アナザー・サイド・オブ・オキナワその6 民主党沖縄ビジョン・県丸ごと自由化特区に
かつて西表島で台湾坊主という小型ですが、近海で突然発生する台風に遭遇したことを思い出してしまいました。時に予報も間に合わないとか。それに較べれば、今回のは、「さぁ、来い」ってなかんじです。
さて、沖縄県へは累積10兆円もの政府振興予算が投じられました。
これは全国一はいうまでもありませんが、対中国ODA累積額の約6兆円をはるかに越えて、もはや一国規模以上に達しています。
しかしそれが沖縄の庶民の豊かさに繋がらず、本土並は一握りの公務員だけ、大部分の島人はあいかわらず労働条件が悪かったり、失業率が高いのはなぜなのか考えてきました。
これに対する処方箋として民主党が政権交代直前に出した、「民主党・沖縄ビジョン」(2008年)というものがあります。
民主党の処方箋は、沖縄を半独立にして、自由化特区のモデルにしてしまえというものです。
それも狭い地域ではなく、県丸ごと自由化特区にするというのですから大胆不敵です。
自由化特区自体は、韓国にもあります。米韓FTAで医療特区を作って、米国の言うがままの保険制度解体し、グローバル資本の意のままのモデルを実験しているようです。
わが国でも今後TPPがらみで、経済競争力会議あたりが言い出すかもしれませんから、しっかりと阻止せねばなりません。
民主党はそれを政権交替前に沖縄県全体でしようと構想しました。
当時はTPPが浮上する前でしたので、彼らは「一国二制度」という、世界でも香港、マカオにしかモデルがない特殊な政治形態をモデルに引っ張り出してきました。
今だったらきっとTPPに絡めて、「交易国家であった琉球の特殊性を活かして、アジアの活力を取り込む地域」などと言ったことでしょう。
この一国二制度はまったくわが国の手本にはならない中国の特殊事情から生れたものです。(欄外にダラダラと解説を書きました。お暇なら。)
当時はなぜ、こんな普通選挙すら一度もやったことのない中国の苦し紛れの方策を、先進自由主義国のわが国がとりいれねばならないのかさっぱり私には理解できませんでしたが、思えば、要するに「自由化特区」を作りたかったんですかね(苦笑)。
ですから、表向きは左派色の強い琉球独立論に色目を使いながら、内実は新自由主義沖縄バージョンといった内容です。
無前提の基地縮小を主張する半面で、政権交替以前の民主党らしい「地域貨幣」などといった流行語が散りばめられていて微苦笑させられます。
民主党は概念規定もあいまいな、「新たな公共」とか「市民の参加する外交」みたいな流行語が好きでしたからね。
ああいう言葉を使うと、なんか新しい政治理念を語ったと勘違いしちゃうんで困ります。実際やったことは、旧態依然たる派閥政治と内部抗争だけでしたけどね。
それはさておき、前半の基地縮小は、ほんとうにハトさんがやらかして、ゴールデン・ラズベリー賞最低政治家賞を受賞しています。
あの時のハトさんの晴れがましい顔を今でも忘れられません。(もちろん冗談です)
さて、中国と離れて一般的に「一国二制度」を定義すれば、たぶん「一国の中に、政治制度・経済制度の 根本的に異なる地域が複数ある状態」とでも言うことになります。
だとすると、日本国の主権下にありながら、政治制度と経済的独立を持つ一定「領土」と「国民」を持つ沖縄地域ということになります。
だからここを、「自由化特区」として、本土でできない米軍基地の一方的縮小や移民の大量導入、外国人参政権付与をしてしまえ、というのが沖縄ビジョンです。(※外国人参政権は同時期に別枠で提唱されていました。)
それはさりげなく紛れ込んでいる「.ビザの免除による東アジアとの人的交流の促進」という項です。
このビジョンには「中国語の学習の活発化」が入っていますから、この「東アジア」とは中国を指すことはいうまでもありません。
ビザを免除して長期滞在中心にして3000万人をステイさせるのだそうです。
今の関東地方の農村部の外国人研修生問題をまったく勉強してこなかったのがわかりますね。ビザを免除してしまえば、歯止めか効きません。
いったん入国されてしまえば、観光目的といおうが、学習目的といおうが同じことです。
その3分の2以上は、高賃金のわが国に魅力を感じているのですから、間違いなく不法就労します。いいですか、中国農村部はいまでも月収が1万円にも満たないのですよ。
農村から上海などの大都市に出稼ぎに来て底辺労働に従事している民工(農民工)は、国家人口計画生育委員会の「中国流動人口発展報告2012」によれば2011年末に中国全国の流動人口が史上最高の2億3千万人に達しており、その8割は農村戸籍を持つ者で、平均年齢は28歳です。
実にわが国の人口を優に上回る人口が、職を求めてさまよっていることになります。一般に中国の農村は都市部と収入で3倍以上の大きな格差があります。
たとえば上海や蘇州の3Kの底辺労働を担う人たちは、湖南や四川など農村部出身者が大半を占めています。
これら農村部から来る外部労働者数は、蘇州などでは地元の人口を越えているそうです。蘇州市区は人口約538万人ですから、それほど大量に流入しているのです。
20歳くらいの民工の平均月収は600元(約8000円)ていどです。いったんビザなし入国など認めたら最後、この民工の怒濤のような流入が始まります。
(写真 沖縄に向けて殺到する民工ではなく、広州駅付近のようです)
沖縄の人口は約130万人。しかも大量の失業者、半失業者がいる狭い島に中国を中心として年間3000万人受け入れようというのですから、正気の沙汰ではありません。
これを実施したら最後、多数のオーバースティ(不法滞在)が生じるでしょう。
今だって公式発表で7千人もいるのですよ。実態はその10倍でも済まないといわれています。
そして、そこで家庭を作り子供をもうけるでしょう。まったく普通の営みなのですが、他人の狭い島でやらないでくれというだけです。
やがて遠からず、中国人特有の、郷里や一族でコロニーを作り始めるはずです。
そして世界各地に偏在するチャイナタウンか、島内各地にできることになり、彼らは自衛と抗争のための「力」を持つようになります。これがかの有名な蛇頭などのチャイナ・マフィアです。
この上に、「沖縄ビジョン」の提唱者たちは、渡辺周、ツルネン・マルティ、そして当時民主党政調会長の要職にあった岡田克也各氏はいずれも外国人参政権推進論者でした。
すると、このビジョンには描かれていませんが、一定期間沖縄に滞在した中国人には、外国籍のまま地方参政権を与えるつもりであったと思われます。
わずか数年で沖縄ネーティブと人口逆転し、数年間で一定基準を満たせば沖縄の地方参政権を得ることができるようになります。
おそらく多くの中国籍のままの議員と首長が誕生することになるでしょう。特に人口減少で悩む離島では容易に島の主流になります。
これは、実は中国のウイグルやチベットの漢民族植民政策そのままです。いったん人口逆転を許すと、これをネーティブが再度逆転するのは強制退去という措置を取らない限り不可能になります。
中国ならともかく、今の人権意識の強い民主主義先進国では土台むりです。
そして沖縄県は、米軍の退去を求めて「独立」を目指すのかもしれません。県民住民投票でもするのでしょうか。
かくして、麗しいこの島は中国人によって完全に乗っ取られることになるわけです。
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※おまけ 「香港返還における一国二制度」
1997年に香港とマカオを英国とポルトガルから返還させるに際して、すでに民主主義政体をとっていたこの地の扱いに中国は窮しました。
いきなり「中国式社会主義」を押しつけるのは抵抗がありすぎます。だってそうでしょう。中国になったとたん、選挙権、被選挙権、集会・結社・宗教の自由ノいっさいは取り上げらてしまうのですから。
元々中国本土のように歴史上一度たりとも民主主義をもったことのない政治的後進国ならいざしらず、すでに民主主義政体を得て半世紀以上たつこの両地域からこれを取り上げるのは不可能でした。
いや今の中国でも憲法で民主主義的権利は認められている、なんて馬鹿を言わないでくださいよ。あんなものただのイワシの頭にすきません。
あの国で通常の国家が持っている民主的諸権利を国民が得るには、第3次天安門事件が必要なのです。
もし中国に併呑されれば、香港・マカオには、民主主義のみならず土地の私有権もなくなります。
中国は都市部の土地は国家所有で私的所有は認められておらず、「土地使用権」という変則な既定があるだけだからです。
となると、英国の植民地下にあって自由主義社会を謳歌していた香港が選挙もなければ、土地も持てない、政党も共産党一党だけという前近代的な時代に逆行してしまうことになります。
これでは香港、マカオの住民が全員ノーを言うでしょう。第一、英国が絶対にそれでは返還に合意するわけがありません。
そこで苦し紛れに考えついたのが、主権は中国が有し、本土領域から分離した香港、マカオに一定の自治や国際参加を可能とするという一国二制度構想だったわけです。
この折衷的な解決案は、返還後から既に崩れてきており、香港政庁や各種統治機関は気がつけば「大陸派」が掌握し、今や香港芸能界すら大陸派が牛耳っている始末です。
遠からず、なし崩し的に香港の民主主義政体も消滅していくと思われます。
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