汚染水処理の国関与を拒否したのは民主党政権だ
福島第1原発の汚染水問題が大きく取り上げられていますが、マスコミ報道を見ているとげんなりして書く気力が起きませんでした。
反オリンピック招致とからめてまでの汚染水キャンペーンには心底うんざりしました。
守る招致委員会側も鈴木大地氏のように、「東京は福島から220キロ離れている」という馬鹿な言い訳をするには閉口しました。
鈴木さん、それじゃあ「復興五輪」にはならんぞ(苦笑)。
これは、「シチューエーション・イズ・アンダー・コントロール」という定量的な首相のIOC総会最終プレゼンテーションの答えが正しいのです。
実際、首相の言うとおりで、現状は大きな問題を抱えていますが、11年3月から5月までのようなコントロールがきかなくなっている状況とはまったく次元が違います。
さて、ある放送局の報道番組では、前政権での責任者のひとり馬淵澄夫氏まで登場させて、「出来上がっていた遮蔽プランが葬り去られた」というような伝え方をしています。
まるで民主党政権が立派な処理プランを作ったのに、「闇の手」によって葬られたというようなことな言い方です。 なにを言ってんだか。(笑)
この2年間、本来さっさと国が前面に出て収拾作業をせねばならないのに、東電という私企業にやらせていたからこんなことになったんじゃないですか。
まず問題は、東電のあいも変わらない臭いものに蓋的体質です。
「すでに高い線量が確認されていた2カ所のうち最大毎時1800ミリシーベルトを確認したタンクは8月22日の点検作業の際、線量は毎時100ミリシーベルトと発表。
当時の線量測定機器の計測値の上限は100ミリシーベルトだったが、今回の点検では上限1万ミリシーベルトの機器で測定したところ、数値が18倍に跳ね上がった。
前回調査時にも毎時1800ミリシーベルト前後だった可能性があり、東電の管理体制の在り方があらためて問われる状況だ。」(2013年9月1日 福島民友ニュース)
この地元紙の報道によれば、東電の計測体制そのものがダメだったということです。1800ミリシーベルトもの漏洩を管理できないのですから、もはやこんな企業に処理作業を任せるべきではありません。(下図東電HP)
これはタンクの汚染水処理問題以前の管理体制問題です。もはや東電は廃炉に向けた当事者能力を失っているとみるべきです。
ただし、高放射線量ではあるものの、核種はセシウムなどの透過力の強いガンマ線を除去した後のストロンチウムなどのベータ線です。
セシウムなどと違って重いために、拡散する可能性が低く、厚さ数ミリの金属板で遮蔽できてしまいます。
鉛などの遮蔽版が必要なセシウムより防御しやすいとは言えます。まぁだから、ただの金属タンクに東電は汚染水を入れていたわけです。
なお、ストロンチウムは、今稼働しようとしているALPS除染機で除去することが可能ですので、大ゲサに「福島は終わった」などと騒がないでくださいね。
結果論に聞こえるかもしれませんが、これは大いに予測し得たことでした。
8月19日に高濃度の汚染水を300トンも流出させて大騒ぎになった4号機の山側にあるH4エリアにあるタンクの作りはフランジ型タンクです。
(※東電G6エリアタンク(鋼製円筒型タンク)フランジ部 からの漏えいについて )
これは設置が簡単ないわば間に合わせのタイプで、鋼板をボルトで止めただけのしろものです。
継ぎ目はゴムパッキングひとつですから、耐久性に乏しいのはわかりきったことでした。とうぜんここはステンレス製の溶接タイプのタンクにするべきです。
しかしこの簡易型フランジタイプが、実に約1千基あるタンク群のうち3割以上の350基あるというのですからげんなります。
私企業に原発事故のような国家的危険を招きかねない処理作業を丸投げしてはダメです。
私企業は、こんなまったく利潤を生まない作業には、コストの切り下げと設置の簡便さに意識が向いてしまう可能性があります。
こういう時に、東電解体論や東電懲罰論、果ては電力自由化論まで持ち出すこと自体がおかしいのであって、巨大事故の処理が私企業に可能かという論点で煮詰めれば、答えは自ずと明らかだったはずです。
ユニバーサル・サービス一般にいえることですが、道路などのそれ自体儲からない分野は、だからこそ国や自治体が税金を投じてやっているのであって、安易な企業丸投げをすれば見えない手抜きをすることになります。
この危険性について原子力委員会は既に、「2011年12月に漏えい防止や安全な保管・処理のために国の主体的関与を求める提言をしていた」(毎日新聞9月7日)ことがわかっています。
提言は、「米政府が事故処理を電力会社任せにせず、エネルギー省や原子力規制委員会(NRC)などに責任を分担させる体制を作ったこと」を高く評価しています。
これをおそらくは民主党脱原発派は、彼ら特有の、「東電の罪は東電に償わせろ」的懲罰論と、「原子力村の山名なんかの言うことは信じられるか」という感情論で、国の関与まで全否定してまったのではないでしょうか。
「当時の民主党政権関係者は『事故処理は東電が主体だった』『政府が提言通りしなければならない理由はない』(同)と葬り去ってしまいました。
あの人たちの愚かさは深い海のよう、高い山のようです。あんな低レベル廃棄物は、東電の前にさっさと解体処理してほしいものです。
よくマスコミも、「ここまで放置し続けてきた政府の責任は重い」というような言い方をしますが、その「政府」とは民主党政権のことなのです。
■本稿はアップした後に、こりゃ自分でも長いわと思いましたので、後半をカットして明日にまわしたことをお断りします。
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民主党政権時代のぐちゃぐちゃぶりや、東電の当事者能力も酷いものですが、
福島民友の記事(僅か40分で死亡に至る線量だ)とか、ヤフーニュースなどで拡散→さらにネットで拡散してる連中の多いこと。
せめてα線β線γ線の性質位はまず調べろと…。
まさか全裸でタンク周りを彷徨くわけじゃあるまいし。
大雑把に言えば、αβは破壊力は大きいので体内被曝すると非常に危険ですが、遮蔽はγ線と違って簡単です。α線なら紙1枚でOK。β線なら薄いアルミ板で十分です。
投稿: 山形 | 2013年9月 9日 (月) 07時01分