支払われています。  

市所有地の基地使用料をこのように分配するのはあくまでも慣習であって、法的根拠はないそうです。  

しかし、その額がもっとも多い喜瀬地区などは年間3200万円にも登りますから名護市や地元地域も困るわけです。 

言うまでもありませんが、貧しい山間地にとって3200万円の労せずしての収益は巨大な既得権です。 

しかもややっこしいことには、この辺野古3区は移設賛成派で、反市長派と言われていますので、地元では選挙目前の反市長派への懐柔だという意地悪な見方もあります。 

その上、名護市は財政状況が恒常的にピンチです。その大きな理由は、稲嶺市長の就任とともに名護市に支払われていた年間約6億円の米軍再編交付金がなくなったこともあります。 

これは07年から09年度まで約18億円支払われており、これが一挙になくなったことは市財政にとって大きなダメージでした。 

稲嶺市長は「新たな財源確保を努力する」といっていますが、北部は発展する中部、南部とは異なり基幹となる地場産業が少ない地域ですので、代替財源が確保できたという話はついぞ聞きません。 

名護市は、この返還予定地がもともと利用するのが困難な山林であることから、それを返還反対の理由にしています。 

作家の目取真俊氏はでこう書きます。少し長いですが、返還反対と反戦・反基地という矛盾を融合させた論理の一例として引用します。 

「米軍基地に反対しているのに、返還しようとすると今度は反対する。沖縄の反対派はおかしい。細切れに返還を利用してそのような声が出ることを防衛省・沖縄防衛局は狙っている。」 

「特に国道や県道に沿った自治体にとって利用しやすい優良地は、地主、自治体にとっても第1に返還を望むところである。そういう場所は返還せずに、山の傾斜地や再利用しにくい場所を細切れに返還する。沖縄県民への嫌がらせに等しいやり方に反発が出るのは当然である。」(「海鳴りの底から」11年10月23日) 

「それが基地建設と絡めて行われる時、政府・防衛庁の悪質さはさらに増す。」 

これが私が名付けた「鍋の蓋返還反対論」です。「鍋を返せと言っているのに鍋の蓋くらいしか返さないんだから、嫌がらせだろう。なら鍋全体を返すまで蓋もいらないや」というわけです。

しかしそれを「政府・防衛庁の悪質な嫌がらせ」とまで言うとなると目取真さん、ちょっと考えすぎだと思うぞ。

だって1回目の時は、移設容認派の島袋市長時で、同じ土地だったじゃないですか。政府は島袋さんにも「いやがらせ」したってことになっちゃいますよね。

それと「沖縄県民」とベタで言ってますが、軍用地主も一緒なんでしょうか。この名護市の土地は市有地だから違いますが、多くの軍用地は私有地で年間約900億円もの地代が支払われています。

この軍用地が有利な物件として売買の対象になっているのは目取真さんもご存じなはずです。http://www.daikyo-p.jp/marutoku/marutoku7/marutoku7.html

普天間移設問題でもっとも大きなボトルネックは、反戦・反基地勢力ではなく、普天間の軍用地主会の反対だとすら言われています。

軍用地主以外にも、基地雇用者は約9千人おり、基地関連だけでその倍に登るでしょう。

これらの人の多くは、基地利権を辺野古に持っていかれてたまるもんか」と思っていてもなんの不思議ではないわけです。

沖縄において、基地の移設というのはそれほどまでに大きな利害関係のシフトを伴うものなので、これを反戦思想という表層だけで理解しては理解できなくなります

もし県民総意ならばなおのこと稲嶺市長は「鍋全体」、つまり名護市の基地すべてを返還しろと主張せねばなりません。 

稲嶺市長がそう主張したことがあったでしょうか。あんがい内輪の集会ではあったかもしれませんが、公的にはないはずです。 

稲嶺市長が本気で、キャンプ・ハンセン、辺野古弾薬庫、キャンプ・シュアブ、八重岳通信所などが返ってくると考えていたら、そんな夢想家では行政官は務まりません。

元宜野湾市長の伊波洋一氏あたりなら、政治オンチだともっぱらの評判の稲嶺市長と違って学生時代からの根っからの左翼運動家ですので、そんなスローガンも年中叫んでいたかもしれません。

しかし、市の行政マン一本槍で教育長まで務めた稲嶺氏が、「鍋全体」の返還などあり得ぬことだと分かっているはずです。 

そんな「鍋全体」一気に返ってきたら、真っ先に名護市の財政が完全破綻して稲嶺市政も一緒に吹っ飛んでしまいます 

もともと利用価値がないならば、経済的価値は限りなくゼロであり、収入はゼロだったのが、米軍が利用することで年間1億3千万の収益を生み出したわけです。

利用価値ゼロの土地が、再びゼロに戻るだけにすぎません。 

実績も開発プランもなく、ただ山の斜面だから困るというのでは、行政としておかしいのではありませんか。これじゃあ自分の無能を理由にしているようなもんです。 

もし、反戦・反基地で突っ走りたいなら、名護市にあるすべての米軍基地の返還を主張した上で、現実に返還したいと言ってきているこの土地も細切れだろうとなんであろうと貪欲に返還してもらえばいいのです。 

しかも、ここを強調したいのですが、この借地料は国民の税金です。本来必要のない税金を、国民は無駄に支払っていることになります。 

それを知った上で沖縄を見ると、基地反対論と容認論だけだけではないもうひとつの顔、すなわち「地域資産としての基地」が見えてきます。  

このあたりの反戦・反基地イデオロギーとゼニカネの隠微な癒着が、沖縄をどれだけ長期間蝕んできたことか、長年沖縄を心の「ふるさと」としてきた私にはため息が出る思いです。 

稲嶺市長は移設反対を唱え、防衛省とは辺野古移設に対して拒否しています。対話まで拒否しておきながら、金だけはほしいということのようです。 

一切、政府や米軍に協力はしない、と断言しているのですから、その筋を通されたらいかがでしょうか。 

来年1月の市長選には、このままいけば共産党、社大党、社民党、民主党、そしてなんと自民党沖縄県連までが相乗りしての鉄板の翼賛選挙になると思われます。 

これらの政党は、特に自民党は政権与党ですから、とうぜんハトさんがやった「県外移設」が物理的に絶対不可能だということを熟知しているはずです。 

にもかかわらず、あくまでもそれを旗印に掲げる以上、目的はひとつしかありません。 

この自民沖縄県連、民主両党が狙うのは、普天間飛行場の永久固定化です。 

「県外移設・辺野古反対」という無理難題を本土政府につきつけることで、逆に基地という「資産」を手放さない、そしてそれをカードにして本土政府からより大きな譲歩としてのゼニをむしり取る、ただそれだけです。 

来年1月の市長選で稲嶺市長が島袋氏に破れるようなことになれば、県-名護市-辺野古現地のうちふたつまでもが容認になるわけですから、自民党県連もあるいは方針転換する可能性がなきにしもあらずかもしれません。

それまでこの奇妙な自共相乗りの「島ぐるみ闘争」は続くと思われます。 

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