福島第1原発汚染水問題のおさらいその3 小出裕章氏「セシウムより相対的に危険度が低い」
小出裕章氏は、「少しでも人体に影響がある」ということを前提として、「(セシウムと較べれば)トリチウムは他の放射性物質と比較して相対的には危険度は低い」としています。(ラジオ番組「たね蒔きジャーナル」2月2日)
余人ならぬ小出氏の言うことですから、一部にある「世界最凶放射能トリチウム」などといったことは煽りだと思ってかまわないと思います。
また、小出氏は別な所で、「海に放出されたトリチウムは、雨として降ってきて地球を放射能汚染する」ということを書いています。
しかし、放射能が「降る」といっても50年代、60年代の核実験由来のものより多くなるわけはなく、当時の放射能雨によってガン、白血病が急増したという事実はありません。
(下図 日本人のガン白血病患者数の推移)
上図は50年から続けられた厚労省人口動態調査による日本人のガンと白血病の増加動態を示したグラフです。
これと上のセシウム降下量推移グラフを合わせてご覧くださることで、セシウム137と白血病・ガンとの相関関係を知ることができます。見事に反比例していますね。
上図をみれば、緑と赤の大気圏内の放射線量を表すドットは、62年をピークにして右肩下がりに減少しているのがわかります。
一方、白血病とガン患者数は等曲線で一貫して右肩上がりの線を描いています。
もし放射性物質降下とガン患者数が相関関係にあるのなら、70年代を境にして白血病は減少傾向を辿るはずでなければおかしいことになります。
放射性ヨウ素による甲状腺ガンは、チェルノブイリでは事故後4年の1990年頃から増加しました。白血病・ガンはやや遅れて8年や10年後と言われています。
ならば、日本の白血病・ガン患者は70年代中期から激増していかねばなりません。折れ線グラフで描けば急上昇トレンドの線を描かねばなりません。
しかし、白血病・ガン患者数は70年代から80年代にかけてたしかに増えてはいるもののこれは高齢化やほかの原因とも考えられます。
そしてもう一点注意していただきたいのは、突然セシウム降下量が増加した1986年、、つまりチェルノブイリ事故とその後です。
放射性物質が蓄積して発症するまでの時間差が仮に10年内外だとして、1996年前後に特出した患者の急増がみられるでしょうか?
このふたつの図を見比べる限りありません。白血病・ガン患者数動態図は淡々と等曲線増加を示しているだけです。
むしろセシウム降下量は核実験が停止されるに従って右肩下がりになり、一方白血病・ガン患者数は右肩上がりになるという反比例関係が読み取れます。
もし、セシウム137の放射性降下と白血病・ガン発生が因果関係があるのならこのふたつの曲線は完全に同調していなければおかしいのではないでしょうか。
ここにはトリチウム危険説の人々が主張する突然死のデータはありませんが、小出氏すら「セシウムより相対的に危険度が低い」というトリチウムが人体に大きな影響を与えたとはにわかに考えにくいのも確かです。
このようなことから、私は頭からトリチウムの危険性を否定するつもりはありませんが、公平に見て、トリチウム危険説は物証や科学的証明に欠けている部分が多くあり、憶測の域に止まっている気がします。
ああ、終わらない。もう一回。
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