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2013年9月12日 (木)

安倍の外交的リアリズムとオバマの敗北

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この記事は1週間ほど前に書いたものですが、汚染水問題やオリンピック招致決定などがあってアップしそこねていました。賞味期限切れぽいですが、もったいないので加筆してアップしておきます(笑)。

さて、ロシアのシリア化学兵器国際管理案で米国もまとまりそうです。喜ばしいことです。

シリアが化学兵器をもっていることは公然の事実(※1欄外参照)ですが、それと軍事介入とは別次元だと私はかんがえています。

挙げたコブシを降ろせなくなっていたオバマはロシアに救われることとなってしまい、もはやズタボロです。

そのオバマは、日本など俗に言う「下駄の雪」、蹴られても踏まれてもついてくる国、と思っていはずです。はっきり言って、そう言う国を従属国と呼びます。 

なにを言ってもイエスと言い、無理無体を言っても着いてくる自尊心が欠落した奴ら、こんなイメージがたぶん米国政府に歴代受け継がれてきた日本観なはずです。 

ですから、去年訪米した安倍首相に対して、「もっとも重要な同盟国」と言いながら国賓待遇にもせず、晩餐会はおろか共同記者会見ですら冷笑的な表情でソッポを向いていたのが、このオバマという男です。 

一方訪米した習近平とは別荘に呼んで長時間の二人だけの首脳会談を設定し、パク・クネに至ってはもはや恋人のようなスイートさを演じてみせて、彼女を有頂天にさせました。

このように外交的待遇で差をつけてみせるというのは外交の常道ですから、オバマは大変に分かりやすい男のようです。

ところで、オバマが選んだ国務長官のジョン・ケリーは、反戦米兵運動をして勲章を投げ返したことで有名になったようなバリバリのリベラリスト。とうぜん有名な親中派。

ついでに国防長官のチャック・ヘーゲルも外国への軍事介入を嫌う保守的自由主義者(リバタリアン※2参照)で、今回よくシリア介入に賛成したものです。

まぁ、よくもこういうメンツで米国政府を作れたもので、いわば学生活動家出身者が枢要を占めた民主党ハトカン内閣の米国版とでもいったところでしょうか。

このようなオバマは、今回のシリア攻撃についても日本は当然のこととしてすぐさまシッポを振って恭順の意を示すとタカをくくっていたはずです。 

そこで3日に、軽い念押しの電話の一本を安倍にかけてきました。「プライムミニスター・アベ、シリア攻撃の支持はいいよな」。 

ところが、安倍から返ってきた返事はオバマを凍りつかせました。 

「ミスター・プレジデント、安保理決議を得る努力をしていただきたい」。 

初めこの部分のニュアンスを私は、単なる「支持」と勘違いしていましたですから、ずいぶんと早い支持表明だなとがっかりしたものです。

しかし安倍はそれほど人のいい男ではなかったようです。安倍という政治家は、毀誉褒貶あるようですが、今の段階ではリアリズム政治家と評していいのではないでしょうか。

もちろん、安倍が言ったことは無理難題の類です。安保理で決議を得るにはロシアと中国が賛成にまわらねばなりません。 

シリアと深い政治的・経済的・軍事的利権を持つロシアは、天地がひっくり返ってもウンというはずがありません。

まして、今は例のスノーデン事件が両国間にトゲとして突き刺さっていますから、米露首脳の直接のパイプすら吹っ飛んでしまった状態です。 

皮肉なことに、今プーチンが揉み手している相手は、ロシアがサハリンLNGの最大の顧客と見込んだ日本なのです。 

オバマは、英国にはハシゴをはずされ、フランスもグラグラ、独伊には反対されてEUは総反対、露中反対、国内世論も反対と、もはや四面楚歌に陥っています。

これで主要国の日本までが英国と同じように反対にまわったら、みごとなまでの米国包囲網が完成してしまいます。

そうすれば、それを押してまで米国議会がイエスというはずがありません。つまり、新たな任期1年目でオバマは完全な死に体となってしまうわけです。

議会が共和党で占められている以上、このシリア問題で赤っ恥をかいたらもはやオバマに浮上の目はありません。生きながらにして「過去の人」となってしまいます。

安倍はそのオバマの苦境を読み切った上で、「国連決議をもって来てください」と軽く突き放したのです。

オバマは手の平を返したように5日、サンクトペテルブルクでいままでの日本軽視姿勢を改めて、米国から安倍に会談を申し込んできました。

いままで、安倍が再三外交ルートで首脳会談を申し入れても色好い返事をしたためしがなかったオバマの方から、居並ぶG20首脳のトップとして1時間も割いた会談をしたのですから、このゲンキンぶりを笑っていいんでしょうね。

特に緊急の懸案はなかったはずです。TPPで年内妥結」が議題だったとニュースは報じていますが、オバマの頭には今TPPなど影も形もありませんよ。

シリアは言うに及ばず、北朝鮮、日中関係、TPP、集団的自衛権など幅広く話し合ったとのことですが、要は日本にシリア攻撃支持を手を合わせて言外で頼んだのです。

もちろん、言葉では「頼む。支持してくれ」などと言うはずがありませんから、「天下の米国大統領様がここまでへり下っているんだから察しろよ」ということです。

それに対して安倍はここでも、「(化学兵器を使用したシリア政府に)責任がある」という微妙な言い回しをしています。

そして米国には、「非人道的行為を食い止める米国の強い責任感に敬意を表する」という表現でストップをかけています。

安倍が「支持する」という言い方は慎重に避けているのがわかります「理解」はするが、軍事行動そのものまでを「賛成」したわけじゃないよ、というニュアンスです。

国際社会では、微妙ながら「支持」と取られるが、全部を肯定したわけではないというところが巧みなところです。

「オバマさん、お困りのようだからお力添えはしますが、貸しですから」ということです。

貸しの回収は、オバマの来日だということですから、これはオリンピックと並んで強力な中韓に対する牽制になるでしょう。

ちなみに、中国は、少なくとも2020年まで尖閣や台湾に対して挑発は継続するでしょうが、軍事手段を行使することは不可能となりました。

オリンピッック開催国に対して、軍事手段を用いるなど国際的孤立をもたらす以外ありえないからです。

韓国も自らの冬季五輪も含めて、いやでもわが国とのデタント(緊張緩和)を選択するしかありません。

まさにオリンピックとは、リアルポリティクスの上でも、「平和の祭典」なのです。

ところで、G20会談後大統領副補佐官のベン・ローズは、日米首脳会談について、「化学兵器に関する国際的な規範を守らせるために我々がやろうとしていることについて、安倍首相から広い意味での支持の表明があったと考えている」と安堵のコメントを出しています。

G20ではオバマは集中砲火をあびたようですから、これで日本が反対にまわったらどうなっていたことか。 

私は政治、特に外交において左右の理想主義は信じません。有害であるとさえ思っています。

それは鳩山が行った左翼的「友愛外交」の無残な結果をみれば分かるでしょう。彼の友愛とは調和ではなく、破壊と混乱の代名詞でした。 

今や鳩山は元前首相という肩書を持つ「中国の代理人」にまで堕っしてしまい、国内での影響力は限りなくゼロです。

逆にもし、安倍が復古的タカ派外交路線を考えているなら100%失敗します。外交とはそのような自己陶酔的観念の入る隙間のないパワーポリティクスだからです。

しかし、就任から約10カ月、安倍はその心配を無用にしているように見えます。安倍を第1期のような単純なタカ派・右翼政治家と捉えると、見誤ることになると思います。

※1 シリアの化学兵器情報
化学兵器禁止条約(CWC)未加盟のシリアが保有する化学兵器についての公式情報は存在しないが、アメリカ中央情報局(CIA)の分析によると、シリアはマスタードガス、サリン、VXガスといった化学兵器物質を貯蔵している。それらの化学兵器物質の保有量は1000トン以上であり、シリア国内各地の50カ所以上の施設に貯蔵されている。
IAの分析によると、シリア軍は航空機、弾道ミサイルならびにロケット砲によって化学戦攻撃を敢行する能力を保有している。ちなみにアメリカ軍当局によると、シリアは化学兵器に加えて生物兵器も保有している6カ国(中国、ロシア、北朝鮮、イラン、イスラエル、シリア)の1つと考えられている。(北村淳氏による)

※2 リバタリアニズムlibertarianism)とは、個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する、自由主義上の政治思想。リバタリアニズムは、他者の権利を侵害しない限り各人は自由であり、政府が干渉すべきでなく、最大限尊重すべきであるとする。(Wikipediaによる)

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■TPPの年内妥結で一致、シリア情勢では連携=日米首脳会談
ロイター2013年 09月 6日

[サンクトぺテルブルク 5日 ロイター] - 安倍晋三首相は20カ国・地域(G20)首脳会合が行われているロシアのサンクトペテルブルクで5日、オバマ米大統領と会談し、安倍政権の最重要課題は経済再生であり、力強い日本経済の成長が力強い日米関係につながると表明。 

環太平洋連携協定(TPP)について、年内妥結を目指す考えを示した。両首脳はTPPについシリア問題に関して、安倍首相は「シリアで化学兵器が使われた可能性は極めて高く懸念している。 

シリア情勢悪化の責任は人道状況悪化を顧みないアサド政権にあるのは明らかで、一昨日の電話会談での(オバマ)大統領の考えは十分理解している」と述べた。また「今回のG20サミットでは可能な限り国際社会が一致団結していることを示すべきだ」とし、米大統領と協力していく考えを示した。て、年内に妥結しないといけないとの認識で一致した。 

ただ、オバマ大統領から軍事介入についての発言はなかったという。 

さらに、安倍首相は地域と国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に取り組んでいく決意を表明し、「国家安全保障会議(NSC)の設置や防衛大綱の見直し、情報の保全、集団的自衛権の見直しに取り組んでいく」考えを示し、「日米同盟の抑止力を高めるため、在日米軍再編を着実に推進していく必要がある。普天間問題をめぐる難局も打開していきたい」と述べた。オバマ大統領も会談の冒頭で、日米同盟は日米安保の礎だけでなく、世界の多くの国にとっても礎になると述べた。

安倍首相はまた、オバマ大統領の訪日を招請。大統領は是非調整したいと述べた。 

日中関係に関して安倍首相は、日米の協力が重要であると指摘したうえで、「日中関係は日本にとって重要な二国間関係の一つであり、今後も大局的な観点から戦略的互恵関係の原点に戻ってしっかり進める。我が国の中国側との対話のドアは常にオープンである」と述べ、オバマ大統領も賛意を示した。

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日本人が本当の米国を知るための素晴らしい記事でした。

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